「LV」と一致するもの

Current top 10 2012.4.29


1
Shifted - Colour Of The Fall - Mote Evolver

2
IORI - Moon - Phonica White

3
Morphosis - Silent Screamer - Delsin

4
DB1 - Vanguard - Hidden Hawaii

5
Demdike Stare - Demdike Stare Meets Shangaan Electro - Honest Jons

6
IORI - Spread - Phonica White

7
Magic Mountain High - Untitled - Workshop

8
MM/KM - 6 Track Mini - The Trilogy Tapes

9
Architectual - Looking Ahead - Semantica

10
Madteo - Very Sweaty Palms (Kassem Mosse Remix) - Meakusma

Annapurna illusion - ele-king

 アマゾン出身の謎の覆面ミュージシャンという当初のコンセプトは、やっぱり覆面着けてライブするのは面倒だからという理由でいつの間にか何処へやら。ハイウルフ(High Wolf)ことマックス・プリモルトとは一昨年、昨年と(そしておそらく今年も......)何の因果か、ツアーの日々を共ともに過ごしているので、近年の彼のライヴ・パフォーマンスにおける成長は誰よりも近くで(近過ぎるよ)見てきた。2010年に彼が日本に訪れた際、サポート・バンドとして借りだたされ、多くのジャムを楽しんだものの、果たしてハイウルフはこれでいいのだろうかと疑問が残った。
 2011年のアメリカ・ツアーを一緒にやったとき、ロスのランドスライドという高台にあるスケート・パークで僕らの前に彼が当時サン・アロー・バンドのメンバーであったバーレットとディープ・マジックのアレックスという同じような即席バンド・セットで演奏しているのを見て、その疑問は確信へと変わった。こりゃダメだ。演奏終了後に近隣住民からの騒音の苦情により駆けつけたロス市警により主催者が罰金を課せられたため、トリであった僕のバンドの演奏は中止、僕のやり場のない怒りはマックスへ向けられた。毎回、サポート・メンバーの演奏に振り回されているハイウルフは見るに耐えない、ハイウルフとしてのオリジナリティがまったく出ていないじゃないかと言う僕にマックスはしかめっ面していた。
 〈NNF〉周辺の多くのベッドルーム・ミュージシャンはときにライヴ・パフォーマンスが得意ではない。かつてはヒップホップに傾倒していたマックスもトラックメイカーとしての優れたバックグラウンドを持つものの、ライヴではいまだ発展途上であることを自覚していたのか、このときの僕の八つ当たりを彼はシリアスに受け止めたようで、残りのスケジュールでのライブヴをすべてソロ・セットに変更した。僕はまったく意図していなかったが、これは吉と出て、それはなかなか素晴らしいものだった。もちろん、僕も新たな仲間とのセッションは格別である事は充分承知しているが、それがオーディエンスと共有できるとは限らない。本来それは優れたスキルと百戦錬磨の経験に裏打ちされるものであることが多い。

 アナプルナ・イリュージョン(Annapurna illusion)はハイウルフの無国籍ハルモニア・ロックとは異なるマックスのダークサイドであり、彼が愛して止まない初期アース(Earth)等などの影響を受けたサウンドはアマゾンの密林で夜を過ごす探検家の悪夢だ。余談だが、ロスからテキサスまでの地獄のドライブ中、ジョイントはなくとも永遠変わらぬ砂漠の風景、トラッカーズ・ピルと不味いコーヒーで無理矢理覚醒状態にしている疲労困憊な僕の状態と最高のシチュエーションで一緒に聴いたアースの3rdはマジで危なかった(運転が)。
 この音源のハイライトは、昨年のハイウルフのヨーロッパ・ツアーで彼がベルギーを訪れた際、僕らの共通の友人でもあるシルヴェスター・アンファングII(Sylvester Anfang II)としても活動するヘルヴェット(Hellvete)ことグレンとのコラボレーション、『アナプルナ・ヘルヴィジョン』だ。お気づきの方のいらっしゃるだろうが"ヘルヴェット"はメイヘムのユーロニモスが営んでいたデス・ライク・サイレンスの拠点であるレコード・ショップから拝借しているのだろう(本当はHelveteである)。同じくシルヴェスター・アンファングIIのウィリアムが、マーチテーブルでネクロ・ブラック・メタルだと勘違いして僕らの音源を買っていく連中が家に帰ってから失望するのを想像すると可笑しくって溜まらないと言っていたが、僕はそんな彼らの最高に捻くれたセンスが大好きだ。
 ヘルヴェットは近年、よりミニマルなドローンに傾倒しているらしく、クラーク(KRAAK)よりリリースされていたレコードで聴ける彼の素晴らしいバンジョーがないのは少々残念でもあるが、そのラーガ調のドローンでマックスの描く悪夢をより禍々しいものに仕立てあげている。
 マックスはあれ以来、ライヴはソロ・セットでこなしているようで、おそらくこの音源はレコーディングという大義名分をかざしグレンの家にしばらく転がり込んでいたのだろう。絶対マックスにたかられたであろうグレンには同情するよ。でも不思議に、マックスは何処か絶対憎めないキャラで、これこそが彼の本当の才能であり、ゆえにロクに金を持たずとも世界中を放浪出来るのである。より多くのツアーを経て成長した彼の演奏を見るのが楽しみだ。

 以前、〈グループ・タイテナー(Group Tightener)〉からリリースされたアナプルナ・イリュージョン/ハイウルフのレコードのアートワークを手掛けた際に、これはどう考えてもスプリットじゃないだろう、両方お前じゃねーかという僕の意見に断固これはスプリットであると言い張っていた。マックス、お前マジで最高だよ。

Chart by Underground Gallery 2012.04.27 - ele-king

Shop Chart


1

Onomono

Onomono Onomono_ep_0506 (onomono.jp /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
過去2作品は、予約のみで完売してしまい、市場には殆ど出回らず、一部オークションでは既にプレミアさえ付き始めている、某有名トラックメイカーの変名テクノ・プロジェクト"onomono"待望の第三弾が遂にリリース!ALVA NOTOのような高周波が響くマイクロ・ミニマルを思わせるイントロから、一気に捻れたアシッド・シンセが走りだし、気がつけば"onomono"ワールドへ誘われているA面の「onomono_05」、ヘビーウェイトなイーブンキックに、金属的な響きを効かせたノイジーウワ音が巧みな変化を繰り返しながらドープに展開していくB面「onomono_06」の2トラックを収録。手も足も出ない完璧なミニマル・テクノ!今回も凄まじいです...。

