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No Age

No Age

Everything in Between

Sub Pop/P-Vine

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橋元優歩   Sep 27,2010 UP

 シットゲイズとはよくいったもので、彼らが見つめるのはクツではなくてクソ。いわゆるシューゲイザーは、過剰な歪みと軋みによって、純粋性を守ろうという音であり態度である。オリジナル世代はもちろん、忠実なるフォロワー「ネオ・シューゲイザー」にしても同様だ。汚れた世界をシャット・アウトし、深く自分のなかへ潜り込むためのフィード・バック・ギター。ノー・エイジのノイズはそれとは対照的だ。クソのような世界そのもの、である。

 『ノウンズ』に続くサード・フルとなる本作だが、ヴォーカルのレヴェルが全体的に上がっている。曲にもよるが、以前はもっと音に埋もれていた。相変わらず音程の上下の少ない、祝詞のように平板なメロディだが、歌の輪郭が前面に出てくるというのはひとつの変化だ。タイムズ・ニュー・ヴァイキングほど割れてはいないが、ノイジーでストレートなパンク・チューンが目立ち、前作でいえば"ヒア・シュッド・ビー・マイ・ホーム"や"リップト・ニーズ"といった曲の傾向が、より素直に瑞々しく伸ばされている。"フィーバー・ドリーミング"のハードコア、"ディプリーション"の切ない疾走感、他の音を圧倒的に凌駕していくアンセミックなギター・ソロ、寄せてはかえす波のようなギター・ノイズは、滋養と生命に溢れた濁流にも、現代の混沌にも聴こえる。"キャタピラー"などアンビエント・テイストのインタールードもアルバムによい表情を加えている。がアルバムの折り返し点となっている"スキンド"や"ダスティッド"の繊細な叙情性にも驚かされる。
 『ピッチフォーク』に掲載されたインタヴューによれば、昨年の『ルージング・フィーリング・EP』以来長い期間をかけて作ってきたのが本作で、マスタリング・ルームでヴォーカルを録り直すほど、細かく手がかけられているそうだ。こうした試行錯誤がふたりを成長させたという実感も述べられている『エヴリシング・イン・ビトウィーン』、『その期間のすべて』である。

 彼らの活動拠点であるロサンゼルスのアート・スペース〈ザ・スメル〉や、ディーンが運営する〈ポスト・プレゼント・ミディアム〉の周辺を見渡せばわかるように、ブルックリンのアーティなインディ・シーンとも共振する西海岸の沃野......エイヴ・ヴィゴーダやミカ・ミコやラッキー・ドラゴンズ、シルク・フラワーズやハイ・プレイシズ、〈ザ・スメル〉のほうならギャング・ギャング・ダンスや横浜トリエンナーレでも異彩を放ったマルチ・クリエイター、ミランダ・ジュライまで繋がっている一大アンダー・グラウンド・サークル......この豊穣さを思えば、アルバム1枚の評価など相対的にはさして重要なものではないかもしれない。あるいは、彼らの動機と比べたら。
 2年前に彼らは『タイニー・ミックス・テープス』の取材ではこうも語っている。「音楽をやるのはストレートな資本主義に対抗する行為だ。自分たちは決して金のためにバンドをはじめたのではない。ほんの少しでも経済的に見返りがあればラッキーだ。だがそれがなくても続ける。これはやらなくてはならないことなんだ。音楽をやらなくてはならない」
 これはゼロ年代インディ・ミュージック・シーンのムードのひとつを的確に捉え、象徴する発言である。

橋元優歩