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Arca (DJ set)

Arca (DJ set)

@恵比寿LIQUIDROOM

May 16, 2014

斎藤辰也   May 26,2014 UP

 「DJ set」というクレジットに不安をおぼえたひともいたかもしれないが、しかし、アルカのそれはまるでライヴだ。プレイ・スタイルは言葉どおり、まさにトータル・フリーダム。彼の進化系ないしは変異体。さながら魔術のようなCDJさばきからはトータル・フリーダムの影響力をまざまざと感じる(じっさい友だちだとのこと)。〈フェイド・2・マインド〉的なヒップホップ/R&Bのミックス感覚でもって音響的悪戯を極めたステージ。出世作のタイトル『&&&&&』はハッタリじゃない。ヴォーグに、ハウスに、アンビエントに、リック・ロスに、R&Bヴォーカルに、スムース・ジャズっぽいトランペットに、…メタル? たしかにミックスは(Tくんがジョージ・マイケルとデフトーンズの曲だったと証言するとおり)カオスそのものだが、一貫してダンス・ビートは崩されない。サウンドの根底には、エレクトロニカやグリッチ、そしてヒップホップがあるようだ(彼がもともとヌーロ/Nuuro名義でエレクトロニカ/エレクトロポップを作っていたこと、『&&&&&』にスヌープ・ドッグが鮮やかに挿入されていたのを思い出してほしい)。

 『&&&&&』からは想像するのがむずかしいほど、リスニングの姿勢で来たら面食らってしまうほど、アルカことアレックスのDJはハードなダンスを志向する。フロアを沸かしにかかる。が、沸きあがる直前でつぎつぎと曲を変えていく。エフェクトの使い方もすさまじく、ピッチもBPMも彼の思うがままに操作され、サウンドはぐにょんぐにょんに引き伸ばされ、ゆがみ、ぶっ飛んで、沈んでいく。DJというより、『&&&&&』のダンス・ヴァージョンをその場で作っていたような感覚だ。かつてのヌーロ名義のクリアなイメージとはほど遠く、ダーティでノーティ。ダークでエレガンス。エクスペリメンタルでありエクスペリエンス。脳は揺れ、身体が音楽をキャッチする。いったい何が彼を変えたのだろうか? 1時間半、彼の集中力と陶酔は最後まで崩れなかった。
 また、アルカとともに怪奇的な映像プロジェクト『トラウマ』を制作しているジェシー・カンダもロンドンから会場にかけつけており(VJはしていなかったようだ)、流暢な日本語でファンと話していた。
 『&&&&&』のヴァイナル化を経て、今年はアルカのアルバム・リリースが期待されている。これはかなり期待していい。再来日公演があれば、絶対に見逃さないでほしい。

 この夜は他の出演者も印象的だった。ゴルジェを牽引しつつ最新EPで「終了」を宣言したハナリ(hanali)も忘れられない。タムを激しく乱打しながら思いっきりダンスのモードで挑んでいて(本人いわく途中からはノープランだったらしい)、これまででいちばんの熱いライヴだった。マッドエッグ(Madegg)も、途中ナイト・スラッグス的グライムの趣味をのぞかせつつ、文句なしのカッコよさ。物販で買ったEP「4」も、疲れた身体にしみるクールな作品だ。

 もしかすると今年いちばんの夜だったのかもしれない。このイヴェントに立ち会えて幸福だった。また、〈モダン・ラヴ〉のショーケースでも感じたのだが、オーディエンスに若くクールな女性が多かったことも印象的だった。リカックスを筆頭に。

 今月24日の深夜にはJ・クッシュとトータル・フリーダムのDJが体験できた。(http://www.tokyoprom.com/2014/05/prom-nite-4.html)。#最高の夏がきた。

斎藤辰也