エレクトロニック・ミュージックにおける2017年といえば、ヴィジブル・クロークスがニューエイジ・リヴァイヴァルに火をつけたり、ジェイリンがフットワークを新たな次元に押し上げたり、〈XL〉に移籍したアルカが自己を肥大化させる方向に舵を切ったり、チーノ・アモービが非常にコンセプチュアルかつ重厚なコラージュ作品を世に問うたり、ツーシンやDJパイソンがデビュー・アルバムを発表したりと、ディケイドの終わりに向かってさまざまな傾向が噴出してきた年だ。当時〈Smalltown Supersound〉から放たれた、ドリーム・ポップとテクノの溝を埋めるケリー・リー・オーウェンスのファースト・アルバムもそうしたさまざまな芽吹きのひとつだった。透きとおったヴォーカルの影響もあるだろう、評判を呼んだ同作以降、彼女の存在感は一気に高まっていくことになる。
パンデミック中に発表された2枚目『Inner Song』(2020年)は時世に抗うかのようにフロアライクな側面を増大させたアルバムだったけれど、他方でウェールズの労働者階級の村で育ったという自身のアイデンティティを確認するかのように、同郷の大物ジョン・ケイルによるウェールズ語のヴォーカルをフィーチャーしてもいた。そうしたルーツへの意識と関連があるのかないのか、3枚目『LP.8』(2022年)では大きく路線を変更し、アイルランドのエンヤとスロッビング・グリッスルの中間を目指すという大胆なコンセプトのもと、独自のやり方でノイズとアンビエントを同居させている。オーウェンスのベストな1枚だろう。
それから2年。デペッシュ・モードとのツアーを経験した彼女は今年7月にザ・1975のドラマー、ジョージ・ダニエルが設立した〈dh2〉と契約を結び、10月に4枚目のアルバム『Dreamstate』を送り出している。レーベル移籍とともに心境にも変化が訪れたのかもしれない。バイセップやケミカル・ブラザーズのトム・ローランズとのコラボ曲を含む新作『Dreamstate』はふたたびダンスフロアにフォーカス、トランシーな感覚もまといつつ、とことん恍惚を追求している。なんでも、過去を振り切るためには多幸感を追い求める必要があったのだとか。5月の来日公演ではハード寄りのテクノをかけ大いに会場を盛り上げていたオーウェンス。新作もまた最近の流れ、ポスト・パンデミックのダンス熱を代表する作品のひとつとなるにちがいない。
都会的な要素というのは、わたしがこの17年間、ロンドンやマンチェスターといった都市に住んできた影響をあらわしている。でもわたしにとって真の故郷は、わたしたちの言葉で言う「Cymru(=ウェールズ)」で。
■昨年はデペッシュ・モードの北米ツアーをサポートしていましたね。その経験はあなたになにをもたらしましたか?
