「LV」と一致するもの

LV - ele-king

 南ロンドンのLV(当初は3人組だったが、現在はシー・ウィリアムズとウィル・ホロックスのコンビ)といえば、コード9やブリアルに次いで〈ハイパーダブ〉を初期から牽引してきたアーティストだ。他にも〈ヘムロック〉や〈セカンド・ドロップ〉など、ダブステップの名門から作品をリリースしている。UKガラージ、グライムをルーツに持ち、〈キーサウンド〉からリリースされた詩人ジョシュア・アイデンヘンとのコラボ・アルバム『ルーツ』(2011)や、〈ハイパーダブ〉からの単独名義でのファースト・アルバム『スベンザ』(2012)に顕著なように、当初はラッパーやMCをフィーチャーした泥臭くルーツ色の濃いサウンドを得意としていた。『スベンザ』には南アフリカのハウス・ミュージックからの影響もあり、そこからはジューク/フットワークとの結びつきも見出せる。そして、ジョシュアとの2枚目のコラボ作『アイランド』(2014年)では、ダブ、テクノ、エレクトロニカなどさらに多くの要素を融合し、コード9同様にダブステップの進化も担うサウンドとなっていた。つまり、ダブステップの進化・実験性とともに歩んできたのがLVと言える。

 そんなLVの通算4枚めのアルバム『アンシエント・メカニズム』は、何と〈ブラウンズウッド〉からのリリース。ジャイルス・ピーターソン主宰のこのクラブ・ジャズ総本山からのリリースということで、いままでとはまた大きくテイストが異なるものとなっている。中でもトピックとなるのが、アルメニア出身のジャズ・ピアニストのティグラン・ハマシアンとの共演だ。ロバート・グラスパーのようなUS勢とは異なる新世代ジャズの異才として注目を集めるハマシアンだが、そんな彼とLVの初コラボは2012年のこと。ジャイルスのラジオ番組「ワールドワイド」でのライヴ・セッションとして実現した。ハマシアンはジャズに現代音楽やポスト・ロック、エレクトロニカ、さらにアルメニア民謡などまでを融合した独自の音楽性を持つピアニストだが、この共演によってLVが新たな方向を摸索しはじめたのは間違いない。それ以来重ねてきたコラボの成果がこの『アンシエント・メカニズム』なのである。

短いインタルードも含めて全12曲を収録するが、その中でハマシアンをフィーチャーするのは5曲。従ってほぼ半分は両者のコラボと言える。ハマシアン抜きの曲も、そのコラボの延長線上にあるものだ。ハマシアンのアコースティック・ピアノが入ることにより、逆にヴォーカルやMCは排除し、ほぼインスト・アルバムとなった点も特徴だ。数少ないヴォーカル曲の「ヤリモ」と「インフィナイト・スプリング」も、そこで聴かれるのはアルメニア民謡調のコーランのようなもの。かつてのグライムの影響下にある荒々しさとは決別し、リリカルで美しいサウンドとなっている。コラボが行われたベルギーの町の名前である「ロイセレデ」など、耽美的という点ではブリアルにも通じるところもあるが、ダークな中にも透明感や清廉さを湛えているのはハマシアンのピアノの為せる技だろう。LVのビートも「ハンマーズ・アンド・ローゼス」「ジャンプ・アンド・リーチ」「トランジション」のようなブロークンビーツ調が目に付き、いままでの作品に比べてジャズ・ピアノとの親和性の高いものへと変化している。「ダー・ソウイリ」はハマシアンとのコラボ曲ではないものの、北アフリカ音楽からの影響も伺える現代音楽的なモチーフのビート作品で、明らかにハマシアンとの共演が影を及ぼしていることが伺える。ボサノヴァを消化したような3拍子の「バランス・スプリング」は、本作と同時期にリリースされるフローティング・ポインツのアルバム『エレーニア』とともにエレクトロニック・ジャズの傑作だ。ジャズとポスト・ダブステップ、ベース・ミュージックとの融合の新たな1ページを書き加えるアルバムであることは間違いない。

Electronica Classics - ele-king

さて、「エレクトロニカの“新”新世紀」と銘打って、とらえがたくも魅力的なエレクトロニック・ミュージックの現在を示している作品群を取り上げる本特集だが、一般的に「エレクトロニカ」という名で認識されている作品にはどのようなものがあっただろうか。リアルタイムで聴いてこられた方も多いことと思われるが、あらためていま聴き返したいエレクトロニカ名盤選をお届けします。


Alva noto - Transform
Mille Plateaux (2001)

 キム・カスコーンが「失敗の美学」と名づけたデジタル・グリッチの活用によって、90年代後半から00年代前半にかけてのノンアカデミックな電子音響が始まった。カールステン・ニコライ=アルヴァ・ノト/ノトは、そのグリッチ・ノイズをグリッドに配置することで、ステレオの新美学とでもいうべき電子音響を生み出していく。とくに本作の機械的でありながら優美で洗練されたサウンドは、2001年の時点ですでにポスト・グリッチ的。数値的なリズム構成が生み出すファンクネスには、どこかクラフトワークの遺伝子すら感じるほどだ。00年代以降のエレクトロニカに大きな影響を与えた傑作。


Fennesz - Endless Summer
Mego (2001)

 ティナ・フランクによるグリッチなアートワークは、リアルな「永遠の夏」そのものではなく、いわばポップ・ミュージックの記憶から生成するヴァーチャルな世界=記憶の表象であり、このアルバムの魅力を存分に表現していた。これはテン年代的(インターネット的)な光景・環境の源流のようなサウンド/イメージともいえ、たとえば、甘いギター・コードに介入する刺激的なグリッチ・ノイズは、「歯医者で聴いたフィル・コリンズ」というOPNのコンセプトへと接続可能だろう。ヴェイパーウェイヴ以降のインターネット・カルチャー爛熟期であるいまだからこそ新しい文脈で聴き直してみたい。


Jim O'Rourke
I'm Happy, And I'm Singing,
And A 1, 2, 3, 4
Mego (2001)

 ジム・オルークの唯一の「ラップトップを用いたオリジナル・アルバム」は、00年代以降、多くのエレクトロニカの雛形ともなったアルバムでありながら、しかしほかの何にも似ていない孤高のアルバムでもあった。じじつ、この弾け飛ぶような電子音には、ヴァン・ダイク・パークスのポップネスから、メルツバウのノイズまでも圧縮・解凍されており、ジム・オルーク的としかいいようがない豊穣な音楽が展開されている。フェネス、ピタらとのフェノバーグとは違う「端正さ」も心地よく、まさに永遠に聴ける電子音楽的名盤といえる。2009年に2枚組のデラックス・エディションもリリースされた。


Ekkehard Ehlers
Plays
Staubgold (2002)

 このアルバムこそ、00年代後半以降の「ドローン/アンビエント」のオリジン(のひとつ)ではないか? コーネリアス・カーデュー、ヒューバード・フィヒテ、ジョン・カサヴェテス、アルバート・アイラー、ロバート・ジョンソンなどをソースとしつつも、それらのエレメントを弦楽的なドローンの中に融解させ尽くした美しい音響作品に仕上がっている(元は12インチシリーズであり、本作はそれをアルバムにまとめたもの)。“プレイズ・ジョン・カサヴェテス2”における超有名曲(“グッド・ナイト”?)を思わせる弦楽にも驚愕する。イックハルト・イーラーズの最高傑作ともいえよう。


Shuttle358
Understanding Wildlife
Mille Plateaux (2002)

 00年代初頭に人気を博したクリッキーなビートはエレクトロニカの「ポップ化」にも貢献した。LAのシャトル358(ダン・エイブラムス)が、2002年に〈ミル・プラトー〉よりリリースした本アルバムは、その代表格。細やかに刻まれるビートに、朝霧のように柔らかい電子音が繊細にレイヤーされ、00年代初頭の小春日和のような空気を見事に象徴している。耳をくすぐるカラカラとした乾いた音響が気持ちよい。2015年には11年ぶりのアルバム『キャン・ユー・プルーブ・アイ・ワズ・ボーン』を老舗〈12k〉よりリリース。こちらは森の空気のようなアンビエント作品に仕上がっていた。


Frank Bretschneider &
Taylor Deupree
Balance
12k (2002)

 電子音響とエレクトロニカの二大アーティストの競演盤にして、ミニマル/クリック&グリッチ・テクノの大名盤。初期テイラー・デュプリー特有のミニマル・テクノな要素と、フランク・ブレッシュナイダーのクリッキーかつグリッチなエレメントが融合し、緻密なサウンドのコンポジションを実現している。シグナルのような乾いたビートと、チリチリとした刺激的なノイズが交錯し、マイクロスコピックな魅力が横溢している。ミニマル・グリッチな初期〈12k〉の「思想」を象徴する最重要作といえよう。フランク・ブレッシュナイダーはシュタインブリュッヘルとのコラボ作もおすすめ。



SND
Tenderlove
Mille Plateaux (2002)

 マーク・フェルとマット・スティールによるクリック/グリッチ・ユニットSNDのサード・アルバム。近年でもファースト・アルバムがリイシューされるなど常に高い評価を得ている彼らだが、本作は、そのキャリア中、もっともハウス・ミュージックに接近した問題作である。ハウス・ミュージックの残滓を残した甘いコード感と、シンプル/ミニマルな音響の中で分断されていくダンス・ビートなどは、現在のアルカなどにも繋げていくことも可能だろう。後年、〈エディションズ・メゴ〉や〈ラスター・ノートン〉などからリリースされたマーク・フェルのソロ作も重要作。あわせて聴きたい。


Hecker
Sun Pandämonium
Mego (2003)

 なんというノイズか。まるで太陽のように眩く、獰猛であり、優雅でもある。嵐のようなノイズの奔流はラッセル・ハズウェル級であり、まさに取り扱いが危険な盤だが、しかしその強靭な音響は一度ハマると抜け出せなくなる快楽性がある。いわば90年代末期に誕生したピタなどのグリッチでノイジーな電子音響と、2010年代的なインダストリアル/ノイズをつなぐアルバムといえ、いまをときめく〈パン〉が、2011年にアナログ盤でリイシューしているのも頷けるというもの。まさにヘッカーの最高傑作だ。刀根康尚やデヴィッド・チュードアなど実験音楽や電子音楽の系譜にも繋げて聴いてみよう。


Pan Sonic
Kesto
Blast First (2004)

 キム・カスコーンがグリッチ・ムーヴメントの最重要バンドと認識するパン・ソニック。ファースト・アルバム『ヴァキオ』(1993)が有名だが、ここではあえて本作を紹介したい。彼らの5枚目のオリジナル・アルバムにして、脅威の4枚組。ブルース・ギルバート、灰野敬二、スーサイド、スロッビング・グリッスル、アルバン・ルシエなどに捧げられた楽曲群は、インダストリアルから電子ノイズ、果ては静謐なドローンまで実にさまざまで、さながらパン・ソニック流の電子音楽/ノイズ史といった趣。グリッチ以降の電子音響が行き着いた「宇宙」がここにある。アートワークも素晴らしい。


Stephan Mathieu
The Sad Mac
HEADZ (2004)

 フィールド・レコーディングに弦楽のようなドローンがレイヤーされ、記憶の層が再生成していくような美しい音響作品であり、同時に「作曲家」ステファン・マシューの個性が前面化した最初の作品でもある。弦楽曲のもっとも美しい瞬間を、まるで記憶のスローモーションのように引き伸ばすシネマティックな作風は、電子音楽とエレクトロ・アコーステイックの境界線を静かに融解させていく。アルバム・タイトルは愛用してきたマックのクラッシュを表現しているようで、いわばマシンへのレイクエムか。現在のアンビエント/ドローンの系譜を振り返るときに欠かせない重要なアルバム。


CE$ - ele-king

MY GRIME CLASSICS

Funkstörung - ele-king

 世はエレクトロニカ・リヴァイヴァルである。完全復活のAFX,アクトレス、アルカ、OPN、ローレル・ヘイロー、今年はプレフューズ73も復活したし……ポスト・ロックへの注目と平行してそれが存在感を増していった90年代後半の様相がそのまま移植されたかのようだ。
 ドイツのファンクステルングは、90年代後半のエレクトロニカ第一波における主役のひとつである。ビョークの「オール・イズ・フル・オブ・ラヴ」(1998年)は、オリジナルよりも彼らのリミックスのほうが人気があった。しかもそのヴァイナルは、メジャーではなく、〈ファットキャット〉という小さなレーベル(後にシガー・ロスやアニマル・コレクティヴを見出す)からのリリースだったのにも関わらず、相当にヒットした。また、その曲はビョークがエレクトロに/IDM的なアプローチを見せた最初期の曲でもあったので、エポックメイキングな曲ともなった。インダストリアルなテイストで、音をひん曲げたようなあのドラミングに誰もが驚き、「ファンクステラングって何もの?」となったわけである。当時は、「あれがグリッチ・ホップっていうんだよ」などと言っていたね。そう、彼らはその名の通り、IDMだろうがテクノだろうが、ファンキーなのだ。

 そんな伝説のプロジェクトが10年振りに復活して、新作を発表した。往年のファンはもちろん、最近この手の音にはまっている若い世代にまで評判が広まっている。そこへきて、11月7日には日本でのライヴも発表された。エレクトロニック・ミュージックの祭典、EMAF TOKYOへの出演だ(他にもアクフェンやヒロシ・ワタナベ、インナー・サイエンスなど大物が出演)。
 ここに彼らの復活を祝って、ミニ・インタヴューを掲載。記事の最後には、日本のためのエクスクルーシヴ・ミックスのリンク(これが格好いい!)もあります。
 読んで、聴いて、EMAFに行きましょう。

Funkstörung インタビュー

■マイケル、クリス、今回の来日を非常に楽しみにしています! 公演に先だって幾つか質問させて下さい。

F:ぼくらも楽しみだよ! もちろんさ。

■10年振りのニュー・アルバム『Funkstörung』のリリースおめでとうございます! 日本でもアルバムは好評ですが、先ずは再結成の経緯を教えて下さい。

F:ありがとう! 友人であるMouse On MarsのAndi Tomaが、ぼくらふたりを彼らの活動の21周年記念の作品である「21 Again」に誘ってくれたんだ。その際にぼくらふたりは多くのことを話したんだけど、Funkstörungを再結成する良い切っ掛けなのかもしれない、とお互いに考えたんだよね。いろいろな曲をふたりで聴きながら、すぐにぼくらは(しばらく活動を一緒にしていなかったんだけど)いまでも「波長が合っている」ことに気付いたんだ。

■ニュー・アルバム『Funkstörung』はModeselektor主催のMonkeytownレーベルからのリリースとなり、とても興奮しましたが、どういった経緯でMonkeytownからのリリースとなったのですか?

