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Nite Jewel

Nite Jewel

Real High

Gloriette

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小川充   Jun 02,2017 UP

 ナイト・ジュエルことラモーナ・ゴンザレスの2016年の活動を見ると、まず彼女の名を一躍広めた傑作アルバム『ワン・セカンド・オブ・ラヴ』(2012年)から4年ぶりの通算3作目『リキッド・クール』があったわけだが、そのリリースを挟む形でラッパーのドループ・E(US西海岸のラッパーの始祖的存在であるE-40ことアール・スティーヴンスの息子)とAMTHSというヒップホップ・ユニットをやっていたかと思うと、長年に渡って協力関係にあるデイム・ファンクと、ナイト・ファンクというシンセ・ファンク~モダン・ブギーのユニットでEPをリリースし、とても充実した1年だったと言える。2017年に入っても、ヒップホップのビートメイカーであるエルーシヴがジャズに挑戦した『フュージョン・スウィング』に参加し、オマー・Sのディープ・ハウス“コンフェス・トゥ・U”にフィーチャーされるなど、ますますレンジの広い活動をおこなっている。そうした中、『リキッド・クール』から1年という比較的短いインターヴァルで新作『リアル・ハイ』がリリースされた。

 〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉、〈セクレタリー・カナディアン〉、〈メキシカン・サマー〉など、さまざまなレーベルから作品を出すナイト・ジュエルだが、今回は『リキッド・クール』に引き続いて自身のレーベルである〈グロリエッテ〉からのリリースである。ラモーナの夫でデビュー以降一貫して共同制作をおこなうコール・M.G.N.がプロデュース、作曲、ミックスなどでサポートするほか、デイム・ファンク、ジュリア・ホルター、ドループ・Eなど彼女のコラボレーターたちが揃って参加している。アリエル・ピンク、サンプスからベックの作品にまで関わるコールは、デイム・ファンクとスヌープ・ドッグのコラボから、ナイト・ファンク、ジュリア・ホルターの作品にもプロデューサーとして関与しており、そんな関係の深い面々が集まったアルバムである。『ワン・セカンド・オブ・ラヴ』の頃はチルウェイヴの一種とも見なされ、シンセ・ポップ系からアコースティック系作品までやっていたのだが、『リキッド・クール』ではそのシンセ・ポップにグッと寄った作風となっており、またデイム・ファンクとの交流からシンセ・ファンク調の作品も増えていた。『リアル・ハイ』はそうした路線をさらに推し進め、またポップ・センスにさらに磨きを掛けている。

 デイム・ファンクがギター・シンセで参加した“ハドゥ・トゥ・レット・ミー・ゴー”は、AOR風味のメロウなシンセ・ブギーで、ラモーナのソフトで優しい歌声をうまく生かした作品である。現在であればライやインクなどに通じる作品であり、シャーデーからの影響も伺えるだろう。“2・グッド・2・ビー・トゥルー”も同系の80sタッチのシンセ・ブギーながら、よりダンサブルな曲となっている。こうしたダンス・トラックは、やはりナイト・ジュエルでの経験が反映されているのだろう。“ジ・アンサー”は〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉での仲間にあたるクロマティックスに近いシンセ・ディスコで、“アイ・ドント・ノウ”も1980年代のシンセ・ポップの雰囲気を落とし込んだ作品。ジュリア・ホルターがバック・コーラスをとる“ホエン・アイ・ディサイド(イッツ・オールイト)”は、両者の共通の持ち味である浮遊感を感じさせる仕上がりとなっている。そして、“フー・U・R”、“パート・オブ・ミー”、“オブセッション”といったスローなオルタナ系R&Bナンバーでの憂いに満ちた歌、タイトル曲“リアル・ハイ”における幻想的な歌は、ラモーナがシンガーとしてひと回りもふた回りも成長したことを告げている。ナイト・ジュエルの魅力は、やはり何と言ってもラモーナの透明で情感豊かな歌なのである。『ワン・セカンド・オブ・ラヴ』や『リキッド・クール』の内容もさらに超えた、現時点でナイト・ジュエルの最高傑作と呼ぶにふさわしい作品と言える。

小川充