ケリー・リー・オーウェンス(Kelly Lee Owens、以下KLO):毎晩、大勢の観客の前でプレイして、大規模な空間を音で埋める必要性に迫られたことは、その後のスタジオ制作にたしかな影響をもたらしたと思う。ツアーから戻って最初に書いた曲が、アルバム最初の曲 “Dark Angel” なのだけど、じつはわたしがデペッシュ・モードのツアーTを着ている動画があって、いつか投稿すると思うけれど、そのTシャツのバックプリントには天使の羽が描かれていて。動画では、わたしがシンセのメロディを演奏しているんだけど、とてもアンセミックな音響。そういう意味で、今回のアルバムでは、大きな空間を埋めるための音をつくるようになったと思う。その一方で、デペッシュ・モードの素晴らしいところは、そういった大きな空間においても、親密な瞬間をつくりあげられるということ。だからビッグで大胆で、アンセミックで感情に訴えかける音を表現すると同時に、静かな瞬間も加えたいと思うようになった。それが『Dreamstate』の音の旅路に反映されていると思う。これはツアーに参加する前から思っていたことなんだけど、ツアーに参加したことで、そのあたりの領域を探求していきたいという思いが、さらに強くなったと思う。それに、彼らと一緒にいること自体がすごく刺激的だったし、わたしの人生における最高な体験のひとつになったと思う。
■〈Smalltown Supersound〉を離れ、新作をザ・1975のドラマー、ジョージ・ダニエルが〈Dirty Hit〉とともに立ち上げたレーベル〈dh2〉から出すことになった経緯を教えてください。
KLO:まず、〈Smalltown Supersound〉とは素晴らしい関係を築いてきたということを言っておきたい。レーベル主宰者のヨアキム・ホーグランド(Joakim Haugland)はわたしのことをずっと応援してくれて、わたしを成長させてくれた。でもその名のとおり、〈Smalltown Supersound〉はとても小さなレーベルで、現時点のわたしのキャリアにおいては、もう少し大きな土台が必要だと感じていたところで。でもヨアキムはその考えに賛成してくれて、今後、ヨアキムとわたしと〈dh2〉のひとたちで集まって、お茶でもすることになると思う。いままでほんとうによくしてもらった。それから〈dh2〉のジョージは、前のレーベルと同じような方針で、アーティストの芸術性や寿命をとても大切にするひとで。ジョージとは何年か前からメールで連絡をとっていたのだけど、去年、ザ・1975のライヴ終わりに会う機会があった。チャーリー(・XCX)に誘われて、彼らのアフター・パーティでわたしがDJ をやって。それ以来ジョージとはずっと連絡をとっていたんだけど、〈Dirty Hit〉とジョージはこのレーベルをかなり前から立ち上げたかったみたい。そして、ついにそれを実現しよう! と彼らが決断したその数分後に、わたしのマネージメント会社が彼らに連絡をとって、「ケリーがレーベルを探しているんだが、〈Dirty Hit〉と契約を結べないだろうか?」と持ちかけたらしい。まさにセレンディピティ(思いもよらぬ幸運)だった。そしてわたしはジョージとロサンゼルスでランチをして話し合った。すべてがうまくおさまった感じがした。〈Dirty Hit〉からはファミリーみたいな親近感を感じる。わたしにとって、コミュニティの一部であると感じたり、リアルな連帯感をおぼえるということは昔から大事なことだった。だから〈Dirty Hit〉のようなレーベルと一緒にこれからの旅路を続けていくことができてとても嬉しく思う。
■新作『Dreamstate』はダンス・アルバムです。路線としては、アンビエントやノイズの要素が強かった前作『LP.8』ではなく、パンデミック中にダンス・ビートを打ち鳴らした前々作『Inner Song』のほうに近いと思いますが、『LP.8』にはあまり手ごたえを感じられなかったのでしょうか?
KLO:じっさいのところ、その逆。『LP.8』はパンデミック中につくったもので、8日間という短い期間で素早く仕上げた作品で。無意識に流れてくる思考を表現した、そのときの瞬間をあらわしたものだった。あの作品は、次の作品に向けての跳躍台としてつくる必要があったんだと思う。ふたたび、よりポップでダンス・ミュージック寄りの明るいものをつくるために、『LP.8』のような深い領域を探る必要があった。『LP.8』の出来にはとても満足している。『LP.8』というタイトルにしたのは、8枚目のアルバムみたいに感じられるから。つまり、たいていの場合、商業的な作品をたくさん出してから「今度は、誰にも制限されずに、自分がつくりたいものをつくる!」というのが8枚目くらいにくると思うのよ。わたしはタイムマシーンに乗って、8枚目のアルバムを先まわりしてつくったという(笑)。だから『Dreamstate』はわたしの3枚目ということになるね。こんなことを言ったらまわりがどう思うかわからないけれど、アッハッハ(笑)! でもわたしはそう考えている。『Dreamstate』はわたしの3枚目の商業的なアルバムで、『LP.8』は自分の無意識に深く潜った、奇妙で興味深い時期につくった作品。この作品には感謝している。じつはデペッシュ・モードのマーティン(・ゴア)と話していたときに、わたしの作品群で一番のお気に入りは『LP.8』だと言ってくれて。『LP.8』はそんな作品。大好きなひともいれば、好きじゃないひともいて、好きじゃないひとは、まだそのよさに気づいていない。それはそれでいいと思う。それが芸術というものだから。
わたしは過去を振り返って熟考したり、未来を心配したりする傾向があって、とにかくそういうものをすべて手放したかった。現在の瞬間に集中したかった。それが多幸感というものだと思うから。現在という瞬間に存在するということ。
■あなたはウェールズの労働者階級の村で育ったそうですが、ウェールズという出身地はあなたのアイデンティティにとって大きなものですか?
