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Prequel

Deep House

Prequel

Love Or (I Heard You Like Heartbreak)

Rhythm Section International

Midori Aoyama May 07,2021 UP

 僕は学生時代にあまりヒップホップに夢中にならなかったし、クラブに行きはじめてから即、ムーディーマンやセオ・パリッシュの虜になったわけでもないが、ヒップホップが大好きでデトロイトのハウスに人生を狂わせられた連中をたくさん知っている。いまこのレヴューを読んでいる貴方もそのひとりかもしれないが、オーストラリアはメルボルンのジェイミー・ロルッソ=ジスカインドこと “プリークエル” も是非その仲間のひとりと覚えておいて欲しい。DJプレミアやMFドゥームらを聴きまくって育った彼が、いまやロンドンやニューヨーク、パリ、アムステルダムなどに並ぶ勢いで成長し続けるメルボルン・ダンス・ミュージック・シーンの環境でモータウンのサンプリング・ハウスに出会うのは至極当然のような流れでもあるし、狭いながらも濃いメルボルン独特のコミュニティーが彼の成長を大きくサポートしたのも頷ける。

 転機となったのは2014年、ロンドン郊外にあるペッカム発のレーベル〈Rhythm Section International〉からデビューEP「Polite Strangers」をリリース。レーベル・オーナーのブラッドリー・ゼロの活躍もあり一躍注目の的になった。
 プリークエル最大の出世作と言えば、続く2作目の「Freedom Jazz Dance」だろう(レコードも何度リプレスされたのか!?)。自身がリスペクトするアーティストの名前をカゾーO.S.L.O の渋いヴォーカルでひたすら語り続ける奇妙でジャジーなディープ・ハウス “Saints” は、今回のアルバムでも発揮されているメッセージ性の強くコンセプチュアルなプロダクション・スタイルの基礎になっているのかもしれない。
 その後も〈Local Talk〉や〈Lobster Theremin〉のサブレーベル、〈Distant Hawaii〉などモダン・ディープ・ハウスの登竜門的レーベルでのリリースを終えて、満を辞してホームレーベルの〈Rhythm Section〉にカムバック。今作『Love Or (I Heard You Like Heartbreak)』を発表した。

 イントロやアウトロを加えると全12曲の収録だが、ここまで明確なコンセプトとメッセージを持たせたハウスLPはあっただろうか? ほぼ全てのトラックタイトルに「LOVE」と入ったトラックリストもなかなか強烈だ。先述の通りヒップホップを通過したハウス・プロデューサーらしくそこら中にサンプリングが散りばめられており、是非とも「ネタ探し」も含めて楽しんでもらえると良いだろう。
 イントロの “I Need Your Love” に続いて、ダークでウェットな雰囲気の “When Love Is New” では同郷メルボルンのハウス/ディスコ・プロデューサー、ハーヴィー・サザーランドのライヴ・トリオにも参加するヴァイオリニストのタミル・ロジョンが参加し、トラックに妖艶な雰囲気を与えてくれた。ラテン・テイストの楽曲 “Violeiro” や軽快なジャズ・ピアノが響く “I Tried To Tell Him”、そしてデトロイト・ハウス勢のお株を奪うローファイ・トラック “And That's The Story Of Their Love” などプロデューサーやDJとして多彩な音楽を吸収しているのも垣間見れるし、絶妙なサンプリング使いの中に生音をしっかりと混ぜこんだプロダクション・スキルは秀逸だ。
 コラボレーションしたミュージシャンにはヴァイオリニストのタミルの他に、昨今のメルボルン・シーンを象徴する人気フュージョンバンド 30/70 や、ツァイトガイスト・フリーダム・ エナジー・エクスチャンジのメンバー、そしてカゾーO.S.L.O も “Saints” 以来の再登板。タイトに繋がっている地元のシーンの層の厚さをここで感じることができる。

 Covid-19 のパンデミック前にはほぼ仕上がっていたアルバムだそうだが、コロナ禍ではひたすら見漁った映画のシーンを切り取り自分で編集(ここでもサンプリング!!!)したと語る3本のビデオクリップと Instagram でのティーザーがアルバムのコンセプトをより深くし、何よりもアルバム・アートワークにさりげなく施されたオレンジの四角形が彼の音楽に対するリスペクトと「愛」を表現していると言えるだろう。アナログは鮮やかな真紅のカラーヴァイナルで2枚組。いろんな角度から楽しめるデビューLP。

※こちらはプリークエル本人によるムーディーマン楽曲のみの1時間MIX
PRAISE YOU: A MOODYMANN TRIBUTE MIX BY PREQUEL
https://www.stampthewax.com/2021/04/15/praise-you-a-moodymann-tribute-mix-by-prequel/

Midori Aoyama

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