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JUZU a.k.a. MOOCHY

Mar 07,2012 UP

DJ file (3)

JUZU a.k.a. MOOCHY

取材:野田 努

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JUZU a.k.a. MOOCHY
JUZU presents Movements "Beyond"

E王 crosspoint

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 渋谷の東急本店の近くの路地にあるビルの2階だった。50人も入ればいっぱいの小さな手作りのクラブには100人ほど入って、1990年代後半のある時期、リズム・フリークスは東京のクラブ・シーンにおける噂の頂点となった。3人のDJのなかでもっとも背が高く、そしてもっとも若いひとりのDJはとくに多くの目と耳を惹きつけた。それがMOOCHYだった。あのミキシング、我々は......あるいは小林は、忘れられないほど熱狂した。やがて夜空が白み、センター街にカラスたちが集まってくる時間帯になると、リズム・フリークスの爆音もおさまって、MOOCHYはいつも大型バイクのエンジンを吹かしながら、「じゃ、おつかれっす」と言って、街のどこかに消えるのだった。
 そして彼はバイクを飛ばしたままジャングルのシーンから飛び出て、インドネシア、ブラジル、キューバ、沖縄や青森......といった場所との新たな関係性を築いていった。すべての文化に対してオープンでいようとするワールド・ミュージックというコンセプトを彼なりのやり方で実践するため、MOOCHYはさまざまな人種や宗教との出会いを果たしながら、彼の音楽活動を展開している。彼は「失われた記憶を取り戻す」をテーマに2年前にアルバム『Movements』を発表しているが、これは我々の遠い祖先たちの音への旅行であり、彼のこの10年の活動のひとつの結実だ。誰にもっとも近いのかと訊かれれば僕はセオ・パリッシュじゃないかと思う。セオがサン・ラーやファラオ・サンダースらにアプローチするような手法で、MOOCHYは彼の全世界的なヴィジョンに向かっているように思える。
 もっとも昨年リリースされたDVD、『Beyond』は『Movements』の映像版というよりも、彼のユートピア志向のまさにその"裏"、大いに問題提起をはらんだものとなっている。MOOCHYを知る人間が観たら「よくまあ、こんなものを作った」とびっくりするだろう。イスラムの人、ホピ族の人、六ヶ所村の人、辺野古の人、彼はいろんな人の話を収録して、自らの音楽に取り入れた。これはひとりのDJがジャーナリスティックな意識で、自主的に作った異議申し立てである。
 今回は、MOOCHYの歴史を振り返りつつ、『Beyond』について話してもらった。たっぷりと......。

音楽が無かったらもっと酷かったと思う。微力かもしれないけど、音楽があったから俺は社会的な意識を持てたし。音楽がなかったら...。音楽がなかったら、ホントにみんなロボットみたいになってしまうと思う。

■よろしくお願いします。

JUZU:お願いします。

■......で(笑)、何でこんなとんでもないDVD、作ったんですか? しかも自主制作で。

JUZU:もともとはPVを作るのが目的だったんです。最初に作ったPVは"R.O.K."という、リノ君(RINO LATINA II)が出てくるトラックですよ。彼は、僕が昔やってた「リズム・フリークス」のカジ君(KAJI PEACE)と17歳くらいのときのダンサー友だちで。そういう繋がりでリノ君を紹介されて。
 僕がキューバに行く前か、行った後かで、リノ君もキューバにライヴしに行ってるんです(『キューバ・ヒップホップ・フェスティヴァル・シンポジウム』/2008年8月)。そういうところでの繋がりもあってね。あるとき、カジ君のDJでリノ君が落語みたいなラップをやってて。それでオモロいなと。で、リノ君に「じゃぁ、オレにもなんか演らせてよ」みたいな感じで言われて。僕の地元の高円寺とか、中野、新宿とかって、そういうお祭りの粋なノリじで、落語みたいなラップを使ったトラックでなんかやりたいって思ってて。

■そうだったんだ。

JUZU:それで「武器売買と売春」っていうのをテーマにしようってリノ君に伝えて。

■へぇ。

JUZU:どっちが売り手買い手? みたいなことを、そういうトンチみたいにして。でも、「踊る阿呆に見る阿呆も同じ阿呆なら踊らにゃ損損」みたいなオチをつけるみたいな。とにかく、もともとは映像コラージュと音楽というテーマですね。

■とにかく、もともとの企画はPV集だったんだね。

JUZU:『Movements』(『Re:Momentos "Movements"』/2010年)っていうアルバムを2年前に自分のレーベル〈crosspointから出して。『Beyond』っていうのはその「裏」って言う意味ですね。『Movements』というアルバムの曲を収録している。

■あぁ、なるほど。

JUZU:『Movements』というCDではできなかった映像を足すことによって、僕が思ってることをもっと伝えられると思ったんです。沖縄のこともホント......中学生の頃、それこそタサカ(DJ Tasaka)も一緒だったけど(笑)、修学旅行でひめゆりの塔に行ってるんです。それで沖縄戦とか、歴史が刻み込まれてて。沖縄にはその後いっぱい友だちができて。いまとなっては居住者もすごく多いし、前から沖縄の基地問題には関心があった。基地問題に関するそのインタヴューもここに収めてるけど。それも"Koza"っていう曲で、(楽曲に参加している)ラス・ツイード(Ras Tweed)っていう人とは、ウィーンにDJに行ったときにたまたま知り合って。彼も沖縄のことを知ってて。空手とか好きで(笑)

