ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Meitei 海外で評判の新進電子音楽家、日本文化を語る (interviews)
  2. interview with Oneohtrix Point Never(Daniel Lopatin) OPNはいかにして生まれたのか (interviews)
  3. Wool & The Pants ──ウール&ザ・パンツのNTSラジオでのミックスショーが格好いいので共有させてください (news)
  4. Oliver Coates - Skins n Slime (review)
  5. Richard Spaven & Sandunes - Spaven x Sandunes (review)
  6. Planet Mu's 25th anniversary ──プラネット・ミュー、25周年おめでとうございます (news)
  7. Bill Callahan - Gold Record (review)
  8. Bruce Springsteen ──ブルース・スプリングスティーンが急遽新作をリリース、発売日は大統領選直前 (news)
  9. さよひめぼう ──ネットを拠点に活動、ヴェイパーウェイヴ系のレーベルからも作品を発表しているトラックメイカーが新作をリリース (news)
  10. R.I.P. 加部正義 (news)
  11. Autechre - Sign (review)
  12. BIM - Boston Bag (review)
  13. Young Girl - The Night Mayor / V.A. - A Little Night Music:Aural Apparitions from the Geographic North (review)
  14. interview with Wool & The Pants 東京の底から (interviews)
  15. 11月7日、川崎の工業地帯での野外パーティ、Bonna Potあり (news)
  16. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  17. interview with Saito テクノ夫婦 (interviews)
  18. New Order ──ニュー・オーダー来日公演は2022年の1月に決定 (news)
  19. Wool & The Pants - Wool In The Pool (review)
  20. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Jeff Mills- Sleeper Wakes

Jeff Mills

Jeff Mills

Sleeper Wakes

Axis/Third Ear

Amazon iTunes

三田 格   Nov 11,2009 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 かつてテクノもブルーズも近づいてよく聴いてみようという気にならなければ全部同じに聞こえるというようなことを書いたことがあるけれど、そう思って聴いても聞き分けが難しくなっているのがこのテクノ・ウイザードだろう(二重のジョークですよ......というようなイクスキューズを書かざるを得ないのがネットという感じ)。

 3年振り、ソロ18作目(?)。この数年、ミルズは宇宙に取り付かれているようで、『コンタクト・スペシャル』(05)で知的生命体によって拉致された彼は『ワン・マン・スペースシップ』(06)では宇宙で感じる孤独に焦点をあて、さらにここでは地球を離れてから発見したことを音楽によってリポートするという設定に進んでいる。音楽的にはいつもながらの流麗なサウンド・スタイルに加えて、M3"ラジウム・ストーム"、M5"バーン・オフ~"などダンス・ビートから離れた曲も多く、M9"フロム・ビヨンド・ザ・スターズ"ではストリングスとの響き合いが絶妙の情感に達している。快楽的でありながら、それに対する懐疑を同時に拮抗させる作風や全体にSF的な音楽センスは元からのもので、かつてよりも洗練されてリプロゼイションされているという以外、とくにいうことはない。あるいは、アフロ系アメリカンの音楽家が宇宙にアイデンティファイしようとする傾向はP-ファンクやアフリカ・バンバータなど数限りなくあり、人種差別がなくならないアメリカでは国民国家時代の必要な置き換えでもあっただろうが、そこには常にコミュニティや適度な集団性が単位としては認識されていた。ミルズは、しかし、あくまでも個人単位で長い作業=観念操作を続けてきたあげく、ここへ来て60年代のサイケデリック革命に見られたような「スリーパーが目を覚ます」というユング的な観念へと歩を進め、いやな予感が立ち上がる(笑)。彼は何度も自分は「呼びかけ」てきたというようなことを話していて、誰ともつながらなかった結果が宇宙への旅立ちだったのかもしれないけれど、そういう意味では愚直に同じことが繰り返されているに過ぎないのかもしれない。いずれにしろ黒人社会の崩壊やヒップホップには逃げ込めないアフロ系が感じていることという意味では非常にリアルな表現ではないだろうか。そうとも思わなければ彼が矢継ぎ早にリリースを続けるモティヴェイションからして理解できないというか。そういえばサン・ラも山のように出していましたよね。

三田 格