「LV」と一致するもの

Alfa Mist - ele-king

アルファ・ミスト──ライヴから新作『Structuralism』について考える

 アルファ・ミストの音楽には、含みがある。近年のジャズの一部の潮流と並走するように、洗練されたロジカルな音楽的構造と、ヒップホップ由来のグルーヴを併せ持つ。しかし彼の音楽を覆いつくすのは、ダークで思索的、そしてメランコリックなムードだ。新作『Structuralism』のアルバム・カヴァーに描かれているように、ひとり街角に佇んで物思いに沈み込み、やがて歩き出す現代人のためのサウンドトラック。
 2015年リリースのファースト・アルバム『Nocturne』からそのトーンは一貫している。今年2019年にリリースされた最新アルバムは『Structuralism』(=構造主義)と題されている。そう聞くと、レヴィ=ストロースやジャック・ラカンを想起する者もいるかもしれない。アルファはどのような思いでこのタイトルをつけたのだろう。構造主義においては、主体的に行動する個々人よりも、個に先立って個の意味を決定づける関係性が重視される。この関係性こそが個々の意味を決定づける。そしてこの関係性を、構造と呼ぶ。例えば言語は個人に先立って存在する象徴的な存在だ。だから言語は個人の思考や行動を拘束する。しかしすでに誰かのものだった言葉をくり返し使用することで、人は主体性や自立性を獲得する()。これと同じことが、音楽についても言えるだろうか。すでに誰かのものである──過去に誰かもプレイした──フレーズをくり返し演奏することを通して、ミュージシャンは主体性や自立性を獲得していくのだと。
 もっと単純に、このアルバムに様々な「構造」を見出すこともできるだろう。全編を埋め尽くす複雑なハーモニーやリズム、あるいは例えば“Retainer”における組曲形式の構造。それらを踏まえれば、アルファ・ミストは、あえて言うなら、構造主義前後の1950~60年代に活躍したレニー・トリスターノや、アンドリュー・ヒルのような、楽曲や奏法の構造やコンセプトを巡って思索を積み重ねたピアニストたちの姿勢をも思い起こさせる。

 2019年7月4日、BLUE NOTE東京。20時丁度に、セカンドステージのショウが始まる。オープニングの“.44”のテーマが聞こえてきた途端、リラックスした客席の空気は一変する。ステージの左側に陣取るアルファ・ミストは、メインとするフェンダーローズやウーリッツァーの音色でプレイするヤマハのCP-88と思しきキーボードと、アコースティック・ピアノの間に座る格好だ。『Structuralism』の冒頭を飾る同曲は、ドラマーのピーター・アダム・ヒルのビートに先導され、ライヴの緊張感を後押しするように若干アップテンポで演奏される。印象的なテーマをなぞるトランペットのジョン・ウッドハムのミュート・サウンドは、「構造」に焦点を当てるという営為のどこか醒めた視線を象徴しているようでもある。ワウペダルやディレイを活用したジョンのソロが、リズムの隙間を縫うような、短いぶつ切りのパッセージの多用で、静かに場を温めていく。
 間髪入れずに後に続く“Naiyti”では、16分の17拍子という変拍子(ここでは1小節に16分音符のハットが5回、4回、4回、4回の組み合わせ)に、オーディエンスは狐につままれたようなノリ方を余儀なくさせられるが、メンバーたち、特にアルファはお構いなしにガンガン首を振ってノッている。スムースに進行するテーマ部分ではこの特異なリズムを意識させないのだが、各自のソロとなると、途端にこのリズム面での「構造」へのアプローチに耳がいく。ES-335シェイプのギターを抱えるジェイミー・リーミングのソロは、アルファやピーターの音への反応を挟みつつ、決して速弾き──例えば32分音符以上の速さで──はしないと自らに課しているかのようだ。速度や手癖による誤魔化しなし、といった風情。各パッセージ間の隙間を活かした抑え気味の単音のラインから、エフェクトを利用したオクターヴ奏法(オクターヴ上のエフェクト音がティンパニーのサウンドを想起させる)、そしてブロックコードの激しい応酬と、徐々に熱量を増すピーターのプレイとリンクしながら、段階的に場を盛り上げていく。リズム面で耳を引く奇数単位で構成するフレーズ・パターンも交えながら、最後はカッティング中心に激しいダイナミズムの上下を演出した彼のプレイは、オーディエンスから拍手喝采を引き出した。
 アルファ・ミストのバッキングも、濁ったテンション満載の和音爪弾きから、ビートに合わせてキャップを被った頭を振りながら、徐々にスタッカートの効いたリズムを強調したフレーズが目立つようになる。満を持してやってくる彼のソロ・パートでは、ジェイミーとの速弾き禁止の約束事を共有しているかのように、決して速いパッセージは現れない。ソロという独立したパートを技巧のひけらかしの機会とするのではなく、むしろ彼の楽曲自体が持ちうるハーモニーの複雑かつ豊かな構造をつまびらかにするために、ギリギリのスケールアウトを繰り返しながらその輪郭をなぞっていくようなのだ。他者──無数のプレーヤーたち──とフレーズを共有しながら、スケールアウトするノートを彫刻刀のように扱って、独自性を削り出していくこと。

 続いて披露された“Retainer”は字義通りの「構造」を象徴するような、3章から成る組曲だ。ここではストリングスをフィーチャーした中間のパートを省略したふたつの楽章が披露されたが、白眉は後半の変拍子(今度は16分のハットが14回、14回、12回のセットがワンループ)にメランコリックなハーモニーが組み合わさったパートだ。ピーターの肌理の細かいフィルインの嵐に、今夜一番の熱っぽさでソロを回すメンバーたちの熱量に、多くのオーディエンスが掛け声で応答する。
 自分がいかにヒップホップとジャズの影響を等しく受けて生きてきたかを伝えるアルファのMCに続いて披露されたのは、“Glad I Lived”。イントロのエレピリフに続いて、アルファ自身のラップが披露される。ローズ弾き語りラップとでも言うべきその姿は新鮮だ。リリックで発信されるメッセージはタイトルの通りポジティヴなものだが、それだけには留まらない。ヒップホップ由来のグルーヴに支えられるハーモニーが、メランコリックながらも不協和音に力点を置かれていることによる、どこか暗くくぐもった含み。それがループする様は、逡巡する終わりなき思考を想起させられる。エレピのプレーヤーでいうなら、RTF期のチック・コリアのメランコリックな美しさと、エレクトリック・マイルス時代のハービー・ハンコックの呪術的な不協和音とリズミカルなアプローチを両方兼ね備えた上、さらにヒップホップでサンプリングされるボブ・ジェイムズやジョー・ザヴィヌルのビートとのフィット感も持つといったところだろうか。
 この曲もまた、複雑な構造を持つ。最初のラップ・パートから、フックを経て、メランコリックなストリングスをフィーチャーしたブレイクダウンがやって来る。そうして辿り着く後半では、オーヴァードライヴがかったウーリッツァー的なヴォイスでギターのように奏でる和音とベースラインが、J・ディラ──しかもグラスパーの“Dillalude#2”を経由した──を想起させる。さらにはその後、テンポダウンした16ビートを背景に、アルファのエレピが歪んだハープのように掻き鳴らされ、ベースラインが激しい動きを帯びると、今度はフライロー的なコズミックな世界観に包まれる。アルファの作品全般に、ディラやフライローからの大きな影響が見られるというわけではないが、こうした展開からも、ジャズとヒップホップが彼の中で等しいレベルで血肉化されているのを感じる。
ファースト・アルバム『Nocturne』で披露している打ち込みのビートは、その音色も含めどれもヒップホップのビートの「快楽」に慣れ親しんでいる者の所作だ。同郷のラッパー Barney Artist やドイツのビートメイカー Flofilz のアルバム参加曲も素晴らしく、アルファが参加することで彼の鍵盤のハーモニーが楽曲に──もっといえばループに──豊かな響きを与えていることは疑いようがない。トム・ミッシュの『Beat Tape 2』に収録されているコラボ曲“Hark”も、まさにそうだった。

 前作『Antiphon』から、アルバムのアートワークも手掛ける多才なカヤ・トーマス=ダイクのヴォーカルがフィーチャーされたエキゾチックな“Breath”と“Keep On”が演奏され、ショウは終盤を迎える。アンコールでは、客席からサプライズ・ゲストのように現れマイクの前に立つキアラ・ノリコをフィーチャーした新作のボーナス・トラック“Silence”を経て、〆の1曲は2018年のシングル「7th October: Epilogue」収録の“Resolve”が披露された。高速テンポならではの、ピーターによる一糸乱れぬ高速ファンクが駆け抜ける同曲では、またもやコーラスのかかった浮遊感溢れるアルファのウーリッツァー・サウンドが印象的だ。トランペットもギターも、BPMが速いためにうねるようにオンビートでソロを刻むのだが、その分調性からはどこまで自由になれるか競い合うような、緊張感に溢れるソロが展開される。高速テンポに体を揺らしながら複雑なパッセージを追うという分裂的な体験によって、オーディエンスがみな異常な集中力でステージを凝視するなか、この特別な一夜は幕を閉じた。
 ダンス・ミュージックを始めとする音楽は、ある種の単調さ──反復されるビートやフレーズ──によって現実逃避を助けてくれるところがある。しかしアルファのようなプレイヤーがもたらしてくれるハーモニーやリズムの含み、あるいは複雑さは、そのままひとりの人間の感情の複雑さ、そしてひとりで歩き、対峙せざるをえない世界の複雑さに目を向けさせてくれるように思える。
 アルファの音楽は、四六時中バックグラウンドに流しておく性質のものではないかもしれない。しかしアルファが、個人に先立って存在する音楽と、それをプレイするミュージシャンとの関係性に着目する意味で「構造主義」という言葉を用いたのだとすれば──彼の音楽が、先人たちによって蓄積されたフレーズをプレイすることでミュージシャンが独自性を獲得していく複雑なプロセスを示しているとするならば──、僕たちオーディエンスもまた、そのビートに自分たちの複雑な歩みを重ねたとしても、不思議ではないだろう。