KLO:とても大きい。それは年を重ねるにつれて、さらに大きくなっていっている。自分の起源やルーツというものはすごく大切なことだと思うし、自分の歴史を理解したいと思うのは人間として基本的なことだと思うから。たとえそれが痛みを伴ったり、複雑なものであったとしても、自分がどこから来ているのかを知ったり、その起源に誇りや美しさを感じることができるのは大事なことだと思う。それこそが自分自身の一部であり、系統であり、それがつねに自分のなかに流れているということが、大人になるに連れてわかってきた。そしてそれはわたしの音楽にもあらわれるし、サミュエル・ブラッドリーと制作した、アルバムのアートワークにもあらわれていると思う。わたしたちは、自然がある場所で撮影をして、自然に囲まれているわたしと、鉄塔といった都会を象徴するものとの対比を表現したかった。都会的な要素というのは、わたしがこの17年間、ロンドンやマンチェスターといった都市に住んできた影響をあらわしている。でもわたしにとって真の故郷は、わたしたちの言葉で言う「Cymru(=ウェールズ)」で。
■今回これほど多幸感に満ちたアルバムをつくりたくなったのには、なにかきっかけがあったのでしょうか?
KLO:自身からの解放というものを必要としていた。ちょうどプライヴェートでも11年か12年間ともにしてきた、自分の大きな一部(パートナー)と別れを告げたばかりで、過去に縛られたくないという思いがあった。そこから解放される必要があった。しかもわたしは過去を振り返って熟考したり、未来を心配したりする傾向があって、とにかくそういうものをすべて手放したかった。現在の瞬間に集中したかった。それが多幸感というものだと思うから。現在という瞬間に存在するということ。その多幸感は、広い空間で踊っていて、他のひとと共有できるものもあれば、“Trust & Desire” や “Ballad” のような静かな瞬間にも感じられると思う。その瞬間に自分がどう感じているのかと向き合うこと。それがたとえ辛いものであっても、自分はちゃんとそれを受け止めている。それがいまの瞬間に存在するということ。そういう、「自身からの解放」が今作のテーマだったのだと思う。自分を、過去や未来から解放して、自分に自信を持つということ。
■今回、共同プロデューサーのひと組としてバイセップを迎えたのはご自身の希望ですか?
KLO:そう、彼らとは “Rise” という曲しか一緒に曲をつくらなかったけれど。あとはケミカル・ブラザーズのトム・ローランズと “Ballad” を制作した。今回のアルバムに参加してもらったひとたちはすべて自分のコネクションから派生したもの。あ、ひとつの例外を除いて。フィル・スカリー(Phil Scully)というプロデューサーとロサンゼルスで一緒に制作をしたけれど、それはレーベルに紹介してもらったつながりだった。わたしたちは “Love You Got” や “Higher” を一緒につくって。とても素晴らしい経験だった。バイセップとは昔から一緒に仕事をしたいと思っていたし。彼らもコクトー・ツインズが好きだったりとインディ・ミュージックの共通点や、メロディックな音楽が好きだったりする共通点があるから。そういうわたしたちの共通点が今回の曲からも聴きとってもらえると思う。バイセップは憧れの存在だったから、まさに夢が叶った瞬間だった。彼らがわたしを彼らの世界に招き入れてくれてすごく嬉しかった。
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マドンナの『Ray of Light』をおもに聴いていた。〔……〕真似するということではなくて、『Ray of Light』から感じられた、ある種のフィーリングに近づきたいと思った。
■バイセップとの曲での役割分担を教えてください。制作はどのようなプロセスを経て進めていったのでしょうか?