■へぇぇ、ウィーンで。

JUZU:はい。ウィーンで録音して。ちなみにミックスはステレオタイプ(Stereo:Type)という、なんか変なバイレ・ファンキみたいの作ってる白人のスケーター。

■あぁ、いたね。

JUZU:そうそう。そいつらとなんか偶然というか、出会って。ラス・ツイードとも、彼はカリブ系でイギリス人だけど、沖縄の基地のことも知ってていた。ジャマイカなんかもそうだし。そういう、植民地化されてる島のことをちゃんと歌いたいって言ったら、すごく意気投合して。その場で歌詞作って、歌ってくれたのが"Koza"。あとは、沖縄の基地に何回か自分で足を運んで、いろいろ撮ったインタヴューとか。

■あの、よくインタヴューしたなとホント思うんですけどね。

JUZU:そうですね......。

■もともとはMOOCHYの、ま、言ってしまえば、全世界的なっていうか、マルチ・カルチュラルなヴィジョンがあるじゃない? この10年、音楽的に追求したことってそうでしょう? その延長線上に(『Beyond』の)コンセプトははじまってるって考えていいんだよね。その上でできたのがこのDVDで、MOOCHYが発表した曲に、セネガル、モロッコ、アリゾナのホピ族、辺野古、......とか、いろいろな場面やその現地の人たちの話が出てくる。で、作品ではひとり案内役を務める人がいるじゃない。スケーター?

JUZU:あぁぁ、アレはクロマニヨン(cro-magnon)の剛(小菅剛)ですね、はい。彼も彼でいろんなことあるけど。彼自体は顔とかすごい趣があるなと僕は思っていて。この男は俳優でも絶対イケるぐらいに思ってて。

■それで主役(笑)。

JUZU:そうです。(主役に)指名して。"Silence Mind"って曲は、もともと僕の後輩のイケガミケンジ(Kenji Ikegami)ってヤツが虚無僧尺八やってて。彼のソロ・アルバム(『SILENCE MIND』)も僕のレーベルから出してて。そのPVを作る過程のなかで、僕がリミックスもして。そのテーマっていうのが、あれ(PVのロケ地)って高円寺なんですけど。

■あれ、高円寺か。

JUZU:僕が10代のときに、台風かなんかでムチャクチャ土砂降りで、みんなで逃げ惑ってキャーキャー言ってる状況で、高円寺の駅前で本物の虚無僧が、ただひたすらつっ立ってたんですね。そういう鮮烈なインパクトがあって。この人だけはいまの時代とぜんぜん違うっていうか。

■たしかに(笑)。

JUZU:いまの僕らがコンクリの上で住んでる世界は、300年前は違ったじゃないですか? そういう感覚を喚起するんです。あの"Silence Mind"って曲はやっぱり、ラティール(・シー/Latyr Sy)とかウスマン(Ousmane)とか、僕のセネガルの友だちに高円寺でパーカション叩いてもらったり、彼には虚無僧の格好で尺八吹いてもらったんで。その尺八にしてもジャンベにしても、僕らの記憶っていうか、いまの時代とは違う時代から存在する楽器を演奏することで、いまのコントロールされた世界に対してのアンチテーゼ。

■MOOCHYの求めているものって、言ってしまえば、あれだよね、ユニバーサルな感覚っていうようなモノだよね。

JUZU:うん、まぁ、どこにでもある。

■......語弊はあるかもしれないけど、すべては繋がっているって言うよな。そう、それでさ、セネガルのこととか。

JUZU:はい、ゴレ島。

■......が出てきたり。ホピ族が出てきて。六ヶ所村が出てきて、コザが出てきて、最後はモロッコで。

JUZU:カサブランカですね。

■いろんな文化に対するアプローチ、というか、オープンな気持ちだよね、すべての文化に対するオープンな態度。だから、最初はこのDVDは反原発とか、3.11とか、そうした時事ネタのものかと思っていたんだけど、違ったね(笑)。DVDのなかではイスラム教と中東での宗教問題なんかの話もかなり占めているよね。で、沖縄の基地問題も六カ所村もイスラム教も、いろんな人に取材して語らせて、そしてMOOCHY自身は自分の言葉を抑えているんだよね。これはもう、観る人と一緒に考えたいって話なわけでしょ?

JUZU:うん、まぁ、そうですね。

■すべての宗教、すべての文化も受け入れるっていうようなことなわけでしょう、究極的に言えば。

JUZU:まぁ、そうかもしれない。

■そういうアプローチがMOOCHYのなかでどうやって養われていったのかっていうかさ。それが反抗心にも結びついてると思うんだけど。最初はハードコアのバンド? ジャングルのDJ?

JUZU:並行しながらやってましたね。

取材:野田 努