:とてもエキサイティングなことだよね。:-) Andi Toma(Mouse On Mars)がMonkeytown Recordsを薦めてくれたんだ。Monkeytownのリリースは好きだったし、Modeselektorを昔から知っていた事もあって直感的に良い事だと思ったね。

■本作ではAnothr、ADI、Audego、Jamie Lidell、Jay-Jay Johanson、Taprikk Sweezee(アルファベット順)という6組のゲスト・ヴォーカルが9曲で参加していますが、ヴォーカル作品を多く収録した意図やコンセプトなどを教えて下さい。またヴォーカルの人選はどのようにしたのですか?

:これと言ったコンセプトはないんだけど、敢えて言うなら成熟したアルバムを作りたかったんだ。ブレイクの多用や過剰なディテールへの拘りではなく「リアル」な曲を書きたかった。インストゥルメンタルの楽曲は、多くの場合ぼくらを満足されてくれないから、ヴォーカリストをフィーチャーしたアルバムを制作することに決めたんだ。何か人間的な要素、もしくは声が与えてくれるインスピレショーン、をぼくらは必要としていた。良い例なのが、親しい友人であり近所に住んでいる「Anothr」なんだけど、彼はいわゆる「インディ・ロック」の人で、複数の楽器を演奏するマルチプレイヤーなんだけど、何か特別な要素をぼくらの楽曲に与えてくれたよ。多くのことを彼から学んだね。SoundCloudを通して知り合ったオースラリアのシンガー「Audego」との制作も楽しかったね。彼女の声を聴いてぼくらは鳥肌が立つんだ。テルアビブの「ADI」はぼくらのマネージャーの友人なんだけど、ぼくらにとって完璧な調和と言えるモノになったよ。彼女は近くビッグスターになると思う、素晴らしいのひと言だね。「Jay-Jay Johanson」とは、古き良き時代からの知り合いで、もう15年前のになるのかな、当時の彼のアルバムをプロデュースしているんだ。「Taprikk Sweezee」はハンブルクで知り合った気の知れた友人で、過去にも多くの制作を一緒にしている。(Michael Fakeschのアルバム『Dos』のシンガーは彼なんだ)18年くらい前に初めて「Jamie Lidell」のパフォーマンスを見たんだけど、彼と制作を共に出来たことは夢の様だったね。いくつかの理由があって彼とは一緒に制作を行えていなかったんだけど、今回のアルバムでそれが叶ってとても誇りに思うよ。

■1995年に発表された「Acid Planet 1995」から20年経ちますが、制作や作品に関する一貫した考えはありますか?

:20年……。長い期間だよね? 実際には1992年に収録曲を制作していたから、20年以上音楽を作り続けていることになるよね……。Crazy! 一貫した考えと言えるのはたぶん、つまらない音楽を作りたくないということなんだと思うよ。ぼくらの楽曲は(多くの場合)いろいろな音やディテールが詰め込まれていて複雑だと思うんだけど、このアルバムに関して言うと(代わりに)いろいろなアイデアが楽曲に詰め込まれているんだ。リスナーをつまらない気持ちにさせたくないし、もっと言えばぼくら自身がつまらない気持ちになりたくないんだ。

■最新作に関する何か特筆するエピソードがあれば教えて下さい。

:一番特別なエピソードと言えば、ぼくらがこのアルバムを完成させたということだろうね。。10年間コミュニケーションを取っていなかったからね。こんなに長い期間を置いてからたFunkstörungとしてアルバムを完成させた、というのはとても特別なことだと思うね。

■現在はミュンヘンを拠点に活動されていると思いますが、ミュンヘンまたドイツの音楽やアートの状況に関して、マイケル、クリスが感じられる事を教えて下さい。

:多くの音楽、イベントなんかはたしかにあるんだけど、ぼくらはあまりそれらにコミットしていないんだ。スタジオに居て毎日音楽を作っている、只それだけなんだよ。;-)

■ 印象に残っている国、イベント、アーティスト等あったら教えて下さい。

:もちろんだよ。ビョークと一緒に仕事をした事は強烈な記憶として残っている。リミックスを2曲作っただけなんだけどね。魔法の瞬間だったよ、彼女の声をエディットしていたときっていうのは。その他にもニューヨークのグッゲンハイム美術館でパフォーマンスしたことは素晴らしかったね。Jamie Lidell、LambのLou Rhodesと仕事出来たことも特別だし……。Wu-Tang Clanのリミックスをしたことも……。オーストラリアでのツアーも……。この20年間、とても素晴らしい瞬間が幾つもあったね。

■ 今後のプラン等をお聞かせ下さい。

:新しい楽曲を制作していて、今年中に発表されるかもしれないんだ。12月には幾つかのライヴが控えている。新しいミュージック・ヴィデオも制作中だね。

■今回日本を訪れる際に、何か楽しみにしていることはありますか?

:和食を食べることだね! (本当に美味しいよね)他には、秋葉原にクレイジーなモノを探しに行くこと、渋谷のスクランブル交差点で人の波に押し潰されること、原宿で(流行の先端を行っている)ヒップスターたちを見ること、大阪のアメリカ村で買い物をする事こと。本当に日本ではクールなことがいろいろと出来るよね。今回は実現出来なさそうなんだけど、富士山に登るのも良いアイデアだね。(日本は大好きだし、いつも良い時間を過ごさせてもらってるよ!)

■最後に、日本の電子音楽リスナーにメッセージをお願いします。

:イベントで会えるのを楽しみにしてるよ!

Funkstörung▼プロフィール
 1996年結成、かつて、オランダの〈Acid Planet〉〈Bunker〉レーベルからアシッド・テクノ作品も発表していたドイツはローゼンハイム出身のマイケル・ファケッシュとクリス・デ・ルーカによるエレクトロニック・デュオ。それぞれのソロ名義ではセルフ・レーベル〈Musik Aus Strom〉からも作品を発表。
 エレクトロニカ、アンビエント、ヒップホップ、ポップスの要素を融合させたサウンドをベースに穏やかな風が吹き抜ける草原と溶岩が流れ出す活火山の風景が同居したかのような、未知のエクスペリメンタル・ポップを生み出し、爆発的人気を博す。
 99年のリミックス・アルバム『Adittional Productions』における、ビョークやウータン・クランといった大物たちのリミックスで知名度を上げ、00年に1stアルバム『Appetite For Distruction』をリリース。脱力したヴォーカルと感電したラップが絡み合う、メロウかつ鋭い金属質のブレイク・ビーツ・サウンドでその実力を遺憾なく発揮し、テクノ界に新風を吹き込んだ。クリストファー・ノーラン監督映画『メメント』の日本版トレーラーにビョーク「All Is Full Of Love (Funkstorung Mix)」が起用された事でも注目を集める。またテイ・トウワをはじめ日本のリミックスなども手掛け、国内外において非常に高い評価を得ている。 
 2015年、活動休止を経てモードセレクター主宰レーベル〈Monkeytown〉から10年振りに新作を発表、ゲスト・ヴォーカルとして、ジェイミー・リデルをはじめ、ハーバートやテイ・トウワ作品に参加してきたドイツ人シンガーのタプリック・スウィージー、スウェーデン人シンガーのジェイ・ジェイ・ヨハンソンらが参加。究極に研ぎ澄まされたトラックをポップソングまで昇華させた最高傑作が誕生した。
https://www.funkstorung.com

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★新作情報
『Funkstörung』-Funkstörung
https://itunes.apple.com/jp/album/funkstorung/id998420339

★来日情報
11月7日(土曜日)EMAF TOKYO 2015@LIQUIDROOM
https://www.emaftokyo.com

★エクスクルーシヴ・ミックス音源
Funkstörung Exclusive Mix for Japan, Oct 2015
https://soundcloud.com/emaftokyo/funkstorung-phonk-set-oct-2015



Funkstörung interview

I'm looking forward to your appearance at EMAF Tokyo. Could I have some questions prior to the event please?

We are looking forward to it, too!!! Sure.

Congratulations on the release of your new album entitled "Funkstörung".
1. How the reunion of the unit come about?

Arrogate Gozaimasu!
Our friend Andi Toma (Mouse On Mars) invited us to do a song with Mouse On Mars for their anniversary record '21 again'. We met and talked a lot and soon we thought this might be a good chance to reactivate Funkstörung. After listening to loads of songs we instantly recognized that we are still on the 'same wavelength'...

The album "Funkstörung" has been released on Monkeytown Records run by Modeselektor.
2. What has made you decide to release the album on the label?

I'm so excited about this. :-)
Andi Toma recommended Monkeytown to us...and since we liked the MTR releases and knew the Modeselektor guys from back in the days, we had a good feeling about it.

There are 6 vocalists featured for 9 tracks in this album. (To name all alphabetically, ADI, Anothr, Audego , Jamie Lidell, Jay-Jay Johanson and Taprikk Sweezee)
3.  What was your intention / concept about these vocalist selections?

We had no real concept, but somehow we wanted to do a grown-up album. Instead of focusing on breaks and an overload of details we wanted to write 'real' songs. Since instrumental tracks don't satisfy us most of the times we decided to do a vocal album. We needed that human element and as well the inspiration vocals give us. Anothr, who is a close friend and neighbour is the best example: He added some special flavour to our songs since he is more a kinda 'Indie Rock' guy and multiinstrumentalist...we learned a lot from him. Australian singer 'Audego' we found via soundcloud was really a pleasure to work with, Her voice really gave us goose bumps. ADI from Tel Aviv is a friend of our manager and for us it was a perfect match. She is going to be a big star soon...she is brilliant! Jay-Jay Johanson we knew from 'the good old times'...we have been producing one of his albums almost 15 years ago. Taprikk Sweezee is a good friend from Hamburg with whom we have been working a lot together in the past (he is the singer on Michael Fakesch's album 'Dos'...) Jamie Lidell was a dream to work with from the day we saw him playing for the first time (which is about 18 years ago)...due to different reasons we never managed to work with him and so we are extremely proud that this time it really happened.

20 Years have been passed since the release of "Acid Planet 13" in 1995.
4. Is there any consistent thoughts behind your production throughout?

Long time...isn't it? In fact we did those track back in 1992, which means we are doing music since over 20 years...crazy!

Maybe the most consistent thought is that we don't wanna do boring music. That's the reason why our songs are often so complex with loads of sounds and details and -like on this album- with loads of ideas within the song. We just don't wanna bore people...and even more important we don't wanna bore ourselves.

5. If there's a special story / episode regarding the latest album, it would be great to hear it.

The most special story is that we really did this album...after not talking to eachother for 10 years. I think this is something very special if you re-unite after such a long time.

You are currently based in Munich, Germany.
6. Could you tell us about your opinions on a situation music (and/or) art in Munich / Germany are in? (from each of you, please?)

There is definitely a lot music, events, etc. going on but we are kind of isolated from all that. We are sitting in our studios all day making music and do nothing else ;-)

7. Please let us know of any countries, events or artists you have been impressed by and would still remember?

Of course one of the most intense memory from the past was working with Björk. Even if we only did two remixes, but to work with her vocals was a very magic moment. Besides to that playing at Guggenheim Museum New York was amazing...also working with Jamie Lidell or Lou Rhodes from Lamb was very special....or remixing Wu-Tang...and our Australia tour...oh man...we had some great moments over the last 20 years.