※ 参考文献:出口顯『ほんとうの構造主義──言語・権力・主体』NHK出版、2013年。


DE BEREN GIEREN - ele-king

 注目のジャズの新しい波、東京塩麹、そして人気絶頂のスガダイローがブリュッセルの先鋭的なジャズ・ピアノ・トリオ、ド・ベーレン・ギーレン(DE BEREN GIEREN)を迎えうつ。まあ、面白い組み合わせであることは間違いない。大阪公演では、空間現代、ラッパーのNAGAN SERVER(ナガンサーバー)ほか出演。
 ぜひ足を運んで、新しいジャズの波を浴びよう。

大阪9/11(水)梅田CLUB QUATTRO
ゲスト:空間現代、NAGAN SERVER and more
前売 指定席¥4,000(税込み・ドリンク代別途)・スタンディング¥3,000(税込み・ドリンク代別途)
OPEN18:00/START19:00
Info. 06-6535-5569(SMASH WEST)

東京9/13(金)渋谷CLUB QUATTRO
ゲスト:スガダイロー(solo)/ 東京塩麹
前売 指定席¥4,000(税込み・ドリンク代別途)・スタンディング¥3,000(税込み・ドリンク代別途)
OPEN18:00/START19:00
Info. 03-3444-6751(SMASH)

TICKET
8/3(土)下記にて発売開始!
大阪:eプラス(QUATTRO web:7/23-30、プレオーダー:7/23-30)、
ぴあ(P:159-432)/英語販売あり、ローソン(L:54031)、会場
東京:eプラス(QUATTRO web:7/23-30、プレオーダー:7/23-30)、
ぴあ(P:159-372)/英語販売あり、ローソン(L:73556)


主催:SMASH WEST/ VELVETSUN PRODUCTS Inc
総合問い合わせ:SMASH 03-3444-6751
https://smash-jpn.com

Stereolab - ele-king

 去る2月に再始動がアナウンスされ、大きな話題を呼んだステレオラブ。5月にはセカンド・アルバムおよびサード・アルバムがリイシューされているが、それに続いてこの9月、彼らの代表作である4枚目から6枚目まで、すなわち『Emperor Tomato Ketchup』『Dots and Loops』『Cobra and Phases Group Play Voltage in the Milky Night』も一挙に復刻される運びとなった。追加収録されるボーナス・トラックにも注目だけれど、この3作ではジョン・マッケンタイアがプロデューサーを務めていて(6枚目にはジム・オルークも)、当時のいわゆるポスト・ロックの流れを知るうえでも超重要なアルバムたちである。発売は9月13日。現在、トレーラー映像とともに、ボーナス・トラック“Freestyle Dumpling”が先行公開中。

[8月17日追記]
 いよいよ一ヶ月後に迫った上記3作のリイシューに先がけ、去る8月13日、『Dots and Loops』収録曲“The Flower Called Nowhere”の未発表ヴァージョンが公開されている。この曲についてメンバーのティム・ゲインは、以下のように語っている。

この曲はマウス・オン・マーズのヤン・ヴェルナーとアンディー・トマと一緒にレコーディングしたんだ。ステレオラブの中で、ずっとお気に入りの曲だよ。ポーランドのジャズ・ミュージシャンやクシシュトフ・コメダの音楽から抱く感覚を想起するようなコード進行に興味があったんだ。たしか偶然だったんだけど、ようやく自分の好きなコードを見つけることができて、そこからこの曲を書き上げたんだ。あと60年代中期〜後期のヨーロッパ映画音楽の雰囲気を取り入れようとして、ハープシコードや優美なヴォーカル、カラフルなサウンドと使ってる。 ──Tim Gane

 試聴・購入はこちらから。

STEREOLAB

90年代オルタナ・シーンでも異彩の輝きを放ったステレオラブ
10年ぶりに再始動をした彼らの再発キャンペーン第二弾が発表!
名盤『EMPEROR TOMATO KETCHUP』を含め一挙に3作がリリース!

90年代に結成され、クラウト・ロック、ポスト・パンク、ポップ・ミュージック、ラウンジ、ポスト・ロックなど、様々な音楽を網羅した幅広い音楽性で、オルタナティヴ・ミュージックを語る上で欠かせないバンドであるステレオラブ。その唯一無二のサウンドには、音楽ファンのみならず、多くのアーティストがリスペクトを送っている。10年ぶりに再始動を果たし、今年のプリマヴェーラ・サウンドではジェームス・ブレイクらと並びヘッドライナーとして出演。5月には、再発キャンペーン第一弾として『Transient Random-Noise Bursts With Announcements [Expanded Edition]』(1993年)、『Mars Audiac Quintet [Expanded Edition]』(1994年)の2タイトルが、アナログ、CD、デジタルでリリースされている。

今回の発表に合わせトレーラー映像と、『Emperor Tomato Ketchup』にボーナス・トラックとして収録される“Freestyle Dumpling”が先行公開されている。

Expanded Album Reissues Part 2
https://youtu.be/i3FyBhrOuso

Freestyle Dumpling
https://stereolab.ffm.to/freestyle-dumpling

今回リイシューが発表されたのは、1996年にリリースされた代表作『Emperor Tomato Ketchup』、1997年の『Dots and Loops』、1999年の『Cobra and Phases Group Play Voltage in the Milky Night』の3作が、全曲リマスター+ボーナス音源を追加収録した “エクスパンデッド・エディション” で、前回同様アナログ、CD、デジタルでリリースされている。

今回の再発キャンペーンでは、メンバーのティム・ゲインが監修し、世界中のアーティストが信頼を置くカリックス・マスタリング(Calyx Mastering)のエンジニア、ボー・コンドレン(Bo Kondren)によって、オリジナルテープから再マスタリングされた音源が収録されており、ボーナス・トラックとして、別ヴァージョンやデモ音源、未発表ミックスなどが追加収録される。

国内流通盤CDには、解説書とオリジナル・ステッカーが封入され、初回生産限定アナログ盤は3枚組のクリア・ヴァイナル仕様となり、ポスターとティム・ゲイン本人によるライナーノートが封入される。また、スクラッチカードも同封されており、当選者には限定12インチがプレゼントされる。されに対象店舗でCDおよびLPを購入すると、先着でジャケットのデザインを起用した缶バッヂがもらえる。

なお11月には、『Sound-Dust』 『Margerine Eclipse』がリリースされる予定となっている。

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: EMPEROR TOMATO KETCHUP [Expanded Edition]
release date: 2019/09/13 FRI ON SALE

3LP CLEAR VINYL / D-UHF-D11RC
3LP BLACK VINYL / D-UHF-D11R
2CD / D-UHF-CD11R

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10376

[TRACKLISTING]
CD / Digital

Disk 1
01. Metronomic Underground
02. Cybele’s Reverie
03. Percolator
04. Les Yper Sound
05. Spark Plug
06. OLV 26
07. The Noise Of Carpet
08. Tomorrow Is Already Here
09. Emperor Tomato Ketchup
10. Monstre Sacre
11. Motoroller Scalatron
12. Slow Fast Hazel
13. Anonymous Collective

Disk 2
01. Freestyle Dumpling
02. Noise Of Carpet (Original Mix)
03. Old Lungs
04. Percolator (Original Mix)
05. Cybele's Reverie (Demo)
06. Spark Plug (Demo)
07. Spinal Column (Demo)
08. Emperor Tomato Ketchup (Demo)
09. Les Yper Sound (Demo)
10. Metronomic Underground (Demo)
11. Percolator (Demo)
12. Tomorrow Is Already Here (Demo)
13. Brigitte (Demo)
14. Motoroller Scalatron (Demo)
15. Anonymous Collective (Demo)

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: DOTS AND LOOPS [Expanded Edition]
release date: 2019/09/13 FRI ON SALE

3LP CLEAR VINYL / D-UHF-D17RC
3LP BLACK VINYL / D-UHF-D17R
2CD / D-UHF-CD17R

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10377

[TRACKLISTING]

Disk 1
01. Brakhage
02. Miss Modular
03. The Flower Called Nowhere
04. Diagonals
05. Prisoner of Mars
06. Rainbo Conversation
07. Refractions in the Plastic Pulse
08. Parsec
09. Ticker-tape of the Unconscious
10. Contronatura

