Home > Regulars > Random Access N.Y. > vol.85:変わりゆくNY、新たな胎動- Guerrilla Toss & Honduras - Summer's End Music Festival
沢井陽子 Sep 13,2016 UP
9月に入り少し涼しくなってきたNY。毎日変わり続ける、この地域のアップデートを少し。
Palisades、Aviv、Blackbearなどの比較的新しかった音楽会場が2年弱でクローズし、新たにthe Glove、Sunnyvale、Footlight Barといった会場がオープン。シーンの中心はブッシュウィックやリッジウッドにどんどん移っている。ウィリアムスバーグにはアップルストアやホールフーズが出店し、あたりはハイエンドなレストランばかりで、アーティストたちはもはや立ち寄りもしなくなっている。
今回は、家賃の高騰が原因で10月にクローズするグリーンポイントのAvivに、〈サマーズ・エンド・ミュージック・フェスティヴァル〉を見に行ってきた。
9/2から9/4にわたって開催されたこのフェスには、ホンジュラス(Tidal)、ゲリラ・トス(DFA)、トール・ホワン、サーフロック・イズ・デッド(でもやっている音楽はドリームポップ)、ピル(Mexican Summer)、アナ・ワイズ(ケンドリック・ラマーのコラボレーター)、マル・バルム&ザ・バルムス(Don Giovanni)などが出演。夏の終わりのフェスではあるものの、どのバンドもエネルギーがみなぎっており、スピーカーは倒れるわ、押し潰されるわ、男率は高いわで、フロアが揺れる揺れる!
Audience
私のおすすめは、ゲリラ・トスとホンジュラス。ゲリラ・トスは何度か見ているが、見るたびにどんどん良くなっている。パーフェクト・プッシーとグライムスがオーケストラをバックにラップして、ジャジー感までとり入れたような、とにかくいままでにない新しい音楽が目の前で紡ぎ出され、フロアも大変な盛り上がり。ディスコ、パンク、ノイズ、アートロックなど、どれも当てはまるようで当てはまらない。そんなかれらはすでに4枚のアルバムを出している。
Guerilla Toss merch
ヘッドライナーのホンジュラスは、グリーン・デイのようなメジャー・コードと、ストロークスやブラーのようなヴィジュアルおよびインテリさを持ち合わせた、いまどきのブルックリンで大人気のパンク・ロック・ガレージ・バンドだ。バンド名を見て、「ん、中央アメリカのちょー治安悪い国だよね?」などと思うなかれ。メンバーは誰もホンジュラスに行ったことはない。ギターのタイソンとシンガーのパット(首のタトゥーがポイント)は、ミッソーニ州の小学校時代からの友達で、メンバーはもう10年以上ブルックリンに住んでいる。
かれらが鳴らすのは、70年代後半のブリティッシュ・ロックとパンクの匂いを漂わせつつも、リチャード・ヘルなどアメリカのシンガー・ソングライターの要素まで盛り込んだガレージ・ロック。後ろのスクリーンにはHマークがぼんやり映し出され、友達やファンからヤジが飛ばされている。少しアット・ザ・ドライヴインを思い起こさせる。激しそうに見えて、決して極端には走らないさじ加減がいまっぽい。ルックスも良し。セックス・ピストルズの現代版?
ホンジュラスは最近、Tidalのドキュメンタリー『Road to Made in America』シリーズに出演したり、9/4にフィラデルフィアでおこなわれたTidalのジェイ・Z主催の〈メイド・イン・アメリカ・フェスティヴァル〉に、リアーナ、コールドプレイ、グライムス、カー・シート・ヘッドレスト、ファット・ホワイト・ファミリーなどと出演したりしている。期待のブルックリン・バンドである。
Audience
Yoko Sawai
9/4/2016