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倉本諒   Apr 07,2014 UP

 はたして〈BEB(ブラッケスト・エヴァー・ブラック)〉をモヤシ系メタル・レーベルと呼ぶことに語弊があるだろうか。たとえば〈BEB〉が発足した2010年前後、メタル志向なアンビエントや限りなくポストロックに汚染されたメタルは完全な飽和状態にあったわけで、当時僕はこういったかたちでそれがUKのテクノ・シーンと迎合してゆくとは思わなかった。または、ある種これがブルズム(Burzum)→ザスター(Xasthur)の流れにあるワンマン・ブラックメタルの系譜の現在系とも捉えられる……云々と、バーネット+コロッチアのLPのおかげでもう完全にメタル/ハードコア目線で考えてしまう。

 アレックス・バーネット(Alex Barnett)とフェイス・コロッチア(Faith Coloccia)はそれぞれオークイーター(Oakeater)とエヴァーラヴリー・ライトニングハート(Everlovely Lightningheart)──当時からなんちゅー名前だよって思ってましたが──のバンド時代からの長きにわたる交流を経てお互いに影響を与え合ってきた。どちらのバンドもパッシヴ楽器やコンタクトマイクによって採集したオーガニック・ノイズが印象的なポポル・ヴー系のユニットという点ではとても共通項の多いバンドであった。フェイスのエヴァーラヴリーはすでに活動を停止し、現在はマミファー(Mamiffer)やハウス・オブ・ロー・カルチャー(House of Low Culture)等のユニットで活動している。フェイスのテープ・マニピュレーションにヴォーカル、短波レディオがバーネットによるミニマルかつヘヴィなシンセループと美しい調和を成すこのレコードは、使用された豪華絢爛なヴィンテージ・シンセも相まってか、いままで以上に洗練された彼らのサウンドをリッチに聴かせてくれる。彼等のバッグ・グラウンドの多くはもちろんブラックメタルやドゥームメタルによるものだが、それを極端にサタニックな方向に(とはいえじゅうぶんドス黒いんだけども)走らず、独自の灰色世界を構築しているのが特徴だ。イエロー・スワンズ時代から交流の深いガブリエル・サロマンのソロ作品とも共鳴する世界観とも言えるだろう。

 ……にしても、〈BEB〉が提示するヴィジョンは昨年暮れにヨーロッパを放浪して完全なトレンドと化していることを見せつけられたわけだが、それはUSのAscetic House(エセティック・ハウス)に代表されるようなミニマル/ニューウェーヴからパワエレ/ノイズにEBMといったノリとも微妙に違う、テクノからのメタル/ハードコア思考のゼロ年代のドローンへの回答のように聴こえる。“真実ならば、打ちのめしたい”のリフレインが異常に耳に残るレイム(Raime)のふたりによるポストパンク・バンド、モイン(Moin)のEPやヤングエコー(Young Echo)の3人によるキリング・サウンド(Killing Sound)など同一メンバーによる異なる手法のユニットは、かつてのゼロ年代のドローン・ドゥームのムーヴメントをもろに彷彿させるし、電子音楽ファンよりもその手のファンに受けていることは間違いない。

 毎度黒/ピンクのアートワークとバンド名がかなりゲイなラズベリー・バルブス(Raspberry Bulbs)も最近の個人的なヘヴィロテだ。以前ここでも取り上げたヴィレインズと並ぶマイ・フェイバリットUSBMであったカリフォルニアの伝説、ロウ・ノイズ・ブラックメタルバンド、ボーン・アウル(Bone Awl)のドラマー、マルコ・デル・リオがNYへと拠点を移し、当初はソロとして始動したこのバンド。マルコによるコンセプチュアルなアートワークやヴィジュアル・イメージに、リリック&ヴォーカルと、77ボアドラムやダモ鈴木'sネットワークでもドラムをプレイするジム・シーガル(Jim Siegel)との完成度の高いソングライティングは、このバンドをアンダー・グラウンドに収まらないコンテンポラリーな存在にしていることはたしかだ。

 個人的に〈BEB〉ほど自分の暗黒音楽史を現在に繋いでくれるレーベルはなかなかないなぁなどといまさらながら感慨に耽りつつ……こういったジャンルに縛られず、パーソナルなヴィジョンが共有されるようなレーベルやイヴェントがもっと日本でも盛り上がればなぁと期待しつつ……つーか俺やっぱ暗いなぁ。そういえば春だもんなぁ……。

倉本諒