ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Aphex Twin ──エイフェックス・ツインがブランド「Supreme」のためのプレイリストを公開
  2. Whatever the Weather - Whatever the Weather II | ホワットエヴァー・ザ・ウェザー
  3. interview with Roomies Roomiesなる東京のネオ・ソウル・バンドを紹介する | ルーミーズ
  4. 完成度の低い人生あるいは映画を観るヒマ 第二回 ボブ・ディランは苦悩しない
  5. Oklou - choke enough | オーケールー
  6. すべての門は開かれている――カンの物語
  7. new book ──牛尾憲輔の劇伴作曲家生活10周年を記念した1冊が刊行
  8. The Murder Capital - Blindness | ザ・マーダー・キャピタル
  9. R.I.P. Roy Ayers 追悼:ロイ・エアーズ
  10. Columns ♯12:ロバータ・フラックの歌  | Roberta Flack
  11. Lawrence English - Even The Horizon Knows Its Bounds | ローレンス・イングリッシュ
  12. Columns ♯11:パンダ・ベアの新作を聴きながら、彼の功績を振り返ってみよう
  13. interview with Acidclank (Yota Mori) トランス&モジュラー・シンセ ──アシッドクランク、インタヴュー
  14. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2025
  15. story of CAN ——『すべての門は開かれている——カンの物語』刊行のお知らせ
  16. interview with DARKSIDE (Nicolás Jaar) ニコラス・ジャー、3人組になったダークサイドの現在を語る
  17. interview with Squid スクイッドの冒険心が爆発したサード・アルバム
  18. 別冊ele-king ゲーム音楽の最前線
  19. Columns 「ハウスは、ディスコの復讐なんだよ」 ──フランキー・ナックルズの功績、そしてハウス・ミュージックは文化をいかに変えたか  | R.I.P. Frankie Knuckles
  20. R.I.P. David Johansen Funky but Chic——デイヴィッド・ヨハンセン R.I.P.

Home >  Regulars >  Random Access N.Y. > vol.93:ブルックリンのインディ・ロックは死なず- Pill, Bambara, Weeping icon, Hubble @Alphaville 7/15/2017

Random Access N.Y.

Random Access N.Y.

vol.93:ブルックリンのインディ・ロックは死なず

Pill, Bambara, Weeping icon, Hubble @Alphaville 7/15/2017

沢井陽子 Jul 21,2017 UP

 NYの最近の音楽の話題といえば……、LCDサウンドシステムの再結成だろうか。6月にできた大会場、ブルックリン・スティールでこけら落とし、6日間連続ショーを敢行。夏はあらゆるフェスティヴァルに出演、秋には北アメリカツアー、12月にはブルックリン・スティールで10日間連続のショーを追加。
 えー、それから……Jay-Zがショッキングなパーソナル・アルバムを出し、1枚も売らないうちに(ストリームのみ)プレミアムになり、ビヨンセが待望の双子を出産し、Rケリーがセクシャル・ハラスメントで訴えられ……いやいや音楽メディアを賑わせるのは、ここブルックリンのインディ・バンドのはず。活きの良いバンドが集まり、ぴちぴちしながらシーンを形成していることを、知っているだろうか。同じ日にあった 〈Out in the Street〉フェスティヴァルよりも、ラインナップの濃い、現在のブルックリンを代表するバンドが集まったショーは、アルファヴィルという、ブッシュウィックのレストランで。リル・ヨッティを知らなくても、彼らは知っていたほうが良い。(http://www.alphavillebk.com/)


 最初は、元the MenのBen GreenbergのプロジェクトのHubble。
https://www.facebook.com/pg/missionhubble/

 彼はユニフォーム(http://www.unifuckingform.com/)というとハードコア・バンドもやっていて(sacred bonesから作品をリリース)、ハーヴェイ・ミルクなどのヘヴィーな音楽に影響されている。アヴァンギャルドなフィンガー・タッピング・ギターのなかに、メタル、パンク、ブルース的要素を取り入れた、実験的音楽が紡がれる。体がホワーンと上がる、ダウンタウンのミニマリズムとブルックリンの攻撃的要素が交わる。


 ブルックリンの女子4人組のウィーピング・アイコンは、みんなロングヘアで、見た目がほとんど同じで、ローファイなウォー・ペイントという印象。ダークで、サイケで唸るようなパンクなチューンを、実験的にかき鳴らしし、最後にはキーボード(コンピュータの)を引っ張りだし、ガチャガチャ打ちつつ、轟く音を残した。(https://www.facebook.com/weepingiconbk/


 そしてクール過ぎる、男前バンドのバンバラの後が、今夜のメイン、サックス・ドライヴィン・バンドのピル。ニューEP「Aggressive Advertising」は、パーケット・コートのメンバーのレーベル、ドゥル・トゥールからのリリース。
 リディア・ランチやティーンエイジ・ジーサス・アンド・ザ・ジャークスなどのノーウエイヴ、ポストパンク組に分類されがちだが、サーフ・ロックからフリー・ジャズまでを網羅し、フェミニズム、政治、抗議などについて歌う。サックスを中心に、鋭く攻撃的な音がリボンのようにあちこちに飛び回り、感情を掻き立てられるのだが、歌い方は至って冷静。ちょい艶やかなダウンタウン・ボーイズともいえる。ステージでのエネルギーの放ち方が半端なく、オーディエンスもそれをがっちり受け止める。客層は若く、ゲイが多い、いかにもブルックリンな感じ。最近は、ディアハンター、ゲリラ・トス、サン・ウォッチャーズ、ウッズなどなど、サックスを取り入れるバンドが多いのは、たまたまの偶然なのだろうか。
https://www.facebook.com/PILLTHEBAND/

 会場もバンドに優しく、バーテンダーはみんなバンドマンで(ホンヂュラスのヴォーカルもいた)、オーナーもバンドを見て盛り上がっている。ドリンクは、12種類ほどのドラフトビール他フルバーで、フードはハンバーガー、ナゲット、マック・アンド・チーズなど豊富。ショーが終わった後もみんなナゲットを摘みながら長々とハングアウト。そして、そのまま別のバーに流れ、朝まで飲み……と、まあ、そこでとんでもないアイディアが生まれるというわけなのだ。

Yoko Sawai
7/17/2017

Random Access N.Y. - Back Number

Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住20年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

COLUMNS