2

MM/KM aka Mix Mup/Kassem Mosse

MM/KM aka Mix Mup/Kassem Mosse 6 Track Mini LP (The Trilogy Tapes/lp) / »COMMENT GET MUSIC
リリース前から、一部、耳の早いコアなファンの間で話題を集めていた注目ユニットのデビュー・ミニ・アルバムが、超少量入荷! UKのカセット・レーベル[The Trilogy Tapes]が贈るヴァイナル作品第三弾は、[Mikrodisko]などからリリース経歴を持つMIX MUPと、ベルリンの奇才KASSEM MOSSEによるユニットMM/KMのデビュー・ミニ・アルバム!ダブステップ /ベース・ミュージック、テクノ、ディープ・ハウスなど、全ての要素が混在する、実験的なアンダーグラウンドなディープ・トラック集!既に本国UKをはじめ、ヨーロッパでは入手困難な状況になっている、稀少な作品です。

3

Vinalog

Vinalog Lost Patterns (Relative /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
未だ、はっきりとした詳細がつかめない独[LiveJam Records]関連ですが、傘下レーベルの中でも一際個性を放っている、UGヘビープッシュのロウ・ハウス・レーベル[Relative]の新作は、レーベルの中心人物JOHN SWINGのプロジェクトVINALOGのNew12インチ! やっぱりVINALOGカッコイイです!別格ですね!ねっちょりとしつこいくらいにループされる、もっさりしたディスコ・グルーヴで、じわりじわりとハメ込んで行く、スモーキーなロウ・ハウスを展開したA1、ストレートなTR-909グルーヴにネジ曲がったベース・ラインとサイケデリックなウワ音でロックするA2、ジャズ・ピアノ・サンプルがループするB2など、かなり癖の強いハウス・作品が4トラック収録。今回も限定盤です。再入荷が難しいレーベルですので、気になる方はお早めに

4

Infiniti aka Juan Atkins

Infiniti aka Juan Atkins The Remixes - Part 1 (Tresor /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
TV VICTOR / THOMAS FEHLMANNリミックス! 90年代初頭から、常に最前線を走る、老舗中の老舗レーベル、ベルリンの 名門[Tresor]、記念すべき250番(凄い!)を記念した、スペシャル企画は、デトロイト・テクノのオリジネーター、JUAN ATKINSがINFINITI名義にてリリースした過去作品のりミックス! 第一弾となる今作は、98年に[Tresor]からリリースされたアルバム『Skynet』に収録されていた楽曲「Walking On Water」と「2Thought Process」の2曲を、クラウトロック・バンドNO ZEN ORCHESTRAとして活動してた事でも知られる、ジャーマン・テクノ / エレクトリック・ミュージック界の大ベテラン、UDO HEITFELD aka TV VICTORと、3MB名義でJUANとのコラボも行った事がある大御所THOMAS FEHLMANNがリミックス!

5

BMG & Derek Plaslaiko

BMG & Derek Plaslaiko Is Your Mother Home? (Interdimensional Transmissions /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
90年代から活動するデトロイトのカルト・エレクトロ・ユニットECTOMORPHが主催する、[Interdimensional Transmissions]の新作は、そのECTOMORPHのメンバーでもあるBMGと、デトロイトのローカルDJ DEREK PLASLAIKOとのコラボレーション。 ここ最近は、エレクトロから路線変更して、面白いリリースが増えてきていた[Interdimensional Transmissions]レーベルですが、今回も是非注目して頂きたい、オールド・スクーリーなテクノ・トラックを披露しています。ローランドの各種リズムマシーンのむき出しのビートを軸に、繊細な電子音が絡んだミニマル・テクノ集!ドイツのTOBIAS.辺りのアナログ・テクノが好きな方なら間違いありませんよ!

6

Tom Trago

Tom Trago Use Me Again (Rush Hour /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
2010年リリースのディスコ・キラーをCARL CRAIGが再構築!CARL CRAIG本人が以前からプレイしていた、あのヴァージョンが待望の12インチ・カット! ここ数年、[Rush Hour]がフックアップしているアムスの新世代アーティストTOM TRAGOが、2010年にリリースした12インチ「Voyage Direct - Live Takes」に収録され、CARL CRAIG本人も以前からプレイしていた、ブラックディスコ/ビートダウン・チューン「Use Me Again」が、そのCARL CRAIGの手により再構築されて12インチ化! リリース当時から現在まで、CARL CRAIGやRADIOSLAVEなどが、ことあるごとにプレイし続けているディスコ・ハウス「Use Me Again」、スリリングなストリングスとアップリフティングなディスコ・グルーヴが超アガるキラー・チューン。この曲をCARL CRAIGが、強烈なエフェクトを効かせ、空間をねじ曲げた、ドラッギーなディスコ・ハウスへリエディット!マジで最高ですよ!

7

Idjut Boys

Idjut Boys One For Kenny (Smalltown Supersound /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
LINDSTROM、MUNGOLIAN JETSET、TODD TERJEなど、重要アーティスト達がリリースしてきた、名門[Smalltown Supersound]の新作は、遂に満を持して大御所IDJUT BOYSが登場! 昨年日本で先行リリースされ話題となった、IDJUT BOYSキャリア初のオリジナル・アルバム「Cellar Door」より、昨年惜しくも他界してしまった、UKのKENNY HAWKESに捧げた楽曲「One For Kenny」が待望の12インチ化。ビートダウン風のブギー・ダブ・ディスコ・グルーブに、盟友 PETE Zによる、サイケ & ダヴィーなシンセ、BUGGE WESSELOFTによる可憐な鍵盤が絡みあう、めちゃくちゃカッコ良い、ミッド・ディスコ・チューン!アルバムの中でも一際人気の高い1曲だっただけに今回のアナログ・カットが嬉しいという方も多くいることでしょー。しかも 45回転、重量盤プレスで音も良し。DJのみならずとも、コレは要チェックです!全世界500枚限定!

8

Pepe Bradock

Pepe Bradock Imbroglios 1/4 (Atavisme /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
フランスを代表するアーティスト、ビートダウンを基調にしながらも、規格を超えたオリジナルなハウス・サウンドで大きな支持を得ているPEPE BRADOCK が、前作 「Path Of Most Resistance」以来、約3年ぶりとなる新作をリリース!今後、パート4までリリースが予定されている「Imbroglios」シリーズの第一弾。ビートダウン的なムードを持ちつつも、より実験的でアバンギャルドな雰囲気があって、奇才ならではのディープ・ハウス作品が4曲収録。ジャジーなサンプルを巧みに操った「Katoucha?」がイチオシですが、全曲濃いですよ!流石PEPE BRADOCK!

