ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Aho Ssan - The Sun Turned Black | アホ・サン
  2. Seefeel - Sol.Hz | シーフィール
  3. KAKUHAN, FLYING RHYTHMS, Undefined ──真夏の夜のダブ、〈Newdubhall〉による自主企画イベントに刺激的な面々が集結
  4. Drive From 80s - @新宿ロフト
  5. 未来マニア──エレクトロニック・ミュージック・ガイド
  6. Cornelius ──コーネリアスがさらなる新曲“Twisting & Glistening”を公開
  7. Columns #16:ワールドカップ2026 ──時代は変わった(日本代表のことではない)
  8. R.I.P. Miru Shinoda 追悼:篠田ミル
  9. Cornelius ——コーネリアス、ニュー・アルバム『REFRACTIONS』の詳細を発表
  10. Visible Cloaks - Paradessence | ヴィジブル・クロークス
  11. Columns アンダーグラウンド・レイヴの生き証人、Jeff23 (SP23 ex.Spiral Tribe)
  12. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  13. Beatrice M. - Sinking | ベアトリス・M
  14. ele-king presents HIP HOP 2025-26
  15. interview with Loraine James ロレイン・ジェイムズの“ポップ”な冒険 | ——来日直前インタヴュー
  16. Quadeca - Vanisher, Horizon Scraper | クアデカ
  17. アンビエント/ジャズ マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜
  18. Seefeel - Quique (Redux) | シーフィール
  19. Tadekui ──北海道出身の期待のバンド、タデクイのファースト・アルバムが全国流通開始&LPもリリース
  20. YHWH Nailgun - Magazine | ヤハウェ・ネイルガン

Home >  Reviews >  Album Reviews > oOoOO- oOoOO EP

oOoOO

oOoOO

oOoOO EP

Tri Angle

Amazon iTunes

加藤綾一   Nov 15,2010 UP

 チルウェイヴやグローファイ、シットゲイズなど、欧米を中心としたインディ・スノッブなローファイ・ミュージックは、ここ1年での狂騒を経て、いまではすっかり様式化したと言える。録音環境がローファイで、さらにシンセサイザーやエレクトリック・ギターなどの上モノの楽器の音色/エフェクトに頼る部分が多いため、それっぽい音を鳴らせば、それなりにそれっぽく聴こえる。ウォッシュト・アウトの夢見心地なブリージング・サウンドに思わずまどろみながらも、その後の多くの二番煎じを聴いて、ウンザリしてしまった方も多いのではなかろうか。とはいえ、現在USで話題となっているブロガー・ロックのまた新たなトレンドであるウィッチ・ハウスの旗手として期待される、サンフランシスコ出身のoOoOO(オー)の最初の音源を聴くと、このシーンにまた新たな可能性を感じる。

 ウィッチ・ハウスには、チルウェイヴと共通する部分が多い。穏やかでメロウなシンセ、ウィスパリング・ヴォイス、甘酸っぱいフィードバック・ノイズ、アニマル・コレクティヴゆずりの深いリヴァーブ......、さらそこにダブステップやブロークン・ヒップホップ、モダンR&Bなどの最新鋭のビート・ミュージックを取り入れているエキセントリックな音楽である。その名(魔女のハウス)の通りおどろおどろしく、ダークで、奇妙なゴシック・ホラーの世界観をダウンテンポで描いているのが何より特徴だ。EPの1曲目"ムンバイ"での故障したサンプラーから連続再生されたかのようなウォンキーじみたビートは、そのウィッチ然りとしたメランコリックな音色と聖女系の声の組み合わせからは、まるで古いモノクロ映像を走るノイズのように、不気味なものを感じさせる。

 ウィッチ・ハウスからは、レフトフィールド・ダブステップのビートを取り入れたトム・ヨークの『イレイザー』からの影響を強く感じ取る。元を辿れば、彼がその当時好んで聴いていた(そして件の『イレイザー』にも大きな影響を与えた)ヴァリアス・プロダクションが撒いた種とも言えるが、その影響がUSインディ・シーンの意外なところに拡大している。ローファイなムードが続く現在のシーンにおいて、インディ・バンド/アーティストたちがビートに関心を持ちはじめたという点も興味深い。
 チルウェイヴやグローファイがインディ・ディスコから派生したものなので、作り手もビートに関心がなかったわけではなかったが、そのローファイなプロダクションゆえに、DJの現場では貧弱に響いてしまうのが致命的だった。しかし、このoOoOOや、ウィッチ・ハウスのもうひとつの代表格であるバラム・アカブ(このoOoOOのEPは彼らのレーベルからのリリース)、そして僕がチルウェイヴ/グローファイ・シーンのなかでのベスト・アクトだと思っているトロ・イ・モアなどは、そのユニークなビートを用いて、聴き手にステップを踏ませることに意識的に取り組んでいる。

 ところで、「ウィッチ・ハウス/チルウェイヴ・ネーム・ジェネレイター」というサイトがある。ウィッチ・ハウスやチルウェイヴっぽいバンド/アーティスト名を自動で作り出してくれる、何とも皮肉なサイトだ。冒頭にも書いたように、様式化しつつあるのはたしかだ。しかし、実はまだ誰もフル・アルバムのリリースが果たされていない、生まれたばかりのシーンなのだ。期待していいのではないだろうか。

加藤綾一