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METAMORPHOSE ’23

METAMORPHOSE ’23

@静岡県御殿場市・遊RUNパーク玉穂

2023年10月14日(土)・15日(日)

小林拓音 Oct 20,2023 UP

 伝説のオールナイト野外パーティ。レイヴ・カルチャーの流れをくむ音楽フェス。ギャラクシー2ギャラクシーを筆頭に、これまで数々の名演が残されてきたという、個人的には一度も参加することのかなわなかったメタモルフォーゼが、11年ぶりの復活を果たした。
 静岡県御殿場市の遊RUNパーク玉穂に到着したのは20時半過ぎころ。すでに終了した SOLAR STAGE の入口で受付をすませ、来た道を引き返す。けして都市部では味わえない、自然の闇。

夜の部 LUNAR STAGE の入り口。

 しばらく歩くと、ポール棒がピラミッド型に組まれミラーボールがぶらさがっている。この小粋なゲートをくぐると右手に平地が広がり、先に大きな建造物が見える。雰囲気から推すに、たぶんもとは厩舎だろう。ここが夜の部、LUNAR STAGE の会場だ。なかをのぞくとダブリン出身ベルリン拠点のDJ/プロデューサー、マノ・レ・タフがプレイしている。バキッとしたテクノやダブっぽい曲がつぎつぎと繰りだされている。

外から見た LUNAR STAGE。漏れてくる照明に気持ちが高まる。

 ある程度堪能したのち、ビールをもとめて屋外へ。バーは高台に位置している。厩舎もとい LUNAR STAGE は片側の壁がとり払われているため、上から見下ろすかたちでなかの様子を楽しむことができる。この眺めがまたかなりいい感じなのだ。

バーへといたる坂道。中央奥がステージの建物。右端のラーメン屋に長い列ができている。

 22時前ころになると、ぽつぽつと雨が降りはじめる。ちょうどティミー・レジスフォードの出番ということもあり、坂をくだって屋内に避難。80年代から活動をつづけ、長らくNYのハウス・シーンを牽引してきたシェルターの設立者、今年3度目の来日となるレジスフォードによるアップリフティングなセットは、ざあざあ降りに突入した雨とは裏腹に、この日のピークのはじまりを告げていた。最前列には肩車をして盛り上がるオーディエンスの姿。

 つづいてステージに立ったのはカール・クレイグ。前日は札幌のプレシャス・ホールに出演していたらしい。キャップにタオル、黒いTシャツに赤いストールをまとっている。ダークな雰囲気でDJがスタート。曲をかけつつ、その場でドラム・マシンを叩いて重ねていくスタイルだ。序盤、ムーディマンの “I Can't Kick This Feelin When It Hits” が耳に飛びこんできて、一気にテンションが上がる(なんらかのリミックス・ヴァージョンか、あるいはほかの曲とかけあわせられている)。ソウルフルな曲やダビーなテック・ハウスなどを経て、中盤にはアン・サンダーソンのヴォーカルをフィーチャーしたオクタヴ・ワンのヒット曲 “Black Water” を投下。いちばん昂奮したのは終盤手前、クレイグ自身のヒット曲、ペイパークリップ・ピープル “Throw” が鳴り響いたときだ。あの強烈なドラム・パートにセクシーな男性ヴォーカルがかぶせられている。個人的には、この1時間半が LUNAR STAGE のハイライトだった。

最高にかっこよかったカール・クレイグ。

 むろん、出演者はみな歴史をつくってきた大ヴェテランたち。以降もすばらしい夜が継続していく。1時からはNYのジョー・クラウゼル。頻繁にミュートを駆使するプレイが印象に残る。2時半になるとダレン・エマーソンが登場、会場はぱきっとした音に包まれる。卓の後ろで応援するカール・クレイグ。最後はまさかの “Born Slippy” を投下。あのエコーを爆音で体験できたのは僥倖だった。そのままシームレスに主催者 MAYURI のDJへと移行、ハード寄りのテクノが厩舎を埋めつくす。気がつけば終演の5時。降りしきる雨のなか、大満足の一夜が終わりを迎えた。

 さすがに踊り疲れていたのだろう。前日もクラブに行っていたのが影響したのかもしれない。あくまで仮眠のつもりがぶっ倒れてしまい、気がついたときには午後になっていた。雨はやんでいる。慌てて再度遊RUNパーク玉穂を目指す。ぼくが到着したタイミングでは曇っていたので富士山は見られなかったけれど、芝生と林のバランスが絶妙な広場で、なんとも開放感のある空間だ。後方にはフットボールを楽しんでいる親子の姿。びしょびしょの地面が昨夜の昂奮を思い出させる。

昼の部 SOLAR STAGE で舞台の反対側を眺める。まったり楽しむ家族たちの姿。

 2日目の SOLAR STAGE では新進ロック・バンド、羊文学が演奏していた。宙へと抜けていくギターの残響が心地いい。つづいて登場したのはハイエイタス・カイヨーテのネイ・パーム。ブルージィな弾き語りで、ジミ・ヘンドリックスやプリンスのカヴァーも披露。ふだんそれほど入念にチェックしているとはいえないアーティストと出会えるのはフェスの醍醐味だ。それに、羊文学のような若手かつエレクトロニック・ミュージックの領域外で活動するアクトをブッキングすることは、世代の超越や趣味の横断の点で大いに意義のあることだと思う。

いま人気絶頂の若手バンド、羊文学。エフェクターの効果が開けた空間とみごとにマッチ。

 トリはジェラルド・ミッチェル率いるロス・ヘルマノス。ラテン・ミュージックを咀嚼し、独自のロマンティシズムを打ち立てたデトロイトのテクノ・バンドだ。ファースト・アルバム同様 “Welcome To Los Hermanos”、“The Very Existence”、“In Deeper Presence” の3曲ではじまる流れに、涙をこらえることが難しくなる。中盤の “Queztal” でサレンダーすることを決意。彼らの音楽はもちろんのこと、野外という状況がまたハマりすぎていてとにかく最高だった。最後は “Jaguar” で〆。かくして11年ぶりに開催されたメタモルフォーゼは、盛大な拍手喝采とともに幕を下ろした。

感涙のロス・ヘルマノス。

 後ろ髪を引かれながら、御殿場市をあとにする。晴れていればより一層すばらしい体験ができたのだろうけれど、天に文句をいってもしかたがない。キュレーションも会場もばっちりツボを押さえている。来年以降もまた開催されることをせつに願う。

べらぼうにうまかった焼き鳥屋。また食べたい。

小林拓音

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