9

V.A

V.A I'M Starting To Feel Okay Vol. 5 Pt. 1 (Endless Flight /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
東京[Mule Muziq]のサブレーべル [Endless Flight]から、毎年恒例となっているレーベル・コンピレーション・シリーズ「I'm Starting To Feel Okay」第5弾からの12インチ・カット! ここで特筆すべきは、文句なしにMOVE D!リバース・フレーズを巧みに交えた、ミニマル・ディスコ作品で、テンションやグルーヴ、展開や鳴り、全てが完璧!この作品だけの為に買っても損はありませんよ!保証します!その他にもアムステルダムのニュースターJUJU & JORDASHによる、マッド&ピプノなアシッド・テクノや、TERRE THAEMLITZ aka DJ SPRINKLESによる淡い色彩感覚とライトなグルーヴが素晴らしいフローティング・ハウスが収録されていて、全曲◎な内容!これはお見逃しなく!オススメです。

10

Madteo / Shake Shakir

Madteo / Shake Shakir Kassem Mosse / Marcellus Pittman Rmx (Meakusma /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
ANTHONY "Shake" SHAKIR / KASSEM MOSSE / MARCELLUS PITTMANリミックス! 先日JOY ORBISONが新レーベルからリリースされたばかりの最新作「Bugler Gold Pt.1」が、UKを皮切りに欧州で大きな話題を集めている、N.Yはブルックリンの奇才MADTEOの楽曲を、デトロイトの大ベテランTHONY "Shake" SHAKIR、[Workshop]からのリリースでお馴染みのベルリナーKASSEM MOSSE、そして、THEO PARRISHやMOODYMANNと共に、3CHAIRSのメンバーとしてもお馴染みのMARCELLUS PITTMANがリミックス!

Lodsb - ele-king

 ちょうど1年ぐらい前、ジェイソン・フォレスト『ジ・エヴリシング』が『ピッチフォーク』で高く評価されていたのは少し驚いたけれど、ブレイクコアというジャンルが衰退し続けていることは明らかだろう。この5年以上、リリース量は減る一方だし、ゼロ年代のトップを切っていたヴェネティアン・スネアーズがラスト・ステップの名義でエレクトロニカのプロジェクトをはじめたことも象徴的なら、ドロップ・ザ・ライムやカードープッシャーのようにダブステップと結びつく動きも何かを物語っているといえる(その先頭にいるのはザ・バグだろう)。というより、音楽性という意味ではほとんどポテンシャルはないに等しいジャンルだったのに、よくぞここまで衝動が持続したと関心するべきなのかもしれない(ニコ動なんか、ある意味、まだ全盛だけど)。

 ディジタル・ハードコアやエイフェックス・ツイン周辺に起源を持つブレイクコアは、キッド606や前述のヴェネティアン・スネアーズを得ることで、むしろゼロ年代に隆盛を極めたといってよく、デフラグメンテイション、ファニー、ボング-ラー、シックボーイ、サウンドマーダラー+SK-1、エンドユーザー、デュラン・デュラン・デュラン、ウィスプと歩兵を増やし、日本でもZKやレッド・アラートといったレーベルを皮切りにサイケアウツ、OVe-NaXx、m1dy、CDR、DJスコッチ・エッグ、撲殺少女工房、フルイドと強力なラインナップを保ち続けたといえる。単に激しさを競い合っているだけのような海外のシーンに比べてミルキー・チューやデ・デ・マウスのように体力がない分(?)、取り入れ方にも工夫があったのは日本の方だったかもしれないし、もっとも洗練された例をコーネリアス『ファンタズマ』に聴くことができるという人も(海外には)いるくらいである。つーか、ヘルフィッシュやDJスカッドなど、ホントに海外勢はやかましくて、買ってまで聴いている自分がよくわからなくなってきたからなー(ゼロ年代も後半に入る頃には飽きてたけど)。

 そうしたなかで、ちょっとしたセンセーションだったのはフィラスタインのセカンド・アルバム『ダーティ・ボム』だった。99年にシアトルで起きた反グローバリズム運動(バトル・イン・シアトル)から頭角を現してきたフィラスタインは、その後、最新のダンス・ミュージックとワールド・ミュージックを結びつけるというディプロと同じコンセプトで世界を動き回りながら、その成果をシリアスでシャープな音楽性のなかに落とし込み、ディプロとは正反対の感情に訴えるベース・ミュージックを築き上げていった(どっちがいいという話ではない)。グライムであれ、クンビアであれ、使われるパーツのことごとくがディプロと同じだけに、この対比は非常に興味深いものだった。そして、そこに取り入れられたブレイクコアは驚いたことに知的なトーンを帯び、衝動が無限に拡散していくだけだったブレイクコアに抗議の矛先を与えたように感じられるものとなっていた(これもどっちがいいという話ではない)。

 それほど注意深く見ていたわけではないけれど、フィラスタインの後にインテリジェント・ブレイクコアとでも呼べる道ができた形跡はない。そして、あれから3年が経ち、フィラスタイン自身のサード・アルバムが完成した。姿勢は変わっていない。前作同様、ECDもディプロ風のユーモラスなダブステップでフィーチャーされ、のっけから「植民地崩壊」でガムランとブレイクコアが絡み合う(なんともドリーミングなリミックス・ヴァージョンが日本のみボーナス・トラックとして収録。これはかなりいいです)。「小競り合い」や「ニセの解釈を循環させる」で半分デタラメに打たれているようなパーカッションと管楽器のマッチングもよく、インドネシアのMCノヴァが伝統的な旋律を歌うバックでは奇態なリズムが細かく刻み続けられる。全体に迫力には欠けるというか、もしもドクター・ロキット(ハーバート)がPIL『フラワーズ・オブ・ロマンス』を丸ごとリミックスしたら、こんな感じになるかなーと。

 フィラスタインの後に道はできなかったとしたけれど、ブレイクコアにポスト・クラシカルを掛け合わせ、マウス・オン・マース式のアブストラクに落とし込んでしまった才能がどこからともなく出てきたことも付け加えておきたい。詳しいことはわからない。ファースト・アルバム『レイザー.アイズ.ラヴ』はドイツのレーベルから配信のみ。セカンド・アルバム『エアロ』は豪州のレーベルからアナログ・オンリーで、10分を超すオープニングからどう説明していいかわからず、ただ繰り返し聴き返すばかり。ジャケットがゲイトフォールド仕立てで、日本のアニメに影響されたらしきアートワーク(ディポットヴィジュアルズ)がとてもいいので、それを眺め続けること小一時間(ウソ)。本音をいうと、この音楽の前でまだしばらく言葉を失ったままでいたいのね。「音楽を言葉で語るな教」(岡田暁生『音楽の聴き方』参照)のパートタイム信者になったということで。......でも、これ(https://soundcloud.com/retort-records/lodsb-aero-preview)、ホント、どうやって説明します?(なるべく早い時期にヴィンセント・ラジオでかけます!)

