ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  2. The Alchemist ──現代USヒップホップのキーパースン、ジ・アルケミストが来日
  3. Helen - Linda's Head | ヘレン
  4. Boy Harsher - GET MEAN | ボーイ・ハーシャー
  5. aya × Violent Magic Orchestra ──初来日を果たす〈Hyperdub〉のアヤと、ブラックメタル・テクノ・プロジェクトVMOによる共同ツアー
  6. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  7. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  8. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  9. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  10. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  11. R.I.P. 鷲巣功
  12. Freddie Gibbs & The Alchemist - Alfredo  | フレディー・ギブズ、ジ・アルケミスト
  13. Gaku Kiishi ──『サイコ』『オーメン』『シャイニング』『リング』から『8番出口』『バックルームズ』まで、ホラー映画の音楽を分析する1冊が刊行
  14. Helen - The Original Faces  | Grouper、グルーパー、ヘレン
  15. interview with aya 口のなかのミミズの意味 | 新作を発表したアヤに話を訊く
  16. The Clash ——ザ・クラッシュ、結成50周年記念ベストがリリース
  17. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  18. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  19. アンビエント/ジャズ マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜
  20. Moodymann - Take Away  | ケニー・ディクソン・ジュニア

Home >  Reviews >  Album Reviews > Janelle Monae- The ArchAndroid (Suites II and I…

Janelle Monae

Janelle Monae

The ArchAndroid (Suites II and III)

Bad Boy/Wonderland/Atlantic

Amazon iTunes

野田 努   Jan 13,2011 UP
E王

 2010年に数多くの賞賛を浴びたアフロ・フューチャリズムの傑作。『ガーディアン』が年間ベストの1位にしたので買ったけれど、大正解だった。どうせ1月のリリースはそれほど多くないし、昨年聴き逃したモノはこうしてこの時期に聴くといいのだ。
 実はジャネール・モナエは、2719年からやって来た逃亡者である。彼女のDNAは、シンディ・メイウェザーなるクローン人間であり自由の戦士に使われている。未来のメトロポリスでは階級闘争が激化している......スリーヴノートにはそんなことが記されている。まさにジョージ・クリントンやサン・ラを思わせる(一見、冗談交じりの)ブラック・サイエンス・フィクションだが、モナエも彼らと同じように真面目だ。「私はコミュニティに対して責任を感じているの」、『ガーディアン』の取材で彼女はそう答えている。「私たちが作る音楽は彼らの心の解放を助けるべきだし、もし彼らが抑圧されていると感じているのなら、いつでも彼らを高揚しなければならない」
 ごみ収集トラックの運転手の父親を持つ、労働者階級出身の25歳の彼女は力強く話している。「もし私たちにメッセージがあるなら、私たちが闘っていることを信じるってことなの。そして私たちはそうするのよ」

 ブロッコリーのような髪型の彼女は、2005年、ビッグ・ボーイ(アウトキャスト)に見出されている。翌年のアウトキャストの『アイドルワイルド』に収録された"コール・ザ・ロウ"と"イン・ユア・ドリームス"ではまだ21歳の彼女の歌が聴ける。2007年にはP・ディディの〈バッド・ボーイ〉からデビュー・ソロ・アルバム『メトロポリス』を発表しているが、ブロッコリーのような髪型をしたアンドロイドとなっているそのアートワークをレコード店で見かけて覚えている方も多いことだろう。そしてそのアートワークがほのめかすように彼女の音楽は雑食性が高い。ちなみに初期のジェームズ・ブラウンを彷彿させるタキシード姿だが、彼女の説明によればあれは労働者階級のスタイルだそうだ。
 セカンド・アルバムとなる『ジ・アークアンドロイド』は、スウィングするロックンロールからフリークアウト・ファンク、甘いソウル、ゴスペルからジャズ、あるいはフォークやバラードまでと、ブロードウェイで鍛えられた経験を持つ若い女性はなんでもやってのける。アルバムの内容は『ガーディアン』が言うように「アンドレ3000がもし少女だったら、あるいはプリンスが1961年のジュディ・ガーランドといっしょに作ったとしたら」という表現がうまく言い当てていると思う。つまり、これは破天荒なミュージカルとも言える。収録された曲すべてが魅力的で、カニエ・ウェストの『マイ・ビューティフル・ダーク・ツィスティッド・ファンタジー』が内面旅行(21世紀の『インナーヴィジョン』?)だとしたら、こちらは外に向かって爆発するダイナマイトである。収録曲すべてにインスピレーションとなった映画、文学、アートについての記述があり(フィリップ・K・ディックからサルヴァドール・ダリ、あるいはボブ・マーリーの笑顔などなど)、アルバムにはソウル・ウィリアムス、ビッグ・ボーイらとともに、知性派インディ・バンドのオブ・モントリオールも参加している。

 彼女の説明によれば、アンドロイドはマイノリティを意味しているそうで、歌詞の多くにはコミュニティへの賛美があるという。もちろん労働者階級のコミュニティについてである......だとしたらこれはファンカデリックとほとんど同じタイプのメッセージに分類できるが、ジャネール・モナエはジョージ・クリントンと違って、SF小説と並んで大量のビジネス書を読んでいる......。


追記 2011.01.14
ジャネーリ・モナエの反同性愛に関しては僕の完全な間違いです。すいません!!!! まったく逆ですね。反・反同性愛者です。ご指摘していただい方、本当にありがとうございました。ファンの皆様、本当にすいませんでした。猛省します。

野田 努