8. Please let us know of your upcoming plans. (Excuse me if this is too fast to ask..) 

We are working on new tracks right now (which might be released already this year) and we're going to play some live shows coming up in December. There is also a few new videos in the making.

9. Is there any particular thing(s) you've been looking forward to do in Japan? 

...to eat Japanese food (which we love!), to check out all the crazy toys in Akihabara, to get squashed a Shibuya crossing, to see all the super hippsters at Harajuku, to do some shopping at american village Osaka...oh man, there is so much cool stuff to do in Japan. Actually it would have been great to walk up Mount Fuji, but unfortunately it's not the right time :-(...anyway...we love Japan and always had a great time there!

10. Lastly, please leave a message for electronic music listeners in Japan.

Come to our concerts!! We hope to see you guys there!


interview with Fever The Ghost - ele-king


Fever The Ghost
Zirconium Meconium

Indie RockPsychedelicGarage

Tower HMV Amazon

 テンションの高い、エキセントリックなサイケ・ポップはいま流行らないだろうか? しかし、まさにテームなドリーム・ポップ化を遂げてしまったテーム・インパラを多少歯がゆく感じている人などは、ぜひこのフィーバー・ザ・ゴーストにぶっ飛ばされてみてほしい(ドゥンエンの新譜もいいけれど)。テームなインパラがノンアルコール・ビールだとすれば、FTGはさしずめドクターペッパーか、ソーダ・フロートに花火の刺さったやつというところ。それは子どもが大好きな、目に悪い色をした、極端な味の、高カロリーの、悪趣味すれすれの、おいしい体験である。

 西海岸というサイケデリック・ロック揺籃の地から現れたサイケデリック・ロック・バンド、フィーバー・ザ・ゴースト。骨太なガレージ感、圧巻のグルーヴ、酩酊感も十分(このライヴが楽しい→https://www.youtube.com/watch?v=s97ZqaFv-O0)、ここでも答えてくれているようにキャプテン・ビーフハートあるいはラヴといった西海岸の先達の影響を奥底にしのばせながら、ホークウインド的なスペーシーなプログレ要素、あるいはグラム・ロックのカブいたポップ・センス、そしてフレーミング・リップスやオブ・モントリオールのエキセントリシティを放射する……とにかく派手なエネルギーを充溢させた4人組である。

 それでいてチャイルディッシュなヴォーカル・スタイルをはじめとして、PVから一連のアートワークにいたるまで、幼形成熟的で得体の知れないキュートさが大きな特徴になっている。彼らの奇矯さの象徴たるこのヴォーカル=キャスパーには、近年のロック・バンドにおける「コレクトな感じ」──グッド・ミュージック志向で行儀のいい、あるいはファッショナブルにヴィンテージ・ポップを奏でる器用さといったものから程遠い、ひとつの業のようなものも感じるだろう。リズム隊が年長でテクニカル、シンセ・マニアがいるのもいいバランスだ。ショーン・レノンによって発見され、ウェイン・コイン(フレーミング・リップス)が入れ込んだというエピソードにもうなずかされる。

 さて、今回取材したのはベースのメイソンだが、じつにマインド・エクスパンデッドな回答を戻してくれた。キャスパー(オバケのあれ)ばかりではない、みながそれぞれに大らかな世界観を持っているのだろう。フィーバー・ザ・ゴースト、そのアンチ・ビタミン・カラーのサイケデリアは、2015年というタイミングにおいてはとくに美味に感じられる。召されませ。

■Fever The Ghost / フィーヴァー・ザ・ゴースト
テンプルズを輩出した〈Heavenly Recordings〉と契約したロサンゼルス出身の4人組バンド。2014年にデビューEP『クラブ・イン・ハニー(Crab In Honey)』をリリース。これまでザ・フレーミング・リップス、ショーン・レノンやテンプルズとツアーを周り、2015年のレコード・ストア・デイには、テンプルズとお互いの楽曲をカヴァーするスプリット・シングルを発売。そして同年9月、デビュー・アルバム『ジルコニウム・メコニウム』の発売が決定した。ラインナップはキャスパー(vocal /guitar)、ボーナビン(synth)、ニコラス(drums)とメイソン(bass)。

僕らに影響を与えたものはたくさんあるんだ。拡張現実、テクノロジーの発達、森、YouTubeのフード・レヴュー……

結成はいつで、どのような経緯で集まったメンバーなのでしょう? 年齢はみなさん近いのですか?

メイソン(bass):結成は2年半くらい前で、もともとはヴォーカルのキャスパーがひとりでシングルをいくつかレコーディングしたところからはじまった。その後いくつかの幸運な偶然が続いて、キャスパーとキーボードのボビーがいっしょにリハーサルをしたり、ショウで演奏するようになって、その少しあとに、僕らのプロデューサーでありゴッドファーザーのルーター・ラッセルが、ベーシストの僕(メイソン)とドラマーのニックをキャスパーに紹介したんだ。ニックと僕はそれ以前にも他のバンドでいっしょに演奏していて、いっしょにロサンゼルスに移ってきた。年齢は僕らのうち2人が30歳で、もう2人が23歳だから、少し離れているね。

西海岸はサイケデリック・ロックの揺りかごともなった土地ですが、実際に生まれ育った場所として、そうした影響の残る土地だと思いますか? また、自分たちの音楽性を決定する上で影響があったと思いますか?

メイソン:たしかにそういう面はあるし、僕ら自身も間違いなく西海岸出身のミュージシャンからの影響は受けていると思うよ。キャプテン・ビーフハートやアーサー・リーのラヴとか。でも僕らがどこで生まれたかに関わらず、そういった音楽に惹かれていたと思うし、それらが僕らが影響を受けた唯一の音楽ってわけでもない。僕らに影響を与えたものはたくさんあるんだ。拡張現実、テクノロジーの発達、森、YouTubeのフード・レヴュー……

(通訳)フード・レヴュー?

メイソン:うん、とくに「ゲイリーズ・フード・レヴューズ(Gary’s Food Reviews)」。ゲイリーは僕らバンドにとってのヒーローみたいな存在だよ。食べ物が好きだから観るというよりもゲイリーのレヴューの仕方が好きだから観るような感じさ。

あなたがたは、エキセントリックな雰囲気があるのに、とてもスキルフルなバンドだと思います。曲作りをリードしているのはどなたですか?

メイソン:曲作りのプロセスは、まずキャスパーが曲を書いて、バンドの他の全員にそのヴィジョンを共有する。そして僕らそれぞれが自分のパートを作って、曲が発展していくんだ。

視覚的な表現においても、斬新でありながら、ある意味では正統的なサイケの伝統を引いていると思います(“バーベナ/Vervain (Dreams Of An Old Wooden Cage)”など)。MVやアートワークのディレクションは誰が行っているのですか? また、その際にとくにこだわる部分や哲学について教えてください。

僕らの美学は、「何であれナチュラルに感じることをする」ってことだよ。

メイソン:誰かひとりがディレクションをしているというよりも、バンド・メンバー全員と、バンドのまわりに不思議と現れた人たちとのコラボレーションだよ。オリバー・ハイバートと弟のスペンサー・ハイバートとは人からの紹介で知り合って、それ以来いろいろなことをいっしょにやることができた。それと同じようにキャスパーはゲーム・デザイナーのテイト・モセシアンを家族ぐるみで子どもの頃からよく知っているんだけど、僕らの新しいアルバムのジャケットのアートはテイトが作ってくれた。そういうふうに僕らのまわりにはたくさん興味深い人たちがいて、僕らはいつもそういうまわりの人たちからインスピレーションを受けたり、コラボレーションしているんだ。僕らの美学は、「何であれナチュラルに感じることをする」ってことだよ。僕らが作る音楽、アート、着る服まで、どれも自由さの産物で、僕らは自分たちをひとつのスタイルやジャンルに縛ったりはしないんだ。表現の自由が僕らの哲学だよ。

ライヴ・ヴィデオなどでは、録音環境もあるのでしょうが、非常にガレージ―でラフなプロダクションが目指されているように感じます。対して、アルバムの方はクリアに整えられていますね。今作のサウンド・プロダクションについて、何か目指すところがありましたら教えてください。

メイソン:目指していたのは、僕らが自信を持って出すことができて、自分たち自身で聴きたくなるようなレコードだった。サウンドについて、バンド内でとくにはっきり「こういうサウンドにするべきだ」みたいな会話をしたわけじゃなくて、僕らが使ったスタジオや、制作に費やすことのできた時間といったいろいろなファクターが組合わさって、自然と彫刻が彫り出されるように、結果的にこのアルバムができ上がったんだ。

とはいえ、“サーフズ・アップ! ネヴァーマインド(Surf's UP!...Nevermind.)”などは絶妙にワイルドですね。エンジニアはどんな方なのでしょう?

メイソン:エンジニアはクリス・ステフェンって名前で、〈セージ・アンド・サウンド〉ってスタジオで仕事をしている。彼はキャスパーの父親と長いこといっしょに仕事をしていて、キャスパーともレコーディングをしたことがあった。すごくいいヤツで、パイレートって名前のすごく可愛い犬を飼っていて、その犬がいつもいっしょにいるんだ。それとヴィクター・インドリッゾ(キャスパーの父)も僕らのガイドになってくれたよ。

(通訳)ヴィクターがプロデューサー?

メイソン:うん、というか、プロデュースは基本僕ら自分たちでやったんだけど、彼は僕らのカウンセラー、ガイダンス、グル、友人としていっしょにいてくれたんだ。

僕らみんなきゃりーぱみゅぱみゅや(初音)ミクの大ファンなんだ。サウンド面でも、ヴィジュアル面でもかなり影響を受けているよ。

このアルバムの制作の進め方についても教えてください。

メイソン:制作のプロセスは曲によってかなりちがっていたよ。いくつかの曲は実際のスタジオの中でキャスパーが作りはじめて、他のいくつかはAbleton Live上で作りはじめて、そのあとスタジオに持ち込んでバンドが加わって、さらに他の曲はバンドでライヴ・トラックとして生まれて、いったんそれを破棄して、それぞれのメンバーが別々に自分のパートを録音して作られた。それぞれの曲に必要な方法で形作っていったんだ。レコーディングのプロセスは全部で18ヶ月くらいにわたったよ。ときにはまったくレコーディングをしない時期があったり、逆に一週間毎日レコーディングを続けたり、スケジュールや時間が許すときに断続的にレコーディングを進めたんだ。

“1518”はドラムマシンを用いてダンス・ビートが敷かれていますね。ファンキーですが、曲調もくるくるとめまぐるしく表情を変えていきます。どんなプロセスででき上がった曲なのでしょう?

メイソン:“1518”にはドラムマシンも少し使っているけれど、大部分は生のドラムの録音なんだ。ニックのドラムに加えて、ヴィクター・インドリッゾの演奏するコンサート・タムもレコーディングに入っているよ──コンサート・タムを演奏できるとヴィクターはすごくハッピーになるから、少し彼に演奏する機会をあげる必要があったのさ。もともとキャスパーが以前に自分の部屋でレコーディングしたセッションからのステム・ファイルがあって、それを僕の家でドラマーのニックに聴かせたんだ。そのとき家の上階の住人からストラトキャスターを買って、僕らのヴァージョンのナイル・ロジャース・サウンドを作ろうとしたんだ。その後にそれを〈セージ・アンド・サウンド〉スタジオに持っていって、他のシンセサイザーのトラックや、ヴォーカルの大部分を加えていった。だから3つのちがったレコーディング環境の組み合わさった曲だと言える。

“イコール・ピデストリアン(Equal Pedestrian)”も非常に自由です。ヴォーカルにはオートチューンまでかかっていますね。とても意外な展開でもありましたし、あなたがたが柔軟なバンドだということもわかりました。少しJ-POP的であるとさえ思ったのですが……

メイソン:そう言ってくれてすごくうれしいよ! 僕らみんなきゃりーぱみゅぱみゅや(初音)ミクの大ファンなんだ。きゃりーぱみゅぱみゅはプロダクションも素晴らしいし、ミュージックビデオも最高で、サウンド面でも、ヴィジュアル面でもかなり影響を受けているよ。僕らのお気に入りのミュージックビデオのいくつかはきゃりーぱみゅぱみゅのビデオさ。

Massiveは複雑なシンセサイザーだから、たとえばキャスパーが「ボビー、フワフワのピンクのスパイダーがたくさん空から降ってきて、地上2フィートのところに着地して、その下を屈んで歩かなきゃいけない、みたいなサウンドが欲しいんだけど」とか言ったとしても、それに対応することができるんだ。

これにヴィデオをつけるとすれば、どんな作品にしますか?