Katusi from El Skunk DI Yawdie & Extravaganza - ele-king

 これは......お洒落な音楽。だいたい日本のインディ・シーンでカホン(ペルーの箱形の打楽器)を叩く人間なんてものは、町でも名が知れた洒落者に違いない。
 1曲目の最初の30秒を聴いて好きになれる。レゲエを入口としながら、クンビアやメキシコのマリアッチ、それらラテン・アメリカの叙情とブルース/ジャズ、こうしたものへの文化的アプローチの格好良さを僕にたたき込んだのはザ・クラッシュだった。とくに決定打となったのはジョー・ストラマーの『ウォーカー』......ゆえにカツシ・フロム・エル・スカンク・ディ・ヤーディ&エクストラヴァガンザ(長げぇー)の『リズム・メッセンジャー』を嫌いになれるはずがない。
 くどいようだが、中南米の格好の付け方をインディ・シーンに最初に広めたのはジョー・ストラマーだ。ザ・クラッシュがズート・スーツでめかし込んだときから、その授業ははじまっている。ズート・スーツとはメキシコ系のギャングスタ・ファッションで、1940年代のロサンジェルスにおけるラテン・ユースの暴動の名前にもなっている。いわばアメリカ政府への反乱のシンボルだ。ストラマーは、それをファッションとして引用すると同時に、音楽的にもラテンを取り入れて、レーガン政権の情け容赦ない仕打ちにあっていた中南米諸国、有色移民たちと精神的に結ばれようとした。ロックという当時は若者文化の最大公約数だった闘技場のなかでそれをやり遂げる際に、ストラマーはこの方向性がファッショナブルで格好良いんだということを忘れなかったし、実際、彼はそれを思い切り格好良いものとして見せた。

 そうした格好良さをカツシ・フロム・エル・スカンク・ディ・ヤーディ&エクストラヴァガンザの『リズム・メッセンジャー』から感じる。さらに、アルバムを聴きながら僕が思ったのは、これだけの恐怖を経験して、そしていまもなお(いち部の恵まれた連中をのぞけば)その恐怖から簡単に逃れることができないという現実に生きながら、なんてはつらつとした愛情と生命力をもった音楽なんだろう......ということだ。
 中心となっているのは岩手県で暮らすミュージシャン、カホン奏者カツシ(エル・スカンク・ディ・ヤーディ)だが、たくさんのゲストが参加している。MCやヴォーカリストだけでもジャーゲジョージ(RUB A DUB MARKET)、リクルマイ、千尋、CHAN-MIKA、青谷明日香......、演奏者も小西英理(copa salvo)をはじめ、ザ・K、森俊介、櫻井響、長崎真吾、EKD......などなど多くの人たちの名前がクレジットされている。偏狭な地方主義ではなく、音楽を媒介に広まったネットワークによる成果だ。

 ところで、日本の地方都市でこうしたカリブ海の音楽、中米の香りが広く根付いていることは、静岡出身の僕にも実感できる。いくつかの大都市を除けば、日本の地方都市なんてものは、本当に慎ましいものだ。DJカルチャーとともに中南米音楽はそういうなかでただ好まれているのではない。"共同体的に"好まれているのだ。多少問題はあっても、基本的には気が良い連中による繋がりがある。ひょっとしたら『リズム・メッセンジャー』はいまのところその最良の成果かもしれない。歴史と苦難が刻まれたこのアルバム、しかも全曲がお洒落で、そして全曲がブリリアント!

追記:もうすぐアルバムを出す、Tam Tamというバンドもすごく良い。

Chart by Underground Gallery 2012.03.29 - ele-king

Shop Chart


1

BURIAL + FOUR TET

BURIAL + FOUR TET Nova (Text Records / 12Inch) »COMMENT GET MUSIC
FOUR TET率いる[Text]の新作は、ダブステップ界の大ボスBURIALと、レーベル主催、レフトフィールド・ミニマルの天才FOUR TETのコラボレーション! FOUR TETらしい、アコースティックなギター・リフで軽やかに展開していく、ディープ・テック・トラック!

2

ROCKET JUICE & THE MOON FEATURING ERYKAH BADU

ROCKET JUICE & THE MOON FEATURING ERYKAH BADU Manuela / Mark Ernestus Dub (Honest Jon'S / 12Inch) »COMMENT GET MUSIC
BLUR/GOZILLAZのDAMON ALBARN、RED HOT CHILI PEPERSのFLEA、FELA KUTI BANDの TONY ALLENという、とんでもない面子による、スペシャル・ユニット ROCKET JUICE & THE MOONが、間もなくリリースを予定している1stアルバムに先駆けたリミックス12インチ! 言わずと知れた歌姫、ERYKAH BADU嬢をフィーチャーし、アルバム未収録作品を、何と、ベルリンのダブマスター、BASIC CHANNEL / RHYTHM & SOUNDでお馴染みのMARK ERNESTUSがリミックス!屈指のロックミュージシャン2人と FELA KUTIと共にアフロ・ビートを作り上げたTONY ALLENをバックに従え、"Neo-Soul"の女王 ERYKAH嬢による悩ましげなヴォーカルがダビーに響き渡る、濃密なブラック・アフロ・ソウル作品!

3

BUBBLE CLUB

BUBBLE CLUB In Consequence Of A Wish (International Feel / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
ERIC DANCAN、BRENNAN GREEN、SOFT ROCKSらがリミックスで参加した 自身主宰レーベルも好調な、ロンドンのバレアリック・ディスコ・ユニット BUBBLE CLUBが、前作「The Goddess」以来、久々となる新作を、DJ HARVEYのプロジェクトなど、話題作連発な [International Feel]からリリース。 前作「The Goddess」に、スライド・ギターを加え、よりレフトフィールド/コズミック風ディスコへと昇華させた「In Consequence Of A Wish」、疾走感のあるリズムにライブ・パーカッションやバレアリックなシンセ類を散りばめた「Seven Hills」、BRIAN ENOの「Apollo」や、Daniel Lanois諸作品を思わせるような、ペダル・スチールでとろけるような甘いムードを演出したチル・アウト・チューン「Ex-Voto」の 3作を収録。今回もJOSE PADILLA周辺の"Ibiza~Big Chill"方面を中心に大きな話題を集める事は、まず間違いありません!

