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L.Pierre

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Mike Cooper

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三田 格   May 17,2013 UP

 戸川純@新宿ロフトの追加公演で久しぶりに"隣りの印度人"を聴いて、ポリティカリー・コレクトネスもクソもない誤解だらけのエキゾチズムが急に懐かしくなってしまった。アダモステあたりが最後になるのか、映画『愛と誠』でけたたましくカヴァーされていた"狼少年ケン"や、ボクダン・レチンスキーがホームレスをやりながらサンプリングしたらしきフザケた中国語の類いが"隣りの印度人"を聴いている間にまとめて記憶の彼方から押し寄せてきた。日本だけでなく、アラン・シリトーもアフリカ人は道に迷ったらドラムを叩いて知らせてくるさとか随分なことを書いていたし、デヴィッド・ボウイーのジャッジ役に笑い転げた映画『ズーランダー』ではいい加減な日本のイメージをわざと再現するなど(それでいてナイキを告発するというメッセージ性もあったりするんだけど)、人種ジョークはむしろ世界平和につながるだろーと思ってしまったり(最近では映画『ディクテイター(独裁者)/身元不明でニューヨーク』でも相変わらずサシャ・バロン・コーエンに笑わせてもらいました!)。

 そこへエイダン・モファットによるラッキー・ピエール名義の4作目である。かつてアロハ・ハワイの名義で10インチ・シングルをリリースしていたモファットがジャケット・デザインからしてグレッグ・マクドナルド『アロハ・フロム・ハワイ』をそのままパクり、片端からインチキなハワイのイメージで固めたエキゾチック・サウンドのバッタもんである。ハワイ王家がどのようにして滅びたかを描いたマーク・フォービー監督『プリンセス・カイウラニ』を観たばっかりだったので、 悲しくドラマチックにはじまる導入もとくに違和感はなく、ラフマニノフ"嬰ハ短調"のループから運命を叩きつけるようなパーカション、さらにはメロドラマ風の安っぽい旋律と、森山大道を思わせるダークなハワイが延々と続く。それこそやる気の出ない毎日や、やる気を出したところでなんになるのだろうかという気持ちがどんどん増幅されていく。悲しきハワイ。ブルーハワイ。あるいは昼メロのハワイがインスタントな感情を波打たせ、生きることはほかの誰かがやってくれると思わせてくれる。透き通るような運命論に翻弄され、それがいつしか快感へと変わり、クロージングではついにこの世の虚空に溶けていく瞬間が訪れる。トロピカルなのに終始物悲しく、過剰な自己憐憫が肯定される感じはさすがアラブ・ストラップ(解散はしていない)である。レイディオヘッドに疎外感を覚えたこともノスタルジーに感じられ、チープなサウンドはそのまま人生には実体がないことを確認させてくれる。

 また、10年ぐらい前に(マーティン・デニーと並び称される)アーサー・ライマンのエキゾチック・サウンドをまとめてカヴァーしていたマイク・クーパーが久々にリリースした新作も40年来のテーマである南の島をコンセプトとしてぶり返し、異様な南国ムードへとリスナーを導いていく。先日他界したロル・コクスヒルらとともにレシデンツを結成していた70代のギタリストだけにフリー・ミュージックやブルース、ジャズ、カントリー、近年はポスト・ロックも気楽に行き来し、あらゆる手法がイメージのために総動員される。そこはまだ未開の地であり、一見、パラダイスのようでありながら、何が出てくるかわからない恐ろしさを併せ持つ。一歩一歩=一曲一曲が未知の空間をイメージさせ、虫の声とループされたドローンによる「毎日の夕暮れ時」はそれこそ不安と安寧の二重構造を象徴する。いくつかの曲で繰り返されるディレイをかけたトゥワンギー・ギターだけが、いわゆるリゾート気分を準えるものであり、おどろおどろしいパーカッションや鐘のように鈍く鳴らされるベースは未開の地へ足を運んだ後悔を先取りさせてくれる。「肺がつぶれた」という曲ではもう死ぬしかないという気分になるだけで、何もかも放り出してどこかへ行ってしまいたいという感覚は見事に挫かれてしまう。これは一緒にいたくない人たちと過ごさなければならない毎日に戻っていくためのトロピカル・ミュージックなのだろう。こ んなものを聴いてしまうと諦めもつくというものである。

三田 格