メイソン:この曲のヴィデオはほぼ間違いなく実際作ることになると思うよ。できればきゃりーぱみゅぱみゅのMVの監督に作ってもらいたいな。もしもこのインタヴューを読んでいたら、ぜひお願いしたいね!

ムーグも非常に大きな役割を果たしていると思います。あなたはシンセにも好みがありますか?

メイソン:僕らのキーボーディストのボビーはムーグのLittle Phattyを使っていて、このアルバム中の曲にもかなり使われているよ。それとネイティヴ・インストゥルメンツのデジタル・シンセであるMassiveもかなり多用しているよ。ボビーはサウンドデザインのエキスパートで、MassiveはLittle Phattyよりずっと複雑なシンセサイザーだから、それを使って、たとえばキャスパーが「ボビー、フワフワのピンクのスパイダーがたくさん空から降ってきて、地上2フィートのところに着地して、その下を屈んで歩かなきゃいけない、みたいなサウンドが欲しいんだけど」とか言ったとしても、それに対応することができるんだ。

デヴィッド・ボウイとマーク・ボランだとどっちに共感しますか?

メイソン:うーん、たぶんデヴィッド・ボウイかな。彼の方がマーク・ボランより宇宙が好きだと思うから。

シド・バレットとジム・モリソンなら?

メイソン:間違いなくシド・バレット。彼の方が自転車に乗るのが好きだから。レザー・パンツを履いてちゃ自転車に乗れないもの。

(シド・バレットとジム・モリソンなら)間違いなくシド・バレット。彼の方が自転車に乗るのが好きだから。レザー・パンツを履いてちゃ自転車に乗れないもの。

(通訳)ジム・モリソンは何に乗ると思いますか?

メイソン:彼はたぶん虎から生えた女性の頭に乗るね。

ニンジャとサムライなら?

メイソン:ニンジャとサムライ? いいね、この質問。ニンジャかな、サムライはもっとタフガイっぽいっていうか、英語で言う「bro」って感じがするけど、ニンジャはシャイだと思うから。ニンジャはきっと感情面が発達していると思う。

アリエル・ピンクは好きですか?

メイソン:うん、アリエル・ピンクは好きだよ。ときどきフランク・ザッパの、まるで子どもみたいな性格を思い起こさせるところがあってさ。新しいアルバムはいつも聴くといい時間が過ごせるよ。

現実と非現実というふうに世界を分けるのは馬鹿げていると思いますか?

メイソン:現実と非現実を分けずに考えるのは不可能だと思うよ。現実っていうのはそれを認識する個々人や存在ごとに分裂していっているから、現実と非現実で世界を分けるのは自然な認識で、馬鹿げているとは思わないな。そしてテクノロジーの面について言えば、僕らの世界の上によりよい世界が構築されて、そこに行けるようになるといいなと思うよ。

マインド・エクスパンディングとは、いまの世界を生きていくのに有効な考え方だと思いますか?

メイソン:マインド・エクスパンションはいつでも有効な考え方だよ。必ずしも達成されなければいけないものだとは思わないけれど、マインドを発達させていくことこそが、人間のもっともよい資質のひとつだと思うし、それをやめてしまったら(人間)みんながストップしてしまうよ。いまの時代だけじゃなくて、これまでも、人類の進歩の途上から現在に至るまで、ずっと人間はマインドを成長させてきたと思う。いつか『スター・トレック』の世界が実現したらいいなと思うんだ。すべてが受け容れられて、すべてが与えられて、みなが芸術や科学や探求にフォーカスする世界。それがいちばん楽しいことだと思うし、人々はそういうことを十分していないと思うからさ。

マインド・エクスパンションはいつでも有効な考え方だよ。マインドを発達させていくことこそが、人間のもっともよい資質のひとつだと思うし、それをやめてしまったら(人間)みんながストップしてしまうよ。

アニメやゲームが好きなんですか? 好きな作品を挙げてもらえませんか?

メイソン:うん、アニメやゲームは僕らみんな好きだよ。『アドベンチャー・タイム』とか、『マインクラフト』なんかがお気に入りかな。

日本の作品で好きなものがあったら、ジャンルを問わず教えてほしいです。

メイソン:いろいろあるけど、さっきも言ったようにJ-POPは僕らみんな大好きだし、アニメだったら『(新世紀)エヴァンゲリオン』とかにはかなり影響を受けていると思う。

(通訳)『エヴァンゲリオン』はアメリカでも広く知られているんですか?

メイソン:うん、かなり有名だよ。もちろんメインストリームとしてのレベルで有名なわけではないけど、サブカルチャーとしては有名だと思う。

いまおもしろいなと思う同時代の音楽があれば教えてください。

メイソン:アワー・オブ・ザ・タイム・マジェスティ・トゥエルヴ(Hour Of The Time Majesty Twelve)っていって、略してHOTT MTっていうバンドがいるんだけど、彼らはクールだよ。あと、ヴァイナル・ウィリアムス(Vinyl Williams)も。彼はもうすぐアンノウン・モータル・オーケストラ(Unknown Mortal Orchestra)のサポートをすることになっているんだけど、アンノウン・モータル・オーケストラも好きだよ。HOTT MTとは、他の僕らの友だちのバンドも含めて12月にいっしょに大きなショウをしたいと思っているんだ。同じようなラインアップで日本にも行けたら最高だね!

interview with Darkstar - ele-king


Darkstar
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 いったい、ダークスターは今回どれほど重く峻厳なテーマに向いあったというのだろうか……? 何も知らずに今作の詞に向かいあうと、「運命」「誓い」「多数決では少数派に刑が」「引きずる前科」「運命が姿を偽っている」といった、ひとつひとつの言葉の負荷の大きさに驚く。音自体は、むしろキャリアの中でもっともミニマルな印象を受けるアルバムだから、なおさら面喰らってしまう。

 それでおぼつかない質問を投げかけてしまったが、答えは明瞭だった。これは「政治的な意味合いがこめられたレコード」──今年5月に行われた英総選挙とその結果に大きく影響され、また、それへのひとつのレスポンスとして提示されたアルバムなのだ。実際に“カッツ”では地元自治体の予算縮小アナウンスが用いられたり、“デイズ・バーン・ブルー”など保守党の公式カラーを引いた皮肉が加えられたりと、事情に明るいひとには明瞭に察せられたことだろう。ちょっと反則だけれども、そのあたりの補足として先に公式インタヴューから少し引用させていただきたい。

レコードの中で聞こえるいろんな声、さまざまな人々の発言は、基本的に僕が3ヶ月にわたってハダースフィールドの地元住民を相手に行った、一連のインタヴューから生まれたものなんだ。

 「今回の僕たちは、ロンドンとヨークシャーのカントリー・サイドを行き来していたね。かなり何度も往復したし……レコードの中で聞こえるいろんな声、さまざまな人々の発言は、基本的に僕が3ヶ月にわたってハダースフィールドの地元住民を相手に行った、一連のインタヴューから生まれたものなんだ。その取材を通じて彼らの持つ視点や人生観を知ることができたし、そこからこのレコードの屋台骨、背骨みたいなものができていった。だから僕たちは、ある意味彼らとのインタヴューをこの作品のコンセプチュアルなガイドラインとして使ったんだ」

 この発言の主であるジェイムス・ヤングは、前作を発表した後、Youtubeで視聴したドキュメンタリー番組からインスピレーションを得て、実際に生きている人びとの人生の断片をレコードに挿入していくことを思いついたと言う。そして、「他の人間達の持つ視点、首都ロンドンを生活基盤にしていないような、イギリスの他のローカルなエリアで暮らす人たちの声に耳を傾けてほしいんだよ」……インタヴューというかたちでそれを採音し、そのプラットフォームとしてアルバムを利用したのだ、と。

彼らのインタヴューでの質問は、「英国の現状をどう思いますか?」というような大上段に構えたものではない。「あなたの夢は何ですか?」「くつろいでリラックスしたい時にあなたはどんなことをしますか?」「誰か好きな人はいますか?」といった、とてもささやかなものだった。人がどんなふうにそれぞれの生活と人生に向いあっているのか、その営みについてインタヴューし、アルバムに反映させる。それがいまのダークスターにとってよりリアルな方法だったのだろう。そして『フォーム・アイランド(Foam Island)』というタイトルが生まれた背景には、こんな思考の過程がある。

首都ロンドンを生活基盤にしていないような、イギリスの他のローカルなエリアで暮らす人たちの声に耳を傾けてほしいんだよ。

「それは僕達が孤立した空間、社会のさまざまな場所にちらばっている空間に眼を向けたことから生まれたアイデアで。だから、人々、あるいはいろんなコミュニティが、いかに自分たち以外の人間や他のコミュニティのことをいっさい知らないままで生存していくことができるのか……そしてどれだけコミュニティ群が互いに孤立した状況になることがあり得るのか、そうした事柄を考えていたんだ。で、僕たちはそうした意味合いを包括するような何か、定義するような言葉を探していて、そこで『Foam(泡)』という言葉と、泡がどんなふうに生まれるかに思い当たった」

それぞれの色やサイズを持って、まさに「かつ消えかつ結」(芭蕉)ぶうたかたの泡。同じものはなく、そしてそれは、くっついたり離れたり、増幅したり消滅したり、つねにかたちを変えつづける──「とにかく、うん、このタイトルは基本的に、『この国は何千・何万もの泡から成り立っている』ということ、それを表現したものなんだよ」。

人びとの生活や思いをたくさんの泡になぞらえる、大らかでロマンチックな視点から、英国のいまにアプローチしようとしたアルバムだ。政治的なメッセージを直接歌うという方法ではなく、むしろアルバム自体がドキュメンタリー・プロジェクトのいちアウトプットとして機能しているように見えるところなどは、彼らなりに誠実に状況と向かいあう方法が模索されていることが感じられる。

このタイトルは基本的に、『この国は何千・何万もの泡から成り立っている』ということ、それを表現したものなんだよ。

 それにしても、今作ではあらためてダークスターというバンド(今作では、コア・メンバーの二人体制に戻っているので、ユニットというべきだろうか)の幅を感じさせられた。そもそもベース・ミュージックのシーンから登場したように言われるが、彼ら自身はそうしたシーンになじみが深いわけではない。現場での流行や空気の変化を把握しているわけでもなく、むしろエレクトロニックな方法を用いるサイケ・バンドとさえ形容してしまってもいいかもしれない。弊誌の前作レヴューなどは、比較対象がビートルズだ。その意味では非常にマイペースに自分たちの表現方法を模索し、広げてきたアーティストたちであり、クラブ寄りなのかロック寄りなのかといったような線引きや人脈・樹形図をあたうかぎり無視してきた存在でもある。

もちろん、デビュー・アルバムをリリースした〈ハイパーダブ〉も、前作と今作をリリースする〈ワープ〉も、自由で大らかな実験精神を持ったレーベルであって、これまでもこうした境界において多くの才能をピックアップしてきた。なんとなく流れで作らねばならなかったセカンド、サード、といったものとはほど遠く、一作ごとに確実に何か自分たちにとって新しいことを掴もうとするダークスターは、今作ではかくも強靭なコンセプト性を手にしている。OPNからは何の影響も受けていないというが、ジャンルのモードにおいて先鋭性を競うのではなく、コンセプチュアルな軸を立てて、それに沿って自由にフォームを獲得していくあり方は、彼やコ・ラなど〈ソフトウェア〉の周辺とも大いに共鳴するものだ。そして、今回はブライアン・イーノが彼らなりに、愛らしく参照されている。そのあたりも彼らの一作ごとの前進だ。デビュー作からのもっとも大きな変化として「向上」「過程」「コンセプト」の3つを挙げるその矜持は本当によくわかる。

ただし、「レコードを聴く前に作品の前情報を知ってしまうと、インフォ欄には『政治的な意味合いを込めた作品云々』なんて書かれるわけだよね」「『労働党に投票すべき』とか『保守党なんて蹴散らせ』みたいな感じの、そういう意味で過度に政治的なレコードじゃないんだよ」など、本人たちにはおおっぴらにテーマを打ち出す意向はない。なのでこのインタヴューはあくまで副読本、聴いたあとの付録ということでひとつ、お読みください。

■Darkstar / ダークスター
UKを拠点に活動する、エイデン・ウォーリー、ジェイムス・ヤングによるエレクトロニック・ユニット。初期のグライムやダブステップなどからの影響を感じさせる折衷的なサウンドが特徴であり、〈ハイパーダブ〉からリリースされたシングルで注目を集める。デビュー・アルバム『ノース』(2010)と〈ワープ〉移籍後にリリースされた『ニューズ・フロム・ノーウェア』(2013)の2作は国内外の各誌年間ベスト・アルバムに名を連ね、日本においても〈SonarSound Tokyo〉や〈フジロック・フェスティバル〉へ出演するなど存在感を高めている。2015年9月、サード・フル・アルバム『フォーム・アイランド』をリリースした。

音楽シーンのトレンドをほぼ鑑みない作品になっていますね。音楽以上にメッセージ性を優先するような印象さえあります。歌詞からの類推になりますが、何か具体的な状況に危機を感じているのですか? それとも人類の業や罪ともいうべき壮大なテーマに向き合っているのでしょうか?

