ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Paulius Kilbauskas - Elements (review)
  2. interview with Gang Gang Dance ギャング・ギャング・ダンス来日直前インタヴュー (interviews)
  3. ともしび - / サンセット - 監督・脚本:ネメシュ・ラースロー
    出演:ユーリ・ヤカブ『サウルの息子』、ヴラド・イヴァノフ『エリザのために』 ほか
    2019/ハンガリー、フランス/カラー/ハンガリー語、ドイツ語/142分
    (review)
  4. Big Joanie - Sistahs (review)
  5. On-U Sound ──コンピ・シリーズ《Pay It All Back》の最新作が3月にリリース (news)
  6. STUMM433 ──デペッシュ・モードやニュー・オーダーまで、50組以上のアーティストが「4分33秒」をカヴァー (news)
  7. Allysha Joy - Acadie : Raw (review)
  8. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  9. 山口美央子 - トキサカシマ (review)
  10. 彼女は頭が悪いから - 姫野カオルコ (review)
  11. Mars89 ──たったいま聴こう。東京新世代のプロデューサー、Mars89が新作をリリース (news)
  12. The Book of Drexciya ──ドレクシアの神話を描いたグラフィック・ノヴェルが制作 (news)
  13. BOOMBOX&TAPES ──カセットテープ愛好家に送る豪華なジンが創刊 (news)
  14. Mansur Brown - Shiroi (review)
  15. ZULI - Terminal (review)
  16. ALTZ ──DJアルツのバンド・プロジェクト、ALTZ. Pがアルバムをリリース (news)
  17. Mike - War in My Pen (review)
  18. On-U Sound ──名コンピ・シリーズ《Pay It All Back》の最新作が3月にリリース (news)
  19. Eartheater - IRISIRI (review)
  20. Mira Calix ──ミラ・カリックスが新作EPをリリース (news)

Home >  Regulars >  Random Access N.Y. > vol.108:インディの行方

Random Access N.Y.

Random Access N.Y.

vol.108:インディの行方

沢井陽子 Dec 28,2018 UP

 12月も半ばになると、どこもホリディ・パーティ真っ盛りで、毎日のようにパーティがある。先週末アーティスト友だちのロフトスタジオのパーティに行ったら、40人ぐらい来ていて、バンドも3組出るという豪華なパーティだった。来ていた人は、ほとんどミュージシャン、アーティストで、隣で見ていた人が次々とステージヘ。ミュージシャンは機材を全て持ち込んでセットアップして、それが終わればまたそれを持ち出す。ドラムセットもスピーカーもだ。彼らは大変なのである。こう考えると、エンターテイメントをありがとう、とチップも弾みたくなる。
 私が好きだったのはアイルランドのコークに住む女の子、M.Sea。アルドス・ハーディングを思い起こす、力強く、表情豊かで、そして切なく美しい音楽。自分の祖母、ウィスキー、ガチョウなど身の回りの事を歌う彼女に、あっと言う間に引き込まれた。来月にはアイルランドに帰ってしまう彼女を見れたのは偶然。グリーンポイントのバーのオーナーがパーティに来ていて、早速3日後に、彼女のギグを組んでいた。NYマジック。
http://www.mseamusic.com

 週明けの月曜日には、〈カナイン(Kanine)〉のホリディ・パーティがあった。〈カナイン〉は2002年にスタートしたブルックリンを代表するインディ・レーベルで、『NY: Next wave』(2003)というコンピレーションで、NYのローカルバンドを紹介し、グリズリーベア、チェアリフト、サーファー・ブラッド、ビヴァリー、エターナル・サマーズ、ザ・ブロウ、グルームスなどをリリースしている。〈カナイン〉のバンドは、90年代のギターポップを引き継ぎ、この日のハニー・カフ、タリーズもハッピーでお行儀の良いギター・ポップ。エターナル・サマーズのニコルのソロは、ガイデッド・バイ・ヴォイシーズのメンバーがギターを弾いていたり、元ESのマネージャーがサックスを吹くなど豪華。ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートのキップの新しいバンドThe Natvralは、ジージャン、ジーンズという服装が90年代ギターポップを象徴していて、音楽も懐メロに聞こえた。
http://kaninerecords.com


Brooklyn vegan DJ (7 inch)


〈カナイン〉のパーティで踊るオーディエンス

 ライヴ・ショーは、レコードとは違う楽しみ方ができる。バンドやまわりからのエナジーを感じたり、何が起こるかわからない、ライヴ感がワクワクさせてくれる。いまどきレアなCDJを使ってギターポップで踊るという15年前にタイムスリップした気分にさせてくれる〈カナイン〉は、世間がどうであれ、自分の好きな音楽に徹底している。だからコアなファンがいるのだろう。


Honey cutt


Nicole Yan (eternal summers)


Tallies

 ライヴといえば、最近Mitskiをブルックリン・スティールという大会場で見た。2018年度のベスト・アルバムで多くのメディアの上位に入っている彼女は、DIYアーティストからメジャーに飛躍した、2018年旬のアーティストといえる。じっさいソールドアウトの会場は、シンガロング、声援をおくるファンで埋め尽くされていた。そしてMitskiは穏やかに「私の作品を評価してくれてありがとう」とファンに答える。


Mitski @brooklyn steel

 ライヴを見るとたいてい気分が高揚するものだが、Mitskiのショーでは心にポッカリ穴が空いたような気分になった。ショーは悪くなかったどころか完璧だった。メディアのバズ(ピッチフォークは2018年のベスト・アルバムに選んでいた)や、まわりの圧倒的な声援、DIYアーティストだと思っていた彼女の変化に自分がついていけなかっただけなのかもしれない。2018年の傾向として女性が強いという動き(me tooムーヴメントなど)があったが、Mitskiはバッチリハマった。ひとりのかわいいアジア人女性が「be the cowboy」という男性的なタイトルのアルバムを出し、孤独感やダークサイドを歌い(この時代ハッピー・ソングなんて誰も求めていない)、共感を得るのは納得できる。みんな不安で何かにすがりたいし、彼女を自分たちのロールモデル的に見ているのだろう。彼女を支持して自分も楽になりたい……たしかに一般ウケしそうなキャラではあるけれど、これってアメリカの選挙に似てませんか、と。少数派は都会で、大多数は田舎にいる。田舎の方が人口が多いから、それがアメリカ代表になる。


 2018年はメディアによって、ベスト・アルバムがバラバラだった。普通なら同じようなアーティストが上位になるのに、あるメディアで上位に入っているものが、別のメディアでは50位にも入っていなかったりする。それだけ情報は豊富で、選択の多い時代なのだろう。

Random Access N.Y. - Back Number

Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住16年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

COLUMNS