Home > Reviews > Album Reviews > Sewn Leather- Sikknastafari Slash Crasstafari
ウォッシュト・アウトやトロ・イ・モアにのれなかった皆さま、お待たせいたしました。「チル・ウェイヴを粉砕し、キル・ウェイヴにこんにちわ」のお時間です!(打倒・野田! 打倒・橋元! 紙「エレキングVol.4」座談会参照!)。
ジェイムズ・フェラーロやハイプ・ウイリアムズの映像作品をリリースしているレーベルからキル・ウェイヴことシンセ・ノイズ・パンク・クランクというのか、パンク・グライムというのか、いまだったら誰でもなんとでもいえる破壊衝動の固まりが飛び出してきた。
DJドッグ・ディックと組んだドッグ・レザーから実に攻撃的なソーン・レザーの初ソロ(同時期にリリースされたドッグ・レザーのデビュー・アルバムは未聴)で、「2012年は1984年の到来を告げている」などと記してあり、それがまた何を意味するかもわからないまま(ジーザス&メリー・チェインがデビューした年という意味か?)、全編でガーガーピーピーやってます。ジョイ・ディヴィジョンの憂鬱に取り付かれたコールドウェイヴなどと紹介される端からファニーな表情を見せたり、ダブ・インダストリアルを延々とスロー・ダウンさせてみたり......(33回転でも45回転の再生でもどっちでもいいという設定らしい)。とくにスローな展開をメインにしたBサイドは圧巻で、DJヨー・ヨー・ダイエティングのスクリュード・ノイズ・ドローンからアートっぽい雰囲気を取り去り、徹底的にガキっぽくしたといえば少し脈絡というものがあると思えるだろうか。
元々はパンクだった時期もあるようで、どのようなアレンジに切り替わろうとも全体に混沌としたムードが基調をなし、スクリュー(=ダブ処理)と破壊衝動のせめぎ合いはどことなくマーク・ステュワートのソロー・デビュー時を想起させる(ネガティヴランドを思わせる三角に折りたたまれたジャケットも、そういえばマーク・スチュワート&マフィア「リバティー・シティ」と同じつくりかも)。あるいは、エイドリアン・シャーウッドが関わった作品とは違って、レゲエの要素を聴き取ることは難しいにもかかわらず、このアルバムはそのままジャー・クラスタファリに捧げられている。ハードコア・パンクのクラスとラスタファリをかけた造語だろうけれど、それこそマーク・ステュワートやタッグヘッドにも当てはまる造語感覚ではないだろうか。
いやー、カッコいい。こういうのは10代のうちに聴いておこうね。
三田 格