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Kali Uchis

PopR&B

Kali Uchis

Isolation

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野田努   Apr 26,2018 UP

 忘れられないのは彼女の太い眉毛と長いつけまつ毛だけじゃない。「彼女は愛なんて要らない。欲しいのは僕(私)の100ドル」──スティーヴ・レイシー(not フリー・ジャズ奏者/R&Bバンドのジ・インターネットのメンバーで、シドのソロの共作者)が一緒に歌っているこの曲“Just A Stranger”のフックは、いちど聴いただけで覚えるぐらいキャッチーだ。決してハッピーな曲ではないがちょっとのりのりの気持ちになれるという、今日のダンス・サウンドを咀嚼したネオソウル・ポップの佳作だと言えよう。カリ・ウチスのデビュー・アルバム『アイソレーション(孤絶)』には、そんな洗練されたポップスが何曲も、そしてまた何曲もある。まあGW前だし、初夏だし、気持ちを上げる意味でも、最近聴いたポップ・アルバムのなかで断トツでお気に入りの1枚を紹介しよう。
 
 コロンビア系アメリカ人の彼女の名前は、すでに多くのポップス・ファンには知られている。なにせ彼女の参加作品/共演者のリストには、メジャー・レイザー、ミゲル、タイラー、ザ・クリエイター、ゴリラズ……などとある。18歳のときに発表したミックステープ(そのゆめかわいい曲たち)がその前年まで車のなかで暮らしていたという彼女の存在を音楽界に知らしめたのだった。
 コロンビアのラナ・デル・レイなどという風評もあるが、そこまで深刻に悲しいようには見えない。USのエイミー・ワインハウスという形容もあるようだが、そこまでレトロ・スタイルではない。が、たしかにワインハウスと似ていると思う曲はある。“Flight 22”と“Feel Like A Fool”、この2曲はレトロスペクティヴなソウルだが、まあ許そう、ほんとうに良い曲なのだから。

 とにかく、いろんなタイプの曲がある。オープナーの“Body Language”はなんとボサノヴァ調の曲で、かなり良い感じでドリーミーに展開する。スペイン語で歌われ、レゲトン調のアクセントを持つ“Nuestro Planeta”もじつに洗練されている。ブーツィー・コリンズとタイラーが参加した“After The Storm”は、サンダーキャットの領域をかすりながらも柔らかいファンクのクッションの上を沈んでいく。近年のR&Bにありがちな際だったことをやっているわけではない。基本に忠実でありながら今風にまとめられている。
 レゲエのダンスホール・スタイルをゆっくりと再生しながら彼女のセクシーな歌がまわり続ける“Tyrant”も印象的な曲だ。まあ、歌詞はそれなりにエロスと政治が絡められているようだが……(この暴力的な世界で耳に入るのは静寂……あなたは暴君? いまやすべてが暴動なのにあなたは静寂……) 
 アルバムのなかでもっとも意表を突いているのは、ほとんどクラウトロック(クラフトワークorノイ!)の"In My Dreams"。いや、これはなかなか……歌詞もまたユニークというかドラッギーというか……(私は夢の少女、夢のなかではお金の心配もない、ママもコークに手を出さない……幸せ、幸せ、誰も存在しない)。

 カリ・ウチスは夢の少女なのだろう。あの眉毛とつけまつ毛とピンクの印象にはなんかこう、ファンタジーすら感じる。とはいえ、彼女の『アイソレーション』という言葉には、ひょっとして、いや、たぶんぼくの妄想だが、ジョイ・ディヴィジョンの“アイソレーション”からの引用だったりして……などと思ってしまったりもする。ま、なんにせよ、考えてみればGW中に『アイソレーション(孤立)』なんて、ある意味皮肉が効き過ぎているよなぁ。ちなみにプロデューサーはTV・オン・ザ・レディオのデヴィッド・シーテックで、演奏しているのはバッドバッドノットグッド。

野田努