Home > Reviews > EcoLibra- turing test
まるで2000年代初頭に〈Active Suspension〉〈Carpark〉〈morr music〉などからリリースされていたポップ&エクスペリメンタルなエレクトロニカが、2010年代初頭の多層化したレイヤーで生成するエレクトロニクスを纏ってリバースしたかのようだ。大胆なエディットとノイジーなサウンド・コラージュ。牧歌的でリリカルなメロディ。あのエレクトロニカの「実験」は、この作品で拡張的に生まれ直した。ポップ/キッチュな音色も多用されつつも、どこか透明な音質も素晴らしい。マスタリングは糸魚健一。「カミサマトンボ」のつるんとしたピアノの音色の美しさ!
機械と人間(人口知能)をテーマにしたハイブリッドなエレクトロニカ・サウンド。
京都在住ということ以外は謎に包まれたアーティストEcoLibra(エコリブラ)が、2003年にshrine.jpからリリースした同名CD-R作品(SRCDR018)の再発盤。
シカゴ音響派のGreg DavisやデンマークのManualに通じるような情緒と温かみを感じさせる"カミサマトンボ"、ノイジーな音響に人間の声が見え隠れする"3:45"、数学の講義を録音した素材を中心に楽曲を組み立てた"次関数"など、様々な手法で制作された楽曲が入り混じるハイブリッドなエレクトロニカ・サウンドは、ポスト・ロック以降の直感的編集精神を継承している。またマルチトラック・レコーダーの導入やサウンドコラージュなど、アナログなアイデアが効果的に用いられており、アルバム全体に荒削りな魅力を与えている。
turing testとは、ある機械が人工知能であるかどうかを判定するためのテストのこと(判定者が、機械と人間の区別をできなかった場合、その機械はテストに合格したことになる)。このタイトルからKraftwerkの『Man Machine』など、人間と機械(人工知能)の関係性を表現し、その未来を暗示してきた電子音楽作品たちへの敬意を読み取ることができる。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
デンシノオト