ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Galliano 28年ぶりの新作を発表したガリアーノが語る、アシッド・ジャズ、アンドリュー・ウェザオール、そしてマーク・フィッシャー
  2. Columns Nala Sinephro ナラ・シネフロの奏でるジャズはアンビエントとしての魅力も放っている
  3. DUB入門――ルーツからニューウェイヴ、テクノ、ベース・ミュージックへ
  4. Taeko Tomioka ——詩人、富岡多恵子が坂本龍一を迎え制作した幻の一枚がLPリイシュー
  5. MariMari ——佐藤伸治がプロデュースした女性シンガーの作品がストリーミング配信
  6. Natalie Beridze - Of Which One Knows | ナタリー・ベリツェ
  7. Various - Music For Tourists ~ A passport for alternative Japan
  8. Mansur Brown - NAQI Mixtape | マンスール・ブラウン
  9. Matthew Halsall ──〈Gondwana〉創始者マシュー・ハルソール来日記念、日本独自ベスト・アルバムがリリース
  10. R.I.P. Tadashi Yabe 追悼:矢部直
  11. interview with Toru Hashimoto 30周年を迎えたFree Soulシリーズの「ベスト・オブ・ベスト」 | 橋本徹、インタヴュー
  12. KMRU - Natur
  13. Anna Butterss ──アンビエント・ジャズの流れに加わるベーシスト、アンナ・バターズの新作
  14. interview with Fat Dog このエネルギーは本当に凄まじいものがある | ライヴが評判のニューカマー、ファット・ドッグ
  15. interview with Creation Rebel(Crucial Tony) UKダブ、とっておきの切り札、来日直前インタヴュー | クリエイション・レベル(クルーシャル・トニー)
  16. Takuma Watanabe ──映画『ナミビアの砂漠』のサウンドトラックがリリース、音楽を手がけたのは渡邊琢磨
  17. 『アンビエントへ、レアグルーヴからの回答』
  18. Columns ♯8:松岡正剛さん
  19. interview with Fontaines D.C. (Conor Deegan III) 来日したフォンテインズD.C.のベーシストに話を聞く
  20. Meitei ——冥丁、TOUR〜瑪瑙〜追加公演は京都・岡崎の〈しばし〉にて決定

Home >  Reviews >  Album Reviews > Gang Colours- The Keychain Collection

Gang Colours

Gang Colours

The Keychain Collection

Brownswood Recordings/ビート

Amazon iTunes

野田 努   Feb 23,2012 UP

 疲れているし、アルコールも体内に流れている。真夜中だし、あたりもぐったりとしている。そんなときにギャング・カラーズなんていう名義を初めて聞いたら、おいおい冗談やめてくれよと言うに違いない。その手のいかめしいギャングスタ・ラップは好きじゃないんだ。ところが、いまやロサンジェルスのコンプトン地区からジェームス・フェラーロが大量のカセットとCDRを発信するように、こうした先入観はあてにならない。ギャング・カラーズを名乗る青年は、ボーズ・オブ・カナダとジェームズ・ブレイクが一緒にスタジオに入ったような音楽を展開する。僕はこの人のアルバムを楽しみにしていた。昨年初めて聴いたときから。

 サウサンプトンといえば、赤白のユニフォームで知られるプレミア・リーグの、毎シーズン残留争いをしているようなチームで、最近はJリーグから李忠成という選手が加入したばかりだ。ブリテイン島の南の海岸沿いにあるその町が"ギャング色"を名乗る24歳のウィル・オザンの地元でもある。ちなみに同郷の先輩にはUKガラージ/2ステップのグループ、アートフル・ドジャーがいる。アートフル・ドジャーはUKではそれなりの影響力と人気のあったグループで、その名前はディケンズの小説『オリバーツイスト』に出てくるスリの名人に由来する。
 ウィル・オザンをジャイルス・ピーターソンに紹介したのはゴーストポエトという話だ。彼の音楽にジャズを感じはしないが、そこにはマーキュリー・プライズにノミネートされた知性派ラッパーからUKクラブ・ジャズ界のボスの気を引くに充分な美しさがある。ガラージの影響下にあるダウンテンポ、クラシカルなピアノ、IDMの手法、ウィッチな気配、霞んで、輪郭のぼやけたR&Bヴォーカル......これをコールドトロニカと呼ぶ向きもあるそうだが、敢えてわかりやすく言おう。ジェームズ・ブレイクの"次"に何を聴けばいいのかと訊かれればこれだと答える。デビュー・シングル「In Your Gut Like a Knife」は下北沢のジェットセットでロングセラーとなったが、僕のその流れで一緒に騒いでいたひとりである。

 アートワークにあるように、彼の作品を特徴づけるのはピアノで、それはエリック・サティ風の、もの悲しくも控えめな佇まいを崩さない。ダウンテンポにおける明確な対位法による旋律を活かしながら、ガラージのビート(14歳の頃からビートを作っていたというが、それこそ地元の英雄、アートフル・ドジャーからの影響だ)、ダブの鈍いベースが室内楽の床に響く。期待していた通りというか、驚きはないが失望もなかった。
 ジェームズ・ブレイクの登場は20年前のトリッキーやポーティスヘッドを思わせると、90年代リヴァイヴァルの文脈で捉え直す人もいるように、ダウンテンポというのはウィッチと親和性の高い音楽性で、UKのお家芸のようなところもある。昨日レヴューしたダイアグラムスも元を辿っていけば20年前のトリップ・ホップに行き着く。これがまあ、時代のモード。スクリューな気分少々である。ダブステップ系で今年に入ってわりと繰り返し聴いているのは、いまのところイラレヴェント、そしてこれ。

野田 努

RELATED

Yussef Kamaal- Black Focus Brownswood Recordings/ビート

Reviews Amazon

Sozeira- Tam Tam Tam Reimagined Brownswood Recordings/ビート

Reviews Amazon

Various Artists- Brownswood Bubblers Nine Brownswood Recordings/ビート

Reviews Amazon iTunes

Various ArtistsAdrian Younge - Adrian Younge presents The DelfonicsWax Poetics Records/ビート

Reviews Amazon

Jose James- Blackmagic Brownswood/Beat

Reviews Amazon iTunes