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東京・世田谷を拠点とするクルー、KANDYTOWN の中心的存在である IO による、〈Def Jam Recordings〉に移籍後初となるアルバム『Player's Ballad.』。これまで〈P-VINE〉から2枚のソロ・アルバム『Soul Long』、『Mood Blue』をリリースし、KANDYTOWN としてもアルバム『KANDYTOWN』でメジャー・デビューを果たすなど、ソロ、グループともにたくさんの作品を重ねてきた IO だが、これまでの彼の楽曲と言えば、90年代、2000年代的なサンプリング・マナーも交えながら、ソウルフルなフィーリングをいまのサウンドとして昇華させ、ラップに関しても実にアーバンでスタイリッシュなスタイルというイメージが非常に強かった。本作はソロでのメジャー・デビュー作ということもあり、これまでの集大成的な作品を予想していたのだが、アルバム・タイトルにある「Ballad」という言葉が示しているように、BPM 控えめに、しっとりとしたムーディーなイメージが全面に出た構成となっている。トラックの曲調に関しても、ミニマルなビートに透明感あるシンセが効果的に響くスタイルが軸になっており、IO のアーバンでスタイリッシュなラップが見事にハマる。そんなスタイルを象徴する“Shawty.”や、もう少しアッパー寄りな“Player's Section.”など聴きどころは多数あるが、このアルバムの大きな目玉と言えるのが、5lack がプロデュースおよびフィーチャリングで参加した“Missed.”だろう。男の色気も漂わせながら、IO と 5lack のふたりが哀愁漂うラヴ・ソングをラップと歌で作り上げ、見事なコンビネーションを披露している。その一方で、過去作での持ち味であったノスタルジックな感覚も健在で、ブギーっぽいテイストも込められている“Pursus.”や MUD をフィーチャした KANDYTOWN 色全開な“Mellow and The Smoke Blue.”など、要所要所に盛り込まれているのも実に心憎い。
さらに本作の収録曲3曲(“Solid.”、“Bill.”、“Shawty.”)を WONK、King Gnu のメンバーらが演奏して再レコーディングしたという音源『Player's Section. (Band Edition)』がデジタル配信されているのだが、生楽器のサウンドによってソウルフルかつジャジーなテイストがプラスされ、『Player's Ballad.』の世界観にさらに異なるベクトルが加えられている。『Player's Ballad.』のようなムーディーな面を強調したアルバムも、まさに IO にしかできないような作品であるのだが、『Player's Section. (Band Edition)』もまた IO の新たな魅力を大きく引き出した作品と言える。〈Def Jam Recordings〉というステージで、今後、彼がどのような景色を見せてくれるのか、実に楽しみだ。
大前至