ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Cornelius 新作『Ripple Waves』を語る (interviews)
  2. Swamp Dogg - Love Loss and Auto-Tune (review)
  3. Animal Collective - Tangerine Reef (review)
  4. The Internet - Hive Mind (review)
  5. Laurel Halo - Raw Silk Uncut Wood / Chevel - In A Rush And Mercurial (review)
  6. Parliament - Medicaid Fraud Dogg (review)
  7. Khruangbin - Con Todo El Mundo (review)
  8. interview with Cosey Fanni Tutti コージー、『アート セックス ミュージック』を語る (interviews)
  9. 食品まつりa.k.a foodman - Aru Otoko No Densetsu (review)
  10. UK Afrobeats & UK Rap - ──「今」のUKラップを彩るプロデューサー3組 (review)
  11. interview with Dorian Concept 自分自身を模倣すること (interviews)
  12. Columns ララージ来日直前企画 ──ニューエイジの巨匠、その歩みを振り返る (columns)
  13. The KLF: ハウス・ミュージック伝説のユニットはなぜ100万ポンドを燃やすにいたったのか - ジョン・ヒッグス 訳:中島由華 (review)
  14. Mouse On Mars - Dimensional People (review)
  15. Tirzah - Devotion (review)
  16. Kelly Moran ──OPNのバンド・メンバー、ケリー・モーランが〈Warp〉と契約&アルバムをリリース (news)
  17. Vainio & Vigroux - Ignis (review)
  18. interview with Autechre 音楽とともにオーディエンスも進化する (interviews)
  19. 打楽器逍遙 10 イン・サークルズ(3) (columns)
  20. interview with Jim O’Rourke 私は音楽を楽しみのために作っているわけではありません(笑) (interviews)

Home >  Reviews > HIRAMATSU TOSHIYUKI- CHASM

HIRAMATSU TOSHIYUKI

HIRAMATSU TOSHIYUKI

CHASM

SRCD033 / shrine.jp

Amazon

松村 正人   Feb 26,2013 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 『CHASM』はグリッチを基調にしているが、本作のノイズはかならずしも制御不能なエラーを志向するのではなく、マッシヴなビートやアンビエントな電子音、サブリミナルな効果を生むヴォイス・サンプルといったいくつかのエレメントのなかにそれを配置し、多面的に構成(コンポーズ)することで、HIRAMATSU TOSHIYUKIは古典的なIDMの方法論(というより、IDMそのもの)のアップデイトをはかるかのようである。ビートの波間をノイズがただよう点描的な"Chasm"、グリッチ・アンビエントの"Old Soil"とそれを反転させたかのような不定形のビートと音響による"Mass"、つづく"N_V_H"のコラージュ感覚、さらにビートメイカーとしての非凡さをうかがわせる "Let's Dance"、そのベースにはヒップホップからなにから、同時代のエレクトロニック・ミュージックを血肉化した身体が見え隠れするので、私は次作はもっと長尺の作品にじっくり浸りたいと思った。

オブスキュアな音像、 卓越した展開力で聴かせる上質なエレクトロニカ。

HIRAMATSU TOSHIYUKIは滋賀出身、京都在住のアーティスト。関西を拠点としており、音響だけでなく、映像を含めたライブやVJも行う。また滋賀の山中や、琵琶湖に浮かぶ離島にて音楽イベントを共同開催するなど、地域に根差した活動も展開している。楽曲制作の軸にはMax/MSPによるプログラミングがあり、パッチ式のシンセNord Modularを外部音源で使用している。 本アルバムはCDフォーマットではキャリア初リリースとなる。光る霧に包まれる中ゆっくりと歩いていくような、淡い音像を持つタイトル曲"CHASM"、William Basinskiの『The Disintegration Loops』を思わせるシンセの不安定なループとグリッジ・ノイズの重なりが、オブスキュアな空間性を作り出す"Old soil"と、冒頭アンビエント・マナーの2曲が続く。
リズムとノイズの境界線を破壊するカオティックな"Mass"以降は、一転してダンスフロア仕様のエレクトロニカへシフト。デジタル・ノイズとアンビエントを基軸としながら、巧みに変転する展開力が素晴らしい。最後にテープ・コラージュ的なループ音とダビーなエフェクトが幻想的な"Walk"でアルバムが終わる余韻も心地良い。 アートワークは関西を中心に活躍するフォトグラファーの久田元太が手掛けた。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

松村 正人