ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. K A R Y Y N - The Quanta Series (review)
  2. 柴田聡子 - がんばれ!メロディー (review)
  3. 中原昌也 ──作家デビュー20周年を記念し最新小説とトリビュート作品集が2冊同時リリース (news)
  4. Vince Staples - FM! / Earl Sweatshirt - Some Rap Songs (review)
  5. ビール・ストリートの恋人たち - (review)
  6. ポスト・ミューザック考 第二回:俗流アンビエント (columns)
  7. Reeko Squeeze - Child’s Play 2 (review)
  8. Columns What’s the point of indie rock? インディー・ロックの核心とは何か (columns)
  9. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  10. ポスト・ミューザック考 第一回 (columns)
  11. 闘魂 2019 - 出演:cero、フィッシュマンズ (review)
  12. interview with IO KoolBoyの美学 (interviews)
  13. 《《》》 - Relay (review)
  14. GRADIS NICE & DJ SCRATCH NICE - Twice As Nice (review)
  15. Sharon Van Etten - Remind Me Tomorrow (review)
  16. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第2回 マグカップは割れ、風呂場のタイルは今日も四角い (columns)
  17. talk with Takkyu Ishino × Stephen Morris 特別対談:石野卓球×スティーヴン・モリス(ニュー・オーダー) (interviews)
  18. NHKラジオ第一の「すっぴん!」、4月3日の宮沢章夫さんの日に戸川純が生出演! (news)
  19. The Comet Is Coming ──UKジャズのキイパーソン、シャバカ・ハッチングスのザ・コメット・イズ・カミングが新作をリリース (news)
  20. 空間現代 ──空間現代が〈Editions Mego〉傘下のレーベルよりアルバムをリリース (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Various- My Estrogeneration

Various

Various

My Estrogeneration

Not Not Fun

野田 努   Jan 26,2010 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 昨年のリリースだが、興味深いコンピレーションなので挙げておく。ロサンジェルスのレーベル〈ノット・ノット・ファン〉からリリースされた最新の女性バンドだけ11組をコンパイルしたアルバムで(ヴァイナルのみの発売)、タイトルを意訳すれば"私の女性ホルモン世代"。たぶんライオット・ガールズ以降なのだろう、USインディにおける女性バンドの数は急速に増え続け、ゼロ年代はそれがフリー・フォークのシーンにまでおよび、前にも書いたことだけれど、渋谷のワルシャワの新譜コーナーを眺めていると21世紀のインディ・ロックは女性のものになるんじゃないなかといった勢いを感じる。

 もっとも〈ノット・ノット・ファン〉が紹介する"女性ホルモン世代"は、ライオット・ガールズ時代の男女同権を主張するものではなく、ヒップホップ以降の(エイミー・ワインハウスやリリー・アレンなどに顕著な)ポスト・フェミニズム的なニュアンスとも違う。スリーター・キニーやミカ・ミコのようなガレージ・バンドの流れとも少し違う。ジョアンナ・ニューサムのようなポスト・ビョークでもない。誤解を恐れずに言えば、おおよそOOIOOフォロワーなのだ......とは、もちろん言い過ぎなのだけれど、しかしこのアルバムから聴こえるのは、少なくともロックのクリシェには一瞥もくれてやらないような、ローファイ、エレクトロニクス、アブストラクト、エクスペリメンタル、トライバル、アンビエント、ドローン、ダブ、さもなければノイズ......そういったものである。

 A面の1曲目を飾るゾーラ・ジーザスが呪術的なトライバルを披露すると、2曲目のティックリー・フィーザーがメランコリックなノイズ・インダストリアルを演奏する。3曲目では、〈ノット・ノット・ファン〉レーベルの看板バンドであるポカハウンテッドが登場してフリークアウトしたコズミック・サウンドを展開すれば、4曲目のインカ・オレはドローンを響かせ、そして5曲目のトパズ・レグス(〈ノット・ノット・ファン〉所属)によるメランコリックなクラウトロックから6曲目のHNYによるジリー・アレン(ゴング)を彷彿させるサイケデリックなフリー・フォークへと続く。

 トーク・ノーマルの挑発的なノイズ・ミニマルな曲で幕を開けるB面は、A面を大雑把に"静"と形容できるなら"動"だ。2曲目のアイレイジャがノーマルを彷彿させるインダストリアルなエレクトロニクスを展開すると、3曲目のL.A.ヴァンパイアはザ・スリッツの精神を引き継ぎ、4曲目のU.S.ガールズ(もっとも政治的なバンドのひとつ)はクラウトロックの電子宇宙を泳ぎ、アルバムの最後に収録されたヴェレット(〈クランキー〉からアルバムを出している)もまたクラウトロック~スーサイド~スペクトラムの後を追うかのように電子ノイズの海の果てに消えていく。

 40を超えた人間の言葉で言えば、ポスト・パンクにおける頂点の年、"1979"の再来とも言えるような創造性への関心の高まりを強く印象づける内容。あるいは。エレクトロ・ガール・ポップ・リヴォリューションに対する反旗とも受け止められる。いずれにしても興味深い。USインディにおける女性バンドが、エルヴィス・プレスリーではなくホルガー・シューカイを選んだのだから!

野田 努