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Phony Ppl

FunkHip HopSoul

Phony Ppl

mō'zā-ik.

300 Entertainment / Pヴァイン

Tower HMV Amazon iTunes

小川充   Feb 13,2019 UP

 日本盤CDが発売されるのは本作『モザイク(mō'zā-ik.)』が初で、先ほど初来日公演も果たしたフォニー・ピープル。デビューしたての新しいバンドというわけではなく、2008年の結成からミニ・アルバムを含めて通算4枚目のアルバムが『モザイク』で、既にかなりのキャリアを積み上げている。それら自主制作のアルバムやミックステープなどは耳の肥えたリスナーの間では高い評価を獲得していて、今回のCDリリースに際してもジ・インターネットと比較されている。初期はジョーイ・バッドアス率いるプロ・エラ軍団はじめ、フラットブッシュ・ゾンビーズやジ・アンダーアチーヴァーズなどブルックリンのヒップホップ・ユニットとの活動により、ビースト・コースト・ムーヴメントを牽引するヒップホップ・バンドという印象が強かった。これまでもリトル・シムズ、マック・ミラー、プリンセス・ノキアらのバック・バンドを務め、チャンス・ザ・ラッパーと共演するなどしてきた。しかし彼らの名前を広めた『フォニーランド』(2012年)から、アルバムごとにソウルやR&Bの色を強め、現在では新感覚のネオ・ソウル・バンドとかフューチャー・ソウル・バンドというほうがしっくりくるだろう。

 フォニー・ピープルは単にR&Bやソウルという枠に収まらない幅広い音楽的要素や表現力をどんどんと身につけ、これまでのアルバムを振り返ると作品ごとに音楽的成熟度が増していることがわかる。ブラック・ミュージックを基調にしながらもロックやAORなどの影響もあり、ジャズやフュージョンの流れを汲む高度な演奏力を見せる場面もある。『モザイク』の前作となる『イエスタデイズ・トゥモロー』(2013年)には完全なインスト・ナンバーも収録されているが、演奏技術的にはジ・インターネットより上手かもしれない。2012年のミニ・アルバムの『ナッシング・スペシャル』あたりに顕著だが、ソング・ライティングに関してもかなり複雑で実験的な試みをおこなっていて、同じブルックリンを拠点とするジェシー・ボイキンス3世とかテイラー・マクファーリンに通じる部分もある。ヴォーカル&コーラス・アレンジもかなり凝っているが、そうした音楽的高度さを持ちながらも、一方でポップな親しみやすいところがあるのがフォニー・ピープルの強みで、そのあたりはスティーリー・ダンを引き合いに出してもいいかもしれない。そして、たとえトラップやジュークなどを取り入れた曲を作っても、彼らの作品の根底にはソウルフルで暖かなグルーヴが流れていて、どのアルバムにもギターの弾き語りのようなアコースティックな曲がひとつふたつ収録されている。

 ニュー・アルバムの『モザイク』は、メロウで幻想的なオープニング曲の“ウェイ・トゥ・ファー”で始まる。続く“ワンス・ユー・セイ・ハロー”はサンバ・ビートによるラテン・フレーヴァー溢れるナンバーで、ジャジーなサックスが味付けをおこなう。“サムシング・アバウト・ユア・ラヴ”はポップなAOR風のナンバーで、変則的なリズム・パターンを叩くドラムにロック風のギター・ソロもある。少々凝った演奏、一風変わった演奏でも、彼らの手にかかると親しみやすいものへと変貌する。この曲はヨット・ロック風の“ムーヴ・ハー・マインド”や“イーザー・ウェイ”と共に、『モザイク』には1970年代のロックからの影響が大きいとインタヴューで述べていたことを示すものだ。“ザ・カラーズ”のようなヒップホップ・バンドらしい重厚な曲もあるが、印象深いのはワルツ調のリズムによる浮遊感溢れる“クッキー・クランブル”。ギター、ピアノ、ストリングスがクラシカルなムードを漂わせるこの曲は、ビートレスに近いバレアリックな“ワン・マン・バンド”と共にアルバムの中でもっともブラック・ミュージックから離れた曲で、フォニー・ピープルの音楽性がいかに幅広いかを物語る。“シンク・ユーアー・マイン”はギターの弾き語りによるフォーキーなナンバーで、シンプルでローファイな作りながらコード進行などなかなか面白い面も見せている。“ビフォア・ユー・ゲット・ア・ボーイフレンド”は彼らなりにトラップも意識した曲だろうが、それよりも1980年代のヨット・ロックやAORの影響が色濃いなと感じさせる。ラストの“オン・エヴリシング・アイ・ラヴ”は警察の暴力で命を落としたアフロ・アメリカンを弔う鎮魂歌だが、楽曲自体はストリングスと歌で綴るビートレスの美しいバラードとなっている。全体的に彼らの基盤にあるソウルやブラック・ミュージックよりも、ロックやAORといったほかの要素が顕著となり、ますます多様な音楽性を抱合したバンドになった印象を与える作品だ。

小川充