Disk 2
01. Diagonals (Bode Drums)
02. Contranatura Pt. 2 (Instrumental)
03. Brakhage (Instrumental)
04. The Flower Called Nowhere (Instrumental)
05. Bonus Beats
06. Diagonals (Instrumental)
07. Contranatura (Demo)
08. Allures (Demo)
09. Refractions in the Plastic Pulse (Demo)
10. I Feel The Air (Demo)
11. Off On (Demo)
12. Incredible He Woman (Demo)
13. Miss Modular (Demo)
14. Untitled in Dusseldorf (Demo)

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: COBRA AND PHASES GROUP PLAY VOLTAGE IN THE MILKY NIGHT [Expanded Edition]
release date: 2019/09/13 FRI ON SALE

3LP CLEAR VINYL / D-UHF-D23RC
3LP BLACK VINYL / D-UHF-D23R
2CD / D-UHF-CD23R

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10378

[TRACKLISTING]

Disk 1
01. Fuses
02. People Do It All The Time
03. The Free Design
04. Blips Drips And Strips
05. Italian Shoes Continuum
06. Infinity Girl
07. The Spiracles
08. Op Hop Detonation
09. Puncture In The Radax Permutation
10. Velvet Water
11. Blue Milk

Disk 2
01. Caleidoscopic Gaze
02. Strobo Acceleration
03. The Emergency Kisses
04. Come And Play In The Milky Night

BONUS TRACKS
05. Galaxidion
06. With Friends Like These Pt. 2
07. Backwards Shug
08. Continuum (Unreleased Original Version)
09. Continuum Vocodered (Unreleased)
10. People Do It All The Time (Demo)
11. Op Hop Detonation (Demo)
12. The Spiracles (Demo)
13. Latin Cobra Coda (Demo)
14. Infinity Girl (Demo)
15. Blips, Drips & Strips (Demo)
16. Blue Milk (Demo)
17. Italian Shoes Continuum (Demo)
18. Come And Play In The Milky Night (Demo)
19. Strobo Acceleration (Demo)
20. Caleidoscopic Gaze (Demo)
21. Galaxidion (Demo)

冴えわたるベンジー・Bのセンス - ele-king

 2019年6月20日、ルイ・ヴィトン、メンズの2020春夏コレクションが発表された。ランウェイの舞台はドフィーヌ広場、「少年時代の楽しみ」をコンセプトとし、会場の外観は春の訪れを感じさせる濃い緑で統一された。ラッパーのオクテヴィアンブラッド・オレンジのデヴ・ハインズ、クリス・ウー、スワエ・リー(Swae Lee)といったミュージシャンもランウェイを歩き、話題を集めた。ヴァージル・アブローがアーティスティック・ディレクターを務め、ミュージック・ディレクターを務めるのはベンジー・B。本稿ではこのランウェイで使われた音楽をレヴューした。

 一聴してわかるが、2020SS のコレクション音楽の主役はヴァイオリンだ。ヴァイオリンを主役としつつ、シンセサイザーやサンプリングが絡み合った音楽がヘリテイジ・オーケストラによって再解釈されて演奏される。パリという都市で、ヴァージルのもつサンプリング・再解釈・再構築といった彼の理念を表現しようと思ったとき、ベンジー・Bはヒップホップだけでなくジャズ、コンテンポラリー・クラシック、グライムといった様々な現代的な要素を織り交ぜ調和させることを選んだ。

 演奏を手がけたのはUKのジュールス・バックリーとクリストファー・ウィーラーによって設立されたオーケストラ「The Heritage Orchestra」。ジャイルス・ピーターソン のフェスティヴァル出演、BBC Live Lounge の演奏を務めるなどBBCとの関わりも強く、ピート・トン(Pete Tong)とのコラボレーション・アルバムでは、イビザ・クラシックスを再解釈したアルバムを発表している。

Max Richter - Spring 1 (Four Season Rework)
 コンテンポラリー・クラシックの音楽家、マックス・リヒターが手がけた「春」、この曲がランウェイ全体の文脈を作り上げ、雰囲気をセットしている。マックス・リヒターは66年ドイツ生まれ、英国育ちのコンポーザーで、クラシックとエレクトロニクスを結びつけた音楽性で注目を集め、映画音楽なども手がける。人気を得たのは2018年に公開された映画『メッセージ』で使用された“On the Nature of Daylight”、そしてこの曲で使われたのはヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「四季」をリメイクした『Recomposed by Max Richter: Vivaldi – The Four Seasons』(2012)より“Spring 1”だ。

《四季》の原曲の楽譜を検討した結果、リヒターは既存の音源を使うのではなく、音符単位でリメイクしたほうがと判断。その結果、原曲の75%にあたる素材を捨て、残りの25%の素材に基づきながら新たに楽譜を書き下ろし、ヴァイオリン独奏と室内アンサンブルで演奏可能な“新作”を完成させた
* https://www.universal-music.co.jp/max-richter/products/ucch-1037/

 印象的なヴァイオリンのフレーズは原曲の音符をつなぎながら、再構築されており、確かに原曲の雰囲気を踏襲しているものの異なった響きを得ている。さらにヴィヴァルディの原曲と異なるエッセンスとして、Moog シンセサイザーのベースラインが敷かれている。ヒップホップとは異なる形で、サンプリング・再構築・コラージュといったアプローチが表現されているといえるだろう。

Arthur Verocai - Sylvia
 ブラジルのサイケ・レアグルーヴと呼ばれるアルトゥール・ヴェロカイの1972年リリースの2ndアルバムより。2016年にリイシュー盤が発売されている。ヒップホップとのつながりといえば、リュダクリス、カレンシー(Curren$y)、スタティック・セレクター、スクールボーイ・Qといったラッパーが2000年代中頃にこぞって同曲が収録されたアルバムからサンプリングしたことだ。この曲でも、ホーン使いにはむしろその頃のヒップホップ・チューンを連想させられた。

Arca - Wound
 アルカのアルバム『Xen』より。Xジェンダーやフェミニズムといったモチーフを加工した声によって表現する。原曲では重低音とシンセ、そしてヴァイオリンが鳴らされている。「I am not the wound type」というアルカのメッセージこそ演奏されないものの、性を超えた多様性への目配せがあるのだろう。

Nick Drake / Andy Bay - River Man
 UKのシンガーソングライター、ニック・ドレイクによる“River Man”のアンディ・ベイによるアレンジカ・カヴァー。ここでもギターの後ろでヴァイオリンが奏でられている。ここで、この会場となったドフィーヌ公園自体がパリのセーヌ川の三角州に位置していることと、この曲のタイトル「River Man」とは情景のレヴェルでつながっているはずだ。

Slum Village - Fall in Love
 NYのジャズ・ピアニスト、ギャップ・マンジョーネの“Diana in the Autumn Wind”をサンプリングしたJ・ディラ・プロデュースの1曲。ベンジー・Bの頭の中にはジャズ・ミュージシャン=アンディ・ベイのカヴァーからの、ジャズ・ピアニストの音楽をサンプリングするという連想があったのかもしれない。このランウェイの中でもっとも普通に北部のクラシックなヒップホップであるが、弾き直されることで雰囲気を変え、ランウェイの雰囲気とよくマッチさせている。

Treble Clef - Ghetto Kyote
 UKのグライム・アーティスト=トレブル・クレフ(Treble Clef)による2000年代のインスト・グライム・クラシック。原曲のチープなサンプルベースのヴァイオリンの原曲をオーケストラで再現することでクラス感を醸し出している。ランウェイではフランス移民の出自をもつUKのラッパー、オクテヴィアンが映され、UKのサウンド・カルチャーの新旧世代がランウェイでコラボレーションした瞬間だった。

Tyler, the Creator - Igor’s Theme
 カルフォリニア発のコレクティヴ=オッド・フューチャーのタイラー・ザ・クリエイターの最新作、『 IGOR』のテーマ。「彼がこの街にやってくる」(あるいは裏側の意味としては、「この曲に集中しろ」という言葉が鳴り響いている)というメッセージが鳴り響き、コラージュ的なサウンドスケープが展開された原曲。演奏はヴァイオリンを軸にシンプルなインストゥルメンタル。

 一聴すると、パリ・ヨーロッパという文脈に合わせて、ヴァイオリンという楽器の共通点のみでジャズ、コンテンポラリー・クラッシック、グライムをごちゃごちゃと混ぜているように見える。しかしリサーチを重ねていくと、選曲の裏側にサンプリング・再構築・コラージュといったヴァージル・アブローの基本哲学が透けて見えるのが、このランウェイの面白さであった。

vol.116 : プライド月間 2019 - ele-king

 NYの夏は野外コンサートが盛りだくさん。先週末はTortoiseが1998年のアルバム『TNT』を通して演奏、その2日前は、テキサスのKhruangbinが雨の中、日本のKikagaku Moyoと一緒にライヴ、そして今週頭はJapanese BreakfastとHatchie、水曜6/26はカナダディで、トロントのAlvvays、カルガリーのthe courtneys、オンタリオのEllis……といった具合だ。