4

ANIMATION

ANIMATION Sanctuary (Sarcred Rhythm / 10inch) »COMMENT GET MUSIC
[Blue Note]等で活躍するアメリカのサックス奏者/コンポーザー、BOB BELDENによるANIMATION名義でのアルバム「Agemo」に収録されていた楽曲「Sanctuary」を、レーベル・オーナー JOE CLAUSSELLがリミックスした大注目の1枚。まず Side-Aでは、JOE CLAUSSELLらしい 空間を巧く活かした スモーキー & トリッピーなウワモノを響かせた 傑作ロービート・ダブ「Part.1」。Side-Bには、90年代後期の UK/クロスオーヴァー作品を彷彿とさせるような、疾走感のあるジャズ/ブレイクビーツ風のトラックに、鮮やかな高揚感を持って響く鍵盤やサイケ & ディープなストリングス/Saxリフなどを散りばめた、グルーヴィーなフロアートラック「Part.2」を収録。

5

KEVIN SAUNDERSON FEAT. INNER CITY

KEVIN SAUNDERSON FEAT. INNER CITY Future (Carl Craig / Kenny Larkin Remixes) (Defected / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
JUAN ATKINS / DERRICK MAYとともに、デトロイト・テクノを誕生させた、パイオニアの一人、KEVIN SAUNDERSONのメイン・プロジェクトINNER CITY、約11年振りとなる新作「Future」を、CARL CRAIG & KENNY LARKINがリミックス!

6

KRISP

KRISP Lovestomp (Sex Tags Ufo / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
ノルウェーのカルトレーベル[Sex Tags Mania]傘下[Sex Tags UFO]新作! 今回は、90年代初頭より活躍する 同地の巨匠 BJORN TORSKEによる変名 KRISPによる1枚で、何と言っても注目してもらいたいのがB面に収録された「Lovestomp」。 往年のディスコクラシックをサンプリングし、フィルター処理を交え、ファンキー & グルーヴィーに展開させた、BJORN TORSKE流のディスコ・ハウスを展開。MOODYMANN辺りのデトロイト勢縲怎Vカゴ系のファンキー。ハウス好きまで、多方面にオススメです!!さらにA面には、トビを効かせた、疾走感のあるオールドスクーリーなドラム・マシーン・リズムに、BJORN TORSKEらしい、妖しくダビーな上モノを配しながら展開させたハウス・チューン「Truckstomp」を収録。

7

MOOMIN

MOOMIN Sleep Tight ( Smallville / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
昨年秋にリリースされたフルアルバム『The Story About You』が、ここ日本でも高く評価され、一躍注目の的となったMOOMINが、待望の新作12インチをリリース! 傑作アルバム『The Story About You』の延長線上にある、アコースティック楽器を上手く取り入れた、極上のディープ・テックハウス作品。零れ落ちるような、エレガントなピアノ・フレーズと、哀愁を帯びたサックス・サンプルが交差するA面「Sleep Tight 」が最高の仕上がり!CHRISTOPHER RAUにも通じるような、オールドスクーリーなリズムマシーン+淡い空間シンセで構成されたフローティング・ハウスの「Humbling Love」、きらびやかなストリングス・フレーズはループする、ディープなディスコ・ハウスを展開した「Catch A Cold」も、隙の無いカッコ良さ!全曲◎!

8

DA SAMPLA (ANTHONY

DA SAMPLA (ANTHONY "SHAKE" SHAKIR) West Side Sessions (Wild Oats / 12inch+7inch) »COMMENT GET MUSIC
ANTHONY "SHAKE" SHAKIRのレアマテリアルが未発表曲を加えて再発!デトロイトの若手実力派、KYLE HALLが主催する[Wild Oats]レーベル新作は、ANTHONY "SHAKE" SHAKIR aka DA SAMPLAが、1997年に、デトロイトのレコードショップ "Record Time" が運営し、ALTON MILLERやRICK WADEがリリースした事でも知られる、カルト・レーベル[M3]からリリースした傑作「M3 Sessions」に、未発表トラックや、KYLE HALLとのコラボ作等を加えて、12インチ+7インチの2枚組にて再発!

9

UGANDAN METHODS

UGANDAN METHODS Beneath The Black Arch (Ancient Methods / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
インダストリアル・テクノ最高峰!REGIS+ANCIENT METHODS =UGANDAN METHODS! 限定盤!これは最強!過去作品の再発など、このところ高く再評価されている、UKのミニマリスト大ベテランREGISと、HARDWAXが流通するインダストリアル・テクノ・レーベルからのリリースでカルトな人気のANCIENT METHODSによる、新ユニットUGANDAN METHODS! 全3曲、凄まじい鳴りとグルーヴにお手上げです...。全てのモノをなぎ倒し巻き込みながら進んでいくような、重圧なビートと攻撃的なグルーヴ、手も足も出ない最強のインダストリアル・テクノが3トラック!プレス枚数が少ない限定盤ですので、ファンの方はお早めに!

10

STILL GOING

STILL GOING D117 (Still Going / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
しばらく前から世界中の著名DJ達の Twitter、Facebook、Blog、チャート、プレイリストなどに取り上げられ、ファンの間でリリースが待ち望まれていた、STILL GOING主宰レーベル、第1弾シングルが遂に解禁! LCD SOUNDSYSTEMのPAT MAHONEY、FISCHERSPOONERのLIZZY YODERがゲストで参加した今作は、不穏な雰囲気を漂わせた、スペーシーなテック・ディスコ風のトラックに、MANUEL GOTTSCHINGっぽい、サイケ・ギターを響かせた1曲。カップリングでは、そのギター・プレイをより全面に押し出した、別ヴァージョンを収録。STILL GOING自ら、「お気に入りのアーティスト、楽曲、さらには自らの作品は、今後、このレーベルを中心にリリースしていく」と力強く語っているこの新レーベル、来月には早くも第2弾シングルも控えているようですし、今後の動向からも目が離せません。ディスコ~ハウス・ファンの方は絶対に要チェックですよ!

Sylvester Anfang II - ele-king

 やはりホフマン先生の代物はいざという時のために取って置くべきだった。
シルヴェスター・アンファング II(Sylvester Anfang II)が2枚連続でリリースを続けたために僕は後悔した。
 自身をフューネラル・フォークと形容し、前身シルヴェスター・アンファングとして活動を開始した彼らはフレミッシュ帝国時代のアイコンとKKKのマスク、60'sホラー・ポルノをグシャグシャにしたような(野田編集長いわくエコエコアザラクのような)ドローン・ジャムを演奏してきた。いつの間にやらシルヴェスター・アンファング IIとアモン・デュール II以外連想させない改名を機に、現在のようなクラウト・ジャム・バンドへと変貌していたのだが。
 ベア・ボーン・レイ・ロウ(Bear Bones Lay Low)、イグナッツ(Ignatz)、キス・ジ・アヌス・オブ・ブラック・キャッと( Kiss the Anus of Black Cat)とともにベルギーのゲントを中心とするアーティストをフォーカスした自主制作ドキュメンタリー映画『Drone Volk』はN、HK的な作りながらも小さなコミュニティの素のミュージシャンたちを映していて、なかなかおもしろかった。劇中、中心メンバーのヘルヴェート(Hellvete)ことグレンが「すべては楽しむためにあるんだ」と言った言葉からも伺い知れるが、彼らのすべてのタブーも笑い飛ばすフリー・ジャム・コミュニティーというヒッピーの夢のような姿勢は、結成当初から現代まで一貫している。彼らの近年のヨーロッパのアンダーグラウンドにおける活躍のひとつの到達点とも言える期間限定スタジオテイク・シリーズである〈Latitude〉からのリリースは、そうそうたるメンツと比べてもまったく聴き劣りしない。

