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倉本 諒 Oct 20,2014 UP
ウィリアム・ベネットのカット・ハンズ(Cut Hands)の新譜、リージス(Regis)ことカール・オコナーとエインシェント・メソッズ(Ancient Methods)の二人によるウガンダン・メソッズ(Ugandan Methods)と、ドミニク・フェルノーことプリュリエント(Prurient)によるコラボレーション盤が届いた。現在のインダストリアル・リヴァイヴァルの発端となった連中の新譜を聴きながらムーヴメントを改めて振り返るのもいいかもしれない。
まず、最初から薄々感づいていたのだけれども、このカット・ハンズの新譜、『フェスティヴァル・オブ・デッド(Festival of the Dead)』は例のごとく概出の曲がガンガン収録されていている。これ、そもそもダブルLPにしなくても入ったでしょ。
「勘弁してくださいよベネさ〜ん……4曲も被ってるじゃないスか〜」
「いや〜ローンの支払いがヤバくてさ〜、そこをなんとかしてよ! ね!」
みたいなやりとりがレーベルと彼の間にあったかは知らんけども。
とりあえず、これが果たして本当に“待望のスタジオ・フル・ダブルLP!”なのかどうか、この人の音作りとサンプリングのヴァリエーションの少なさは措いといたとしても、相変わらずカット・ハンズのトラックは心地いい。ポスト・コロニアル的世界観を構築するかのようなパーカッションによるポリリズム、粗い電子音と音響処理によるいつものサウンドのワッショイ系トラックは相変わらず健在ではあるが、『地獄の黙示録』のパトロール・ボートがメコン川を上っていくようなメロウなトラック群に強いて言えば前作よりも深みがある。ディヴァイン・ホースメン的なお馴染みのイラストレーションも相変わらずカワイイ。
そもそも劇的な進化をこのオッサンに求めるべきなのかどうか。ホワイトハウス→カット・ハンズは明らかに新たな音楽的境地ではあるのだが、そういえばホワイトハウスの音源はどれもかなり金太郎飴なサウンドだし、カット・ハンズもそうってことなのかしら? あ、でも金太郎飴を切ってる光景ってカット・ハンズっぽいよね。
そして前回のレヴューでコキおろしてしまったウガンダンメソッズが、スタジオで綿密に作り上げたトラックに、プリュリエントがそのスタジオの便所で叫んだりウィスパーしたりしてるような『ダイアル・B・フォー・ビューティー(Dial B For Beatuty)』。この場をかりて深くお詫び致します。僕、これとても好きです。
過去のウガンダン・メソッズの音源と同じく、昨今の雰囲気系インダストリアルとは一線を画すトラックの秀逸なコンポジションはハード・ミニマルにおける長年の歴戦を充分に感じさせるものであるし、安直にフィルターに頼らない展開や、限定的なエフェクト処理による徹底的に乾いた音作りは既存のテクノに寄らない姿勢すら感じさせる。毎度この合体ユニットの細かいこだわりを貫き通す制作には、感服いたします。