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Ninos Du Brasil

BatucadaDarkwaveTechnotribal

Ninos Du Brasil

Vida Eterna

Hospital Productions / La Tempesta International

bandcamp Tower HMV Amazon iTunes

行松陽介   Oct 31,2017 UP

 イタリア人DUOユニットNinos Du Brasilの3枚目のアルバム。1曲目の“O Vento Chama Seu Nome”で驚いたのは、ヴァーカル・スタイルが大阪のSUSPIRIAやbonanzasの吉田ヤスシ氏に似ていることで、以前SENYAWAが出てきた時もそっくりだと皆が声を揃えていたことを思い出します。この抑えたヴォーカル・スタイルがダークな雰囲気を醸し出すのに一役買っています。シームレスに2曲目へと移行し、BPMはそのままで同じフレーズまで使われているので中盤のブレークまで気付かないこともしばしば。なのでそのままDJで2曲続けてかけても誰も気付かないでしょう。

 A4“Algo Ou Alguém Entre As Àrvores”は先行12”「Para Araras」にも収録されている楽曲ですが、グッとBPM(100)を抑え、持続する詠唱、演説めいた声、原始的な吠えるような声などが挿入されながら、儀式的旋律が高まるに連れてピークを迎えるこの楽曲は、個人的にお気に入りです。B2“A Magia Do Rei II”が「II」と題されているのは、先ほどと同じ先行12”のA面に「I」が収録されていて、そちらにはヴォーカルが入っていません。細かく動き回るベースラインなどの骨格は同じで、そこにヴォーカルやパーカッションで肉付けしたものが「II」となっています。なので「I」はDUB versionという感じで、尺も1分ほど長いです。どことなくオリエンタルなムード漂う旋律がテーマとなっているB3“Em Que O Rio Do Mar Se Torna”はBPM110でどっしりと重いイーヴンキックが刻まれ、その上をポコポコとパーカッションが鳴り、テーマ旋律が現れては消えていきます。

 Ninos Du Brasilのアルバムでfeat. Arto Lindsayという記述を見れば、誰もがあの痙攣ギターの音色とNinos Du Brasilのアグレッシヴな楽曲の融合を期待すると思いますが、最後の曲という点で、そうではないだろうという予想もしていました。アートはアルバム中で最も落ち着いた、若干アブストラクトなサウンドの上でパーカッションが響く楽曲に、官能的な歌声を添えています。彼らのコラボレーションがどのようにして実現したのか、その経緯がひょっとすると載っているかもしれないと、13年ぶりにソロ・アルバムを発表したアートを丸々特集した本『アート・リンゼイ 実験と官能の使徒』を読んでみましたが、見当たりませんでした。しかしこの本の充実ぶりは素晴らしいと思います。カエターノ・ヴェローゾとアートがゴダールやジェイムス・ブレイク、ディアンジェロについて語っている部分などはとても刺激的で、アートファンのみならず、音楽ファン必読の内容となっています。

 2014年に初めて〈Hospital Productions〉から発表した2ndアルバム『Novos Mistérios』では、そのユニット名にふさわしくブラジルのカーニバルの影響色濃いパーカッシヴな疾走感のあるサウンドで、このレーベルにしては陽気なサウンドと言えるものでした。その後〈DFA〉から12”「Aromobates NDB」を、そして再び〈Hospital Productions〉から12”「Para Araras」をリリース。作品を追うごとに少しずつダークなサウンドへと、あたかもレーベルカラーに染まっていくかのように、傾倒していっているように感じます。依然としてパーカッシヴではあるものの、カーニバル感は後退し、何かの儀式めいた音楽のような感じが強まっています。そのように感じる要因は何なのかと考えました。

 まずひとつにはクイーカの音の使用の有無が考えられます。この楽器の音が入ると一気にカーニバル感が出ますが、クイーカと言われてもどんな楽器なのか、どの音がクイーカの音なのか、わからない方もいらっしゃると思いますので、参照リンクを貼り付けておきます。音だけ聴いてもどんな楽器なのか想像しづらいと思います。2ndアルバムでは“Miragem”と“Essenghelo Tropical”の2曲でクイーカの音が使われていますが、それ以降クイーカの音は一切使われていません。

https://www.youtube.com/watch?v=t9xlRJbIfmk

 もうひとつは音のバランスが変わっていて、前作ではパーカッションが主体のMIXでしたが、今回はベースドラムの音がより重く、より太くなり、大きな音でMIXされていて、それに加えて前作よりも不穏な和声がそこかしこに登場し、ベースドラムにまとわりつくかのように持続することがダークな儀式感を強めている要因と考えられます。パーカッションからベースドラムへと音の比重が移ることによって、全体的に重心がグッと下がっています。前作は比較的乾いた、カラッとしたサウンドの印象でしたが、今作ではやや水分を含んで重たくなったかのような、ジメッとした熱帯雨林、60%はブラジルの領土にあるというアマゾンを想起させるサウンドになっているのも、その比重の変化と怪しげな持続音の多少によるものでしょう。

 事実“Condenado Por Un Idioma Desconhecido”のPVは、どことも知れぬジャングルの奥地にふたつの棺桶が転がっていて、その中でふたりが歌い、最後には棺桶から出てくるという趣で撮られていて、それはアルバム・タイトルの『Vida Eterna(永遠の命)』を表現しているものと思われますが、ジャケットの絵はおそらくコウモリ。とするならば、彼らはヴァンパイアなのかもしれません。ヴァンパイアといえば、『パターソン』も素晴らしかったジム・ジャームッシュの回転するレコードのクローズアップで始まる『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』を思い出しますが、音楽映画としても興味深い作品ですので、オススメです。

 このアルバムのタイトルの意味を調べていて、イタリア語とポルトガル語が同じ綴りで同じ意味である場合があるということを知り、イタリアとブラジルという遠く離れた国同士の共通点が垣間見えました。最後の曲にカエターノ・ヴェローゾをプロデュースしたこともあるアートをゲストに迎えたのも、彼らなりのブラジルという国で生まれた音楽への敬意の表れなのかも知れません。

 短い言葉でこのアルバムを表するなら、トライバル・ダーク・ウェイヴでしょう。次作ではベースラインがうねり始める事を期待します。

行松陽介