 そもそもベルギーやオランダはいったい何なんだろう。クラーク(Kraak)やウルトラ・エクゼマ(Ultra Eczema)などを中心とするエクスペリメンタルやノイズ・ミュージックといったアンダーグラウンド文化が市民権を得ているかと思わせる。近年の日本において良質なジャム・バンドが生まれてこない要因のひとつとして、規格化されたレディメイドの都市機構のなかでのバンド活動があげられるが、ヨーロッパにおけるスクワット文化はまだまだこれから僕らの国で形成されても不思議ではないだろう。地震も恐いし、そういった新たなムーヴメントが生まれることを切に望むよとボング片手にグチりながら聴いたこのレコード。
 5つの摩訶不思議ジャムは心の師であるリアリー先生の言葉とともにすべての快楽主義者に捧げられるだろう。Turn on, Tune in, Drop out.

Various Artists - ele-king

 今日の日本のDJカルチャーがたまに気の毒に思えるのは、大バコ中バコの多さと外国人DJの来日が多すぎるってところだ。それに準じてクラバー人口やDJの数が増加しているなら、産業的には成長していると言える。ただ、外国人DJの影に若い日本人DJの存在が霞んでしまっているきらいもあるし、円高の影響もあるのだろうが、毎週末のラインナップのあまりの豪華さに、バランスは取れているのだろうかとたまに心配になる。
 その点、僕らの時代は恵まれていた。小バコ中心だったからリスクも少なく、シーンの行方は日本人のDJとオーディエンスにかかっていた。入場料も安かったし、年功序列もなかったし、わりと簡単にシーンの人たちと知り合いになれた。自由競争が激化する前だったので、経済的にはしょぼかったけれど、DIYだったし、仲間意識が強かったし、精神的にはまあ、とにかくお気楽だったわけだ。
 外国人DJにはたしかに腕の良い連中がいる。新しいトレンドもほぼ海を渡ってやって来る。が、誇るべきシーンが自分たちになければ、そのいち部であることに強いアイデンティティなど持てやしないことも事実。およそ半世紀にもわたるUKのDJカルチャーの逞しさも、頻繁にアメリカ人やドイツ人のDJを招聘しているから生まれたわけではない。瀧見憲司はそのことを意識している少数派のひとりだ。

 〈クルーエル〉は、今日でこそクラブ・ミュージックのレーベルとして認知されているが、20年前は渋谷系と括られたジャンルの震源地のひとつで、東京のインディ・シーンの中心的なレーベルだった。カヒミ・カリィのリリースでも知られ、コーネリアスとは音楽的な同盟関係にあった。要するに瀧見憲司は今日インディ・ダンスと括られるサブジャンルの草分け的な人物で、日本ではいまだ人気のあるネオアコと呼ばれるサブジャンルの火付け役でもある。最近は嬉しいことに若い読者も増えているので、いちおう、説明しておきましょう。日本で〈クリエーション〉にもっとも近いレーベルを探すなら〈クルーエル〉かもしれない。音楽性こそ違えど、純然たるインディ・レーベルが大ヒットを飛ばしたばかりではなく、影響力も発揮したという点では同じだ。

 本作『Crue-L Cafe』は、『Post Newnow』以来2年ぶりのコンピレーション・アルバム、とはいえ前作はリミックス・シリーズの『vol.ll』だったから、新曲を中心としたコンピレーションとなると2006年の『Crue-L Future』以来となる。アルバムには、昨年発表のトラック、これから12インチでリリース予定のトラックも収められている。
 言うまでもなく〈クルーエル〉は、「ごちゃ混ぜ」という意味においても、インディ・ダンスという意味においても、そのメロウな多幸感においても、バレアリックをコンセプトにしている。そして、12インチ・シングルのスリーヴをトロトロに溶けたキャラメルのようなデザインにしてから、その快楽路線をよりいっそう強めているように思える。今作『Crue-L Cafe』もその邁進の成果ではあるが、"カフェ"を名乗るだけあって家でのんびり聴くのにはもってこいの内容だ。

 オープナーは神田朋樹による"Ride a Watersmooth Silver Stallion"。ルーカス・サンタナを彷彿させるラテン的郷愁のアコースティック・ギターとエレクトロとの心憎い融合で、早速、レーベルの洒落たセンスを披露している。続いてビーイング・ボーリング(瀧見憲司+神田朋樹)による"Love House of Love"。70年代的なエロティシズムの再解釈、テンポを落とした官能的なディスコ・トラックが展開される。
 ディスコセッションの2年ぶりの新曲だという"Manitoba"は、えもいわれぬアンビエントを展開する。これはクラブ・サウンドによる、ほとんど極楽浄土の境地と言えよう。猫のあくびのように、曲の途中からはゆるいギターが響いている。新世代を代表する〈コズ・ミー・ペイン〉のザ・ビューティも、彼らに続かんとばかりに聴きごたえのあるチルアウトを打ち出している。
 それからクリスタル、UKのティム・デラックスとア・ノイジー・ノイズ、ハウス・マネキン......らによるダンス・トラックが続く。アルバムを出したばかりのタッカーがファンキーなダウンテンポで惹きつけながらエディ・Cの温かいディスコへと繋げる。すっかり上機嫌になったところで、フランキー&神田朋樹による非凡なる穏やかさが広がる。クローザーは、クルーエル・グランド・オーケストラの"Barbarella"。60年代末のエロティックなSF映画として(そしていかにも渋谷系的な)『バーバレラ』のカヴァーだが、この曲のハウスのグルーヴからは太陽のにおいすら漂う。

 ここ1~2年の欧米のクラブ・ミュージックのモードで言えば、ダブステップ/ミニマル/フットワーク/デトロイト、あるいはフライング・ロータス以降やチルウェイヴ以降がもうほとんど一緒になって騒いでいるような感じが僕には見受けられるけれど、そこにいっさいくみしていないことも、まあ〈クルーエル〉らしいと言えばらしい。このレーベルは昔からそうした欧米のトレンドを敢えて避けてるところがあるし、自分たちのセンス、方向性に揺るぎはないと思う。たしかに、どんなにサイケデリックになったとしてもエレガントさを失わない、それはこのレーベルの最大の魅力である。僕と同世代の人間は思い出して欲しい。1995年のクルーエル・グランド・オーケストラの最初の1枚にはこう記されている。「何がリアルやねん!」「やってられない、でもやるぜ!」「とりあえず飲みますか」......連中ときたら、まったく変わっちゃいない(笑)。

