ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Black Decelerant - Reflections Vol 2: Black Decelerant | ブラック・ディセレラント
  2. Cornelius 30th Anniversary Set - @東京ガーデンシアター
  3. Meitei ──延期となっていた冥丁のツアー日程が再決定、11都市を巡回
  4. Cornelius - Ethereal Essence
  5. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  6. Natalie Beridze - Of Which One Knows | ナタリー・ベリツェ
  7. High Llamas - Hey Panda | ハイラマズ
  8. Mica Levi ──ミカ・リーヴィが〈ハイパーダブ〉から新曲をリリース
  9. KRM & KMRU - Disconnect | ケヴィン・リチャード・マーティン、ジョセフ・カマル
  10. interview with salute ハウス・ミュージックはどんどん大きくなる | サルート、インタヴュー
  11. The Stalin - Fish Inn - 40th Anniversary Edition - | ザ・スターリン
  12. Adrian Sherwood presents Dub Sessions 2024 いつまでも見れると思うな、御大ホレス・アンディと偉大なるクリエイション・レベル、エイドリアン・シャーウッドが集結するダブの最強ナイト
  13. Tribute to Augustus Pablo ──JULY TREEにて、オーガスタス・パブロ関連の写真やゆかりの品々などを展示、およびグッズ販売
  14. Still House Plants - If I Don​’​t Make It, I Love U | スティル・ハウス・プランツ
  15. Terry Riley ——テリー・ライリーの名作「In C」、誕生60年を迎え15年ぶりに演奏
  16. Kronos Quartet & Friends Meet Sun Ra - Outer Spaceways Incorporated | クロノス・カルテット、サン・ラー
  17. Theo Parrish ──セオ・パリッシュがLIQUIDROOM 20周年パーティに登場
  18. Mighty Ryeders ──レアグルーヴ史に名高いマイティ・ライダース、オリジナル7インチの発売を記念したTシャツが登場
  19. ニュー・ダッド──あたらしい時代のあたらしいおっさん - 木津毅
  20. Columns 6月のジャズ Jazz in June 2024

Home >  Reviews >  Album Reviews > Sun Araw- Belomancie

Sun Araw

AmbientDubExperimentalLee Perry

Sun Araw

Belomancie

Sun Ark Records

Amazon iTunes

野田努 Mar 05,2014 UP

君は“あちらが側”に行きたいと思うか。空をめくった先にある場所のことだ。ある種の力をもった音楽と同じように、サン・アロウは連れていってくれるかもしれない。ただし、連れていってくれたとしても、それはある種の力をもった音楽が見せる“あちらが側”とは少し……いや、かなり違う。
 彼がザ・コンゴスと一緒にやったことは、〈RVNG Intl.〉というレーベルがしくんだ企画かと勝手に思っていたけれど、前作『The Inner Treaty』でも見せたダブ追求(ディレイとエコーのダブではない。ミキシングボードのダブである)という彼の試みは、新作でも継続されている。前作同様にあっけらかんとしていて、つまり、古代ローマを主題にしたことのある彼だが、重たさというものがなく、笑って良いのかどうなのか、ものすごく微妙なレヴェルを飛行しながら、微妙にニンマリさせてくれる。“あちらが側”で。

 僕は音楽について書く。さも知った風に。ところがサン・アロウの音楽は、知った風な言葉を寄せ付けないから困る。アルバムのタイトル曲を聴いてもらえれば君にもわかるだろう。いったい何なんだ、これは? これは、言うなれば温泉で鼻歌を歌っているリー・ペリーだ。実際には、脈絡を感じないフルートの音──深遠さとも、周囲の気を引くために演技とも違う──が聴こえるのだのだが、まあ何せよ、温泉で鼻歌を歌っているリー・ペリーに対して、君は何を言える? 何も言えやしない、何も。立派なことも、もっともなことも、暗い話も啓発的な話も。鼻歌は、ミキシングボードに繋がれている。ギター、ベース、パーカッション、シンセサイザーとともに。
 空間は伸縮する。そうだ、これはひとつの境地であろう……はずがない。しかし、たしかにこれは超然たる何か……などのはずはないとは思うのだが、サン・ラの宇宙語を思わせる音が散りばめられ、実験的でありながら、ずば抜けてリラックスしたフィーリングが通奏低音となっている。なにせこれは、一歩間違えれば相当アホな音楽のように思える。そして、相当アホな音楽が、いま欠乏していることに君は気がつくだろう。他人からの見られ方、ツイッター依存、そんなものとはまったく無関係な、ゆっくり揺れる飛行機に乗ってみたいと思わないか?

 君は、いくらでも深刻になれる。君は、気の抜けたサイダーが甘いことを知っている。君は、ぬるいビールが好きだ。ストーンするとイライラすることも怒ることもないように、君は“あちらが側”にいることを選んだ。14分にもおよぶ“Remedial Ventilation(治療のための換気)”の面白さをどういう風に伝えたらいいのだろう。ガスの音がしゅーしゅーと鳴っている。換気口から白い煙が部屋に入ってくる。吸って、肺にためて、吐き出す。サン・アロウとともに、とぼけた1日がはじまる。快適な1日が。

野田努