ジェイムス・ヤング(以下JY):そうだね、今回はかなり歌詞を大事にしているんだ。世の中で起こっているチャンスの減少、若い人への理解の無さ、政府への失望、型にはまったもの以外受け付けないこの世の中の流れに憤りを感じていることを表現したつもりさ。

たとえば冒頭の“ベーシック・シングス(Basic Things)”“ア・ディファレント・カインド・オブ・ストラグル(A Different Kind Of Struggle)”などで、ときどき挟まれるリーディングは何かの引用かサンプリングですか?

JY:これはウェストヨークシャーで若者をインタヴューしたときの言葉をAbletonに落とし込んだんだ。サンプリングでもなんでもないよ。僕たちが録音したものさ。

“ピン・セキュア(Pin Secure)”などに用いられている「You」とは誰(または何)を示しているのでしょう?

JY:う~ん……。メタフォースだったり、世代だったり、若さとか間違った判断とか、特定のものではなく漠然としたものを指しているかな。

“ベーシック・シングス”のようなサウンド・コラージュは、どこかモンタージュ的な、かすかな歪みや違和感を残すようにつくられていますね。この感触自体はアルバム全体にもこれまでの作品にも感じることですが、何かバンドの精神構造と関係があるのでしょうか。それとも何かしらの啓発の意図がある?

JY:君が言うとおりたしかにサウンド・コラージュのような作品だとは思う。この曲もウェストヨークシャーで若い人とたくさん話したことを録音して、彼らの感じていることや思っていることを反映させた結果サウンド・コラージュ的な感じになったんだと思うんだ。

冒頭をひとつの導入として“インヒアレント・イン・ザ・ファイバー(Inherent in the Fibre)”へとつながる流れが非常に美しいですね。ある意味ではこの曲がアルバムの1曲めとなると思いますが、それが6/8拍子だというのは象徴的で、しかも挑戦的だと思います──直線的なビート構築を避けたり、ポップ・ソングとしてのストレートさをいったん脇に措いているという意味で。これはどのように生まれた作品なのですか?

JY:これはスタジオで最初にデモができ上がったんだ。シンプルでいいアイディアが元にあって、そこにストリングスとかコーラスを乗せて完成させていった感じだったかな。

今作で最初にビートやダンス性を感じるのは“ストーク・ザ・ファイア(Stoke The Fire)”になるかと思います。その次は“ゴー・ナチュラル(Go Natural)”。ですが、“ストーク~”ではサイケデリックでアンビエントなブレイクが入ったり、“ゴー~”ではピッチカートによるコミカルな演出があったりと、リスニング性においてリッチな作品になっています。曲のアイディアは誰が持ってきて、どう肉付けしているのですか?

JY:とてもダンサブルで情熱的かつビートの利いた曲を作りたいと思ってでき上がった曲だね。ファンク要素も乗せてかなりダンサブルな仕上がりになって満足しているんだ。

最近のお気に入りはディアンジェロだね。『ブラック・メサイア』は本当に最高の作品だと思うよ。

ベース・ミュージック的な性格もあったりなど、あなたがたはダンス・ミュージックのフォームを持ちながらも、とくにダンスを意識しているバンドではないと思います。〈ハイパーダブ〉や〈ワープ〉と自分たちとの接点をどのように考えていますか?

JY:〈ハイパーダブ〉〈ワープ〉には感謝しているんだ。彼らとはとても興味深い関係性だと自分たちでも思うよ。君が言ったように僕たちはダンス・ミュージックだけじゃなくいろんなジャンルの音楽をやるからね。でもそんな僕たちの音楽性を理解してくれて、尊重してくれる彼らには本当に感謝しているし、今後もいい関係性を続けられると思っているよ。

“スルー・ザ・モーションズ(Through the Motions)”などには、〈Morr Music〉などのエレクトロニカ・ポップを想起させられました。奇妙なサイケデリアの中に温もりある電子音が感じられますね。音声というレベルで機材やソフトなどにこだわりがあれば教えてください。

JY:うーん、とにかくいろいろ使っていて……。Abletonをはじめ、モジュラー・シンセとかかな。

R&B的な要素も感じられますが、いわゆる「Alt-R&B」と呼ばれるような音楽で興味を持って聴いておられるものがありましたらお教えください。

JY:いっぱいいるよ。最近のお気に入りはディアンジェロだね。『ブラック・メサイア』は本当に最高の作品だと思うよ。結構US系のを聴いていたけど名前がぜんぜん思い出せないなぁ。

“ティリーズ・テーマ(Tilly's Theme)”の楽曲構築にはなにか特別な計算やコンセプトがあるのでしょうか? どのように作っていった曲なのか教えてください。

JY:この曲はウェストヨークシャーで出会った16歳の女の子をモデルにして書いた曲なんだけど、ストリングスを使ってオーケストラの要素を盛り込んだ曲だね。

OPNの音楽はどう思いますか? 影響を受ける部分がありますか?

JY:ないね。何も言うことはないよ。

この曲(“Tilly's Theme”)を作るときはブライアン・イーノみたいなものを作りたかったんだ。他にもアクトレスとかオーケストラものとかいろいろ聴いていてそこから影響されている部分もあると思う。

ストラヴィンスキーなど20世紀黎明の音楽からの影響はありますか? また、オーケストラのアレンジや音源を取り入れることについて、なにかきっかけがあったのでしたらお教えください。

JY:うーん、まぁそうだね。この曲を作るときはブライアン・イーノみたいなものを作りたかったんだ。他にもアクトレスとかオーケストラものとかいろいろ聴いていてそこから影響されている部分もあると思う。

あなた方は何年生まれですか? 未来よりも20世紀という時代に憧れる思いが強いですか?

JY:未来とか過去とかに憧れることは何もないよ。僕はいまがいちばんいいと思ってるし。

ラストの曲も独特のリズム感で、少しバルカン風の異国情緒も感じられます。詞の内容とのリンクはありますか? また、今回こうした異国的な音楽性がとりいれられているのはどうしてなのでしょう?

JY:どうだろう。アートっぽい仕上がりにしたいと思って作った曲なんだけど、ストリングスのアレンジがもしかしたら異国的な雰囲気をかもし出しているかもね。

自分たちを無理やり何かのジャンルに押しこめて説明するとすれば、何と答えますか?

JY:この質問には答えたくないね。

デビューから5年になりますね。最初のアルバムから環境としてもっとも大きく変わったことはどんなことでしょうか?

JY:僕は3つあると思ってて、「向上」「過程」「コンセプト」、この3つにおいてとても変わったと思ってるよ。


【Darkstar来日公演】
2015/10/11(日)@WWW渋谷
前売¥4,000(スタンディング・税込・1 ドリンク別)
OPEN/START 24:00~
info:SMASH 03-3444-6751 https://smash-jpn.com

 安保法制をめぐって、国会前デモが盛り上がりを見せている。納得できないことがあれば声をあげるべきだし、デモなんてどんどんやればいい。それ自体は健全なことだ。反対派の議論に対する批判はありうるとしても(僕自身、今回の安保法案に対しては反対の立場である一方で、「戦争法案」というスローガンには批判的な気持ちがある)、デモをすること自体は批判されるべきではない。


Sylvia Striplin
Give Me Your Love

Pヴァイン

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田我流
STRAIGHT OUTTA 138 FEAT. ECD

MARY JOY / JET SET

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ECD
いるべき場所

メディア総合研究所

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 さて今回、SEALDsをはじめとして、若い世代が声をあげたことが注目されている。特徴としては、従来の政治運動と比べてノリがより音楽的になった、ということが挙げられる。ライムスター宇多丸は自身のラジオで、国会前デモのシュプレヒコールを「日本語ラップ以降」だとしていた。僕自身、実際にデモに行ったとき、言葉の乗せかたがオフビート気味で、その点に「日本語ラップ以降」感を覚えたのはたしかだ。具体的に言うと、裏から入る「民主主義ってなんだ!」と「安倍はやめろ!」というシュプレヒコールが、すごく「日本語ラップ以降」的だと思った。あるいは、僕が行ったときのデモでは、シルヴィア・ストリプリン“ギヴ・ミー・ユア・ラヴ”が流されていたが、この曲はヒップホップの定番ネタとして有名なディスコ・クラシックである。さらに言えば、いまではすっかり定着した感のある「言うこと聞かせる番だ、俺たちが」というかけ声は、ECDが、田我流による反原発ソング“Straght Outta 138”に客演したさい披露したパンチラインである。このように、国会前デモでは、ヒップホップのマナーが多く意識されていた。

 ところで、この「言うこと聞かせる番だ、俺たちが」というラインだが、ECDはそれ以前、「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」というリリックを書いている。というのも、2003年、渋谷でイラク戦争に反対する大規模なサウンド・デモがおこなわれたさい、ECDは「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」というデモ参加者の声を受けて、即日“言うこと聞くよな奴らじゃないぞ”と題された曲を発表した。朱里エイコの曲に合わせてラップした“言うこと聞くよな奴らじゃないぞ”は、のちに7インチとCD-Rのかたちで自主制作され、円盤などで売られることになる。リリックの出自、トラックもろ使いという形式、流通の形態。どれをとってもオルタナティヴな経済圏を体現する、素晴らしい名曲だ。そしてこの曲が、2000年代後半、高円寺界隈のサウンドデモのアンセムになっていき(この経緯については、ECDの音楽的自伝『いるべき場所』を参照のこと)、震災後の“Straight Outta 138”において、「言うこと聞かせる番だ、俺たちが」と言い換えられていく。現在国会前で叫ばれる「言うこと聞かせる番だ、俺たちが」は、このように10年以上のときを経てのものである。本人の口を離れて、人々に口ずさまれながら生き延びていく言葉。個人的には、ラップの言葉とは、そういうものだと思っている。だから、とくに年長者が、元ネタを知らないだろうままECDのパンチラインを叫んでいるのを見ると、僕なんかは、日本語ラップのファンとして感慨深くなったりする。このように、現在の国会前デモは、確実にここ10年くらいのデモの蓄積がある。現在の国会前デモは、確実に、渋谷のサウンドデモや高円寺のサウンドデモ以降のものとしてある。宇多丸が指摘する「日本語ラップ以降」のシュプレヒコールは、一方で、そのようなサウンドデモの水脈から派生したものである。

 とは言え、「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」から「言うこと聞かせる番だ、俺たちが」への推移には、大きな態度変更があるとも感じる。政治学者の栗原康は、2012年の官邸前デモについて、興味深い感想を書いている。栗原によれば、官邸前デモは行儀がよすぎるみたいだ。

 たぶん、こういうことなのだろう。官邸前デモは、毎週のようによびかけられている。主催者はひとを大量動員して、なんどもなんども首相や議会に圧力をかけたい。そのためにはデモ参加者はおとなくして、問題をおこさないようにしなくてはならない。つぎがなくなったらこまるからだ。とりわけ、原発という生死のかかった問題では、ぜったいにそうしてもらわなければこまるというのだろう。有効な方法だ。でも、そのために、ひとをモノみたいにあつかってもいいのだろうか。これでは、震災直後に政府がやっていたこととかわらないのではないだろうか。しかも、そうおもったとたん、またスピーカーから声がきこえてきた。「暴力行為はやめてください」。ちくしょう。ふと、ため息をついて空をみあげると、ポンポンとペットボトルが宙をまっているのがみえた。警官や主催者のほうにとんでいく。わたしは率直にこうおもった。ざまあみやがれ。(『現代暴力論』)

 たしかに似た印象はある。素人の乱が中心になっていた高円寺のデモは、もっと雑多でわけがわからなかった。その理論的支柱には、いくぶんか単純化されたかたちかもしれないが、「マルチチュード」(ネグリ&ハート)という概念があった印象がある。それに比べると、現在の国会前デモは方向性がたいへん明確である。両者の違いは、引用部の栗原の言葉を借りれば、「動員」への意志の有無ということになろう。高円寺のデモにおいては「動員」はありえなかったが、国会前デモにおいては、それなりの「動員」および政治への働きかけが目指される。つまり、高円寺デモのアンセムであった「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」が、各々が無方向的に勝手にふるまうことを目指すのに対して、国会前デモで叫ばれる「言うこと聞かせる番だ、俺たちが」は、ある方向性に対して自らが「動員」をかけることを目指すのだ。この「動員」性をどう考えるかについては、デモ参加者のなかでも立場が分かれるかもしれない。この変化は、まあ状況的には、当然と言えば当然なのだろう。栗原が言うように、勝手に踊っている場合ではなく、ある程度の意見集約をして政策に反映させなければいけない、「動員」して制度化しなければならない、ということなのだろう。たしかに震災後とは、そういう時代である。ちょうど水越真紀がSEALDsについての文章を書いているが、そこでのキーワードを借りれば、「連帯を恐れず」という気分が、国会前デモにはたしかに存在する。

