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Lil Ugly Mane

Hardcore PunkHip HopMetal

Lil Ugly Mane

The Weeping Worm

Ormolyca / self-released

bandcamp

倉本諒   Dec 03,2014 UP

 ヴァージニア州リッチモンド在住のトラックメーカー兼ラッパー、トラヴィス・ミラーa.k.a.ショーン・ケンプによるリル・アグリー・メイン(Lil Ugly Mane)。残念ながら現在アクティヴではないようだ。トラヴィスはこのプロジェクトを封印してしまったらしい。この音源はわれわれにも馴染み深い日本人アーティストもリリースしている〈オーモリカ(Ormolyca)〉からの彼のダイイング・メッセージなのかもしれない。でもソノシートであり、フィーチャーされるメンツも相まって随分とスカムなメッセージではある(もちろんデジタルも販売中)。 一昨年にリリースされたホアクス(HOAX)とソーン・レザー(SEWN LEATHER)のスプリット音源、ヴィジュアル・アーティストのヴィニー・スミス(彼はなぜかくだんのソーン・レザーことグリフィンとともにこの夏、日本をドリフトしていた)によるアートワークが素晴らしかったソノシートといい、やる気のないフォーマットでの名盤というのもアホで最高だ。

 じつは、なぜか昨年のクリスマスはリッチモンドに滞在していたのだが、なんとも平穏な町であった。もとい不気味な平穏なのかもしれない。新興住宅と、巨大なモールとホームセンター、空き地、の繰り返しで構成される小きれいな町並みは刺激的とはいいがたい。
ここに住むトラヴィスの周囲にいいシーンがあるのだろうか?
 インターネット世代以降による新たなミュージック・シーンは近年のアメリカン・ラップ・ミュージックにも顕著に表れている。たとえばヴェイパーにおけるヴァーチャルの恐怖被害妄想を肉体的に具現化させてしまったようなデス・グリップスはその業を背負ったまま殉教してしまったが地下シーンはどうなっていたのだろう。

 ソーン・レザーとのかつてのクラスティー・ラップ・ユニット、ドッグ・レザー(Dog Leather)を経たDJドッグ・ディック(犬チン)はウィッチ・ハウスノリの歌モノから現在のニュー・メタル、ミクスチャー・リヴァイヴァルを想起させるような(恥ずかしいんだけども書くべきなのか迷っているテーマなのだけれども)スタイルに進化させているようだ。
 ブラセット・リサーチのイケてるシンセに蛆が這う最新PVはこれ。

 くだんのリル・アグリー・メインは生粋のスカム・ノイズ野郎であり、ソーン・レザーやDJドッグ・ディックとは長年近しいシーンをドリフトしていたようなので、この音源に収録されるトラックのような蛍光色の煙にまかれるような見事なコラボレーションを過去にも残している。
 LAのゴス/ウィッチ・ラップともいえる今日的なスタイルを実践するアントウォンもフィーチャーされるが、近年のLAのラップ・ミュージックで言えば僕は個人的にクリッピング(Clipping)の登場で他が霞んでしまっているんだけれども。
 アントウォンとLAのゴス・パーティに生息するようなキッズが制作したPVはこれ、なんだけども……。

 さらに飛躍して個人的に近年の若手であればこちらもアグリー・メインと親交の深いフロリダのデンゼル・カリー(Denzel Curry)のような方向性がサグいので好みである。

 しかしくどくどと紹介した以上をすべて押しのけるほどアグリー・メインのプロダクションとラップは素晴らしい。スクリューに乗る細かなハットと最高に邪悪に響く聴こえるカウベルの中毒性なのか、アメリカの若者のドリフター・ライフスタイルを象徴するような孤独なリリックなのか、彼のトラックには不思議と飽きることがない。彼の引退は少々早過ぎるのではないだろうか、と後悔は尽きぬが、同レーベルからリリース予定の豪華絢爛なボックス・セットの噂を聞けば、彼がいかにさまざまなシーンからリスペクトされ、僕と同じように帰還を求められているのかということがうかがわれる。

倉本諒