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My Cat Is An Alien

AvantgardeExperimental

My Cat Is An Alien

Psycho-System

Elliptical Noise

三田 格 Dec 27,2013 UP

 2013年は6枚組が熱かった。枚数が増える傾向は非常階段や友川カズキによる10枚組み、メルツバウの11枚組みにカンニバル・コープスの12枚組み、アシッド・ハウスのトラックスボックスは16枚組みで、クイーンのロジャー・テイラーは数え方すらよくわからず、ハービー・ハンコックに至っては34枚組みまで膨らんだ。コニー・プランクの4枚組みなんて、だから、かわいい方でしたよね。そうしたなかで、もっともチャーミングな枚数といえたのが「6枚組み」だったことは間違いない。「6枚組み」がもっとも時代の空気を正確に反映していたのである。そう、東京事変は2枚減らすべきだったし、バジンスキーは1枚足らなかった!

 年頭を飾ったのはフィンランドからスパンク(これはコンセプトがかなり複雑)、そして、3月のアイアン・メイデンはともかく、6月にはバート・バカラックとECM、さらにスタイル・カウンシルから秋にはカシーバーと続き、年末にはボブ・ディランが放ったアナログ6枚組みが世界と萩原健太を震撼させた。なかでももっとも興味を引いたのがイタリアのオパーリオ兄弟によるマイ・キャット・イズ・アン・エイリアンで、これが話題の〈テレンスマット〉からリリースされた『エイリアン、オール・トゥー・エイリアン』に続くけっこうな新境地となった。ノイズ・ドローンでもアンビエント・ドローンでもなく、奇妙なほどスタティックで、しかし、トリップ性もある斬新なアプローチである。

 『サイコーシステム』というタイトル通り、映像の雰囲気がまずは変わってきた。PVでは単にレコードを回しているだけにもかかわらず、過剰にサイケデリックなムードが演出され、枯山水のようなイメージに終止した『フラグメンツ・サスペンディッド・イン・タイム』の映像表現とはまったく違うものになっている。かつてはアウター・スペースへと突進していった彼らのサウンドはトリノの工場街からアルプスにスタジオを移したせいか、どことなくアーシーな響きを帯びるようになり、それはそれでよかったのだけれど、外宇宙であれ、地表であれ、そこにはいつも人間は不在だったものが、ここでは人間の内面へと忍び寄る彼らのサウンドがはっきりと刻印されている。音楽と自分がやんわりと関係付けられているというか、彼らがこれまでに描き出してきた「鉱物」や「空間」とは異なるイメージが浮かび上がり、曲によっては外界と内面が引き裂かれているような印象もある。もしかすると初めて自分たち自身に興味を持ったのかもしれない(自意識太政大臣こと橋元優歩とは正反対の取り組み方である)。

 アウター・スペースを扱った『ザ・コスモロジカル・トリロジー』(05)でさえ3枚組みだった。宇宙に対する彼らの興味が無限大に膨れ上がり、それこそすべての音が消えた瞬間に、本当に宇宙空間に「いる」かのような気分にさせられた同作は、いつしか彼らのなかで初期衝動を終わらせてしまったのかもしれない。達成するということはそういうことだし、どれぐらいの意志が介在したのかはわからないけれど、それに続いた「自然」との係わり合いが次のステップになった後で、それを新たなゴールに見立ててしまうのではなく、アウター・スペースからイナー・スペースへの切り替え地点として十全に機能させたというのが正確なところではなかっただろうか。そして、イナー・スペースに新たな地平を見出した彼らは、まるで、アウター・スペースと向き合っていた時と相似形のような音響へと回帰しながらも、どこか違うニュアンスを放っている。ひとついえるのは、かつてよりも明らかにサウンドが重層的になっているということだろう(……にもかかわらず主義としてのノー・オーヴァーダブは貫かれている)。

 “バイポーラリズム(二極主義)”と題された曲は2種類のテンションを同時に経験させられているような構造を持ち、とくに彼らの変化を印象づける。バイポーラー・ディスオーダーといえば、このところハリウッド映画がやたらとテーマにしたがる双極性障害のことで、ソダーバーグ監督が『インフォマント!』(09)で取り上げた時点では字幕には反映されていなかったものが、最近は積極的に「双極性障害」という単語が字幕でもばら撒かれるようになった。『インフォマント!』で示された結論(というか事実)が示唆していたように、犯罪的なセンスを助長する傾向であるにもかかわらず、資本主義はこれを「能力」として買っていることは明らかである(逮捕したハッカーを司法取引で政府内のブレインとして取り込む感覚と同じで、それこそP2Pに対する日本政府の対応とはまったく次元が異なっている)。獄中からCEOへ。そのような可能性であり可否について彼らもこれを曲として表現しているということなのだろうか。いずれにしろ、中学生の頃から軽度の双極性障害に悩まされてきた僕にとって、こういった曲が与えてくれる効果には計り知れないものがある。マイ・キャット・イズ・アン・エイリンをセラピー目的で聴くようになるとは思わなかった。

三田 格