ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Shintaro Sakamoto ——坂本慎太郎、先行シングル「あなたの場所はありますか?」のライヴ演奏MV公開!
  2. GEZAN ──7枚目のニュー・アルバムを2月にリリース
  3. FRIEND IN THE DARK - A David Lynch Night ──リンチの世界を耳で楽しむパーティが開催
  4. Die Unbekannten, Shark Vegas ——ポスト・パンク時代の、マンチェスターとベルリンを繋ぐ超貴重音源が再発
  5. Debit - Desaceleradas | デビット
  6. ele-king vol.36 特集:日本のシンガーソングライター、その新しい気配
  7. ADM: Asia’s Own Unhinged Club Culture ——タイ、ベトナム、ラオスなど、アジア各地のダンスの現場を捉えた写真集
  8. BLACK SMOKER ——ブラック・スモーカーがドイツ実験映画に音を加える演奏/上映会
  9. flows ──ヌジャベスの音楽を未来へ紡ぐイヴェントの最終ラインナップが発表、フランソワ・K.、Knxwledge、DJ NORIとMUROによるCaptain Vinylほか
  10. MODE ——ミニマル・ミュージック界の異色の作家、アーノルド・ドレイブラットが来日
  11. ポピュラー文化がラディカルな思想と出会うとき──マーク・フィッシャーとイギリス現代思想入門
  12. interview with NIIA 今宵は、“ジャンル横断”ジャズ・シンガーをどうぞ | ナイア、インタヴュー
  13. VMO a.k.a Violent Magic Orchestra ──ブラック・メタル、ガバ、ノイズが融合する8年ぶりのアルバム、リリース・ライヴも決定
  14. Geese - Getting Killed | ギース
  15. P-VINE ──設立50周年を迎えるPヴァインが特設サイトをオープン、記念キャンペーンも開始
  16. Columns 2025年のFINALBY( )
  17. R.I.P. Jimmy Cliff 追悼:ジミー・クリフ
  18. Columns なぜレディオヘッドはこんなにも音楽偏執狂を惹きつけるのか Radiohead, Hail to the Thief Live Recordings 2003-2009
  19. Sorry - COSPLAY
  20. Oneohtrix Point Never - Tranquilizer | ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー

Home >  Reviews >  Album Reviews > The xx- I See You

The xx

HousePopSoul

The xx

I See You

Young Turks/ビート

Tower Amazon iTunes

小川充野田 努   Jan 24,2017 UP
E王
12

(野田努)

 2016年の間違いなく素晴らしいアルバム、ソランジュの『ア・シート・アット・ザ・テーブル』とフランク・オーシャンの『ブロンド』(もう1枚はブラッド・オレンジの『フリータウン・サウンド』)を聴いたとき、ひと昔前で言うところのわりとUKよりの、三田格言うところの最新“加工”が施されたR&Bのようなものを聴いてきたリスナーは、ものすごく入りやすかったんじゃないかと思う。そのアカ抜け方というか……。メインストリームが、それまでアンダーグラウンドが試みてきたこと(チル&BとかOPNとかFKAとかテクノとかいろいろ)を、完全に自分たちのものにしてしまったのがこれらの作品の特徴で、それって、サッカーで言えば金持ちで強いチームが下位のチームの良い選手を引き抜くみたいで個人的には複雑な思いに駆られるのだけれど、しかし、まあ、やはり強いチームは強く、よくできた音楽はよくできていることに変わりはない。悔しいけど。はっきり言えば、今日の音楽シーンでは、そうしたUSものの雑食性が抜群に面白いなかで、そう、音楽におけるUSの文化水準の高さを見せつけられているなかで、ザ・xxは『アイ・シー・ユー』において、UKらしくセンスのいい“加工”が施された音楽としては、ずば抜けた完成度を見せたと言える。
 ぼくは、最初に8曲目の“オン・ホールド”を昨年聴いたときに、彼らのそれまでの陰鬱な味を残しながら、ポップな領域にまで高めたその曲に興奮した。ああ、彼らはついにエヴリシング・バット・ザ・ガールの領域にいったんだと思った。木津毅君のインタヴューでも触れられているように、サンプリング・ネタも良い。で、アルバムができてから聴いた1曲目の“デンジャラス”、この冒頭のサンプリングでぐいっとやられ、続くベースラインを聴いた瞬間に、このアルバムは間違いない、と思った。“デンジャラス”と“オン・ホールド”の2曲が収録されているという理由だけでも十分に『アイ・シー・ユー』は2017年のベスト・アルバム候補入りなのはたしかである。

 個人的な趣味で言えば、いまでも『イン・カラー』が好みなんですけどね。あのアルバムにはその“加工”において、UKらしいファンクネスが、UKらしいジャマイカがある。「イージー、イージー、オーマゴッシュ(いいじゃん、いいじゃん、なんてこったい)」は、ある意最高の歌詞だった。わかるでしょ。だからパウウェルなのであって、泉智が宇多田ヒカルならぼくは水曜日のカンパネラであり、要するにナンセンスと破壊力に、ただただひたすら飢えているのだ。もっと言えば、スリーフォード・モッズが好きなのも、なにはともあれ、あのユーモアですよ、ユーモア。

 そういう意味で言えば、xxのナイーヴさは、薄汚れたぼくには「申し訳ない」と恐縮してしまうのだが、しかしこれは良いアルバムだとつくづく思う。内気でシャイなロンドン子が団結して、ソウルフルな、最新の──という言葉を使うと萩原健太さんに怒られそうなので──レトロではなく、現代に相応しいポップ・ミュージックを完成させたと。USの音楽シーンがプレミア・リーグかスペイン・リーグのようなものになったとはいえ、さすがこれだけ歴史あるUKの音楽シーンがフットボール界におけるオランダ・リーグのようになることはないだろうが……、もとい、そしていまもUKらしい良い音楽を聴きたいと思っている。

野田努

12