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アメリンカン・ノイズ・(ノット・)ミュージックを多種多様に変容させてきたロードアイランド州プロヴィデンスのアンダーグラウンド・シーン。そこで多くの時間を過ごしてきたレン・スコフィールドことコンテナーのなんちゃってテクノ系最高峰サウンド、〈スペクトラム・スプールズ〉から第3枚めのLPが登場だ。
アラブ・オン・レイダーやライトニング・ボルトなどのポスト・ハードコア/ローファイ・インディ・サウンドの全盛期であったゼロ年代のプロヴィデンスでティーネイジャー時代を経たレン(ちょっと待て、この写真で見るオッサンは俺とたいして歳が変わらないってことか……?)にとって、すでにハードコア・パンクやエレクトロやEBM、ヒップホップといったボーダーが溶解し、渾然一体と化したカオスが原風景であっただろうことは想像に難くない。
ジャパニーズ・カラオケ・アフターライフ・エクスペリメント、ダイナスティー、ギャング・ウィザード、マーシー・ライト等、プロヴィデンスの地下シーンで活動していた数多くのバンドでドラマーとしてプレイしてきたレン、カオティックなアンダーグラウンド・シーンの中で育った彼が、ノイズ・ミュージシャンとして自身のキャリアをスタートさせたことはいたって自然な流れのように思える。エンジェルス・イン・アメリカやロシアン・ツァーラグ、そしてレンのコンテナーなどプロヴィデンスのローファイ第2世代とも呼べるようなノイズをまき散らしていたかつてのキッズたちが、現在は新たなUSインディ・サウンドを牽引しているのは非常に興味深いことだ。
コンテナーはいまも昔も“彼にとっては”直球のテクノ・プロジェクトなのだ。現在、アメリカ南部の原風景がなお残るナシュヴィルで共に暮らすガールフレンドが自宅やパーティのDJでかけるエレクトロやテクノを耳にする以外、彼はいわゆるダンス・ミュージックというものを自ら聴くことはなかったという。そんな彼が、とある晩のパーティで彼女が回したダニエル・ベルの“ルージング・コントロール”を耳にしたときから彼は一気に変テコ・ダンス・ミュージックにのめり込んだのだとか。
またジャン・スヴェンソンことフラック(Frak)との出会いも彼にとって大きな衝撃であったそうだ。僕も数年前にブルース・コントロールのふたりの家で年末を過ごしていた際に、彼らが所有していた〈Börft Records〉(ジャンが主宰)の膨大なカセット・コレクションを一気に聴いて、ものすごい衝撃を受けた。80年代のスウェーデンでおそらく世界一早く実験電子音楽とテクノをローファイ・変テコ・カセット・テクノ・レーベルとして始動させていたド変態である。30年を経てようやく時代が追いついたこのレーベルは、現在も絶賛稼働中なのでこの手のサウンドのファンには最近おなじみでは?
話をコンテナーのアルバムに戻そう。彼がソロ・プロジェクト、ゴッド・ウィリング(God Willing)としてノイズ・ミュージックを手掛けてきたキャリアを見事に反映するコンテナー。そのFSU(ファック・シット・アップ!)サウンドの圧倒的な耳ざわりのよさ、ダンスフロアを長い時間沸かすだなんて考えたこともないがゆえにコンパクトかつ凝縮された密度を持った無駄のない展開、ベテラン・バンド・ドラマーにしか組むことができないであろうリズム・パターンのロックンロールなグルーヴ、MC-909と4トラ・カセットMTRにクソ・エフェクターのみというハードウェア縛りの限られたルールの中でも前作から見事に進化を遂げているこのアルバム。これぞなんちゃってテクノの最高峰。クラブでこれかかったらナンパは中断して全員暴れろ!
倉本諒