 野外ショーはフリーが多く、がっつりバンドを見たい人は前、雰囲気を楽しんだりまったりしたい人は後ろの方でシートを敷いてピクニックをしている。アルコールは持ち込めないが、スナックや水なは大丈夫。出店の飲み物やフードなどもあり、友だちとハングアウトするには持ってこいである。
 ここ何年かは、プロスペクトパークの野外ショーが気に入ってよく通っていたが、今年はセントラルパークのサマーステージによく来ている。3年前にはUnknown Mortal Orchestraも観たし、良いインディのラインナップが揃っている。
 こういったショーは、寄付をするパトロンで成り立っているので、VIPエリアやメンバーエリアがあるために、私たちは、フロアでぎゅうぎゅうになりながら見るのであるが、ショーがフリーで楽しめるので文句はあまり言えない。
 私が普段行くDIYショーは、若者、クィアが多く、まだまだ少数派だと感じるが、野外ショーはNYという街をここに持ってきたかのように、いろんな種類の人がいる。白人、黒人、アジア人、ラテン系、ユダヤ系、アラブ系など、野外コンサートに来るとあらためて自分はメルティングポットといわれるNYにいる、と感じる。今年は、LGBTと女性が良く目につく。6月はプライド月間ということもあり、マーメイドパレードやイベントがあったり、たくさんの企業がこぞってレインボー旗を掲げている。サマーステージのスポンサーのひとつのキャピタルワン銀行などは、ユニオン・スクエア支店が、レインボー柄になっていたし、他の銀行や企業も自分だけ取り残されたくないというように次々レインボーに染まっている。


 プレイするバンドも女性フロントのバンドが多く、オーディエンスもLGBTに対してとてもオープンに感じる。その背後では、まだまだコンサバな人も多く、この多様性をまとめるのは一筋縄ではいかないのだろうとも感じる。
 今月初めにポルトガルに行ってからというもの、アメリカのエキセントリックさが目に付くようになった。ポルトガルの人はめったなことでは声を上げないが、アメリカの人は小さなものにでもすぐ声を上げる。人種や国の違いと言えばそれまでだし、どちらが良いという問題でもないのだが、NYにいると、NY的にならないと生きていけない。今月最後の日曜日には5番街でLGBTの大きなパレードが行われるそうなので、NYの新たな団結を見れることを願う。


Dave - ele-king

 2019年3月にリリースされたUKのラッパー Dave のデビュー・アルバム『Psychodrama(サイコドラマ)』はラップで物語を紡ぐことのパワーを力強く感じさせる傑作である。

 Dave が最初に注目されたのは、デビューEP「Six Paths」収録の“Wanna Know”が突然 Drake にリミックスされたときだった。Dave の憂いげに、ときに甘く歌い上げるフロウと、対照的に言葉遊びを混ぜたセルフボーストで攻撃なラップの際立った対比によって、弱冠18歳のラッパーは注目を集めた。2018年には、ロンドンのラッパー Fredo とのコラボレーション曲“Funky Friday”でウィットに富んだラップを披露し、UK総合チャートで1位を獲得した。

 しかし、彼が「物語を語る」というスキルの非凡さを世に知らしめたのは、2017年にリリースされた“Question Time”(「Game Over」収録)である。7分長に渡るこの曲で、UKの政治・戦争・警察・福祉といった幅広いトピックに対して意見を表明した。同EPに収録された“My 19th Birthdays”も自身の苦境を比喩を駆使しながら説明していく1曲で、リリシストとして印象付けた。

 Dave がこのアルバムのタイトルに付けた「サイコドラマ(心理劇)」とは、演劇を用いた心理療法のことである。心理劇にもいろいろなタイプがあるというが、例えば主人公役の人は過去の失敗や乗り越えたかった場面などを演劇を通して再現していく。観客を交えて、またときに観客と演者が入れ替わる形で進行するこの心理劇によって、参加した者の精神にポジティヴな影響をもたらしていくのだという。このコンセプト通り、Dave がこの心理劇の主人公となり、アルバムを通してセラピストに自分のストーリーを吐露していく。

 アルバムは“Psycho”で幕を開ける。セラピストの「これが最初のセッションだ、さてどこから始めようか」という言葉に導かれて、治療前の彼の深刻なメンタルが吐露される。曲の中盤でリズムが変わるパターンでセルフボーストの「俺最強」モードになったかと思えば、リズムが戻ると再び追い詰められた彼の心情が戻ってきてしまう。地元の地名が冠された 2. “Streatham”では、幼少時代や学校時代のエピソードや情景が、3. “Black”ではイギリスで黒人として生きることの難しさを吐き出している。トラックでは Dave 自身が弾くピアノが全面に出ており、彼の暗く行き場のない感情を代わりに代弁しているようである。

 重苦しい3曲から一転して、彼女との関係をロマンティックに歌う 4. “Purple Heart”、この曲の最後にセラピストは「君にとっては、誰か信じられる人が大事なんじゃないかな」という言葉をかける。5. “Location feat. Burnaboy” 6. “Disaster feat. J Hus”の2曲では、言葉巧みなセルフボーストで、ラップ・ゲームの中で差を見せつける。

 7. “Screwface Capital”では再び、彼の影が姿を表す。父親はおらず、母親との辛い日々がラップで綴られていく。生活のハードさを誇りながらも、音は常に物悲しく、彼の深い孤独を思い起こさせる。8. “Environment”では有名になった「ラッパー」の立場からセルフボーストするが、「有名になった自分」すらどこか批判的である。

 そして、アルバムのハイライトとなる11分に及ぶ 9. “Lesley feat. Ruelle”につながる。この曲は、Dave が心を寄せていた女性 Lesley の悲痛そのものの物語が語られる。「心理劇」のように、その場面が目の前で展開するような生々しさがあり、その生々しさはラップを通じてリスナーにもヒリヒリと伝わってくる。
 この曲を通じて、言葉を奪われた女性の悲しみや痛みを Dave 自身まで引き受けてしまっていたことが感じられる。その一方で、ラップという表現は過去を語り、言葉を与えることができる。最後の1分30秒では Ruelle が Lesley に言葉を与えるかのように演じて歌う。

 3年という短いキャリアの中で桁違いの成功を収めながらも、精神的に問題を抱える Dave、その心の奥底にあったトラウマを物語として語ることによって乗り越えた彼は、ガラージ・チューン 10. “Voices”を挟んで、そして懲役で刑務所で8年間過ごしている実兄へのメッセージとして語られる 11. “Drama”でアルバムは幕を閉じる。

 ラスト3曲には、ふたつの意味で「ラップ」という表現の根源的な力が宿っている。ひとつ目は、Dave 自身が心につっかえていたストーリーを11分のラップにし、「自分に語りかける」行為となること、それによって乗り越えるきっかけとなり癒されたこと。ふたつ目は、暴力を受けて声も出せなくなった女性の Lesley、そして 11. “Drama”で8年間刑務所で過ごしている実兄を登場させていること。このふたりはともに、打ちのめされて言葉が発せない、または声を届けることのできない存在である。Dave は彼らに対して語りかけることで言葉を与え、外に開かれた「声」をもう一度取り戻そうとしている。このふたりが登場する曲をつなぐのは、10. “Voice”である。

愛しい君よ、俺はいま自分の声を聴ける
愛しい君よ、俺はいま自分の声を聴けるんだ、寝てるときだって
愛しい君よ、俺はいま自分の声を聴ける
それでこの声は、君は僕の全てなんだ
“Voice”

 『Psychodrama』、その11曲を使って描き切った物語、それは無論1曲単位でなくアルバムという単位でしか成し遂げられないアートであり、ラップの素晴らしさを肌に感じることのできるUKラップの大傑作である。

The National - ele-king

 ザ・ナショナルが自分たちのことを自嘲気味に「ダッド・ロック」と呼んでいたのは、しかし、半分以上くらいは冗談ではなかったのではないか。彼らがアメリカで高い人気を誇ってきたのは(そして日本で本国ほどの人気が出ないのは)、マット・バーニンガーによるバリトン・ヴォイスとハードボイルドを思わせるリリック、そうした文学性を武骨に支えるダンディなロック・サウンドがアメリカの伝統的な良き父性を匂わせるからだと僕は考えている。「daddy」がスラングで「イケてる」を意味することもあるカルチャーで、強く頼れる父であることはつねに求められてきたし、揺るぎない魅力だとされてきた。00年代中盤頃から急浮上したザ・ナショナルの、スーツを着こなし赤ワインを呑みながら歌う髭を生やした中年のフロントマンであるバーニンガーは、ある種のセックス・アイコン性すら有していたと思う。
 だが10年代、フェミニズムの再燃とLGBTQの台頭、それらと対抗するかのように浮上したトランプ政権による男権力の横暴とジェンダー保守派の過激な言動を経て、アメリカ的男性性あるいは「父性」は大いに混乱している。社会問題化したインセル(不本意な禁欲主義者。自分の容貌を醜いと考え、それを動機として女性を憎悪するヘテロ男性)のこともある。フェミニズムを支持することは男性だってもちろんできる、が、白人でヘテロでよく教育された(中年)男性による「リベラル」が、どこかで説得力を持たなくなっているのも事実だ。多くの白人男性によるインディ・ロックが近年訴求力を失っているのは、それが原因のひとつでもあるだろう。自身のマジョリティ属性とどう向き合うかは、少なからず誠意を持ち合わせた側の男性にとって、いま抜き差しならない問題だ。もうトキシック・マスキュリニティ(有害な男性性)を捨て去ることは決意した、が、では、たんなる「男性性」の行き場所はどこか?

