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2013年、僕のiPodの再生数が多かったのは、The XXの『コエグジスト』、ロンドン・グラマーの『If You Wait』、ジェイムス・ブレイクの『オーヴァーグロウン』、そしてダークサイド『PSYCHIC』だった。こう並べてみると、いかにもBoilerroomを毎週チェックしている若者のようだけど、面白いのは、Boilerroomを見ている若者も、僕のようにさんざん遊び倒したシニア・クラバーも、いま本当に信頼できるパーティを作るにはもういちど原点に帰って、それこそ友だちが集まって作るしかないだろうと思っていることだろう、それこそBoilerroomが映すパーティのように。
ダークサイドの中心であるニコラス・ジャーもThe XXやジェイムス・ブレイク同様に20代前半であり、90年代の踊りっぱなしの時代を知らない若い世代のひとりとして、いま、ダンス・ミュージックを作っている。彼らのような世代が、ダンス・ビートを使ってリアルな音楽を作っているということに、シーンの途切れない強さを感じる。
ダークサイドのアルバムは、マッシブ・アタックの『ブルー・ラインズ』やポーティスヘッドの『ダミー』のように、緊張と弛緩が絶妙なバランスで成立している。そして、ダークサイドや彼らと同世代のアーティストは、思いや願いを鳴らしているように感じる。音楽を作ること、その先にあるものや結果が、以前のようにわかりやすくシンプルな成功ではなくなったこともひとつの理由だろうか。それでもダークサイドの音楽からは、この先になにが待っていようと、いまはこのサウンドを聴かせたいという思いが伝わってくる。
Boilerroomでのダークサイドのライヴをぜひ見て欲しい、ビルの屋上で演奏する彼らの後ろに見えるのは秋の黄昏に沈むニューヨーク。
http://boilerroom.tv/recording/darkside/
Boilerroomはよくわかっている。さまざまなロケーションでパーティが開かれているが、DJはつねにオーディエンスとの親密さのなかでプレイしている。ときには小さな部屋で数人ということも多い。
嵐に巻き込まれるようにして90年代のダンス・カルチャーを駆け抜けた世代と、そのムーヴメントを歴史の一部として想像力を働かせることでしか感じられない世代とのあいだには大きな違いがあって当たり前だ。しかし、大切なところは受け継がれていると、Boilerroomを見ていて思う。巨大なダンス・フェスや派手なラインナップが並んだパーティに違和感を持っているのは僕らの世代も彼らの世代も同じなのだ。そして、なにかが失われたと感じるのが僕らの世代であり、明日を夢見ることができるのが若い彼らの特権だ。
どちらも目指している場所は同じだ。より自由なのは彼らの方であり、誰も見たことがないパーティを実現することができるのも、もちろん彼らだ。パラダイス・ガラージから脈々とつながっているパーティ・カルチャーの何度目かのエクスプロージョンは、大規模なフェスやダンス・イベントからは起こらないだろう。たとえば下北沢のMOREのような小さなバーやBilerroomが開かれているようなスペースにしか本物の種は蒔かれない。
ダークサイドは年明けに北米からヨーロッパをまわるツアーをおこなう、4月にはオーストラリアを経由して香港までやってくる。日本まで来てくれないだろうか?
与田太郎