ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Juan Atkins ──デトロイト・テクノの創始者、ホアン・アトキンスが日韓ツアー、来日は13年ぶり
  2. R.I.P. Sensational (Colin Julius Bobb) センセーショナルとの思い出
  3. The Durutti Column - Renascent | ザ・ドゥルッティ・コラム
  4. 自転車日記 - デヴィッド・バーン 著 / 東辻賢治郎 訳
  5. Various - Peace Anthems | レッド・フック・レコーズ
  6. Félicia Atkinson - Sans Visage | フェリシア・アトキンソン
  7. THE CROWD──ele-king presents HIP HOP JAPAN
  8. DMBQ ──恒例の自主企画、2026年はkanekoayano、LAUSBUB、YPY、Hedigan'sと競演
  9. interview with Toru Hashimoto 橋本徹がブラジリアン&ブリージンなコンピに込めた渋谷系の哲学 | 『Free Soul』&『Cafe Apres-midi』最新作をめぐって
  10. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  11. Arthur Russell ——アーサー・ラッセル、なんと80年代半ばのライヴ音源がリリースされる
  12. Cornelius ──ドキュメンタリー映像シリーズ第4弾が公開
  13. 野田 努
  14. Columns スクエアプッシャーはいつだってテクノロジーの限界を超えていく ――7月20日(月祝)@昭和音楽大学、特別講義のレポート
  15. Columns Techno Walk 大阪~ベルリン、テクノ散歩
  16. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  17. Cornelius ——コーネリアスがアルバム『Refractions』のリリースと新曲“Aeons”の配信開始を発表
  18. R.I.P. Miru Shinoda 追悼:篠田ミル
  19. interview with Boom Boom Satellites 明日は何も知らない | ブンブンサテライツ(中野雅之+川島道行)、インタヴュー
  20. Kassel Jaeger - Sub Re | カッセル・イェーガー

Home >  Reviews >  Album Reviews > 快速東京- ロックインジャパン

快速東京

快速東京

ロックインジャパン

Felicity

Amazon iTunes

三田 格   Jul 31,2012 UP

 僕のすぐ後ろから「外タレみたいだ!」という声がステージに向かって跳んだ。さっきからスイセイノボアーズ(SuiseiNoboAz)がなかなかいい演奏を繰り広げていた。昨年あたりから評判になっているバンドだという。凶暴なフィードバック・ノイズにはじまり、曲が進むにつれて、だんだん単純なロックン・ロールになっていく。ここは渋谷・宮益坂にあるラッシュというライヴハウスで、PAがとにかく素晴らしい。入場制限がかけられるほど内部はギュー込みで、このところ足を運んだライヴ・スペースでは圧倒的に年齢層が低い。こういうところにひとりでいると間が持たないし、ほとんど身動きもできないから不快指数が上昇するかと思いきや、なぜか非常に居心地がいい。高円寺の練習スタジオでスカートを観ていたときは足が攣りそうになって、さすがにギブ・アップしてしまったけれど、スイセイノボアーズから、そして、快速東京へとステージは進んでいく。快速東京が、そして......とんでもなかった。

 「外タレみたいだ!」と叫んでいたやつがヴォーカルだった。歌っていないときはフニャフニャしていて、重力との関係がどこか間違っているような背筋の伸ばし方。見てしまう。いや、人の目を否応もなく引き付ける。演奏がはじまると、音楽性は100%パンクである。しかも曲が短い。いまの曲は短かったなーと思っていたら、それは1曲じゃなくて2曲だったりするし、快速というのは、そういうことだったかと。しかも、歌詞がナンセンスで、演奏自体はシリアスに徹し(ある種、バカテクかも)、ヴォーカルの福田哲丸が体を振動させるスピードはニュー・オリンズ・バウンスよりもケイレン度が高い。なんというか、毒の持たせ方が電気グルーヴのようなスターリンというか......そう、スターリンが「ガリガリ君」とか歌ってる感じ。歌い終わると、またフニャ~。

 ライヴを観てからCDを聴くと、もはやCDとしての完成度がどうなのか、それを冷静に見極めることは難しい。ステージの模様を思い出して笑いがとまらなくなってしまうから。全16曲で18分。短い。ショート・パンク・ロックといういうらしい。パンク・ロック界の星新一とでもいうか。ロックンロールは人間じゃない、メタルマン髪の毛長いぜ、ヒマだから戦争しようぜ......もしかして「外タレみたいだ!」というのは日本の文化に馴染んでないぜという意味を含んでいたのかなと思えるほど、歌詞のセンスは日本語のそれでしかない。野田努先生のテーマ曲にすべき"ラブソング"は♪テレビをつければラブソング 街をあるいてもラブソング 聴きたくねーのにラブソング~と、Jポップ全体を一瞬にして敵にまわし、"パピプペパンク"では♪ロックもパンクもどうでもいいじゃん ロックもパンクもめんどくさいじゃん~と自分たちのやっていることも否定。"ゾンビ"はちょっと文学的で、♪最低な世界サヨナラできない~と、ある種の闇を覗かせる。エンディングはやけのはらをラップでフィーチャーした"敏感 ペットボトル PART 2"で、これがまたサイコーに自暴自棄。

 ......このまま行っちゃうのだろうか。それとも次のアルバムでは、長い曲か、遅い曲をやってみるのだろうか。そうだとしたら、その直前の瞬間は絶対にライヴを目撃しておきたいし、さらにいえば、つかみどころがないにもかかわらずポロっと毒がこぼれることもあるMCを聞いている限り、一度躓いてからが面白いバンドになるような......(短いですが、終わりにしましょう)。

三田 格