 ザ・ナショナルは過去にもコンピレーション『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』やグレイトフル・デッドのトリビュート・アルバムなどを編纂しUSインディ・ロックのリベラル勢のまとめ役を買って出ていたが、本作でまず実行しているのも現在における民主主義的なアプローチだ。ボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンとザ・ナショナルのメンバーであるアーロン・デスナーが様々な立場のアーティストを繋ぐコレクティヴ〈PEOPLE〉を主宰していることの延長にあると思うが、じつに70人以上のゲスト・ミュージシャンが参加している。多様なアイデンティティや出自を持つ「人びと」によるアンサンブル。そして、なかでも目立つポジションが与えられたのが女性シンガーたちである。シャロン・ヴァン・エッテン、リサ・ハニガン、ミナ・ティルドン、ケイト・ステイブルズ、ゲイル・アン・ドロシーという多彩なメンバーによる歌声は女性の表現の多様さを強調する。
 思い出すのは、昨年のデヴィッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』――やはりリベラルな白人男性によるアート・ロック作品――が大勢のゲストを招きながら、ひとりも女性が含んでいなかった点を批判されたことだ。バーンは過去に何度も才能ある女性とコラボレーションしてきたし、しかも彼女らを飛び道具のように扱っていなかったことを思えば、いささかアンフェアな批判のようにも感じるが、しかしそれだけジェンダー・イシューがマジョリティ側にも強く求められる時代だということの証明でもあった。その点、立場的に近い場所にいるザ・ナショナルが女性たちをステージの中央に立たせているのは、ある種いまもっとも「政治的に正しい」振る舞いのようにも見える。……が、これがPC対応型のたんなる「ダイヴァーシティ」作品だとは、僕は思わない。

 本作と同時にリリースされたマイク・ミルズによる同名の短編映画を観ると、そのことがよくわかる。というのは、同作もまた白人ヘテロ男性が彼なりの誠意を持って女性と向き合った作品だからだ。ザ・ナショナルの楽曲とスコアがずっと流れるなか、アリシア・ヴィキャンデル演じるひとりの「女性」の生から死までを26分ほどの詩的なモノクロ映像で綴ったもので、カメラしか知りえない彼女の細やかな感情を切り取っていく。それはまるきりミルズの前作『20センチュリー・ウーマン』の続きにあるもので、自分はラディカル・フェミニズムとアート・ロックを教えてくれた女性によって育てられたとあらためて語ったあの作品と同様の、一筋縄ではいかない女性に対する敬意と感謝で満ちている。彼女らを殊更に美化するわけでもない。ミルズは妻のミランダ・ジュライの作品群に影響されている部分も多いと思われるが、女性の多面性や感情の機微をできる限り丁寧に救い取ろうとする作家だ。それは事実としてあくまで「男の」まなざしなのかもしれない、が、彼女(たち)と向き合うことを諦めていない。

 ザ・ナショナルのほうの『I Am Easy To Find』でも似たことが起きていて、バーニンガーが女性たちと声を重ねれば、彼の低い声の色気はいや増していく。彼としては比較的ハイ・トーンとなる“Quiet Light”のようなドラマティックなユニゾンもあるが、“Oblivions”や“I Am Easy To Find”ではほとんど音程が聴き取れないほどの低音でゲストのフィメール・ヴォーカルを下方で支える。結果として、本作はこれまででもっとも官能的な作品となっている。10年後に振り返れば、2015年~18年辺りのことは男女間の対立が激化した時代と記憶されるかもしれない。が、そのときを経て、ここにはたくさんの人間たちが集い、そして、女と男が出会い直している。やはり白人男性としての立場から「結婚」をモチーフとして印象的な男女デュエットを取り入れたヴァンパイア・ウィークエンド『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』にも通じる感覚だと思う。
 サウンド的にはこれまでのザ・ナショナルの良さをきちんと発展させており、英国ニューウェーヴとチェンバー・ポップの融合をデスナー兄弟による緻密なオーケストラ・アレンジとエレクトロニクスで洗練させている。その点は前作『Sleep Well Beast』(17)と同様なのだが、明らかにトランプ直後の空気を吸ってダークな作風だったそれと比べ、クワイアの参加や多人数のアンサンブルのせいもあってはるかに開放的な空気が感じられる。ロック的なカタルシスに満ちた“The Pull Of You”もハイライトのひとつだし、ほとんどブロークン・ソーシャル・シーンのような爽快感で駆け抜ける“Where Is Her Head”も新機軸だ。僕が一曲挙げるとすれば、清潔なピアノと弦の音が、ふくよかなデュエットと温かく響き合う“Rylan”だ。「誰だって心に少しは地獄を抱えているもの/ライアン、少しは太陽を浴びなよ」――日差しの下を走り出したくなる。

 ザ・ナショナルはかつて、保守的な故郷オハイオでの記憶とニューヨークでの都会のリベラルな暮らしに引き裂かる心情をこんな風に歌っていた――「ミツバチの群れが俺をオハイオに運んでいく/だけどオハイオは俺を覚えていない」。そして本作の“Not In Kansas”では同じ土地のことをこう綴る。「オハイオは悪循環に陥っている/もうあそこには戻れない/オルタナ右翼という麻薬が蔓延しているから」。
 彼らはどこかで、保守性を残した自分たちのことを自覚しているのだろう。だがだからこそそれを消し去るのではなくて、少しでも真摯なやり方で更新しようとする。マジョリティであることを痛いほどに自覚しながら、異なる立場への理解を諦めないこと。僕がザ・ナショナルを聴いていてアメリカ的父性を感じるとき、あるいはその男性性に色気を嗅ぎ取るとき、それが「政治的に正しい」のか倫理的に許されるのかはよくわからない。少なくとも時代遅れではあるだろう。それでも、『I Am Easy To Find』はザ・ナショナルの魅力が――文学性とロックの官能性が詰まった作品だと思う。それに……タイトル・トラック“I Am Easy To Find”で男女の声が「わたしを見つけるのは簡単なこと」と重なり合うとき、「I」にジェンダーの別はない。

Luke Slater × Burial - ele-king

 昨年のコード9との共同ミックスCD『Fabriclive 100』ではなぜかルーク・スレイターが2曲もとりあげられていたけれど、なるほど、きっとほんとうに好きなのだろう、先日ヴァイナルと配信でリリースされたばかりのスレイターの“Love”のリミックス盤にもまた、ベリアル本人によるリミックスがフィーチャーされている。原曲は1997年のスレイターのセカンド・アルバム『Freek Funk』に収録されていたミニマルなダンス・トラックで、ベリアルは大胆にクラックル・ノイズと幽霊的な音声を導入、じつに彼らしいサウンドへと生まれ変わらせている(ちなみに、ベリアルがリミックスを手がけるのは2017年のゴールディと Mønic 以来2年ぶり)。なお、同盤には他にマルセル・デットマンやサイレント・サーヴァントらのリミックスも収録されており、デジタル版にはスクーバも参加。これは必聴よね。

Artist: Luke Slater
Title: Love Remixes
Label: Mote-Evolver
No.: MOTELP05
Release: 17 May 2019

www.mote-evolver.com

Tracklisting:
A1. Love (Burial Remix)
A2. Love (Lucy Remix)
B1. Love (The 7th Plain Collage Remix)
C1. Love (Planetary Assault Systems Low Blow Remix)
D1. Love (Marcel Dettmann City Remix)
D2. Love (Silent Servant Remix)
Digital Bonus: Love (Marcel Dettmann Black Glove Remix)
Digital Bonus: Love (Scuba Bagleys Remix)

Technique / Jet Set / Amazon / Spotify

øjeRum - ele-king

 デンマークのコペンハーゲンを拠点とするダーク・アンビエント・アーティスト øjeRum の新作『On the Swollen Lips of the Horizon』が、音響作家リチャード・シャルティエが主宰する音響系レーベルの老舗的存在の〈LINE〉からリリースされた。
 このニュースを知ったとき øjeRum をリリースするというレーベルの審美眼に唸ってしまった。いっけん意外なキュレーションだが、音響レーベルの老舗〈LINE〉が送り出す必然性があるように思えたからだ。彼の音楽/音響にはエクスペリメンタル、アンビエントにおける2010年代後期的な「何か」がある。ダーク/ゴシックな感覚とでもいうべきか。これは極めて現代的なセンスである。