KLO:「ある午後の時間」みたいな感じだった。ホクストンにある彼らのスタジオに行って、温かい歓迎を受けた。ほとんどおしゃべりしていて。一緒に時間を過ごして、音楽や、自分達のバックグラウンドなどたくさんのことを話した。制作プロセスにおいて、それがいちばん大事な部分だったりするもので。それにお互い、美味しいものを食べることに目がなくて、ウフフフ! 彼らはすごくおいしいタイ料理のお店に連れていってくれて、お昼をご馳走してくれた。その後、スタジオに戻ってきてジャム・セッションをやったの。わたしはあまりジャム・セッションはやらないほうなんだけど、それがバイセップのやり方なのかもしれない。わたしは808を使っていて、マットはロジックかエイブルトンを使っていて、アンディはシンセを使って、彼らの素晴らしいセットアップに音を通していた。そして1分半ほどのトラックができた。とてもラフなもの。わたしはそれを持ち帰って、メロディと歌詞を書き、その上にシンセやほかの要素を加えた。でも曲の骨格となる部分は30分くらいでつくったの! といっても、制作というものはその30分だけじゃなくて。先ほども話したように、一緒にとった食事であったり、会話であったり、そういう最高な要素がすべて制作につながっている。ほんとうに素晴らしい経験だった。
■新作にはケミカル・ブラザーズのトム・ローランズも参加していますね。彼らの作品ではなにがいちばんお好きですか?
KLO:オーマイガッド! それはかなり難しい質問ね。ちょっと待って、彼らのディスゴグラフィーを確認する。……アルバムは難しいけれど、いちばん好きな曲はある。最近いちばんよく聴いているのは “Star Guitar”。
通訳:あの曲は最高ですよね!
KLO:もう最高! 今回のアルバムにも “Air” という曲があって、“Star Guitar” と似たような反復する感じや、動いている感じがする曲で。オープンカーに乗っていて、髪の毛が風になびいているイメージ。アルバムだと『Surrender』(1999年)かな……好きなアルバムはちょくちょく変わるのよ……『Dig Your Own Hole』(1997年)かもしれない……わからない! わたしのなかでは、しょっちゅう変わっているから。ケミカル・ブラザーズって一度も駄作をつくったことがないと思う。25年経ったいまでもそう言えるってすごく稀なことだと思う! とにかくいま、いちばんよくリピートして聴いているのは “Star Guitar”。彼らの存在自体に夢中なの!
■この新作の制作中によく聴いていた音楽はありますか? それらから影響は受けましたか?
KLO:マドンナの『Ray of Light』(1998年)をおもに聴いていた。制作中は音楽を聴かないようにしているんだけど、すごく大変だった。だってデペッシュ・モードとツアーをしていたんだもの(笑)! だからデペッシュ・モードとマドンナの『Ray of Light』をよく聴いていた。『Ray of Light』はダークな要素と明るい要素、多幸感と深みの両方が混在している。それが面白いと思った。それにあのアルバムでは、彼女のヴォーカルがとても近くに聞こえる。すぐ自分の側で歌われている感じがする曲がいくつかあって。わたし自身も今回のアルバムの何曲かではそういう聴かせ方をしたいと思った。それから、無駄なものを削ぎ落とした感じも追求したかったから、その感じが “Trust & Desire” や “Ballad” にあらわれていると思う。それに去年わたしは『Ray of Light』のプロデューサーである、ウィリアム・オービットとランチをする機会があって。素晴らしいミーティングだった。だから宇宙からの啓示というか、『Ray of Light』の本質的な要素が、自分がつくっていたアルバムにも注入されたと思う。それはサウンドを真似するということではなくて、『Ray of Light』から感じられた、ある種のフィーリングに近づきたいと思った。
■今回の新作はこれまで以上にシンセやヴォーカルの残響(リヴァーブ)に非常にこだわりがこめられているように聞こえました。あなたの音響にたいするこだわり、音響に向き合うときの意識について教えてください。
