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Mirror to Mirror

Mirror to Mirror

Body Moving Slowly

Preservation

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橋元優歩   Sep 21,2012 UP

 人類はまた一歩ニュータイプに近づいたのだろうか。"スリープ・スルー・スクール"を聴いたときには、その曲がメデリン・マーキーの"サイレン"と呼びあっているように幻視された。アレックス・トゥオーミーの透き通った裸の上半身が、メデリンの透き通った裸の上半身となにか会話をしている。ざーざー、ぷくぷくぷく、てれてれ、とと......おそらくこの会話はすれ違ってすこし悲しい結末をむかえる。アレックスとメデリンでは見ているものがちがうから。

 声帯をふるわせることはないが、しかし会話である。筆者には彼らの音が言葉であるようにきこえる(メデリンのほうはほんとにそうだけれど)。趣味の悪い筆者は、ためしに、"スリープ~"の1分8秒あたりから、"サイレン"の1分35秒あたりを重ねてみたが、すると30秒後くらいにみごとな山を持ったやりとりが聴かれて、どきどきした。

 メデリンにとって、おそらく音とはノイズのことだ。それはつねに彼女の周囲にあって、彼女の五感を刺激し拡張する。対照的にこのミラー・トゥ・ミラーことアレックスにとって、音とはもっと精製された、人工的なもののようである。明るく夢のような構築物をささえる、しなやかな素材といったところだろうか。〈プリザベーション〉の統一性のあるアート・ワークが印象的な300枚限定リリース・シリーズ、「サーカ」として本作は企画されているが、マーク・ゴウイングのプロダクト・デザイン的なコンセプトと本作の音には、どこか共鳴するところがあるようだ。

 アルバム前半はピアノやチェンバロが暖色系の音を奏でる。こうした楽器の使用を指してか、ポスト・クラシカル的な解釈を受けることもあるようだが、器楽曲というよりは、その音色のみを必要としたサウンド・コラージュという方が近いかもしれない。"ドリーム・トゥ・ハード"というように、かなり粘りのあるアンビエント・トラックをはさみながらも、弦がはつらつと細やかな動きを繰り返す、愛らしくミニマルな展開をみせる。"スリープ・スルー・スクール"は大きな潮の流れを思わせるドローン状の音の層に、泡沫のようにシークエンスされたシンセの細かいアルペジオがのる。そのてらいなく輝く音のひとつひとつに、素直でやさしい世界が映り込んでみえる。この点はジュリアナ・バーウィックと似ている。無知や単純さからそのような世界に短絡するのではない。汚されることではほころびない、根からのやさしさ、頑固な素直さ、悪びれないドリーム感覚、そうしたものをつよく感じさせる。暗く、スローで、リヴァーブも深さを増す後半においてもそれは変わらない。暗いというよりも短調を思いきり楽しむような手つきだ。"バーニング・ライフ"などは天使が戯れに弾くリスト、"ドリフト・アパート"などは叙事詩的でスケール感のあるサウンド・スケープが広げられるが、音にガラスの破片のような光が混じっている。"オール・ピープル・イン・マイ・ハンド"の鈍重なドローンも同様だ。それはなにかきらきらしたものの所業なのである。ロサンゼルスのこの新鋭には、われわれがこの先たどりつくべきヒプナゴジックの向こう側を示してもらいたい。

橋元優歩