 øjeRum、本名はポウ・グラボウスキー(Paw Grabowski)という。2007年頃にフランスの〈Rain Music〉から音響フォーク『There Is A Flaw In My Iris』という作品をリリースしているが、現在のようなダーク・アンビエントへと変化を遂げ、大量のリリースを実践するのは、2014年に『He Remembers There Were Gardens』をセルフリリースしてからのことだ。以降、『Sange Til Døende』(2014)、『The Blossoming Of The Nothingness Trees』(2016)、『Needleshaped Silence』(2017)『Sometimes I See Myself Sleeping In A Stone Of Falling Eyes』(2018)、『Træerne & Intetheden』などのアルバムやEP、カセット、CDや7インチ盤の超限定盤リリースを膨大におこなってきたわけだ。
 くわえてヴィジュアル・アーティストでもある彼によるアートワークも美麗で、ゴシックな美意識で統一されている。CD-Rとアート写真をセットにした『A Certain Grief』(2018) のように75部しかコピーしないような私家盤に近い作品もあり、コレクションへの欲望を喚起してきた。ちなみにフランスのレンヌにあるギャラリー「Le Bon Accueil - Lieu d'arts sonores」において個展が開催されるなどヴィジュアル・アーティストとしての評価も高い。

 彼の膨大な作品の中で、2017年に発表された『Skygge』はCD作品であり、多くの耳に触れられる機会のあったアルバムである。美しい悪夢のようなゴシックなサウンドスケープがまとまったコンポジションで展開しており、「øjeRum の膨大なディスコグラフィの中で最初に聴くべきアルバムはどれか」と問われたら、「これまで」ならば『Skygge』と答えたであろう。
 この『Skygge』も含めて、øjeRum のフィジカルはほぼ売り切れとなっているものの、その多くは bandcamp などで聴くことができる。2019年もすでに『Silent Figure With Landscape』、『Syv Segl』、『Sange Til Døende {Pladeselvskab Reissue}』、『Nattesne』、『There Is A Flaw In My Iris』、『Don't Worry Mother, Everything Is Going To Be Okay』などの作品を送りだしてしているが、〈LINE〉にピックアップされたことで、さらに多くのアンビエント・音響マニアの耳に届くことになるのではないか。
 むろん著名レーベルからのデジタル・リリース作品だからといって、これまでの彼の作風となんら変わっているわけではない。そのサウンドは、闇夜で祈るかのごとき「崇高さ」を感じさせるアンビエンスだが、『On the Swollen Lips of the Horizon』も「ゴシック・ノスタルジア・アンビエント」とでも形容したいサウンドに仕上がっていた。〈LINE〉は、彼の作品・楽曲を「手書きのコラージュの視覚的な対応物を用いて、大気中および感情的に帯電した環境記録を作成する」とインフォメーションしているが、まさにそのとおりの音といえる。デイヴィッド・トゥープの語る「エーテルトーク」のようなアンビエントだ。
 アルバムには30分に及ぶ“on the swollen lips...”、22分35秒にわたる“...of the horizon”の長尺2曲と5分8秒ほどの“on the swollen lips... (excerpt)”が収録されている。ドローン、電子音、環境音が交錯し、まるで記憶にのみ存在する映画の音響空間のように霞んだ質感のサウンドスケープを生成していく。レーベルは「ウィリアム・バシンスキーとセラーのファンのための催眠的な周期的感情ジェスチャー」と書いているが、確かにバシンスキーセラーのように記憶を融解させてしまうような音響的質感を感じた。深いノスタルジアが、エーテルのように漂っているとでもいうべきか。記憶の夢、夢の記憶。夢幻のサウンドスケープ。そのアンビエンス、アンビエント……。

 本年2019年はザ・ケアテイカー、ザ・フューチャー・イヴ・フィーチャリング・ロバート・ワイアット、ヤン・ノヴァク、フェネス、サンO)))、ティム・ヘッカーの新作など、個性は違えどもアンビエントやドローンの傑作が多くリリースされているが、本作も負けず劣らず重要なアルバムだ。『Skygge』に次ぐ øjeRum の新たな代表作がここに生まれた。

Carole & Tuesday - ele-king

 これはビッグ・ニュースだ。去る2月、デヴィッド・ファースによるWebアニメ・シリーズ『Salad Fingers』の新作に音楽を提供していることが話題となったばかりのフライング・ロータスだけれど、なななんと、渡辺信一郎による最新アニメ『キャロル&チューズデイ』にもコンポーザーとして参加していることが明らかとなった。さらに同作には、フライローの盟友たるサンダーキャットまで参加しているというのだから驚きだ。ほかに G.RINA、マイカ・ルブテ、☆Taku Takahashi が参加していることも発表され、音楽好きとして知られる渡辺総監督の気合いがひしひしと伝わってくる。
 また今回の発表にあわせ、ナルバリッチとベニー・シングスが手がけるOP・ED曲(ヴォーカルはナイ・ブリックスとセレイナ・アン)を収録したシングルが5月29日にリリースされることも決定、現在OP曲“Kiss Me”のMVが公開されている。ボンズ20周年×フライングドッグ10周年記念作品として送り出される『キャロル&チューズデイ』、放送開始は1週間後の4月10日(フジテレビ「+Ultra」、NETFLIXほか)。モッキーが劇伴を担当し、総監督みずからが音響監督を務める同作、けっして見逃すことなかれ。

[4月24日追記]
 本日、フライング・ロータスやサンダーキャットらが手がける劇中挿入歌を収録したヴォーカル・アルバム『VOCAL COLLECTON Vol.1』のリリースがアナウンスされた。発売日は7月10日。アニメ好きとして知られるフライロー&サンダーキャットだけれど、まさかの本人アニソン・デビューである。いったいどんな曲に仕上がっているのやら。続報を待とう。

[4/24更新]
TVアニメ『キャロル&チューズデイ』
フライング・ロータス、サンダーキャットらが手掛ける劇中挿入歌(1クール分)を収録したアルバム『VOCAL COLLECTON Vol.1』 7/10発売決定!!

■TVアニメ『キャロル&チューズデイ』VOCAL COLLECTION Vol.1
7月10日(水)発売
VTCL-60499 / POS: 4580325328639 / ¥3,000+tax
※配信
iTunes Store、レコチョク、moraほか主要ダウンロードサイト及びストリーミングサービスにて5月29日(水)より配信スタート

(収録内容)
TVアニメ「キャロル&チューズデイ」を彩るキャラクターが歌唱する約20曲の劇中歌を収録。
※2019年4月から連続2クール(半年間)放送となるTVアニメ『キャロル&チューズデイ』の1クール分(12話分)の劇中歌をまとめたヴォーカルアルバム

・キャロル&チューズデイ (Vo. Nai Br.XX & Celeina Ann) / 「The Loneliest Girl」
 作詞/作曲/編曲: Benny Sings
・キャロル&チューズデイ (Vo. Nai Br.XX & Celeina Ann) / 「Round&Laundry」
 作詞/作曲/編曲: 津野米咲
・DJアーティガン / 「Who am I the Greatest」
 作曲: ☆Taku Takahashi (m-flo)

他、20曲収録予定

総監督:渡辺信一郎、アニメーション制作:ボンズ、キャラクター原案:窪之内英策ら強力なスタッフ陣が挑む
全世界の音楽を愛する人に捧げる、2人の少女が起こした奇跡の物語。

『キャロル&チューズデイ』

☆オープニングテーマ「Kiss Me」ミュージックビデオ公開!!
☆オープニング&エンディングテーマ
「Kiss Me/Hold Me Now」5/29リリース決定!!
☆第3弾参加コンポーザー
(フライング・ロータス、サンダーキャット等)発表!!
☆『キャロル&チューズデイ』劇中ボーカル曲参加コンポーザー
 ラインナップ映像公開!!

きっと忘れない。
あの、永遠のような一瞬を。
あの、ありきたりな奇跡を。

ボンズ20周年×フライングドッグ10周年記念作品として総監督・渡辺信一郎、
キャラクター原案・窪之内英策を迎えアニメ史を塗り替える、全世界に向けた音楽作品
TVアニメ『キャロル&チューズデイ』。
本日、番組オープニングテーマ「Kiss Me」のミュージックビデオが公開となった。
出演は『キャロル&チューズデイ』のシンガーボイスを担当しているNai Br.XX(ナイ・ブリックス)&Celeina Ann(セレイナ・アン)。この2人は全世界オーディションによって選ばれたシンガー。

オープニングテーマ「Kiss Me」は先日、ミュージックステーションにも初出演し、現在男女問わず
絶大な人気を誇るNulbarich(ナルバリッチ)によるプロデュース楽曲。この「Kiss Me」にのせてギブソン(ハミングバード)を弾きながら歌うセレイナ・アンとナイ・ブリックスが向かいあって歌うシーンはまさに『キャロル&チューズデイ』を象徴しているようなミュージックビデオになっている。

「Kiss Me」Music Video(short ver.)
URL: https://youtu.be/k45EpgweT9o

またこのオープニングテーマ「Kiss Me」とオランダを代表するポップの才人・Benny Sings(ベニー・シングス)プロデュースによるエンディングテーマ「Hold Me Now」を収録したシングルCD、配信、アナログ盤が5/29にリリースすることが決定した。

そして、劇中ボーカル曲第3弾参加コンポーザーも同時に発表となった。
LAビートシーンを先導する存在であり、現在の音楽シーンのカギを握る最重要人物であるFlying Lotus(フライング・ロータス)。
超絶技巧のベーシストでもあり、ここ数年のブラックミュージックの盛り上がりにおいて、誰もが認める立役者の一人にでもあるThundercat(サンダーキャット)。
日本の女性シンガーソングビートメーカー/DJで土岐麻子やNegiccoなどへの楽曲提供からtofubeats、鎮座DOPENESSなどとのコラボなど、幅広い領域で活動しているG. RINA(ジーリナ)。
Shu Uemuraやagnès bなどの 数々のファッションブランドやCM音楽を数多くプロデュースしている気鋭のシンガーソングライター/トラックメーカーのMaika Loubté(マイカ ルブテ)。
m-floのトラック・メイカーとしての活動はもちろんのこと、音楽プロデューサーとしても向井太一や加藤ミリヤなどを手がけ、アニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」などのサントラも担当しており、渡辺信一郎監督作では「スペース☆ダンディ」にも楽曲提供している☆Taku Takahashi (m-flo)といった超豪華な面々。

合わせて現時点で参加している全てのコンポーザーのラインナップ映像も公開となった。

参加コンポーザーラインナップ映像
URL: https://youtu.be/jJ6QCaqCC5g

このメンツを見るだけでも胸アツラインナップだが、今後もさらに参加コンポーザーが発表されるようなので
今からこちらも楽しみに待ちたい。
いよいよ第1話放送まで1週間に迫った他に類を見ない本作に是非ご期待ください!!

