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D/P/I

AmbientElectronicFootworkJuke

D/P/I

08.DD.15

Leaving Records

倉本諒   Feb 24,2014 UP

 昨年末からLAのマシュー・サリヴァン及びアレックス・グレイ邸を間借りし、僕がボングを銜えたまま猫を揉んだりしている間に、この男は2枚のアルバムを仕上げてしまった。

 アレックス・グレイは基本的に一日中喋っている。こちらがノー・リアクションでも自身のギャグに爆笑するような底抜けにハッピーな男である。先日、26歳の誕生日を場末のバーで愉快な仲間たちに祝われスパークするグレイ、具体的にはショーン・マッカンとともにカラオケでサブライムを熱唱する泥酔グレイを眺めながら、この男が絶好調であることを確信した。そう、LAのローカル・メイトの誰もが昨今のD/P/Iのサウンドがネクスト・レヴェルへ達したことを確信している。

 同じ屋根の下で暮らすマシュー・サリヴァン、ショーン・マッカンが得意とするミュージック・コンクレートをディープ・マジックを通して消化したグレイは自身のジャングル・ミュージック・バッグ・グラウンドと近年のフットワーク・ビートへの傾倒を披露する。D/P/Iの本作『08.DD.15』はもちろん〈リーヴィング〉から。盟友Ahnuuと激しく共鳴しながらロー・エンドに群がるキッズたちの耳にトラウマ・グルーヴを刻み込んでいる。先日のテープお披露目ショウでも静寂の間を音源以上にフィーチャーし、フロアを置いてけぼりにしていたのが記憶に新しい。というのは昨今のD/P/Iのサウンドが〈リーヴィング〉に代表されるニューエイジ・ビートからのさらなる飛躍でもあるからなのか。

 マシューデイヴィッドはよりポジティヴなニューエイジを、キャメロン・スタローンは新たに始動したソロ名義とゲド・ゲングラスとともに主宰する〈ダピー・ガン(duppy gun)〉でよりアフリカン・ルーツを掘り下げているのを横目に、グレイはその独自の軽薄なキャラを体現するかのように彼等が手を出してこなかったフットワークやジャングルを波乗りしているのだ。その軽薄さゆえ、本人が意図しないまでもD/P/Iはヴェイパー・キッズから熱いラヴ・コールを受けているのは必然なのかもしれない。それまでマシューとキャメロンの影響下にあったグレイは彼等を触発するほどに成長したことは間違いない。それは今後のサン・アローのサウンドに顕著に表れてくるだろう。

 そしてこの〈リーヴィング〉からのテープにダメ押しをかけるかのごとく〈ブーム・キャット〉からの12”がリリースを間近に控えている。確実に期待して良し。

倉本諒