 個人的に興味深いのは、この「動員」の性質が、音楽的にあらわれているのではないか、ということである。ECDはかつて、サウンドデモで使用される音楽について、「4つ打ちは制度的だから、フリージャズが良い」と言っていた。時期的には「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」の頃である。高円寺デモというのは、そういうECD的な意志が反映されてか、音楽ジャンルからしてすでに雑多であった。DJブースからかかっていた音楽は、覚えている限りでは、トライバル系のヒップホップ(フィラスティンやザ・バグ、M.I.Aなどがかかっていた)、RUMIやMSCなどメッセージ性の強い日本語ラップ、ときどきデトロイト系のハウスやテクノあたりだったか。そして、そのうえにサックスや打楽器などの鳴りものが入って、結果的にフリージャズのような響きを獲得していた。ハードコアのバンドも多くいた。総体として眺めると、とてもユニークであった。ここで重要なことは、リズムが単一でないことである。参加者は、思い思いのリズムに乗ったり乗らなかったりしながら、「マルチチュード」感を体現していた。あるときモーニング娘。“LOVEマシーン”が流れて、一気にシラけていたことも強烈に思い出すが、いずれにせよ、ただ盛り上がればいいわけではなかったと思う。雑多であることを維持し、「動員」的にならないことが、たぶんあの場では重要だったのだ。複雑なリズムの音楽たちは、そのなかで要請されていたはずである。したがって、これは想像するしかないが、もし高円寺の路上デモでシルヴィア・ストリプリンが流れていたら、そのリズムのシンプルさに、やはり少しシラけたのではないかと思う。あの場はやはり、ティンバランド以降のサウンドでないとしんどかったのではないか。


V.A.(東海林太郎、上原敏、近江俊郎、藤山一郎、市丸etc)
みんな輪になれ ~軍国音頭の世界~

ぐらもくらぶ

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 そもそも、音楽と「動員」というのは、切っても切れない関係である。僕自身もジャケットとライナーノーツを書いたCDに、『みんな輪になれ! ~軍国音頭の世界』(監修:辻田真佐憲、ぐらもくらぶ)というのがあるが、「みんな」で拍子を合わせて、同じ振り付けを踊る音頭という形式は、非常に「動員」性の強い音楽であり、それは軍歌にも利用された。軍国音頭ほど露骨にイデオロギッシュではないが、70年代後半の日本のディスコも「動員」性が強い。その証拠に、音頭歌謡とディスコ歌謡のジャケット裏面には、同じような踊り方指南が付されている。オンビートの退屈な振り付けである。このように、日本のダンス音楽は多くの場合、「みんなで踊る」という「動員」のものとしてあるのだ。この性格は、現在のオタ芸やヴィジュアル系における振り付け、あるいは“恋するフォーチュン・クッキー”にいたるまで続いている。高円寺デモにおいては、おそらく、この音楽の「動員」の性格を極力退けようとしていた。いや、音楽を流して高揚感を得るところまでは同じなのだが、その高揚感が安易な一体感になることには警戒していたように思う。興味深いことに、栗原が参照する大杉栄は、「音頭取りの音頭につれて、みんなが踊って」いることを批判して、「みんなが勝手に踊るけいこをしなくちゃならない」と主張している(大杉栄「新秩序の創造」)。だとすれば、栗原の不満は、デモから「みんなが勝手に踊る」という性格が抜け落ちてしまったことによるのだろう。実感としては、理解できる。

 冒頭で書いたとおり、現在の国会前デモは「日本語ラップ以降」とされる。ポピュラー音楽史的に言うと、ヒップホップはディスコのアンチとして出現している。日本でもそれは同じで、決まった振り付けとお約束の選曲にしばられた、ディスコ的なハコDJのアンチとして、気ままに踊らせるクラブDJが登場した。したがって、現在の国会前デモは、高円寺デモほど無方向ではないにせよ、振り付け的「動員」に対してはノーを突きつけていると言える。音楽性の部分で。おそらく国家前デモにおいては、この、振り付け的「動員」と高円寺的無方向との、ちょうどあいだを取るようなバランス感覚が重要だろう。たしかに4つ打ちは制度的だが、ラップはその制度のうえで個性ゆたかなフロウを獲得し続けている。「動員」の性格はあるが、音頭や往年のディスコほど一挙手一投足を統制しようとしていない。シルヴィア・ストリプリンの曲に乗せて、「日本語ラップ」以降的なシュプレヒコールを上げる、というバランス感覚は、その意味でクレバーであり現代的である。政治への働きかけを目指して、それなりに一丸とならなくてはいけない国会前デモにおいては、ひたすら過激で破壊的な音楽が周到に避けられている。多くの人たちを巻き込みつつ、だが安易な「動員」も避けつつ、ぎりぎりシュプレヒコールとして成立するくらいのサウンドと言葉。これこそが、国会前デモでは求められていたものだ。「日本語ラップ以降」とは、そういうバランスである。ちなみに言えば、デモの中心こそシュプレヒコールがあがるが、周縁ではちんどんやパーカッションなど雑多なサウンドが鳴っていたりもする。良くも悪くも、一枚岩ではないことは強調しておきたい。

 ディスコからヒップホップへ。振り付けからダンスへ。音頭からラップへ。現在の国会前デモを音楽的な面から見ると、誰もが参加できる制度を敷きつつ個性を尊重する、という思想が横たわっているように感じる。そこでは、制度と個性を共存させようとする態度が大事だ。というか、制度こそが個性を担保する、という立場かもしれない。なるほど、SEALDsの面々が、かつて新左翼から攻撃された丸山真男を選書リストに入れている理由がわかる。僕自身は、「高円寺一揆」と名指された合法デモで目撃した、あの知性と創造性が、いまだに忘れられないところがある。しかし、現在の状況を考えたとき、安保法案をめぐる国会前デモが、いかに頭と身体を使ったものであるか、とも思う。なにより、政治的な歌詞を歌っていれば政治的なのだ、というレヴェルをはるかに超えて、音楽のありかたそのものが、結果的に政治性を体現しているという状況に、いま・ここを生きる音楽ファンとしては、刺激を受ける。音楽が鳴る場所は、イヤフォンやコンサート会場だけではない。いたるところだ。

 ここまで書いて思い出したが、高円寺デモでは、じゃがたら“でも・デモ・DEMO”もアンセムになっていた。反復するドラムとベースに鋭角的なギター、無方向に飛び散るサックス。この曲は、サウンド的には、ファンクとパンクとフリージャズのハイブリッドだ。僕はDJで、“でも・デモ・DEMO”からハウスにつなぐことが多い。4つ打ち対応可能で、かつ雑多なサウンドが入り乱れる“でも・デモ・DEMO”はあらためて、社会を問い直すさいのサウンドトラックとしてすぐれていると思える。歌詞でなくサウンド的に。デモは、社会に対する、逆接であり、示威であり、試作なのだ。

櫻井響 - ele-king

My Best Voice Record

Special Talk:OLIVE OIL×K-BOMB - ele-king


OLIVE OIL
ISLAND BAL

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OLIVE OILが7月にBLACKSMOKERから発表したソロ・アルバムのタイトル『ISLAND BAL』は、「島の居酒屋」とでも直訳できるだろうか。このOLIVE OILとK-BOMBという盟友同士の対談を読むと、「島の居酒屋」というタイトルがしっくりくるように思えてくる。もちろんOLIVE OIL×POPY OIL兄弟が徳之島出身で、福岡在住である事実とも関係している。

  だが、「島の居酒屋」がしっくりくるのはそれだけではない。OLIVE OIL×POPY OIL兄弟にしろ、K-BOMBにしろ、旅芸人のように全国津々浦々を渡り歩き、各地のありとあらゆる“シマ”での壮絶なライヴと、変態、変人、強者たちとの交流、そして連日の豪快な遊びを通じてセンスと感性と変態性にさらに磨きをかけ、それらを原動力に大量のビートやラップ、映像や絵を、まるでメシを食い、酒を飲み、セックスをし、風呂に入るのと同じような感覚で日夜吐き出していっているようだ。

  『ISLAND BAL』はそういう彼らの交流と日常的実験のレポートだ。それゆえに音と生活の距離がとても近く感じる。ビート集的側面が強いものの、OLIVE OILは、OMSB、K-BOMB、FREEZE、KOJOE、5lackといった、長年親交を深めてきた全国各地のラッパーの既発のヴァースと新たなビートを組み合わせ、再構築することで最新のラップ・ミュージックを作り上げてもいる。また、OLIVEが今年、金沢で出会ったaddginjahzzというグループのラッパー二人をゲストに招いている。

  音と生活の距離が近い、つまりここで聴ける“肉感的なビート”は、本作のライナーで白石裕一朗(AZZURRO)氏が書いている通り、OLIVE OILが2011年からメインの制作機材をNATIVE INSTRUMENTSのMaschineに変えたことも大きく関係しているのだろう。ジャケットのコラージュは、KILLER-BONGとPOPY OILの合作によるものだ。

  さて、長年の付き合いとなるOLIVE OILとK-BOMBだが、おそらくこれほどまとまった分量の対談記事は初公開と思われる。対談とはいえ、この二人の対話である……まずは恒例となる二人の出会いのエピソードから訊いた。POPY OIL、JUBEも同席して行われた、彼らのはちゃめちゃで、ルーディで、時に驚くほど核心をつくトークをお送りしましょう。

福岡の焼き鳥屋では会計の金額がすごいことになってた。──OLIVE OIL

金の使い方もなんか似てるんだよね。無くなるまで金を使い過ぎちゃう感じ。メシ、頼み過ぎちゃう感じとかね。ははっ。──K-BOMB

OLIVEさんとK-BOMBの出会いは?

K-BOMB:当時はCD-Rを売ってる人があんまりいなかった。CD-Rがビジネスとしてまだ成り立たない頃だよ。

OLIVE OIL:たしかにそう。

2000年代初頭から中盤ぐらいですかね。

K-BOMB:オレはCD-Rで作品を大量に作ってた。で、あるときCHU(INNER SCIENCE)からCD-Rを売れる店があるって教えてもらったのがWENODだったんだ。

OLIVE OIL:CD-R売ってたっすね。WENODに売ってもらってた。

K-BOMB:だから、「オレの他にCD-Rとか売るヤツいるのか?」ってWENODに訊いたら、「いますよ」と。それでOLIVEの作品を聴いたらさ、斬新で最新で歌い辛い感じでたまんないと。そのころトラック作ってくれるいい人を探してたところだったから、すぐにでも会いたかった。そうしたら、「来週(東京に)来ますよ」とまた教えられて、すぐに会った。オレ側のニュアンスとしてはそんな感じさ。

それってどれぐらいの時期ですか?

OLIVE OIL:2006年ぐらいですかね。

K-BOMB:どうなんだろうね。もうね、2000年代に入っちゃうと、オレ、わかんなくなっちゃうんだよ。オレのなかじゃあ、新しいことなんだけどさ、でももう10年ぐらい経ってるっていうことだからさ。ちょっと時空が捻じ曲がっちゃってる。季節感を感じないね。でも、そうなのかもしれない。気持ち的には1980年代ぐらいに会ってるような感じだよね。

OLIVE OIL:ははは。

K-BOMB:初めて会ったのはUNITでのライヴかな? いや、違うか?

OLIVE OIL:WENOD(当時店舗は恵比寿にあった)の近くの神社の裏のバーで会った気がする。

K-BOMB:だいたい年数適当のオレだからさ。1989年の夏、ニューヨークで会ったってことだね。

OLIVE OIL:ははははははははっはーはぁ。

福岡でWENODの神長(健二郎)さんも同席して、OLIVE OIL、POPY OIL、THINK TANKが初対面したという話を聞いたことがありますが、違いますか?

