ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. DERRICK MAY×KEN ISHII ——デリック・メイが恵比寿リキッドルームに登場
  2. DJが描く日本のヒップホップ、DJ YAS著『ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代——あるDJの証言』刊行のお知らせ
  3. Bullion - Nearly | ブリオン
  4. WWW Xで悪魔の沼ついに沼納め
  5. lilbesh ramko - Ramko Helvetica | リルベッシュ・ラムコ
  6. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  7. Smith & Mighty ——ブリストル・サウンドのオリジネイター、スミス&マイティが久しぶりにアナログ盤をリリース
  8. YOSHIROTTEN ──エレクトロニック・ミュージックと共に宇宙と交信しよう。ヨシロットンの展覧会『彼方との交信 — BEYOND EARTH』が今週末より開催
  9. interview with Wool & The Pants 東京の底から  | 德茂悠(ウール&ザ・パンツ)、インタヴュー
  10. Columns 10月のジャズ Jazz in October 2026
  11. ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代──あるDJの証言
  12. DJ Clent ──ゲットー・ハウス~フットワークの伝説、DJクレントが急遽来日
  13. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  14. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  15. Helen - Linda's Head | ヘレン
  16. Arab Strap - Half-Told Tales | アラブ・ストラップ
  17. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  18. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  19. ゲーセン波乱万丈の100年史
  20. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー

Home >  Reviews >  Album Reviews > The xx- I See You

The xx

HousePopSoul

The xx

I See You

Young Turks/ビート

Tower Amazon iTunes

小川充、野田 努   Jan 24,2017 UP
E王
12

(野田努)

 2016年の間違いなく素晴らしいアルバム、ソランジュの『ア・シート・アット・ザ・テーブル』とフランク・オーシャンの『ブロンド』(もう1枚はブラッド・オレンジの『フリータウン・サウンド』)を聴いたとき、ひと昔前で言うところのわりとUKよりの、三田格言うところの最新“加工”が施されたR&Bのようなものを聴いてきたリスナーは、ものすごく入りやすかったんじゃないかと思う。そのアカ抜け方というか……。メインストリームが、それまでアンダーグラウンドが試みてきたこと(チル&BとかOPNとかFKAとかテクノとかいろいろ)を、完全に自分たちのものにしてしまったのがこれらの作品の特徴で、それって、サッカーで言えば金持ちで強いチームが下位のチームの良い選手を引き抜くみたいで個人的には複雑な思いに駆られるのだけれど、しかし、まあ、やはり強いチームは強く、よくできた音楽はよくできていることに変わりはない。悔しいけど。はっきり言えば、今日の音楽シーンでは、そうしたUSものの雑食性が抜群に面白いなかで、そう、音楽におけるUSの文化水準の高さを見せつけられているなかで、ザ・xxは『アイ・シー・ユー』において、UKらしくセンスのいい“加工”が施された音楽としては、ずば抜けた完成度を見せたと言える。
 ぼくは、最初に8曲目の“オン・ホールド”を昨年聴いたときに、彼らのそれまでの陰鬱な味を残しながら、ポップな領域にまで高めたその曲に興奮した。ああ、彼らはついにエヴリシング・バット・ザ・ガールの領域にいったんだと思った。木津毅君のインタヴューでも触れられているように、サンプリング・ネタも良い。で、アルバムができてから聴いた1曲目の“デンジャラス”、この冒頭のサンプリングでぐいっとやられ、続くベースラインを聴いた瞬間に、このアルバムは間違いない、と思った。“デンジャラス”と“オン・ホールド”の2曲が収録されているという理由だけでも十分に『アイ・シー・ユー』は2017年のベスト・アルバム候補入りなのはたしかである。

 個人的な趣味で言えば、いまでも『イン・カラー』が好みなんですけどね。あのアルバムにはその“加工”において、UKらしいファンクネスが、UKらしいジャマイカがある。「イージー、イージー、オーマゴッシュ(いいじゃん、いいじゃん、なんてこったい)」は、ある意最高の歌詞だった。わかるでしょ。だからパウウェルなのであって、泉智が宇多田ヒカルならぼくは水曜日のカンパネラであり、要するにナンセンスと破壊力に、ただただひたすら飢えているのだ。もっと言えば、スリーフォード・モッズが好きなのも、なにはともあれ、あのユーモアですよ、ユーモア。

 そういう意味で言えば、xxのナイーヴさは、薄汚れたぼくには「申し訳ない」と恐縮してしまうのだが、しかしこれは良いアルバムだとつくづく思う。内気でシャイなロンドン子が団結して、ソウルフルな、最新の──という言葉を使うと萩原健太さんに怒られそうなので──レトロではなく、現代に相応しいポップ・ミュージックを完成させたと。USの音楽シーンがプレミア・リーグかスペイン・リーグのようなものになったとはいえ、さすがこれだけ歴史あるUKの音楽シーンがフットボール界におけるオランダ・リーグのようになることはないだろうが……、もとい、そしていまもUKらしい良い音楽を聴きたいと思っている。

野田努

12