ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Aphex Twin ──30周年を迎えた『Selected Ambient Works Volume II』の新装版が登場
  2. John Cale - POPtical Illusion | ジョン・ケイル
  3. Jeff Mills ──早くも送り出されたジェフ・ミルズのニュー・アルバムはメンタル・ヘルスを守ることがテーマ
  4. interview with John Cale 新作、図書館、ヴェルヴェッツ、そしてポップとアヴァンギャルドの現在 | ジョン・ケイル、インタヴュー
  5. FUMIYA TANAKA & TAKKYU ISHINO ——リキッド20周年で、田中フミヤと石野卓球による「HISTORY OF TECHNO」決定
  6. Iglooghost ──“Z世代のAFX/スクエアプッシャー”、イグルーゴーストが新作を携えて来日
  7. Amen Dunes - Death Jokes | エーメン・デューンズ
  8. Natalie Beridze - Of Which One Knows | ナタリー・ベリツェ
  9. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  10. 『蛇の道』 -
  11. Burial / Kode9 ──ベリアルとコード9によるスプリット・シングルがサプライズ・リリース
  12. A. G. Cook - Britpop | A. G. クック
  13. Cornelius ──コーネリアスがアンビエント・アルバムをリリース、活動30周年記念ライヴも
  14. R.I.P. Steve Albini 追悼:スティーヴ・アルビニ
  15. dialogue: Arto Lindsay × Wataru Sasaki 特別対談:アート・リンゼイ × 佐々木渉
  16. talking about Aphex Twin エイフェックス・ツイン対談 vol.2
  17. Adrian Sherwood presents Dub Sessions 2024 いつまでも見れると思うな、御大ホレス・アンディと偉大なるクリエイション・レベル、エイドリアン・シャーウッドが集結するダブの最強ナイト
  18. ドライブアウェイ・ドールズ -
  19. Larry Levan 70th Birthday Bash ──ディミトリ・フロム・パリ、MURO、ヴィクター・ロサド、高橋透、DJ Noriらがラリー・レヴァン生誕70周年を祝う
  20. Beth Gibbons - Lives Outgrown | ベス・ギボンズ

Home >  Reviews >  Album Reviews > Twin Sister- Color Your Life

Twin Sister

Twin Sister

Color Your Life

Infinite Best

Amazon iTunes

野田 努   Aug 17,2010 UP

 これはもう......チルウェイヴというよりもステレオラブである。クラウス・ディンガーのドラミングをさらにライトにして、コクトー・ツインズめいたギターが煌めいているなか、女は息を吹きかけるように歌っている。1曲目の"ジ・アザー・サイド・オブ・ユア・フェイス"はクラウトロックのドリーム・ポップ・ヴァージョンだ。お洒落だが、イージーではない。そして2曲目の"レディ・デイドリーム"を聴きながら、昼の1時になると缶ビールを手にしてしまう自分がいる、というわけだ。この猛暑を楽しむには、このぐらいのことをしなければ......。まるでこんな気持ちを先回りするように、"レディ・デイドリーム"は涼しい水の音で終わっていく。ロング・アイランド出身のブルックリンの4人組はなかなかツボをわかっている。
 "ミルク&ハニー"はどう聴いてもビョークからの影響だ......が、曲の展開にはステレオラブ的な軽快さがあり、音は窓の外の眩しい光に溶け込んで、聴き惚れているうちに思わず冷蔵庫に手が伸びてしまう。いかんいかん。大人のソーダ水だからといってもほどほどにしないとな......。
 問題は"オール・アラウンド・アンド・アウェイ・ウィ・ゴー"だ。これをチルウェイヴと呼ばず何と言おうか。この曲はディスコビートに乗ったフレンチ・ポップであり、キラキラとしたキッチュな夢想である。続く"ギャラクシー・プラトー"は、バンドの音楽的野心を示すドローン/アンビエントの曲で、1970年代初頭のクラスターに接近する。最後の曲"フェノメノンズ"もまたチルウェイヴィな曲だが、洗練されていて、このバンドの底力を感じる......そしてその前に、大人のサイダーをもう1本手にしている自分がいる、というわけだ。無理もない。この素晴らしい天気になんともドリーミーな音楽、そして夏のあいだ自分はひとりだ。
 ツイン・シスターに限らず、おおよそUSインディ・シーンは夢から醒めようとしない。キャンディ・クロウズのアルバムには早くもポスト・アニマル・コレクティヴの予兆を感じる。まどろみのなかで新しい場面が着々と用意されているようである。
 
 ツイン・シスターのこれはまだミニ・アルバムだ。ウォッシュト・アウトと同様に、というか、その他多くのUSインディと同様に、ヴァイナルが先行発売されて、デジタルはパスワードでダウンロードするという仕組みだ。この形態は、この1~2年でゆっくりだがUSインディ・シーンで拡大している(日本では誰が、どこがそれを先にやるのだろう)。
 アルバムのなかにはインサートが1枚あるが、そこには家のなかのカラフルな部屋の写真がいくつかデザインされている。そのあたりの感覚は、僕にとって今年のベストな1枚、ビーチ・ハウスの3枚目とも近いと言えば近いのかもしれない、が、ツイン・シスターのほうがポップでファッショナブルである。より多くの人間がアプローチできるのはこちらのほうかもしれない。ヴァンパイア・ウィークエンドは数年後に中古屋に出回るだろうけれど、ツイン・シスターは......、まあ、微妙なラインだろう。逆に言えばそれだけポップということで、そしてこの手のベッドルーム・ポップは今後もっとたくさん出てくるのだろう。

野田 努