PS:とはいえ、いま日本から面白い作り手が出ているのも事実で、しかしそれをフランスのレーベルにフックアップされるのもなぁ......ちょっと悔しい。

Chart by Underground Gallery 2012.02.17 - ele-king

Shop Chart


1

JEFF MILLS

JEFF MILLS Taken (Taken / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
2011年、活発なリリースだったJEFF MILLSが、2012年一発目に発表するのは 「Something In The Sky」から派生した「Taken」(拉致)なる新シリーズからの 新作12インチ! 「Something In The Sky」シリーズ直系と言える、危機迫るような、スリルのあるシンセ・シークエンスを軸にした、スペーシーなサイエンス・フィクション・テクノが4トラック。レーベルからの詳細が一切無く、ミステリアスな「Taken」シリーズ、どんなコンセプトなのか、今後のリリースで明らかになっていくことでしょう

2

SECRET CIRCUIT

SECRET CIRCUIT Nebula Sphynx / Parascopic Rope (Beats In Space / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
TIM SWENNYによる話題の新レーベル[Beats In Space]第2弾!今回は、[Whatever We Want]からもリリースを残す LAUGHTING LIGHT OF PLENTYの EDDIE RUSCHAによるプロジェクト SECRET CIRCUIT! RUB'n TUG、MAP OF AFRICAで御馴染み、THOMAS BULLOCKとのライブプロジェクト LAUGHTING LIGHT OF PLENTYや、同じく、[Whatever We Want]からもリリースを残す、 FOOD OF THE GODS名義での活躍で知られる EDDIE RUSCHAが、新プロジェクトを始動させ、TIM SWENNYによる話題の新レーベル[Beats In Space] 第2弾として登場!ドープなアシッド・グルーブに、アナログ・シンセやトリッキーなサンプルを散りばめた。ディープ・エレクトロ・コズミック2トラックを披露。

3

MODEL 500

MODEL 500 Control (R&S Records / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
デトロイト・テクノのパイオニア、JUAN ATKINSが、MODEL 500名義にて新作12インチ をリリース! 前作はMIKE BANKSと元URのMARK TAYLORが制作をサポートしていましたが、今作 はJUAN ATKINS自身が、スタジオに籠って創り上げた完璧なソロ作品。 緊張感のあるリズムとダークなベースライン、そしてデトロイト・シンセにヴォーカ ルがのった、古くからのファンにはお馴染みのMODEL 500節炸裂のAサイド、浮遊感漂 うシンセとラフ・ビートの疾走感溢れるムーディーなトラックのBサイドの2トラック。

4

BOB CHANCE

BOB CHANCE Wild It'S Broken/It'S Broken (Emotional Rescue / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEY、RUB'n TUG、SOFT ROCKS等がプレイする、BOB CHANCEのレア・ロック・ディスコが、UK [Emotional Rescue]より 7インチにて、嬉しい再発! カリフォルニアのマイナー・レーベル[Morrhythm]よりリリースされた、コンポーザー/プロデューサー/シンガー、BOB CHANCEの80年作。ロカビリー、コズミック、ディスコを巧く融合させた、ファンキーなディスコ・ロック・ナンバー。オリジナルは本当にレアな作品なだけにコレは絶対に見逃せません!

5

MITSUAKI KOMAMURA

MITSUAKI KOMAMURA Vintage Moon Ep (Weedis / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
カナダのモノ・ミニマル・レーベル[Relolver]からのリリースで知られる、東京在住 のトラックメイカーMITSUAKI KOMAMURAが主宰する[Weedis]レーベルの第二弾! THEO PARRISH や MARCELLUS PITTMANにも通じる、LO-FIで黒味のあるマッド・アシッ ド・ハウス! MIKE INKが[Profan]でやっていたようなアシッド感に、ローファイなのに立体的な音 響処理を施したキックとハットが絶えず表情を変えながら展開していく、その様が、 月の満ち欠けを表現しているというA1「Sorcery In Eclipse」、ローファイでヒプノ テックなリズムに、太くてファンクを感じさせるベースが絡む、シカゴ・ハウス・ラ イクな「Tribe On The Moon」、ジャズ・ベーシストのウォーキング・ベースのような フレーズを軸に、シンプルなベース・ラインとローファイなリズムがコンビとなって 展開する「Bunny hopper」は、デトロイトのTERRENCE DIXIONに捧げたい、そんな1曲。 マスタリング及びマスターカットは、レーベル1番に引き続きMONOLAKEやHARDWAX関連 のリリースに携わるベルリン「Dubplate & Mastering」にて、CGB竏・によるアナログ感 満載で太く暖かみのある音に仕上がっている。

6

MARVIN BELTON

MARVIN BELTON Find A Way (Mahogani Music / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANN主宰、[Mahogani Music]の新作はTHEO PARRISH率いるTHE ROTATING ASSEMBLYのメンバーであり、同レーベル前作JOY OF SOUND PRODUCTIONSのプロデューサーでもあるMARVIN BELTONによるスモーキーでソウルフルなデトロイト・ディープ・ハウス! しっとりとした、アダルトなムードが漂うハウス・グルーヴに極め細やかなアルペジオ・シンセが旋回する「I Believe」、デトロイトらしいLO-FIなアフロ・パーカッシブ・ハウスの「Back To Africa」など、全4曲、[Mahogani Music]らしいソウルフルでスモーキーなディープ・ハウスばかり!

7

ANDRES

ANDRES New For U (La Vida / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANNが主催する[KDJ]や、[Mahogani Music]からのリリースでもお馴染み、Slum Villageのメンバーとしての肩書きも持つ、DJ DEZ aka ANDRESが自身のセルフレーベル[La Vida]をスタートし、新作12インチを発表! ヒップホップで培われた、サンプリング・センスが光る、デトロイト・マナーな漆黒のディスコ・グルーヴを軸に展開される3トラックを収録。限定盤。

8

HARDWAY BROTHERS

HARDWAY BROTHERS MANIA THEME (Is It Balearic? / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
[History Clocks]や[Luna Flicks]、[I'm A Cliche]、[Astro Lab]など、UGでも一押ししている、人気レーベルから多数の傑作を生み出してきた、HARDWAY BROTHERSが、COYOTE主宰[Is It Balearic?]より新作をリリース。 今回は、スローモーなディスコ・ダブ・グルーブに、サイケデリックなシンセや、スペーシーなキーボードを響かせた、コズミック・トリッピーなサイケ・ジャムのA1、カップリングには、最近リリースラッシュが続く、番長 ANDREW WEATHERALLによる ドープ・スローモー・エレクトロ、心地良く伸びやかに広がるメローなスペース・シンセを響かせ、原曲のドープな雰囲気を一転させる、北欧ムードなディープ・スペーシー・ハウスへリミックスしたTOBY TOBIASなど、どれも本当に良い楽曲ばかり。

