Home > Reviews > Album Reviews > Moritz Von Oswald Trio- Reconstructure 2
※以下、我が親愛なるテクノDJのメタルが膨大な時間をかけて書いてくれた原稿である。
2010年はアンビエントの当たり年でした。マーク・マッガイア、カルロス・ニーニョ、ジェームス・ブレイク、マキシミリオン・ダンバー......。そして年末の最終入荷、モーリッツのこのシングルも。編集長に先を越されましたがもういち度。
過剰な音圧がかかったキックのクラブ・トラックから距離を置いて、クラウトロックやアンビエントを下敷きにバンドとしてのテクノの可能性を追求したアルバム『ヴァーティカル・アセント』から早1年、〈ベーシック・チャンネル〉のモーリッツ・フォン・オズワルド、ルオモやウラディスラフ・ディレイの名義で活躍するサス・リパッティ、サンエレクトリックやNSIそしてジ・オーヴのエンジニアとして知られるマックス・ローダーバウアー、欧州ダブ音響の粋が結集したジャズ・トリオからの最新作です。トリオに加えギターに〈リズム&サウンド〉でお馴染みのティキマンことポール・セント・ヒラーレ、そしてアコースティックジャズの名門〈ECM〉で活動するマルチプレイヤーのマルク・ミュールバウアーがベースで参加しています。
アルバムの延長線上でのアプローチですが、ベースが加わったためバンドとしてのグルーヴ、強度が増しています。エコーがかかった空間のなかでドラムやパーカッションが作りだすリズムを下敷きに、ギターやベースとフェンダーのローズ・ピアノが作り出す不協和音が山水画のように緩やかに変化を遂げていくアンビエントタッチのディープ・ハウスです。
『ヴァーティカル・アセント』と三田格編集の『アンビエント・ミュージック』が引き金になり、面白い動きが出てきています。僕自身が落合の〈Soup〉でオーガナイズする〈Evening Star〉、あるいはSilencioを中心に三軒茶屋の〈Orbit〉で開催されている〈トコノマ〉等、キックの下に埋もれていたテクノの音楽性を再発見するアンビエント・パーティの復興です。
プログレッシヴ・ディスコの文脈でのレア・グルーヴとしての掘り起こしではなく、ミックス・マスター・モリスのようなレゲエやソウルのセレクターとしての視点でもありません。ミニマル・テクノとドローン通過後のミックスに重きを置いたアンビエントです。サウンドクラウドにMethaneの名義でアンビエントを目的としたミックスを掲げているので参考に聴いてみてください。このシングルではありませんが『ヴァーティカル・アセント』の収録曲"Patterns 1"を使っています。http://soundcloud.com/methane-1
メタル
※というわけで、アンビエントが好きな方、ないしは興味がある方は上記のパーティに行きましょう。メタルを見つけたら「ele-kingを見て来た」と声をかけましょう。きっと良いことがありますよ......きっと。