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2016年11月18日

小林拓音  
写真:岩沢蘭   Dec 15,2016 UP

 去る11月18日におこなわれたバッドバッドノットグッド(以下、BBNG)の単独来日公演は、音楽性はまったく異なるけれど、先日のフローティング・ポインツの来日公演に次いで今年最も注目を集めたライヴだったのではないだろうか。BBNGという「ジャズ」・バンドが持つ最大の武器は、その飾り気のなさであり、あるいはその素朴さである。今回のかれらの公演は、そのことを証明するとても陽気なショウであった。

 学生ノリ、と言えばいいのだろうか。とにかく煽る、煽る。アレックス・ソウィンスキーはドラムをタカタカと叩きながら、折に触れて言葉を発していた。彼は何度も「スクリーム!」とスクリームし、最初は戸惑っていたオーディエンスも徐々にその意図を察して、「オー!」とレスポンスを返しはじめる。その後も彼は聴衆に手拍子を求めたりジャンプを求めたり、最後にはステージ上から会場のみんなと記念撮影をおこなったりと、ライヴはさながら学芸会の様相を呈していた。いや、たしかに事前に、一緒に行ったガースーこと菅澤捷太郎から「BBNGはライヴでけっこう煽るんですよ」という話は聞いていた。しかし、これほどとは……演奏が崩れる瞬間も何度かあったものの、バンドはそんなことなど一向に気にする気配もなく、ノリだけでずんずんずんずんショウを進めていく。

 一緒に行ったガースーもレヴューで書いていたように、BBNGの最新アルバム『IV』ではドラムのサウンドにきめ細やかな配慮が施されていた。しかし、実際に会場で耳にしたアレックス・ソウィンスキーのドラムは予想以上にロック系のそれで、シンプルな8ビートが刻まれることも多く、ときおりドラムンベース的なリズムが挿入される場面もありはしたものの、少なくともジャズ系のドラムではまったくなかったように思う。そのドラムが彼自身による煽りのMCと相乗効果を生んで、より一層今回のライヴの雰囲気を学芸会的なものに仕立て上げていたのではないだろうか。

 と、そんな風に僕は感じていたのだけれど、一緒に行ったガースーの感想は違った。「シンバルの扱いはたしかにロックだったけれど、基本的にはジャズ寄りの演奏だった」とガースーは言う。「たしかに盛り上げっぱなしでダイナミクスに欠けるライヴだったけど、ドラムの音色というか、その響かせ方は良かったと思う」。なるほど。「でも、リズムはやっぱり単調だったよね?」と問うてみると、「バスドラがリズム・キープを放棄してシンバルが代わりにそれをやる、という昨今のソリッドなドラム・スタイルではなく、きちんとバスドラが根幹にあるふくよかな演奏で、その上でタムを回して遊んでいたんじゃないか」との答えが返ってきた。だからぱっと聴いた感じは単調に聴こえてしまうんだそうで、でもそれはおそらくアレックス・ソウィンスキーが最近のドラマーではなく70年代のジャズ・ドラマーを手本にしているからなのではないか、と一緒に行ったガースーは分析していた。さすが、現役のドラマーである。

 ともあれ、ドラマーではない僕は終始アレックス・ソウィンスキーの叩くドラムと煽りに圧倒されていたわけだが、リーランド・ウッティーによるサックスはなかなかどうして、目を見張るものがあった。ライヴ序盤はあまりにも音量が埋もれていたので心配していたのだけれど、曲目が進むにつれ他のパートと遜色のない音量が出るようになり、ソロ・パートではとても興味深いリズムが吹き鳴らされていた。その豊かなサックスのリズムを「単調」なドラムが相殺してしまっているように聴こえる瞬間もあったけれど、そういう高音と低音の間のバトル=特別な揺らぎを発生させることこそがBBNGの狙いだったのだとしたら、今回のライヴは大成功だったと言えるだろう。『IV』からバンドに加入したリーランド・ウッティーこそがBBNGの未来を握っているのかもしれない。

小林拓音

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