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FilFla

ElectronicaPop

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micro carnival

HEADZ

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デンシノオト   Dec 05,2019 UP

 日常のなかの祝祭。色彩の横溢。ミニマムな悦び。旋律の横溢。リズムの歓喜。杉本佳一によるフィルフラ(FilFla)、9年ぶりのアルバム『micro carnival』は、そんな「音楽」の喜びに満ちていた。まさに「エレクトロニカとポップの饗宴」か。それとも「マイクロ・ポップの宴」か。もしくは知性とプリミティヴの融合か。

 杉本佳一はフォーカラー(FourColor)名義、ベグファー(Vegpher)、フォニカ(Fonica)、ミナモ(Minamo)としても活動している作曲家/日本のエレクトロニカ・コンポーザー、サウンド・デザイナーである。NYのエレクトロニカ/アンビエント・レーベルの〈12k〉からもリリースされるなど海外での評価も高い音楽家だ。
 このフィルフラはポップを追及したプロジェクトで、彼の音楽を愛するリスナーの中でも特別な意味を持つ名である。〈HEADZ〉からリリースされた『Sound Fiction』もエレクトロニカとポップをつなぐ重要なアルバムであった。
 私は『micro carnival』は「エレクトロニカ」の可能性を大きく広げたのではないかと考える。ポップさと高密度なサウンドの融合ゆえである。緻密に作り込まれたトラック。美しいメロディ。ワクワクするようなリズム。リリースは同じく『Sound Fiction』同様に〈HEADZ〉。

 さて、『micro carnival』は杉本のみならず参加アーティストも重要だ。ソロ・アルバムをリリースするアーティスト moskitoo がヴォーカルして全5曲に参加(moskitoo もまた〈12k〉からアルバムをリリースしている)。作詞のみならず杉本と作曲を共作するなど多面的に活躍している。
 また Chihei Hatakeyama とのユニット、ルイス・ナヌーク(Luis Nanook)の活動でも知られるシンガーソングライターの佐立努もヴォーカルとして全2曲に参加。彼もまた作詞のみならず杉本との共作で作曲も担当している。全編にフィーチャーされているドラムは〈SPEKK〉からリリースした名盤『水のかたち』をリリースした松本一哉が担当している点も注目だ。彼らは単なるゲストではなく、アルバムの重要なコラボレーターである。
 もちろんアルバムの要となるのは杉本によるサウンド・デザインだ。90年代末期~00年代以降のエレクトロニカ・サウンドを継承しつつ、ドラムスも含めた楽器とのコンビネーションとエディットも卓抜のひとこと。何より親しみ深いメロディと耳を惹きつけてやまない工夫と創意にトラックは、杉本がCM音楽作曲家として得た技能を存分に投入した結果かもしれない。
 もちろん「音楽」を発見したような新鮮な驚きに満ちている点も重要だ。エレクトロニカ/音響の「仲間たち」によって奏でられる「マイクロ・ポップの宴」である。

 細やかなサウンドと大胆なリズムが光のように祝祭的な1曲め“papa mambo”と moskitoo のヴォーカルと切ないメロディと細やかなアレンジが胸に染み入る“breath”は本アルバムのキーとなる曲だろう。加えてトイ・ファンク・エレクトロニカ“strike zone”、ディズニカルなアレンジと瀟洒なアシッド・フォークと電子音楽の融合とでもいうべき佐立努のヴォーカルによる“mosaic”もアルバムの不思議なムードを決定付けている。ともあれ全曲、日常の光の中で鳴っているような作品ばかり。小さな音楽と大きな祝祭、大きなリズムと小さなノイズ、大きな喜びと小さな悲しみが、音楽の隅々から溢れて出ていた。
 それはエレクトロニカが音響の快楽から音楽の喜びを獲得した瞬間にすら思える。2019年、エレクトロニカ・ポップな電子音楽はこうまで普遍的になった。多くの人の届いてほしいアルバムである。

デンシノオト