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IORI

Jul 10,2012 UP

DJ file(5)

IORI

取材:小野田雄

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晴れてる日は外へ遊びに行きたくなって曲作りはできないんですよね。だから、雨や曇りの日なんかにこういうトラックのムードを自分のなかで作り出して、そこに没入しながら作ることが多かったですし、最初のコンセプトとして、作る音楽にあまり沖縄的なものを入れたくないとも思っていました。

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■なるほど。世界がつながるロフト・コネクションがあるんですね。ちなみにIORIくんが音楽制作をはじめたのはいつからなんですか?

IORI:実は遅くて、本格的にやりはじめたのはここ3年くらいですよ。それ以前、20歳くらいの頃にMPC2000とシンセを買って、MPCで作ったビートにシンセを被せたチープなハウス・トラックを作ってみたこともあるんですけど、機材の使い方が難しくて、のめり込めなかったんですね。で、2008年にAbleton Liveっていうソフトを買って、そこからようやくですね。

■でも、最初のシングル「ギャラクシーEP」がリリースされたのが2009年ですよね。作りはじめて1年くらいで作品リリース。しかもレーベルは、イギリスのレコード・ショップ、フォニカ主宰の〈フォニカ・ホワイト〉からっていうのも、これまたびっくりするような話ですよね。

IORI:そうなんですよ。音楽を作りはじめて、「これいいんじゃないか」って初めて思った曲をマイスペースにアップしたら、フォニカのスタッフがそれを聴いてくれてリリースにいたったという。で、その後の(ドイツのレーベル)〈プロローグ〉からのリリースもマイスペースがきっかけなんです。〈プロローグ〉もフォニカが出したいと言ってくれた曲をいいって言ってくれたんですけど、「もうフォニカからのリリースが決まってる」って答えたら、「じゃあ、デモ送って」って。

■5月にリリースされたIORIくんのファースト・アルバム『ネクサス』に収録されている"ギャラクシー"の完成度の高さを思えば、そのエピソードも納得できるんですが、まさかマイスペースがきっかけとは驚きました。でも、お話をうかがってきたように、IORIくんのルーツはハウスやディスコ、ロフトだったりするはずなのに、その後のシングルやそれらトラックを収録した『ネクサス』を聴くと、テクノだったり、ドローン、アンビエントだったりするところが頭のなかでぱっとは結びつかないんですが。

IORI:でも、実はそういう音楽も昔から聴いていたんですよ。例えば、ベーシック・チャンネルだったり、アンビエントやマニエル・ゲッチングみたいなものまで、そういう陶酔して聴ける音楽も昔から大好きでしたし、ちょうど、"ギャラクシー"を作りはじめる前の2008年くらいから、テクノっておもしろいなって思うようになって、ベルグハインの存在を知ったのもその時期だし、自分が好きで買ってたレコードをチャートに挙げていたNOBUさんに気持ちが近づいていったのも全部同じ時期なんですよね。そして、「ギャラクシー」ってパーティにしてもいままでのソウルフルな部分ではなく、ストイックなテクノを主体とした内容を考えてはじめましたし、制作する音楽も自然とそういうものになっていって。

■NOBUくんと実際に会ったのは?

IORI:沖縄のビー・グリーという箱と光さんがNOBUさんを招いてパーティをしたときなので、2年くらい前ですね。それ以前にも違う人が呼んで沖縄に来てるんですけど、その時のNOBUさんはまったく違うスタイルでディスコとかかけていたし、面識もなかったんですけど、2年前にいっしょにDJをやったり、話したりして意気投合して、去年、千葉のフューチャー・テラーにも呼んでもらったんですけど、フューチャー・テラーは......最高でしたね(笑)。うん、ひとつの遊びとして、ホントおもしろかった。僕はつねにおもしろい方向に向かっていきたいですから、自分のなかにはぜんぜん壁がないし、そういう壁を取っ払っていくのが僕たちの役目の一部でもあると思うので、そこは意識もしつつ、自然にやっていることだったりもしつつ。

■そして、この3年でリリースしたのが17曲のオリジナルと2曲のリミックス。非常にハイペースで音楽制作に取り組まれていて、『ネクサス』はそのうちの7曲とオリジナル3曲をまとめた作品集になっています。

IORI:音楽制作は正解がない世界なので、いまも模索中というか、道のりは深いというか長いというか。そのなかでもがきながら作ったものを発表している感じですね。

■沖縄という土地が音楽制作に与えている影響はご自分でどう思われます?

IORI:沖縄での音楽制作はいちばんフラットな気持ちで向かうことができるのかなって。それから沖縄での遊びは都会のそれとは全然違うので、ハングリーな気持ちも生まれるんだと思いますし、同時に沖縄ならではのレイドバック感もあるし。

■これは個人の短絡的な意見ですけど、開放的な沖縄の環境を考えると、IORIくんのストイックでディープなトラックは異質なもののように感じるんですね。

IORI:それ、よく言われます(笑)。さすがに晴れてる日は外へ遊びに行きたくなって曲作りはできないんですよね。だから、雨や曇りの日なんかにこういうトラックのムードを自分のなかで作り出して、そこに没入しながら作ることが多かったですし、最初のコンセプトとして、作る音楽にあまり沖縄的なものを入れたくないとも思っていました。でも、そうかと思えば、まだ発表してない曲のなかにゆるいものもたくさんありますし、太陽があう曲もあったりして。

■それは聴いてみたいですね。

IORI:じつは、この『ネクサス』の沖縄っぽくないジャケット写真には秘密があって、これは曇りの日にモノクロで木の表面を表と裏から撮ったものなんですけど、その木というのはCDのトレイ下にレイアウトしてあるヤシの木なんですよ。音楽それ自体には沖縄っぽさを入れなくないとは思っていたんですけど、このアルバムは南からの一発っていうことでもあるので、こういうアート・ワークにしたんです。でも、実は今年、沖縄を出て、ベルリンに行こうと思っているんです。これまで作品をリリースしてきたのも全部ヨーロッパのレーベルですし、ここから先のさらなる挑戦をベルリンの地でしてみたいなって。

■最後に余談になりますけど、IORIって名前はぱっと見て、性別がわからないじゃないですか。ディープフリークエンシーでIORIくんのことを知った自分は、「もしかすると、IORIっていうのは、イギリス人が使ってる日本語の名前なのかな」って思ったんですよ。で、そういえば、IORIって漢字で書くと「家」とか「小屋」を意味する「庵」じゃないですか。だから、もしかすると、これ、「ハウス」って意味なのかなとへんに深読みしてみたりして(笑)。

IORI:ははは。それは完全な深読みでしたね。あ、でも、あるとき、デヴィッドと話してて、「漢字って意味があるんだろ? お前の名前はどういう意味なんだ? 」って訊かれて、「ハウスだよ」って答えて、その場が盛り上がったなんてこともありましたね。僕の漢字は「伊織」なんですが(笑)。

取材:小野田雄