ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. syrup16g - HELL-SEE [発売20周年記念盤] (review)
  2. interview with Shuhei Kato (SADFRANK) これで伝わらなかったら嘘 | NOT WONKの加藤修平、日本語で歌うソロ・プロジェクトSADFRANKを始動 (interviews)
  3. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈 (interviews)
  4. shame - Food for Worms | シェイム (review)
  5. interview with Lex Blondel (Total Refreshment Centre) すべて新録、UKジャズのトップ・プレイヤーたちが集結したコンピレーション | トータル・リフレッシュメント・センター、レックス・ブロンデル (interviews)
  6. Cantaro Ihara ──メロウかつグルーヴィー、70年代サウンドをアップデイトするSSWイハラカンタロウ、最新アルバムをリリース (news)
  7. interview with Black Country, New Road 脱退劇から一年、新生BCNRのドキュメント | ブラック・カントリー・ニュー・ロード (interviews)
  8. Laurent Garnier ──ロラン・ガルニエが8年ぶりのアルバムをリリース、アラン・ヴェガのヴォーカルをフィーチャー (news)
  9. Kassel Jaeger - Shifted In Dreams (review)
  10. interview with Mars89 未来のための音楽 (interviews)
  11. interview with Lankum トラッド・イン・プログレス | ──アイリッシュ・フォークの最前線に立つランクムの驚異の新作 (interviews)
  12. Red Hot + Ra ──サン・ラーのトリビュート・アルバム・シリーズが始動 (news)
  13. Columns 高橋幸宏 音楽の歴史 (columns)
  14. interview with Toru Hashimoto 選曲家人生30年、山あり谷ありの来し方を振り返る | ──橋本徹、インタヴュー (interviews)
  15. WE LOVE Hair Stylistics ──入院中の中原昌也を支援するコンピレーションがリリース、そうそうたる面子が集結 (news)
  16. Pardans - Peak Happiness | パーダンス (review)
  17. Masahiro Takahashi ──トロント在住のアンビエント作家による新作、H.TakahashiやTakaoなどが参加 (news)
  18. 坂本龍一 - 12 (review)
  19. Columns talking about Yves Tumor イヴ・トゥモアの魅力とは何か | Z世代のyukinoiseとarowが語り尽くす (columns)
  20. interview with IO KoolBoyの美学 | KANDYTOWN、イオ、キャンディタウン、喜多見 (interviews)

Home >  Regulars >  Random Access N.Y. > vol.110 史上最悪のスーパーボウル騒動

Random Access N.Y.

Random Access N.Y.

vol.110 史上最悪のスーパーボウル騒動

沢井陽子 Feb 05,2019 UP

 アイスランドから帰ってきてすぐにスーパーボウル。日本では節分の2/3が今年のスーパーボウルだった。
 私がスーパーボールを意識するようになったのは、2016年のビヨンセからだ。彼女の新曲“Formation”がハーフタイム・ショーで予告もなしで演奏されたあのときがあったから、2018年は、私はビヨンセのコンサートを見に行くにまで至った。2017年のレディ・ガガ、そして18年のジャスティン・ティンバーレイクは、ビヨンセほどの強烈なインパクトを感じなかったけれど、以来私のなかでスーパーボウルはアメリカでもっとも重要なショーのひとつになった。アーティストたちの気合も感じられる。私にとってスーパーボウルのハーフタイムショーは、アメリカについていろいろ考えさせられる日でもあるのだ。

 今年2019年は53回目を迎え、アトランタの、メルセデス・ベンツ・スタジアムで、ニューイングランドのペイトリオッツとLAラムズが対戦した。私はゲームについてはいまだに理解できないけれど、とりあえず結果は13-3でペイトリオッツが勝ったことはわかるし、ペイトリオッツのエースのトム・ブラディは、共和党でトランプ支持者だと言われていて(彼とは友だちらしい)、彼の完璧さが嫌い、という人が私の周り(インディ系)の大多数で、みんなラムズを応援していたので、スポーツ界でのトランプな出来事=退屈なゲームとブーイングを浴びた(もっともスコアも低かった)。

 さて、今年のハーフタイムショーだが、マルーン5が出演。ゲストは、トラビス・スコットとアウトキャストのビッグ・ボイ。気の毒なことにマルーン5は、ただそこにいただけと、かなりの酷評を受けている
 とはいえ、ビッグ・ボイがキャデラックに乗って登場したときは、私も少し上がった。が、ショー全体には気合が感じられなかった。それでも15分のあいだでコート姿から上半身裸になるアダム・ラヴィーンの変わり身には、ほーっと思った。

 そもそも何故このホワイトすぎるバンドがハーフタイムショーなのだろうかという疑問。調べると、カーディB、リアーナ、ピンク、ジェイZなどの大物アーティストが出演をボイコットしていたらしい。
 ことは2016年、警官の黒人差別による不当な暴力に抗議して、国歌斉唱で跪いたコリン・キャパニック選手がいまだ試合に出演できないでいるため、彼を支援するアーティストたちはハーフタイム出演をボイコットしているという。
 ハーフタイムショーは、アーティストにとってのハイライトなので、断るのはかなりの決断だと思う。が、カーディBは、マイノリティのために戦ったコリン・キャパニックを支持しないわけにはいかない、とは言っても、カーディはスーパーボウルのペプシのコマーシャルや関連イベントには出演しているんだけど。
 カーディは、キャパニックを支持することで世界に良い変化が生まれればというが、近い将来に来るとは思えない、という。何故なら、自分たちの大統領は傲慢で、人種差別がまた生まれたからだと。いま力を持ってるのはオバマがいた8年間が早く終わって欲しいと思っていた人たちで、とても嫉妬していた連中だ。彼らが彼らの選択で、人種差別がどのようにこの国に影響しているのかを見たときが、ことが変わりはじめようとするときだが、いま、彼らはその決定が国に影響したことを認めたくないという。その通りだろう。

 マルーン5のハーフタイム出演は非難を浴びたが、アダム・ラヴィーンも、それは予想通りというか、耐えられないなら、このギグはするべきではないと言っている。マルーン5とトラヴィス・スコットは、$500,000 (約5千万円)ずつを、ビッグブラザーズ・ビッグシスターズ・オブ・アメリカ、ドリームコープスという公共機関に寄付した。

 アダム・ラヴィーンが乳首を出したことで、何故アダムは良くて、(2004年の)ジャネット(・ジャクソン)はダメなのかという議論が出たり(どうでも良いんじゃないかと思うが)、2016年からのアメリカは、こんな風に変わり、人種差別は無くなっていないし、逆に悪くなっている。2016年からのアメリカはこんな風に変わり、人種差別は無くなっていないし、逆に悪くなっている。今回のスーパーボウルはCNNをはじめいくつかのメディアから「史上最悪」なんていわれているが、私個人が感覚では、 「まったく退屈な」ぐらいの表現のほうが2019年のアメリカに合うのではないかと。

Yoko Sawai
2/4/2019

Random Access N.Y. - Back Number

Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住20年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

COLUMNS