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Gabriel Garzón-Montano

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Gabriel Garzón-Montano

Jardín

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小川充   Feb 23,2017 UP

 昨今はメイヤー・ホーソーンや彼とジェイク・ワンによるタキシード、デイム・ファンクに昨年のノー・ウォーリーズ(アンダーソン・パーク×ノレッジ)のアルバムなどの成功で、そもそもの出発点であるヒップホップよりも、ソウルやファンク、モダン・ブギーのレーベルという印象が強い〈ストーンズ・スロウ〉。この度アルバム『ジャーディン』で登場したガブリエル・ガルソン・モンターノも、〈ストーンズ・スロウ〉のソウル路線を担うアーティストということになる。シンガー・ソングライターでマルチ・プレイヤー/プロデューサーのガブリエル・ガルソン・モンターノは、2013年にEPの「ビショーヌ:アルマ・デル・ウィラ」でデビュー。このEPは、レニー・クラヴィッツやマドンナ、ミック・ジャガーらを手掛けたことで知られるヘンリー・ハーシュがエンジニアを務めたが、ハーシュは音楽学校時代に師事していたという間柄である。レニー・クラヴィッツは「ビショーヌ:アルマ・デル・ウィラ」について賞賛し、ヨーロッパ・ツアーに帯同させていたが、同様にメイヤー・ホーソーンもこれを気に入った。彼の北米ツアーの前座に起用され、そうした縁がきっかけで〈ストーンズ・スロウ〉からアルバムを出すことになったようだ。

 確かにガブリエル・ガルソン・モンターノには、メイヤー・ホーソーンのヴィンテージ・ソウルに通じるところも一部あるが、一般的なアメリカの王道ソウルやR&Bというより、もっといろいろな要素が融合され、多様性の中から生まれてきた音楽という感じがする。もともと黒人音楽であるソウルだが、今はホーソーンのような白人が黒人以上のことをやっているし、ラテンやチカーノといった、黒人とはまた異なる人種のやるソウルもある。多民族国家のアメリカならではのソウルの発展ということになるのだろうが、ガルソン・モンターノはコロンビア人の父とフランス人の母の間に生まれたニューヨークっ子。人種の坩堝であるブルックリンを象徴するような家系で、幼少時代からヴァイオリン、ギター、ドラム、ピアノ、ベース演奏などを習得し、パーチェス・カレッジ音楽院でジャズの作曲や音楽理論なども学んでいる。彼の作り出すソウルは、ジャズやファンク、そしてヒップホップの要素などを加えたネオ・ソウルの系譜にあたるのだろうが、さらにラテン音楽やポップス、AORなどの要素も絶妙に織り込まれ、単純にどの分野の音楽と括ることができない豊潤さを持っている。「ビショーヌ:アルマ・デル・ウィラ」を聴いたとき、個人的には〈ブラウンズウッド〉からも作品を出すディグス・デュークとか、チリー・ゴンザレスやファイスト、ミゲル・アトウッド・ファーガソンらと共演するモッキー、オランダのベニー・シングスあたりに近いイメージを感じた。〈ブラウンズウッド〉のジャイルス・ピーターソンもガルソン・モンターノを評価していたのだが、そうしたカテゴライズできない音楽性、ポップ・ミュージックとしての良質さや品の高さを理解していたからだろう。

 初めてのフル・アルバムとなる『ジャーディン』も、ヘンリー・ハーシュのエンジニアリングにより、ニューヨークにある彼のスタジオで制作された。「ビショーヌ:アルマ・デル・ウィラ」を引き継ぐ制作手法で、ガルソン・モンターノはドラム、ベース、ギター、ピアノ、シンセなどを全てひとりで演奏する。それらを録音したアナログ・テープに、今度はパーカッションや自身のヴォーカル、プログラミング・サウンドを何度も多重録音し、そうやってサウンドを完成させていく。こうした制作手法も、前述のディグス・デュークらに共通するものだ。オープニングの“トライアル”は、幼少からやっているヴァイオリンやピアノ演奏が生かされた、クラシカルな匂いのするイントロダクション的小曲。アルバム最後の多重コーラスを生かした“ララバイ”と対になる上品な作品である。ハンドクラップを交えたヒップホップ・ビートの“サワー・マンゴ”は、アルバムの中ではもっとも〈ストーンズ・スロウ〉のカラーが強いだろうか。この曲や“マイ・バルーン”あたりは、エレクトリックなサウンドとオーガニックな楽器群が絶妙にブレンドしたものだ。“ザ・ゲーム”や“クロール”もビート感の強い曲で、かつてヒップホップにもリンクする楽曲を作っていたベニー・シングスやモッキーとの共通項と言えるだろう。同時にメロディ・メイカーとしての才能も感じさせる親しみやすい曲であり、“クロール”などを聴くとメイヤー・ホーソーンが彼に惚れこんだ理由がわかるだろう。

 一方“フルーツフライズ”は、AORともソウルともつかない何とも形容しがたいポップ・サウンド。通常にはない特異なコード進行やメロディ・センスがあり、このあたりがガルソン・モンターノのサウンドの真骨頂である。“ボンボ・ファブリカ”はラテンやフォークロア的な性質が表われた楽曲で、アメリカの白人や黒人とはまた違う感性による楽曲の代表だろう。“ロング・イアーズ”でのドラム、パーカッション、打ち込みなどを複合させたトラック・メイカーとしてのスキルもなかなかのもの。スウィートなワルツ・バラードの“カンティガ”などに顕著だが、ストリングスの編曲も彼の大きな武器のひとつで、それによってミゲル・アトウッド・ファーガソンにも通じる奥深くて繊細な表現を手に入れている。エモーショナルとは逆のベクトルで覚醒し、二歩も三歩も引いた感じのあるソウル・ミュージックという点では、よくあるアンビエントなR&Bと同質なのかもしれないが、サウンドの豊潤さや深みは比べものにならないし、よく作り込まれた丁寧な作品である。

小川充