KLO:わたしはすべての要素にこだわりや考えをこめていると思う。その理由は、感情が流れているところを突きとめたいから。わたしの目的はただそれだけ。曲がじゅうぶんに流れている感じになり、リスナー自身がその「dreamstate(夢幻状態)」に入りこめる感じ、曲の流れに入りこめる状態にしたい。そして中断されることなく、その感情の本質に近づけるようにしたい。もちろん曲の途中で、中断する瞬間を意図的につくることもあるけれどね。わたしにとって音楽はタペストリーみたいなものであり、音を編み上げているような感じで。べつに音が色として見えるとかではないんだけれど、音の波長は見える。それを編み上げている感じ。そういう表現しかできないんだけど……。その流れがすべててつながった時点で曲は完成する。だから全体像につながりを持たせて、リスナーが感情を最大限に感じられるためのディティールは非常に重要。
最近では、他人の目線がないと、自分たちにとって夢とはなんなのかということがほんとうにわからなくなってしまっている。だからそういうものから離れて、自分にとって夢とはなんなのかということを見出すことはとても大切だと思う。
■タイトルの「Dreamstate」が意味するものとは、ずばりクラブでの夢のような状態、あるいは音楽がもつ至福の逃避性のことでしょうか?
KLO:その両方でもあるし、それよりも大きな意味合いがあると思う。〔フランスの哲学者、ガストン・〕バシュラールが書いた『空間の詩学(The Poetics of Space/La Poétique de l'espace)』(1957年)という素晴らしい本があるんだけど、そこでは夢想(daydreaming)することの重要性が説かれていて。夢想することは、夜に見る夢とは違う。夜に見る夢は、無意識に潜りこむことで、疲弊することもときにはあるよね(笑)。その一方で、夢想とは、受動的な行為であると同時に、主体的な行為でもある。でも受動的な部分の方が大きくて、安らかな状態。わたしは、そういう安らかな状態になる時間と空間を積極的に持つようにいつもひとに勧めている。このインタヴューがはじまる前も、わたしは自宅の庭に座ってそういう時間をとった。たしかに寒かったけれど、ジャンパーを着て、紅茶を飲んで、太陽の光を浴びて、地に足をつけた。そして10分間だけ、その瞬間に身を投じて夢想した。自分がそういう状態を欲していたし、音楽でも夢想という状態をつくりたいと思った。そうすることで人びとが集ったときに夢想できるし、それ以上に大切なのはひとりでもその状態になれるということ。技術が発達した現代という時代において、その状態になることは重要性を増していると思う。わたしたちは、外部から「どんな夢を見るべきか」、「夢とはなんなのか」を押しつけられている。最近では、他人の目線がないと、自分たちにとって夢とはなんなのかということがほんとうにわからなくなってしまっている。だからそういうものから離れて、自分にとって夢とはなんなのかということを見出すことはとても大切だと思う。
■5月に東京で開催されたOUTLIERであなたのDJを体験しました。ハード寄りのテクノのセットだったように記憶していますが、日本のオーディエンスの印象は他国のと比べてどう違っていましたか?
KLO:いい質問ね。日本のひとたちはディティールにこだわっているというか、その場をすごく大事にしていて、音楽に聴き入っている印象があった。わたしの行動をちゃんと観てくれるし、聴いてくれる。わたしはステージからみんなに「自分を解放して!」といつもアピールしている。みんなに自由に動いて欲しいから。だから日本でもそういうアピールをしていたんだけど、それはどの国でもやっていることで。ひとによっては、ただその場に立っていることが自由なのかもしれないし、ただ観ていることが自由なのかもしれない。それがなんであれ、その自由をみんなが楽しんでいてくれたら嬉しい。ハードなテクノになったのは、クラブという空間で、夜の遅い時間にプレイしたから。それにライヴではなかったから、とても違うものになった。夜の遅い時間はそういう音のほうが元気に踊り続けられると思って。とにかく最高だった。でも、日本にはオーストラリアに行く途中に2日間だけ寄っただけだったから短すぎた。また絶対に日本へ行きたいし、今度行くのがすごく楽しみ!