(※2007年11月23日にWILD RIDEというイベントがEARLY BELIVERSで開催。THINK TANKが福岡で初ライヴを行っている。OLIVE OIL、RAMB CAMPらも出演)

OLIVE OIL:そうそう。福岡の焼鳥屋で会いました。THINK TANKが初めて福岡でライヴしたときだ。

K-BOMB:えーーーーーー!? まじで? オレはファースト・コンタクトは恵比寿だと思う。恵比寿で仲良くなって、福岡に行ったはず。だってさ、いきなりさ、知らない人とオレがそんな風に飲むってことないんじゃない? それまで人とメシとかたぶん食いに行ったことなかった。OLIVEと初めてぐらいの勢いで行ったんじゃないかな? 芋の水割りもそれまで飲んだことなかった。だからそれぐらい古い関係だし、OLIVEと出会ってオレ自身の芋がもう捻じ曲げられた。

その福岡の焼鳥屋での出会いが壮絶だったらしいと。

K-BOMB:壮絶だよ、常に。

OLIVE OIL:うちらが店に着いたら、小上がりの座敷でTHINK TANKのメンバーみんなが横になって寛いじゃってた。

K-BOMB:オレたちね、すぐ寛いじゃうタイプだから。

たしか神長さんが両者の間を取り持って、その場で意気投合して、途中で神長さんは「もう任せたよ」って先に消えたみたいな話を聞いたことがある。それは恵比寿なのかな。

K-BOMB:意気投合系だね。

OLIVE OIL:うん。福岡の焼き鳥屋では会計の金額がすごいことになってた。

K-BOMB:金の使い方もなんか似てるんだよね。無くなるまで金を使い過ぎちゃう感じ。メシ、頼み過ぎちゃう感じとかね。ははっ。

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それはOLIVEに常にある雰囲気で、OLIVEはいろいろ絡ませていくからさ。民謡とジャズとか、民謡とヒップホップとか。ひねくれてるのさ。──K-BOMB

オリエンタルな雰囲気や日本昔ばなし的な雰囲気を出したかった。──OLIVE OIL

いずれにせよ、WENODがK-BOMBとOLIVE OILをつなげたことは間違いなさそうですね。K-BOMBとTHINK TANKは最初どういう印象でした?

OLIVE OIL:すげぇ恐い。

K-BOMB:まじで? やだな

OLIVE OIL:だって、全員寝てるわけですよ。畳の部屋で。

K-BOMB:畳だと、オレたち寝ちゃうんだよ可愛い感じで。椅子だと、オレたち野菜とか投げ合っちゃうからさ。

OLIVE OIL:あ、思い出した! そのとき、K-BOMBに「EL NINO(OLIVE OIL×FREEZ)やってるでしょ? オレたちは1997年からEL NINOってイベントをやってるからね」って言われた。

はははは。同じ名前だったから対抗してきたんですね(笑)。

K-BOMB:対抗してきたんだよ。

JUBE:その感じは変わってないよね。いまでも気に入った人物に対抗心むき出しのときたまにみるよ。

OLIVEさんとFREEZさんのEL NINOよりも前から、BLACKSMOKERは同じ名前のパーティをやっていると。EL NINOって1997年からやってたんですね?

K-BOMB:そうだね。たしかOrgan Barで毎週火曜日やってた。イカレたことをやってたよね。

OLIVE OIL:まあ、そういう会話からはじまって、「じゃあ乾杯しよう」と。そしたら、K-BOMBが「魔王って酒があるけど、そこには大魔王ってのがある。もっとこっちのほうが悪いんだろ?」って大魔王という酒を選んだのをよく憶えてる。あれウケたな。

K-BOMB:俺、大魔王のせーでその後、寝ながらLIVEした気がする。

JUBE:たしかに

POPY OIL:僕らが当時福岡でやっていたダダイズムっていうイベントの時にいつも迎えに来てくれる後輩の車のなかでは常にTHINK TANKとK-BOMB、BLACKSMOKERの音楽がかかっていた。

OLIVE OIL:自分は1997年にアメリカに行って、2002年に帰国したんだけど、当時、日本にいる変態系の人たちのビートをすげぇ探してた。福岡でその後輩のキョムってヤツに知り合って、その流れでTHINK TANKとか、全部教えてもらった。

ただ、OLIVEさんとK-BOMBで一緒に曲を作るのはそれから少し先ですよね。

OLIVE OIL:K-BOMBから「TRIPLE SIXXX」(CDは2010年発売。アナログ第一弾は2008年)に入ってる曲のアカペラを直でもらったのが最初だと思う。「BPMもわからないから」って言われて、すげぇ困った思い出がある。

K-BOMB:OLIVE OILは「BPMないんじゃないかな?」っていうのあるじゃない。出来そうだなっていう。ビートが揺れてるからさ。揺れてると、BPMが3ぐらい稼げるような気がするんだ。どこの位置にもコンテンツがあるから、リディムが出るっていうかさ。わかるでしょ? 乾いてると的確に叩かなきゃいけないけど、揺れてると的確な部分の幅が広がるっていうね。

OLIVE OIL:「TRIPLE SIXXX」の「Mr.KATO」が最初ですね。

「Mr.KATO」にはFREEZさんも参加してますね。

OLIVE OIL:EL NINOでちょうど作ってる最中とかだったからね。

K-BOMB:だってさ、あの時期は福岡にライヴしに行くと、次の日の昼からさ、CLUB BASEにベニヤ板みたいなの貼って、「さあ、やりましょう」ってRECがはじまるんだ。もう絶対なんだよ。二日酔いで録らされる。オレはその場でビートを聴いて、リリック書いて、2、3曲録ったりしてさ。そうやって作った曲で世のなかに出てない曲とかいっぱいあるわけ。人の家の二段ベッドの上で正座して歌った歌とか出てないんだ。

OLIVEさんの自宅兼スタジオで録ったりはしなかったんですか?

OLIVE OIL:いや。

K-BOMB:家じゃ録らないよ。もうね、ゲトー団地みたいなところがあるわけよ。福岡からちょっと行ったらさ。「オレは人の家は嫌だよ」つってんのに、車に乗って行ったらもうそこだよね。強制的なんだね、いつも。オレ、人の家は嫌だから、しばらく川歩いてたよ。

OLIVE OIL:川、歩いてた(笑)。

K-BOMB:川歩いてたら、子供たちが魚獲ってて、オレもそれに参加して良い気分になったね。

OLIVEさんがK-BOMBをRECに誘うと。

K-BOMB:いや、みんなでオレを騙すんだよ。

OLIVE OIL:たしかそのときはFREEZの計画だった。

K-BOMB:そう。仲良いから、オレのことわかって来ちゃってたんだろうね。この人に「録音しましょう」って言ったら、「絶対行かない」って言われるから、黙って連れていかれる。「おいしいもの食べたくないですか?」「食べたいね」と。そうやって釣り出されてる。完全に拉致られてる。そうしたら、いつの間にか録ってる。

RECするのが習慣っていうか日常的でスピードが速いんですね。

OLIVE OIL:そうっすね。

K-BOMB:CLUB BASEがあったときはあそこで名作はだいたい録ってるよ。

OLIVE OIL:たしかに。全部あそこかGREENHOUSEで録ってる。

CLUB BASEで生まれた作品には例えば何がありますか?

K-BOMB:RAMB CAMPとTHE LEFTYの曲とかもそうだ。

RAMB CAMP / REBEL MUSIC feat. THE LEFTY (K-BOMB, JUBE)

RAMB CAMPのアルバムとかもそうなんですか?

OLIVE OIL:そうそうそう。

K-BOMB:福岡のラッパーはだいたいあそこで録ってたんじゃないか? 自然にエコーかかっちゃってるの、広いからさ。普通のヴォーカル・ブースより明らかにデカくて、何人もブースにいるっていう感じさ。THINK TANKの録り方と似てるよね。喋り声とか入っちゃってる感じで、アカペラとか聴くとおもしろそうだな。「芋の水割りくれる?」みたいな話し声が入っちゃってんだと思うよ。

ふふふ。

K-BOMB:夕方ぐらいから録りはじめて、それでまた飲んで、次の日にライヴやDJやったりして、福岡に何日もいちゃうんだ。だから、だいたい二日目とか三日目から、オレに付き合えなくなってくる人いるけどね。なんかもう、ゲッソリして、胃液の匂いがプンプンするヤツとか。ははははは。三日とか付き合えるヤツ、なかなかいない。POPY OILぐらいだ。OLIVE OILは上手いこと「違うビジネスがあるんで」って会わない時間が長い。

OLIVE OIL:その三日間でZORJIが痩せていく(笑)。

K-BOMB:そうだね。

そういう録音作業の原点というか、はじまりが「TRIPLE SIXXX」の「Mr.KATO」だったと。

OLIVE OIL:そう。

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福岡にはビートメイカーも多い。CRДMとかLAF とかさ。ラッパーだとREIDAMとか。そういう世代が盛り上がってる感じがする。──OLIVE OIL

OLIVEのせーだ。福岡最高なんだっ。──K-BOMB


OLIVE OIL
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K-BOMBから見て、OLIVEさんとPOPYさんっていうのはどういう人物ですか?

K-BOMB:オレはこの兄弟と1ヶ月に1回……いやもっと会うときもある。いろんな地方で会うんだ。8月もだいたい一緒にいたりとかするしさ。だからもう家族のよーに過ごしてる。オレは朝早く起きて全員分の洗濯とかしてるよ、OLIVEの家で。風呂も入ってる。

OLIVE OIL:ふふふふふふふ。

K-BOMB:この兄弟はもう天才で、音と映像とアートを兄弟で出来てるっていうのもスゴイけど、普通にワールドクラスのレベルなんだ。だから、近づきたかったっていうのはあるよね。よく解読できないレベルっていうのかな。だいたいオレ、解読できるからさ。だからライバルだし、ファンだし、友人だし、ファミリー的な感じだ。深い感じだと思う。教えてもらうことも多いから。

何を教えてもらうんですか?

K-BOMB:芋の水割りとか音の鳴りとかも教えてもらう。ところで最近、野菜食べてないか?

OLIVE OIL:いや食べてませんよ

ふたりからすると、K-BOMBのファースト・インプレッションは?

OLIVE OIL:そういう人間がいると思わない人物。「そういう人、いるの?!」と驚くような人物だった。

POPY OIL:ライヴでドレッドを片手に持ちながら、片手でパッドを叩いている姿を初めて見て、野生の要素と都会の要素を両方併せ持つ、超越している人物だと感じた。

K-BOMB:オレもこの兄弟に野性的なのもと都会的なものを感じたよね。よく言われがちな“黒い音”とかじゃなくてさ。黒いけど、その黒いとは違うんだ。ポップで、メロディアスで、オレの好みなんだ。

ノイズもあるし、ポップもある。

K-BOMB:あるあるある。質感を感じたよね。

OLIVEさんが海外から帰って来てFREEZさんと会ったときに、日本人離れした野太いラップが出来るラッパーだったから、彼とは一緒にできると確信したというような話をしてくれたことがあります。

OLIVE OIL:そう。オレはエイフェックス・ツインやスクエアプッシャーも好きだったけど、90年代ヒップホップのスタイルをもって、徹底して8、16、24という偶数小節でラップしていくFREEZくんとやることで、ヒップホップのスタイルに自分の音楽を落とし込んでいった。そういう音楽を作っていたときに、今度はK-BOMBがオレの目の前に突如現れた。



K-BOMB:ふふっ。

OLIVE OIL:ラッパーなのに「1小節飛ばしてくれ」とか言われて、「やっべぇなあ」と感じた。

ヒップホップとラップのルールを知りながらそのルールを無視して、それでも王道のラッパーのかっこよさがある。そういうことですか?

OLIVE OIL:そうそう。だから、K-BOMBが3だったり、5だったり、7という奇数小節でラップしていくことに驚いた。

K-BOMB:でもそれはワザとじゃないんだ。同じ歌を同じトラックで歌っても1回目は8だけど、2回目が8とは限らないんだね。ラップを小節数で書いたことがないんだ。それが何なのかオレはまだわからない。感情がこもってくると小節数も変わって来る。感情がこもってなくても変わって来るし、かっこつけても変わって来る。かっこつけながら感情込めても変わって来るしさ。

JUBE:オレが数えたりするからね。でもやっぱり数えられない。4、4、4、1みたいに1が入ってきて、次6とか。挙句に頼りにしてたループはなくなって闇へと誘い込む。お手上げですよ。

K-BOMB:それがわからないんだよ。いいと思うものがそういうBPMだったり、そういう拍子だったりするのかもしれないね。サンプリングする時点でオレはもうそう感じてるよね。これはもう打ち難いっていう、そういうのが大好きだ。ゴールデンループっていうワザがあるからね。

ゴールデンループ?