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INFORMATION

OPテーマ「Kiss Me」/ EDテーマ「Hold Me Now」
キャロル&チューズデイ(Vo. Nai Br.XX & Celeina Ann)
5月29日(水)発売

<収録曲>
1. Kiss Me (作詞/作曲/編曲:Nulbarich)
2. Hold Me Now (作詞/作曲/編曲:Benny Sings)
3. Kiss Me TV size ver.
4. Hold Me Now TV size ver.

※シングルCD
VTCL-35302/POS:T4580325 328578
¥1,300+tax

※アナログ盤
VTJL-2 /T4580325 328622
¥2,000+tax

※配信
iTunes Store、レコチョク、moraほか主要ダウンロードサイト及びサブスクリプションサービスにて5月29日(水)より配信スタート

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渡辺信一郎監督の新作「キャロル&チューズデイ」に楽曲を提供するアーティスト第3弾。
フライング・ロータスは正真正銘、現在の音楽シーンのカギを握る最重要人物だ。彼は本名をスティーヴ・エリソンというプロデューサーで、83年にロサンゼルスで、お婆さんのお姉さんがアリス・コルトレーンという家系に生まれた。06年にビート・メイカーとしてデビュー。08年には自らのレーベル=ブレインフィーダーを立ち上げ、ヒップホップやテクノ、ジャズなどを包括するLAのビート・シーンを先導する存在となった。今のところの最新作『ユーアー・デッド!』にはラッパーのケンドリック・ラマーやハービー・ハンコックなども参加している。昨年8月には“ソニックマニア”出演のために来日し、3D映像と融合したDJステージを展開、そこでもゲームや『攻殻機動隊』サントラなどをプレイしたが、「カウボーイ・ビバップ」なども好きだったようで、渡辺信一郎監督の『ブレードランナー ブラックアウト2022』の音楽を監督からの要望で担当してもいる。
 そんなフライング・ロータスと楽曲を共作するのがサンダーキャット。ブレインフィーダー・レーベルに所属するロータスの盟友の一人だ。彼は本名をスティーヴン・ブルーナーといい、84年にLAで生まれた。ベーシストとしてスラッシュ・メタルのスイサイダル・テンデンシーズから、R&Bのエリカ・バドゥ、ラップのケンドリック・ラマーまで、様々なアーティストと共演してきたが、そんな経歴を詰め込んだようなハイブリッドな音楽性で11年にソロ・デビューした。シンガー・ソングライター的な側面を強めた『ドランク』(17年)はそんな彼の決定版で、マイケル・マクドナルドなどを迎えた「ショウ・ユー・ザ・ウェイ」はAOR再評価の波と相まって、大きな話題となった。
 ☆Taku Takahashiは日本のDJ、音楽プロデューサー。98年からm-floのトラック・メイカーとして活動、99年にメジャー・デビューしてからヒット曲を連発した。音楽プロデューサーとしても向井太一や加藤ミリヤ、MINMIなどを手がけ、最近では韓国のセクシー・グループ、EXIDの日本オリジナル曲もプロデュースした。また、アニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」などのサントラも担当しており、渡辺信一郎監督作では「スペース☆ダンディ」にも楽曲提供している。
 G.RINA(ジー・リナ、グディングス・リナ)は日本の女性シンガー/ビートメイカー/DJ。03年にすべてセルフ・プロデュースで作り上げたアルバムでデビューした。ディスコ/ソウル/ヒップホップを始め、広くダンス・ミュージックにこだわった音楽性で、07年にはビクターからメジャー・デビューしたが、同時にインディ・レーベルも主宰するなど、独自の活動を続けている。土岐麻子やNegiccoなどへの楽曲提供から、tofubeats、鎮座DOPENESSなどとのコラボなど、幅広い領域で活動している。
 Maika Loubté(マイカ ルブテ)は日本人の母とフランス人の父の間に生まれた女性シンガー・ソングライター/トラックメイカー/DJ。10代まで日本・パリ・香港で過ごし、14歳で作詞/作曲を始めた。小山田圭吾、鈴木慶一、菊地成孔などとの共演を経て、14年にアルバム・デビュー。ヴィンテージなアナログ・シンセから最新電子楽器までを駆使した宅録女子として独自の世界を作り上げている。CM音楽や劇中歌なども数多く手がける気鋭のクリエイターだ。

Text: 高橋修

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Flying Lotus(フライング・ロータス)
LA出身のプロデューサー、フライング・ロータスことスティーヴン・エリソン。大叔父にモダンジャズの名サックスプレイヤーのジョン・コルトレーン、そしてその妻でありジャズミュージシャンのアリス・コルトレーンを大叔母に持つ。LAビートシーンの最重要人物にして、サンダーキャットやテイラー・マクファーリン、ティーブスらを輩出した人気レーベル〈Brainfeeder〉を主宰。2010年の『Cosmogramma』、2012年の『Until The Quiet Comes』、そして世界各国で自己最高のセールスを記録し、その年を代表する名盤として高い評価を受けた2014年の『You're Dead!』などのアルバムを通して、その評価を絶対的なものとする。2017年には、自ら手がけた映画『KUSO』の公開や、渡辺信一郎監督の短編アニメーション『ブレードランナー ブラックアウト 2022』の音楽を手がけるなど、その活躍の場をさらに広げている。

Thundercat(サンダーキャット)
フライング・ロータス諸作を始め、ケンドリック・ラマー、カマシ・ワシントンらの作品に参加する超絶技巧のベーシストとしてシーンに登場し、ここ数年のブラックミュージックの盛り上がりにおいて、誰もが認める立役者の一人にまで成長したサンダーキャット。2011年の『The Golden Age Of Apocalypse』、2013年の『Apocalypse』でその実力の高さを証明し、2017年の音楽シーンを象徴する傑作として高く評価された最新作『Drunk』ではケンドリック・ラマー、ファレル・ウィリアムス、フライング・ロータス、マイケル・マクドナルド、ケニー・ロギンス、ウィズ・カリファ、カマシ・ワシントンら超豪華アーティストが勢揃いしたことでも話題となり、その人気を決定づけた。

G.RINA (ジーリナ)
シンガーソングビートメイカー・DJ
近作アルバム『Lotta Love』『LIVE & LEARN』では80年代 90年代へのオマージュとともに、日本語歌詞のメロウファンク、ディスコ、モダンソウルを追求している。英国、韓国アーティスト、ヒップホップからアイドルまで幅広くプロデュース、詞/楽曲提供、客演など。2018年、ZEN-LA-ROCK、鎮座ドープネスとともにヒップホップユニット「FNCY」を結成。
https://grina.info

Maika Loubté (マイカ ルブテ)
Singer song writer / Track maker
SSW/トラックメーカー/DJ。近所のリサイクルショップでヴィ ンテージアナログシンセサイザーを購入したことをきっかけに、ドリームポップとエレク トロニックミュージックを融合させたスタイルで音楽制作を始める。 日本とフランスのミックスであり、幼少期から十代を日本・パリ・香港で過ごす。
2016年夏、アルバム『Le Zip』(DIGITAL/CD+42P PHOTO BOOK)をリリース。
のち2017年3月にリリースしたEP『SKYDIVER』がJ-WAVE「TOKIO HOT 100」に選出され、
番組にも出演。2017年5月、Underworldがヘッドライナーを務めた バンコクの音楽フェス
「SUPER SUMMER SOUND 2017」に出演。 SUMMER SONIC 2017出演。同年7月、Gap“1969 Records”とのコラボレーションによりMVが制作された「Candy Haus」を、配信と7インチLPでリリース。
インディペンデントな活動を続けながら、Shu Uemuraやagnès bなどの 数々のファッションブランドやCM音楽をプロデュースし、これまでに自主盤を含め2つのアルバムと3つのシングルEPを発表。
2017年、米Highsnobietyが企画・制作したMercedes BenzのWeb CMに出演し、
未発表曲がフィーチャーされた。台湾・中国・韓国・タイ・フランスでのライブパフォーマンスも成功させ、活動の幅を広げている。2019年、新作フルアルバムをリリース予定。元Cibo MattoのMiho Hatoriらを客演に迎え、PhoenixやDaftpunkなども手がけるAlex Gopherがマスタリングを務めた。
Official web www.maikaloubte.com
Twitter https://twitter.com/maika_loubte
Instagram https://www.instagram.com/maika_loubte/