■キュレイターのボノボとは以前から交流があったのでしょうか?
KLO:サイモン(・グリーン)は何年も前からの友人で。ジョン・ホプキンズが共通の友人で、その辺りのひとたちのあいだで交流関係がある。それに、サイモンもライヴとDJ をやるから、わたしと共通している部分も多くて。あとロサンゼルスにも共通の友だちがいるから、ロサンゼルスに行ったときは一緒に遊んだり。サイモンはわたしの活動を応援して励ましてくれたりする。エレクトロニック・ミュージックをやっているソロ・アーティストにとって、ほかのアーティストと仲よくなったり、互いを助け合うことは大切なことだと思う。だから彼との関係は大切に思っている。
■東京には2日間しかいられなかったとのことですが、どこか行かれたところはありましたか?
KLO:ほとんど行けなかった。〔神田小川町にある〕チームラボに行ったとき以外は渋谷を出なくて。ほんとうに短すぎで! 日本のいろいろな場所を見てまわりたい。田舎にも行ってみたいし、温泉にも行きたい。伝統文化にも触れたい。あ、でも日本での食事は素晴らしかった! ひとも最高! 日本という国にはほんとうに共感が持てた。
通訳:気に入った場所はありましたか? レストランなど?
KLO:(レーベル担当に)あのディナーは、なんというところだったっけ? 名前が思い出せないけれど……
レーベル担当:渋谷にあるお寿司屋さんに行きましたね。
KLO:あのときのディナーがわたしにとって初のちゃんとした、お寿司体験だった。(板前さんが)目の前で調理してくれる感じ。あれほど満腹になったことはいままで一度もなかった! でもおいしくて、すごく幸せだった! それはよくおぼえている。それから、小さなコーヒー屋さんを見つけて入ったりしたのも覚えている。とにかくすべてがおいしくて、すべてがよく考えつくされていると思った。とても素敵なことだと思う。ディティールにこだわっている感じも好きだし、日本が大好きになった。
■今後これまでよりも大きな舞台で活動していくことになるかと思うのですが、現時点で戸惑っていることや苦労していることはありますか?
KLO:これはクレイジーに聞こえるかもしれないけれど、わたしは大勢のクラウドの前でプレイするほうが安心感を得られる。すごく居心地がいい。2万人の前でプレイして、最大は7万か7万5千人の前だった。ついに2万人では物足りなく感じてしまって、もっとエネルギーが欲しいと思ってしまったの! けっしてエゴイスト的な感じで思っているのではなくて、ただそれがものすごくユニークで特別な行為だから。デペッシュ・モードの以前のレーベルのA&Rのひとで、バンドの友人でもあり、第5のメンバーとも言われているダニエル・ミラーが、わたしに「音が会場の奥までちゃんと届いていて、いままでに見たなかで最高のサポート・アクトだ」という優しい言葉をくれた。自信を持って、大勢のひとたちを率いて、みんなを音楽でとりこむのがすごく楽しい! だから、じつは、小さな会場でやるときのほうが緊張するかもしれない(笑)。
■最後に、日本のリスナーに向けてメッセージをお願いします。
KLO:日本にまた行く機会をとても楽しみにしています! 日本にはわたしを心からサポートしてくれるファンがいる感じを受けたらから、そういうひとたちとたくさん会って、つながりを感じたい。それから、これは話し合って計画・企画する必要があるけれど、日本でのライヴも実現させたい。とにかく日本ではたくさんのひとに会って、ファンを増やしていきたい。それに、プライヴェートで日本の各地もまわりたいと思っているし(笑)。すごく楽しみにしている!




























