Home > Reviews > Sound Patrol > Leftfield Groove 3- 逸脱するグルーヴ5選(3)
クラブに遊びにいき、大音量で延々と紡がれるグルーヴに身を任せていると、時間感覚が麻痺することがある。酩酊と陶酔が増してくる深い時間帯に特有の状態だ。ただ音楽に没頭していると、自分の意志で体を動かしているのかどうかさえ曖昧になり、意識と体が蛇行運転しているかのような気分になる。
ずっと聴き続けていられるループとでも呼べそうな、展開の少ないミニマルなトラックをそうした酩酊状態で聴くと、暗がりのダンスフロアに轟く反復グルーヴの中に意識が深く浸透していき、数十秒を数分間のように感じることがあるのだ。
そんなとき、トラックに起こるちょっとした展開が劇的な音楽体験をもたらすことがある。特に派手な展開は必要ない。モノトーンなビートに切れのいいハイハットやクラップが加えられるだけで、黙々と揺れ動く人々で埋め尽くされたフロアから絶叫が上がる、そんな光景を目にしてきた人は少なくないはずだ。そこで今回は前回までの流れをくんだうえで、深い時間に聴くと映えそうな陶酔性溢れる個性的なグルーヴの5曲をピックアップした。
うねる低音、大きく間を取ったキック、そして、少し歪んだスネアとハイハットからなる殺伐としたイントロ部を経て、不穏なパッドがじわじわと空間を侵食していくワルい1曲。カウベルの挿入と同時にキックのシーケンスが変化する2分30秒あたりの展開がたまらない。
スザー(Szare)のトラックを音数少なくアレンジしたようなミニマルな1曲。虫の音のように細やかに揺れ動く電子音が輪郭のハッキリとした金属音へ移行していく様子に意識が引きつけられる。シンコペートするビートが厚みを増していく後半部も深い時間に合う。
中盤に薄っすらとしたパッドを使ったブレイクがあるが、えぐるようなキックとベースで組まれたUKガラージ風ビートは使い勝手がいい。16分刻みのハイハットが音場を縦にも横にも動き回るので、大きな展開がなくても飽きがこない。
これまでに“テイク・ザ・プランジ”など素晴らしい変化球の数々を編み出してきたア・メイド・アップ・サウンドがまたしてもやってくれました。1拍目のキックと最深部に激震する低域を軸にパーカッションフレーズが抜き差しされる中、パッドが全体を包み込んでいくドリーミーなトラック。
ひび割れたシンセのゆるやかな起伏とざらついたドラムマシンによるファンクネスが絡み合うことで生まれる静かな熱狂と退廃的なムード。ハマりにハマりまくったパーティーの終盤ではこんなトラックも映えそうだ。
文:Yusaku Shigeyasu