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Gucci Prince

Hip HopRap

Gucci Prince

HEROES

BUZZ RECORDZ

宮崎敬太   Oct 26,2021 UP

 Gucci Prince をちゃんと認識したのはごく最近。仕事で見ていた配信ライヴの出演者だった。無観客のスタジオ・ライヴで、しかも一番手という難しい出番だったにもかかわらず、のっけから爆発的なエネルギーを表現する彼に圧倒された。いろんな現場を経験して叩き上げてきたのだろう。あと変わったビートが多い。かっこいいラッパーだなと思って見ていると、ライヴ後のショート・インタヴューで「UKガラージがハマるっすね」と話していた。日本の若い世代ではUSのトレンドをローカライズするか、“日本語ラップ” を踏襲するスタイルのラッパーが目立っていたので、UKからの影響を明言した彼により興味を持った。

 Gucci Prince は Tokyo Young Vision 及び Normcore Boyz の一員として知られていたが今年脱退。すぐさまソロ活動を活発化させ、4月から約1ヶ月に1作のペースで新作を発表し続けた。その集大成となるのが10月にリリースされたEP「HEROS」だ。「何かに抗う為に集まったヒーロー達との共作」をテーマに、DABO、鎮座DOPENESS、Kick a Show、KOWICHI、釈迦坊主、Bonbero などバラエティ豊かなゲストを招いている。

 四つ打ちのビートの “FXXKED UP” には昨年の「RAPSTAR2020(ラップスタア誕生)」ファイナリスト・week dudus、夜猫族から Tade Dust&Bonbero のコンビ。ヴァイブス全開の “地獄” にはヒップホップの周縁から存在感を放つ釈迦坊主。続く “CHATAN” は沖縄のクルー・SugLawd Familiar と制作した。彼らの平均年齢はなんと18歳。これは “FXXKED UP” に参加した夜猫族のふたりにも言えることだが非常にスキルが高い。もちろん音楽はうまけりゃいいってもんじゃないが、うまいと表現の選択肢は増える。それを感じさせるのが5曲目の “GAP”。ビートは “CHATAN” とともに G-FUNK だが、こちらでは重鎮の DABO をフィーチャー。“CHATAN” のようなフレッシュさはないが、ベテランだからこそ出せる渋みがラップのいたるところから滲み出る。

 後半は鎮座DOPENESS と Kick a Show を迎えたUKガラージの “Bacon Part. Ⅱ”、そしてダークなUKドリルの “Fake Mandem Remix (feat. week dudus)” と続く。やっぱり個人的にはこのノリと流れが好き。ラストの “NADESHIKO” は ZOT on the WAVE ビートで、川崎の KOWICHI と兵庫の若手・Merry Delo が参加している。

 6曲入りのEPだが驚くほどいろんなタイプのラップ、年代、ビートがある。確かに荒さはある。だがそれを超えるエナジーが楽しい。トレンドにはめていくのではなく、自分だけのフォーマットを作ろうとするパワーがある。それにイントロで「何かに抗う為に集まったヒーロー達との共作」というテーマを宣言しているので、作品としてのまとまりもある。

 私がUKカルチャーを好きなのは、ロック、パンク、レゲエ、ダンス・ミュージックが並列だからだ。日本と同じ島国だが、ダイヴァーシティな土壌があって、それがクリエイティヴィティに反映され、キメラのようなアウトプットを生む。そうして2トーン、〈ON-U〉、ジャングル、UKガラージ、2ステップ、グライムなどなどが生まれた。

 Gucci Prince は FNMNL のインタヴューで、millenium parade や Tempalay について話しており、同時に AJ Tracey と Jorja Smith がUKガラージ/2ステップのクラシックである Sweet Female Attitude “Flowers (SunShip Edit)” をバンド・カヴァーした映像にも言及していた。こういった形で日本のラッパーとバンドがUK的なダンス・ミュージックにアプローチする例は少ないので、今後の活動が楽しみだ。

 だがなにより嬉しいのは、彼がUKガラージやUKドリルをトレンドのジャンル・ミュージックとして受容するのではなく、カルチャーの本質をフィールしていること。UKと同じ島国でも根強い排外主義と保守性が跋扈する日本において、若い世代がカルチャーから自然と多様性を身につけていく姿を見るのは心強い。この『HEROES』にはそんな希望を感じた。

宮崎敬太