9

ROBERT OWENS

ROBERT OWENS Sacrifice (Ndatl / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
LARRY HEARDがプロデュースした、ROBERT OWENSのアルバム『ART』に収録されていた 「Sacrifice」を、デトロイトのKAI ALCEがリミックスした話題作。 現在、デトロイトで最も勢いのあるレーベルと言っても過言ではない、KAI ALCE主 催[NDATL]新作は、シカゴの大ベテラン・シンガーROBERT OWENSが初登場。昨年リリー スしたアルバム『ART』に収録されていたLARRY HEARDプロデュースによる楽曲 「Sacrific楽曲を、レーベル主宰KAI ALCEが4ヴァージョンのリミックス。初回プレス のみの限定盤ですので、お早めに

10

DISCO DEVIANCE PRESENTS

DISCO DEVIANCE PRESENTS Ray Mang Edits (Disco Devience / 12inch) »COMMENT GET MUSIC
THE REVENGE、SOCIAL DISCO CLUB、ONUR ENGIN、ERIC DUNCAN aka DR.DUNKSと好調なリリースが続く[Disco Devience]新作は、意外なことに今回が初登場となる RAY MANG。 今回は、80年代の鮮やかなディスコ作品を使用。A面、B面ともに、パーカッシブでトライバルなブギー・ディスコを下地に、オリジナルの甘くソウルフルな女性ヴォーカルを巧く引き立てた、ナイスなリワークを披露。どちらも本当最高ですね!既に ERIC DANCAN、AL KENT、THE REVENGE、LEO ZERO、JACQUES RENAULT、TODD TERJE、FAZE ACTION、OOFT、CRAZY P、RAYKO、COSMIC BOOGIEらを筆頭に、錚々たる著名DJ陣がサポート中!

Chart by STRADA RECORDS 2012.02.14 - ele-king

Shop Chart


1

ROCCO & C.ROBERT WALKER

ROCCO & C.ROBERT WALKER I LOVE THE NIGHT-LOUIE VEGA REMIXES FOLIAGE(FR) »COMMENT GET MUSIC
スマッシュ・ヒットしたディープで大人っぽいこの男性ヴォーカル・ハウスにナントLOUIE VEGAによるリミックスが登場!

2

FUDGE FINGAS

FUDGE FINGAS MASS X REMIXES FIRECRACKER(UK) »COMMENT GET MUSIC
Prime NumbersからもリリースしていたFudge FingasがFirecracker Recordingsからまたまた限定盤をドロップ!しかもVakulaとJuju & Jordashが片面ずつリミックスを手掛けた豪華な内容!メロディアスなヴァイブやスペイシーなシンセが絡み合う洗練されたディープ・ハウスのVakulaサイド、やはり遅めなBPMでダビーに展開してきたJuju & Jordashサイド共にさすがの出来!オーダー数がショートしての入荷なのでお見逃しなく!

3

A SAGITTARIUN

A SAGITTARIUN CARINA EP ELASTIC DREAMS(UK) »COMMENT GET MUSIC
第1弾の前作もクオリティーが高かったこのレーベルからの第2弾!ファンキーなブレイクビーツ・ハウス的なビートで始まり、デトロイト・テクノ風なディープなシンセが加わるA1が鳥肌モノのカッコ良さ!ディープ&スペイシーなテック・ハウスのA2もグッド!

4

5 KING'S

5 KING'S GIRL YOU NEED A CHANGE OF MIND AMOUR(FR) »COMMENT GET MUSIC
Marvin Gayeのハウス・リミックスが大ヒットした第1弾も記憶に新しいこのレーベルからの第2弾が入荷!Eddie Kendricksによる名クラシック「Girl You Need A Change Of Mind」を筆頭に、ナントKenny Dixon Jr. のレア曲「Lt 1」やJames Brownネタのエディットまで収録!

5

DISTANT PEOPLE

DISTANT PEOPLE UNCONDITIONAL LOVE(feat.NICKSON) SEASONS LIMITED(FR) »COMMENT GET MUSIC
Sole ChannelやLargeといったレーベルから数多くの作品をリリースしているUKのクリエイターJoey SilveroによるプロジェクトDistant Peopleが男性ヴォーカルものをリリース!グルーヴィーなオリジナル・ミックス、A2のディープめのリミックスあたりがオススメ!

6

TENDERNESS

TENDERNESS GOTTA KEEP ON TRYING-DJ HARVEY EDIT RCA (US) »COMMENT GET MUSIC
オリジナルはレアなこの曲が、オリジナル・ヴァージョンに加えナントIdjut BoysのレーベルNoid RecordingsからリリースされていたDJ Harveyによるリエディットも収録してのミラクル復刻!ソウルフルでパワフルな極上女性ヴォーカルものです!オリジナルの中古もですがHarveyのエディットの方も相当レアだっただけにこれはビックリです!

7

OOFT!

OOFT! MEMORIES FOTO(UK) »COMMENT GET MUSIC
Instruments Of Rapture等からもリリースしているUKはグラスゴーの2人組OOFT!が自身のレーベルから登場!まったりウォーミーなビートダウン・ハウスと、硬質でカッコいいテック・ハウスをカップリング!

8

MAM

MAM MODERN HEAT EP FINA(UK) »COMMENT GET MUSIC
20:20 Vision傘下の注目レーベルFina Recordsからの注目盤!Wolf + Lamb主宰のW+L Blackレーベルからの「Mam Edits」が当店でも売れたMamによる、80'sダンス・クラシックスをネタに使用したグルーヴィーで上質なブギー・トラックス!

9

CHUBBY DUBZ

CHUBBY DUBZ DIRECT EXPERIENCE LOUNGIN (UK) »COMMENT GET MUSIC
Moodymannネタの「DOIN' YA THANG」で大注目されたOliver $絡みのユニット!ディープ&スペイシーなB1、ウッド・ベースがジャジー且つ濃厚な雰囲気を演出しているB2が◎!

10

BUCIE

BUCIE GET OVER IT FOLIAGE(FR) »COMMENT GET MUSIC
Black Coffeeの大ヒット曲「Superman」でヴォーカルを務めていたBucieのソロ作が人気レーベルFolliageから登場!リミキサーにはEzelが参加しており、メロディアスで洗練されたトラックにあの可憐な歌声が乗った極上な仕上がりとなっています!
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