☆Taku Takahashi (m-flo)
DJ、プロデューサー。98年にVERBAL、LISAとm-floを結成。
ソロとしてもCalvin Harris、The Ting Tings、NEWS、V6、Crystal Kay、加藤ミリヤ、MINMIなど国内外アーティストのプロデュースやRemix制作も行うほか、アニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」、ドラマ・映画「信長協奏曲」、ゲーム「ロード オブ ヴァーミリオン III」など様々な分野でサウンドトラックも監修。2010年にリリースした「Incoming... TAKU Remix」は世界最大のダンスミュージック配信サイト“beatport”で、D&Bチャートにて年間1位を獲得。また同曲で、過去受賞者にはアンダーワールドやファットボーイ・スリム、ジャスティス等、今や誰もが知っているスーパースター達が名を連ねる『beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS』を獲得し、日本人として初めての快挙を成し遂げ、名実ともに世界に通用する事を証明した。
国内外でのDJ活動でクラブシーンでも絶大なる支持を集め、LOUDの“DJ50/50”ランキング国内の部で3年連続1位を獲得し、日本を牽引する存在としてTOP DJの仲間入りを果たした。2011年に自身が立ち上げた日本初のダンスミュージック専門インターネットラジオ「block.fm」は新たな音楽ムーブメントの起点となっている。2018年3月7日には、15年ぶりにLISAが復帰しリユニオンしたm-floのNEW EP「the tripod e.p.2」をリリース。m-floの最新シングル「MARS DRIVE」「Piece of me」「epic」も好評配信中。
https://twitter.com/takudj
https://block.fm/

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《キャロル&チューズデイとは?》

ボンズ20周年×フライングドッグ10周年記念作品。
総監督に『サムライチャンプルー』・『カウボーイビバップ』・『アニマトリクス』・『ブレードランナー ブラックアウト2022』ほかを手掛け国内外においてカリスマ的な人気を誇る、渡辺信一郎。
キャラクター原案に、日清食品カップヌードルCM「HUNGRY DAYS 魔女の宅急便篇」、「HUNGRY DAYSアルプスの少女ハイジ篇」などのキャラクターデザインで人気を博している窪之内英策。
この強力タッグのもと、アニメーション制作は『COWBOY BEBOP 天国の扉』・『鋼の錬金術師』・『交響詩篇エウレカセブン』・『僕のヒーローアカデミア』など数多くのヒット作品を世に送り続けるボンズ、物語の主軸となる音楽は『カウボーイビバップ』・『マクロス』シリーズなど数々のヒットアニメーション音楽を作り出すフライングドッグが担当する。
劇中音楽はカナダ出身のアーティストMockyが手掛け、主題歌は全世界オーディションによって選出されたNai Br.XX(ナイ・ブリックス)、Celeina Ann(セレイナ・アン)がキャロル・チューズデイのWキャストとして曲を歌唱する。音楽にも強い拘りがある本作は海外アーティストからの楽曲提供が多く、さらに劇中歌及び主題歌は全て外国語で歌唱される。
オープニングテーマ「Kiss Me」は現在、男女問わず絶大な人気を誇るNulbarich(ナルバリッチ)。エンディングテーマ「Hold Me Now」はオランダを代表するポップの才人・Benny Sings(ベニー・シングス)が担当。また、劇中ボーカル曲参加コンポーザーとして、ノルウェー出身の音楽プロデューサー・ミュージシャンのLido、オランダを代表するポップの才人・Benny Sings、エレクトロポップデュオ《The Postal Service》への参加でも知られるUSインディー界の歌姫・JEN WOOD、女性4人によるロックバンド・《赤い公園》でギターを担当する津野米咲、ビヨンセやリアーナ、ジェニファーロペスなど超大物アーティストに楽曲を提供しているEvan "Kidd" Bogart、現在活動停止中ではあるがロック・ファンにはなじみの深いKeane(キーン)のTim Rice-Oxley、コーネリアスやファイストなどとのコラボも話題となったノルウェー出身のグループ、Kings of Convenience(キングス・オブ・コンビニエンス)のEirik Glambek Bøe等といったこちらも早々たる面子が音楽で本編を彩る。
2019年4月10日からのオンエアに向けて本編、音楽ともに絶賛鋭意制作中!
他に類をみない本作品に乞うご期待!!!

☆新プロモーション映像
 URL: https://youtu.be/CBak9m0bcB0
☆ドキュメンタリー映像
・Story of Miracle (vol.1)
 URL: https://youtu.be/hzxqk2dVvf4
・Story of Miracle (vol.2)
 URL: https://youtu.be/K8X10gdWz-A

《あらすじ》
人類が新たなフロンティア、火星に移り住んでから50年になろうという時代。
多くのカルチャーはAI によって作られ、人はそれを享楽する側となった時代。
ひとりの女の子がいた。
首都、アルバシティでタフに生き抜く彼女は、働きながらミュージシャンを目指してい
た。いつも、何かが足りないと感じていた。
彼女の名はキャロル。
ひとりの女の子がいた。
地方都市、ハーシェルシティの裕福な家に生まれ、ミュージシャンになりたいと思ってい
たが、誰にも理解されずにいた。世界でいちばん孤独だと思っていた。
彼女の名はチューズデイ。
ふたりは、偶然出会った。
歌わずにいられなかった。
音を出さずにいられなかった。
ふたりなら、それができる気がした。
ふたりは、こんな時代にほんのささやかな波風を立てるだろう。
そしてそれは、いつしか大きな波へと変わっていく───

■メインスタッフ
原作:BONES・渡辺信一郎
総監督:渡辺信一郎
監督:堀 元宣
キャラクター原案:窪之内英策
キャラクターデザイン:斎藤恒徳
メインアニメーター:伊藤嘉之、紺野直幸
世界観デザイン:ロマン・トマ、ブリュネ・スタニスラス
美術監督:河野羚
色彩設計:垣田由紀子
撮影監督:池上真崇
3DCGディレクター:三宅拓馬
編集:坂本久美子
音楽:Mocky
音響効果:倉橋静男
MIXエンジニア:薮原正史
音楽制作:フライングドッグ
アニメーション制作:ボンズ
公式HP: https://caroleandtuesday.com/
Twtter: @carole_tuesday
Instgram: @caroleandtuesday
Facebook: https://www.facebook.com/caroleandtuesdayofficial/

©ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会

《主題歌情報》
オープニングテーマ「Kiss Me」
作詞・作曲・編曲:Nulbarich
歌:キャロル&チューズデイ(Vo. Nai Br.XX & Celeina Ann)

エンディングテーマ「Hold Me Now」
作詞・作曲・編曲:Benny Sings
歌:キャロル&チューズデイ(Vo. Nai Br.XX & Celeina Ann)

■メインキャスト
キャロル:島袋美由利
チューズデイ:市ノ瀬加那
ガス:大塚明夫
ロディ:入野自由
アンジェラ:上坂すみれ
タオ:神谷浩史
アーティガン:宮野真守
ダリア:堀内賢雄
ヴァレリー:宮寺智子
スペンサー:櫻井孝宏
クリスタル:坂本真綾
スキップ:安元洋貴

■シンガーボイス
Nai Br.XX(キャロル)
Celeina Ann(チューズデイ)
Alisa(アンジェラ)

■本作参加コンポーザー
Mocky / Nulbarich / Benny Sings / Lido / JEN WOOD / 津野米咲(赤い公園) / Evan "Kidd" Bogart / Tim Rice-Oxley (Keane) / Eirik Glambek Bøe (Kings of Convenience) / Flying Lotus / Thundercat / G.RINA / Maika Loubté / ☆Taku Takahashi (m-flo)
・・・and more

《タイアップ》
ノード、ギブソンとのタイアップ決定!!
世界のトッププレイヤーたちが愛用するシンセサイザー/キーボードの“Nord”ブランドと世界的老舗ギターメーカー“ギブソン” (Hummingbird)とのコラボレーションが決定!
キャロルのキーボード、チューズデイのギターにはそれぞれNord、ギブソンのロゴが入り、
リアルな音楽作品としてよりいっそう本タイトルを盛り上げます。

協力:株式会社ヤマハミュージックジャパン(日本国内におけるNordブランド製品の輸入・販売元)

《放送情報》
2019年4月10日よりフジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜日24:55から放送開始(初回は25:05~)
NETFLIXにて4月10日配信開始。2話~毎週木曜日配信(日本先行)
ほか各局にて放送 (関西テレビ/東海テレビ/テレビ西日本/北海道文化放送/BSフジ)

・テレビ西日本 4月10日(水)25:55~26:25
・東海テレビ 4月13日(土)25:55~26:25
・北海道文化放送 4月14日(日)25:15~25:45
・関西テレビ 4月16日(火)25:55~26:25 
・BSフジ 4月17日(水)24:00~24:30 

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