Home > Regulars > Random Access N.Y. > vol.94:ライアーズはやっぱりライアーズなのだ
ライアーズがニュー・アルバム『TFCF(Theme From Crying Fountain)』をリリースした。アーロン、ジュリアンが抜け、アンガス一人になった今作は、抑圧ヴァージョンだが、明らかにライアーズである。何作もライアーズを聴き続けているが、ライアーズはいつも違って、いつも同じなのだ。あまりにも独特で、いまだにファンを惹きつけている。
初期2000年代のアート・パンク/ノイズ・パンクから、そしてグリッジー、そしてダンサブルな変態エレクトロ・ポップを経ての今作は、ある意味ライアーズ史において一番おとなしい。とはいってもライアーズなので、1、2曲聴いただけでは全体の物語はつかめない。まずはライアーズのお得意の、急き立てられるダーク・エレクトロあるいはフォーキーなサイドが耳に入る。
8月最終月曜日の夜に、グリーンポイントのブルックリン・ナイト・バザーで、『TFCF』のリスニング・パーティがあった。アルバムのカヴァー・アートのテーマを踏襲して、会場は赤白の風船とウエディング・ケーキ、白鳥の花瓶などが飾られていた。アンガス自らがフロントで、ウエディングドレスとベールを着てのDJをはじめる。
アンガスのセットはハイパーな折衷主義で、キンクス、クリス・クロス、ファクトリー・フロア、グレゴリアン・チャンターズ・エニグマ、ジョン・ホプキンズなどをプレイ。自分の曲もかけていたが、DJ中は真剣な顔で画面に向かい、ニコリともせず、そして10時ぴったりに最後の曲を終えると、何も言わず会場を去った。
お客さんは、フロアで踊っている人もいたが、ほとんどがウエディングドレス姿のアンガスを、ウエディング・ケーキのお裾分けを食べながら凝視しているという、なんとも奇妙な光景だった。招かれざるウエディング・パーティに足を踏み込んだ感じで、その居心地の悪さがじつにライアーズらしい、と笑ってしまった。会場には、今回のツアー・バッキング・バンドであるバンバラのメンバーや音楽ブログのエディターなどが勢ぞろいしていたが、みんなこの奇妙な状況を面白がった。いかにもいまの時代らしいね、と。
ライアーズは、数週間前(ヨーロッパツアーの前)にアルファヴィルという小さな会場でシークレット・ショーをしたばかり(その時は満員!)。この後は、アメリカを周り、ブルックリンには9/21に帰ってくる。会場のワルシャワは、以前アンガスが怪我をして、座りながらショーをした事も記憶にあるが、ライアーズにはお馴染みの会場である。新メンバーでどういったショーを見せてくれるか、いまから楽しみである。