ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 大友良英「MUSICS あるいは複数の音楽たち」を振り返って
  2. 別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル
  3. KMRU - Kin | カマル
  4. 坂本慎太郎 - ヤッホー
  5. Milledenials - Youth, Romance, Shame | ミレディナイアルズ
  6. Dolphin Hyperspace ──凄腕エレクトリック・ジャズの新星、ドルフィン・ハイパースペース
  7. Loraine James ──ロレイン・ジェイムズがニュー・アルバムをリリース
  8. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  9. interview with Autechre 来日したオウテカ──カラオケと日本、ハイパーポップとリイシュー作品、AI等々について話す
  10. ele-king Powerd by DOMMUNE | エレキング
  11. Deadletter - Existence is Bliss | デッドレター
  12. Squarepusher ──スクエアプッシャーのニュー・アルバムがリリース
  13. Jill Scott - To Whom This May Concern | ジル・スコット
  14. ロバート・ジョンスン――その音楽と生涯
  15. Cardinals - Masquerade | カーディナルズ
  16. HELP(2) ──戦地の子どもたちを支援するチャリティ・アルバムにそうそうたる音楽家たちが集結
  17. Free Soul × P-VINE ──コンピレーション・シリーズ「Free Soul」とPヴァイン創立50周年を記念したコラボレーション企画、全50種の新作Tシャツ
  18. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2026
  19. ぼくはこんな音楽を聴いて育った - 大友良英
  20. Flying Lotus ──フライング・ロータスが新作EPをリリース

Home >  Reviews >  合評 > Perfume Genius- Put Your Back N 2 It

Perfume Genius

合評

Perfume Genius- Put Your Back N 2 It

Matador/ホステス

Feb 28,2012 UP 文:木津 毅、野田 努 E王
12

はからずとも彼はその美しさでネット社会の偏狭さを暴く文:野田 努


Perfume Genius
Put Your Back N 2 It

Matador/ホステス E王

Amazon iTunes

 パフューム・ジーニアスの"フッド"は、本人が意図しなかったにせよ、セックス・ピストルズの"ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン"......、そしてフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの"リラックス"と同系列で語ることのできる作品かもしれない。ゲイを強調して売りにすること自体は、欧米のポップ文化において珍しいことではない。ボーイ・ジョージは礼儀正しくやって、フランキーは大胆にやって放送禁止となった。しかしそれとて1984年の話。だいたい性的衝動を武器としながら奇襲を仕掛けたフランキーにとって、ある意味放送禁止こそ望むところでもあった。
 そこへいくとパフューム・ジーニアスの"フッド"のPVがGoogleとYouTubeから削除されたことは、木津毅の次号紙エレキングにおける取材でも明らかにされていることだが、はからずともインターネット社会の限界と偏狭さ、電子空間にさえも権力が目を光らせていることを証した。すでに抗議をうけ、現在では復帰しているものの、リアーナの例の自慰行為のPVは削除されずに、しかしパフューム・ジーニアスを名乗る美少年とポルノ男優とのセクシャルな絡みは当初GoogleとYouTubeという21世紀の自由から見事リジェクトされたのだった。
 パフューム・ジーニアスの"フッド"は、しかし曲を聴けばわかるように、"リラックス"のように敢えて勇敢にタブーに立ち向かったような曲ではない。彼のセカンド・アルバム『プット・ユア・バック・イントゥ・イット』は、好戦的ではないし、その手の受け狙いの作品でもない。ケレンミのない、誠実で美しいバラード集だ。骨格にあるのはピアノの弾き語りで、それはジェームズ・ブレイクから人工着色を剥いだ姿のようで、アントニー・ヘガティのフォーク・ヴァージョンのようでもある。が、しかし彼の楽曲はブレイクやヘガティよりも滑らかで、音的に言えば、より親しみやすさがある。
 
 言うまでもなく、ゲイ文化とポップ音楽との絡みに関して日本は欧米より遅れをとっている。その民主主義的な観点において、そもそもカミングアウトを(そして動物愛護もドラッグ・カルチャーも)受け入れていない。ポップ音楽もスタイルだけは欧米の模倣だが、その中身、文化的成熟にはまだ遠いと言えよう。が、海の向こうのジョン・マウス、リル・B、マリア・ミネルヴァ......こうした若い21世紀のUSインディ・ミュージック世代は、もうひとつの性の解放に向かっているようにさえ思える。日本においても決して少なくないであろうゲイがこの若く勇敢な動きに刺激されないはずがない。
 世のなかにはいろんな絶望がある。放射能汚染、貧困、病気......あるいは性の問題。もっとも彼の音楽は美しい男たちのためだけにあるのではない。より普遍性を帯びたエモーショナルな歌として我々の心にも進入する。これはルー・リードの"ウォーク・オン・ザ・ワイルドサイド"の系譜上に生まれた魂が揺さぶられるアルバムだ。「本当のぼくを知ったなら/二度とベイビーなんて呼んでくれないだろうね」とはじまる"フッド"は、このような言葉で結ばれる。「ぼくは闘うよベイビー/きみに間違いを起こさないように」

文:野田 努


Perfume Genius
Learning
Matador

AmazoniTunes

12