ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. マヒトゥ・ザ・ピーポー初監督作『i ai』が3/8より公開
  2. Columns 攻めの姿勢を見せるスクエアプッシャー ──4年ぶりの新作『Dostrotime』を聴いて | Squarepusher
  3. Jeff Mills × Jun Togawa ──ジェフ・ミルズと戸川純によるコラボ曲がリリース
  4. Lost Souls Of Saturn - Reality | ロスト・ソウルズ・オブ・サターン
  5. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  6. Squarepusher ──スクエアプッシャー4年ぶりの新作はストリーミングでは聴くことができない
  7. interview with Kode9 〈ハイパーダブ〉20周年 | 主宰者コード9が語る、レーベルのこれまでとこれから
  8. 川口好美 - 『不幸と共存 魂的文芸批評 対抗言論叢書4』
  9. Cowboy Sadness - Selected Jambient Works Vol. 1 | カウボーイ・サッドネス
  10. Bonobo presents OUTLIER ──ダウンテンポの達人、ボノボがキュレートするイベントにソフィア・コルテシス、真鍋大度、食品まつりが出演
  11. Kali Malone - All Life Long
  12. Columns ♯3:ピッチフォーク買収騒ぎについて
  13. interview with Squarepusher スクエアプッシャー、原点を語る
  14. Jeff Mills ——ジェフ・ミルズと戸川純が共演、コズミック・オペラ『THE TRIP』公演決定
  15. レコード蒐集家訪問記 第⼀回 ピンク・フロイド『夜明けの⼝笛吹き』を60枚以上持つ漢
  16. Helado Negro - PHASOR | エラード・ネグロ
  17. interview with Loraine James 路上と夢想を往復する、「穏やかな対決」という名のアルバム  | ロレイン・ジェイムス、インタヴュー
  18. R.I.P. Damo Suzuki 追悼:ダモ鈴木
  19. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2024
  20. R.I.P. Wayne Kramer(1948 - 2024) 追悼:ウェイン・クレイマー

Home >  Reviews >  Album Reviews > Jeff Mills- The Messenger

Jeff Mills

Jeff Mills

The Messenger

Axis

Amazon

野田 努   Mar 13,2012 UP

 本作はサイエンス・フィクションである。CDにはブックレットがあり、ジェフ・ミルズ自身による物語が記されている。以下、その要約。

 彼(スリーパー)は月へと到着する。彼は月で生命体=ムーンナイトと出会う。スリーパーは彼らの活動空間を案内される。ムーンナイトの説明によれば、彼らは地球の番人で、スリーパーのそれまでの人生は偶然ではなく、ムーンナイトが仕組んだ計画的なもので、スリーパーの脳は自分を経験をムーンナイトに報告するために設計されているという。しかも、ムーンナイトによれば、人間とは宇宙に存在するほかの生命体のために開発された製品(プロダクト)である。地球はその人間を養殖する施設だ。
 そして、宇宙においてもっとも求められている商品が「人間の夢」だった。ムーンナイトとは開発者であり農夫であり、月は司令塔だ。人間が目撃するUFOは監視船だった。気象変化は、人間のさまざまな成長パターンを計測するための操作されている。夢(ないしは悪夢など)といった商品は、ますます需要を増した。
 しかし、どんな流行も廃れるときが来るように、「人間の夢」も時代遅れとなった。ムーンナイトは新しいプロダクトを思案する。そのリセットのために地球を破壊しなければならない。
 実はこのことを地球の政府は知っていた。長いあいだ彼らとムーンナイトとは関係があった。人類は破壊される前に地球を脱出するため、政府はムーンナイトとの交渉を繰り返す。だが......(時間切れ)。

 レイ・ブラッドベリとフィリップ・K・ディックを足して2で割ったような話である。この物語のそれぞれの場面に曲がある。
 近年のアルバム作品においては、ある種の情景を描写するようなアンビエントを展開することの多かったミルズだが、『ザ・メッセンジャー』ではさらその趣向を強めている。物語に基づいた作品であるから起伏に富んだ展開だが、ダンスよりもムードを優先している。〈アクシス〉ならではの通信機のような音色とシンプルなドラム構成によるリズミックな展開は変わらずで――というか、ここまで来ると自分の芸を絶対に曲げないんだという意地すら感じる――、それでも緊張感の度合いをコントロールしながら、最後まで聴かせてしまうところはさすがという他ない。

 シナリオに関しては、彼のニヒリスティックな視点が反映されていることは言うまでもない。『X-102』をはじめ『コンタクト・スペシャル』、そして"Something In The Sky"シリーズなど、いままでは、どちらかと言えば宇宙ないしは宇宙人に期待を寄せていたミルズだが、『ザ・メッセンジャー』では情け容赦ないディ ストピック・ヴィジョン描いている。なにせ地球はムーンナイトによって破壊され、人類はいなくなるのだ。そう思えば、ほぼ同時期に出たハウラーの『アメリカ・ギヴ・アップ』とは、国家に対するやりきれなさという点ではジャンルおよび年齢ほどは離れていないのかもしれない......SF的な強引さで言えば......(まあ、つまりこれはこじつけである)。

野田 努