K-BOMB:何日もそのループをかけっぱなしにしてて厭きないものさ。それがゴールデンループ。やっぱ最高なんだよね。OLIVE OILの聴き方さ。

OLIVE OIL:それは最高。

K-BOMB:名曲っていうのはさ、厭きちゃいけないよな。三日間ぐらいかけてても厭きない。ゴールデンっていうのは裏から入って来たりするものなんだよ。ゴールデンをさらに料理するのってすごい難しくて、ワザとらしくなっちゃたりとかするし、ストレートに行くのは誰しもやる手法なんだ。

『ISLAND BAL』には多彩でユニークなビートがあります。“HENCA”という民謡風の曲なんかもありますね。

K-BOMB:それはOLIVEに常にある雰囲気で、OLIVEはいろいろ絡ませていくからさ。民謡とジャズとか、民謡とヒップホップとか。ひねくれてるのさ。

OLIVE OIL:オリエンタルな雰囲気や日本昔ばなし的な雰囲気を出したかった。

K-BOMB:良いネタが入ったら良い曲が出来るっていうのは当たり前なんだけど、そのネタやモノの処理の仕方で変わってくる。絶対に誰しもが通る道っていうのは360度ぐらいあって、その雰囲気っていうのは誰しもが求めてる。OLIVEはそういうのを散らしてる感じがするけどね。それが技術なんだと思う。音の癖みたいなのを持っててさ。たとえば、だいたいヒップホップのビートメイカーはスネアやキックに重きを置くけど、OLIVEはハットに置いてたりとかさ。

OLIVE OIL:ハット、デカめですね。

K-BOMB:デカいと普通は耳が痛くなる。それが痛くならないとかさ。ちょっとよく聴いてみた方がいい他の人が置いてる重点と全然違うんだ。キックとかもさ、輪郭っていうよりベースに近いようなさ。

うんうん。

K-BOMB:ねぇ。丸い感じの。

OLIVE OIL:ブーン。マルチョーキック 最近食わなくなったけど

K-BOMB:芯っていうよりも周りも持ってる感じだしさ。そこに合うベースっていうのが入ってくる。それはほんとは組み合わせ辛いんだ。

OLIVE OIL:LAでマスタリングしたときに、K-BOMBの曲をスタジオで聴いていたら、TOSHINOBU KUBOTAのエンジニアもやっているアメリカ人が衝撃を受けてて。その様子はミュージック・ヴィデオにも写ってる。

K-BOMB × OLV-OIL / 真夜中のJAZZ

K-BOMB:「真夜中のジャズ」だね。たしかにあのときの彼の動きはTOSHINOBU KUBOTAの曲で踊ってるときとあんまり変わんないかもしれないな。つまり俺はTOSHINOBUなんだ

OLIVE OIL:その場にデリシャス・ヴァイナルのLAJさんも一緒にいて、彼もすげぇ上がっていて、ああいうのが正当な評価だと思う。

K-BOMB:それはビートが良かったから。「真夜中のジャズ」はOLIVEがミュージック・ヴィデオも作ってる。最近、OLIVEはシュールで恐い絵も描くし、いろんなセンスがあるんだ。オレたちの仕事を奪おうとしてるんだ。ふふっ。メシを作るの上手いしさ。そういう凡人離れしてるのはあるよね。

今回のアルバムに参加してるaddginjahzzは誰ですか?

OLIVE OIL:5lack世代ですよね。

K-BOMB:それはやっぱり最高の時期だね。OLIVEは同じ現場でいいと思った人とはやってるね。BIGIz'MAFIAとか名作がもうぞろぞろあるよ。

addginjahzz、ラップの訛りがおもしろいですね。

K-BOMB:このグループ、すごいいいね。声のバランスがいい。

彼らとはどういう出会いだったんですか?

OLIVE OIL:ちょっと前に金沢にライヴしに行ったときに会った。彼らすげぇ喜んでた。「BLACKSOKERから出すアルバムに曲が入っちゃうけど、大丈夫?」って言ったとき、「えええっ?!」って。

K-BOMB:よし、今度みんなで金沢に行こう! OLIVEが作って、光シージャーがかけて、ジャンルを超えてくみたいなパターンいっぱいあるんだ。シージャーがさ、BLACKSOKERの服ばっか着過ぎて、シルエットが俺と一緒みたいなときとかあるからね。

OLIVE OIL:それと福岡に最近Transform(https://transform.website/)って新しいクラブ、バーができた。

K-BOMB:朋晃(ツキツキニッコウ)のところだ。あっこいいよ。どんどんよくなってくるんじゃないかな

OLIVE OIL:福岡にはビートメイカーも多い。CRДMとかLAF とかさ。ラッパーだとREIDAMとか。そういう世代が盛り上がってる感じがする。

K-BOMB:OLIVEのせーだ。福岡最高なんだっ。

今後の話も訊きたいですけど、どうですか?

OLIVE OIL:今後はツアーしたいですね。ライヴをしたい。でもわかんない。もしかしたら作っちゃう可能性も高いから。でもリリースしたり、マスタリング済の音があるから、そういうのを持ってあちこち回るのがいいかもしれない。

K-BOMBはどうですか?

K-BOMB:これからのことはわからないよ。絵の仕事をやんなきゃいけないし、アルバムも作りたいなと思ってるけど、年々CD-Rも出すのが少なくなるぐらい時間がなくなってきちゃってさ。自分の課題がまったくこなせてないから、もっと厳しくしたいね、自分に。

OLIVE OIL:ふふふ。

真面目だ(笑)。

K-BOMB:俺はいつでも真面目さ。。。そろそろ旅行でもしてアルバムつくろーかな。

OLIVE OIL:あーぜひ事務所にもよってください。おいしいもの食べに行きましょう。

K-BOMB:いいね~ おいしいもの食べて……えっ? それって……ふふふ、それは高いよ。

BLACK SMOKER RECORDS PRESENTS
ELNINO

8/29(SAT) at clubasia 23:00-
ACT
KILLER-BONG JUBE BABA YAZI CHEE13 OLIVE OIL
5lack punpee OMSB Hi’spec peepow ROKAPENIS KLEPTOMANIAC
BUN LUVRAW Cocktail Boyz L?K?O VIZZA JOMO LIBERATE TISHIT
and more

 レイヴの歴史を紐解けば、一度はスパイラル・トライブの名前を見かけたことがあるだろう。セカンド・サマー・オブ・ラヴ以降のイギリスで、100以上のフリー・レイヴ(無料レイヴ)を行い、多いときでは4万人を動員するなど、ハードなパーティとともに生きた伝説のテクノ・サウンドシステムのクルーだ。当時のイギリスでは抵抗の象徴として注目されたクルーのひとつでもある。イギリスから移住後、ヨーロッパにテクノのサウンドシステムを普及させ、そのシーンからでないと生まれ得ないトライブやハードテックなど、先鋭化したジャンルの基盤を作った。彼らはレイヴとともにヨーロッパ中で生活した、レイヴトラベラーの実践者とも言える。今まで日本で紹介される機会が少なく馴染みが薄いが、ヨーロッパのアンダーグラウンド・シーンでは一時代を築いた集団ということは検索すればわかるはず。

 さて20年後の現在、当時のメンバーのひとりであるDJのJeff23が奇跡的に来日した。今回の来日が実現したのは、Jeff23の友人であるチェコ在住のハードテックの日本人DJ Tanukichiと、90年代から日本にレイヴカルチャーを持ち込んだパーティ、ライフフォースの協力があったため。当日のプレイは妖艶さを持ったダークなテクノで、人々は朝まで魅了された。近年稀にみるいかがわしい雰囲気がフロアを覆い尽くした。スパイラル・トライブの活動は多岐に亘るためすべてを紹介できないが、一員であった彼の発言からイギリス/ヨーロッパ圏での音楽を取り巻く文化の違いを少しだけでも知ってほしい。

Spiral Tribe Reportage Tracks Arte GermanTV

ずっとウェアハウスで(インディペンデントな)フリー・パーティをしていたんですよね。現在までのスパイラル・トライブの経緯を教えて下さい。

Jeff23:スパイラル・トライブとしての活動は99年までなんだ。最初、自分はスパイラル・トライブに会う3年前から仲の良い友だちとウェアハウス・パーティをやっていて、91年のクリスマスにメンバーであるサイモン(クリスタル・ディストーション)たちと出会って参加するようになった。自分のやっていることに一致したからだね。
 スパイラル・トライブは元々フリー・パーティをモットーにしていたけど最終的には料金は取るようになった。自分たちは本当に安い値段でパーティをしようと思っていても、ビジネスみたいなものに取り込まれて25ポンドぐらいの入場料になってしまう。それがやっぱり自分たちの意志とは反することがあった。
 だんだんクラブの体裁が流行りはじめて、フリー・パーティと区別がつかなくなった。そこからバウンサーがいるような時代になって、それが本意ではなかったんだ。そこからマフィアやフットボールのフーリガンのような連中含めて、いろいろ絡みはじめてこんがらがった。自分がスパイラル・トライブに入る前にマフィアに売上を全部取られたこともあった。スパイラル・トライブもやられたこともあった。89年以降はじょじょに厳しくなったのでスパイラル・トライブは状況に反発していた。

当時はスクウォッティングした建物でもパーティをしていたんですよね。

Jeff23:89年までのイギリスでは空き家のドアを開けて鍵を取り替えて住んでも、なかに人間が住んでいる場合は追い出せないという法律がまだ成立していたんだ。どんなに広い建物でもスクウォッティングができた。そこでパーティができて巨大になっていった。親しい友人に伝えていって、友人が友人に電話で連絡して集まったんだ。法律が変わってからは、お金を払うイリーガルなスクオッティング・パーティはなくなった。その後もスクオッティングはイリーガルな形で続いていったけど。
 当時のシーンにはサイケデリックなドラッグがあったとしてもコカインやヘロインなど本当に悪いドラッグはなかった。もっと深い精神性を持ったものとして存在/存続していた。サイケデリックについて理解するのは難しい……。それも少しの理由になったかもしれない。

カウンターカルチャー的な集団だとも聞いていますが。

Jeff23:ビーンフィールドという場所で、2万人が集まったストーンヘンジ・フリーフェスティヴァルでは、警官が人を殴った。実際に殴りつけるから、そういう人に対してスパイラル・トライブは意思を持って立ち向かっていった。それが大問題になる。それから自分たちの政治的な立場が支持されてた。当時、他の人たちがはっきり言わなかったことを自分たちは政治的にも立ち上がったから、注目されていたんだと思う。いい意味でも悪い意味でも。
 当時からサウンドシステムを持っていたのもあって、大きなパーティでは2~3000人という人たちが動いた。盛り上がるというのは一瞬で盛り上がるのではなく、続けていくことによって、そこでずっとやっている人たちがいて、それに乗るみんなのエネルギーがあって始めて発生するんだ。
 92年にイギリス政府は100万ポンドを掛けてスパイラル・トライブの問題を裁判することになった。「環境の平和を乱す」という名目で裁判を受け、スパイラル・トライブは政府に勝った。その後、リサ・スタンフィールドやコールドカットはレコーディング・スタジオを作れるぐらいの資金を前払いをしてくれた。自分たちのことをセックス・ピストルズのようなテクノの抵抗の象徴として扱おうとしていたんだ。まわりはそうしたかったけれど、自分たちはそうならなかった。
 その資金を使って、イギリスからサウンドシステムをヨーロッパ大陸に送った。イギリス国内では活動できなくなったので、ヨーロッパに渡ってテクノをプレイするようになった。それまではブレイクビーツだったけれど四つ打ちになっていくんだ。93年頃から、ベルリン、ベルギー、オランダと点々と拠点を変え、最終的にパリに移住した。そこからフリー・パーティのシーンがフランスで生まれたとされていて、ヨーロッパでテクノが爆発的に拡大していった。自分たちのやり方でプロモーションをしたんだ。それから1996年にテク二バル(※)は生まれたんだ。

※テクニバル(Teknival)=ノー・オーガニゼイション/ノー・マネーシステム/ノー・コマーシャリズムのコンセプトの元、複数のサウンドシステムが同日、同場所に集結する自由参加型のゲリラレイヴ。T・A・Z (The Temporary Autonomous Zone)を作り上げる。最大規模の開催では、200組のサウンドシステムと11万人がパリ周辺に集まった。

Teknival Frenchtek 2015 cambrai Teknivibration

 車でフランスからゴア(インド)までパーティをしにいったこともあったよ。子供とともに生活用品も持って行ったね。ロシアのジェット飛行機を買ってチェコに行ったりもした。ヨーロッパ中にネットワークがあるので、そうやってパーティを続けることができたね。木を育てるようにゆっくりと育ち、いまは世界的になったけど。
 ただ結局、2000年以降にヨーロッパ全土でもメディアで注目されて、警察が追いかけるようになってフリー・パーティは止まってしまった。続いているのもあるけれど、サウンドシステムがフランスでは非合法の存在になってしまった。
 締め付けが厳しくなっていくフリー・パーティを続けながら、〈ネットワーク23〉というレーベルを作った。ディストリビューションを行い、まともなことをやって音源を売った。いままでフリー・パーティ・シーンにいた人が音源を買ってくれたんだ。アーティストに制作できる環境を与えられるだけのギャランティを渡した。それぞれのアーティストがスタジオを持って音源の制作できるようになってからスパイラル・トライブとしての活動はストップしたんだ。

フランスでハードテックやトライブというジャンルが生まれたのは、スパイラル・トライブが発端ですよね?

Jeff23:多彩で多角的なアーティストがスパイラル・トライブにいて、クリスタル・ディストーションなどの初期の人たちの一部が、音楽事体の創造性や革新性も更新した。パーティが中心の生活をしていたからもあった。96年頃かな、テクノやハウスの33回転のレコードをあえて45回転にしてピッチをマイナス8にしたことがはじまり。そこから派生してフレンチコアなどハードコア・テクノも生まれたけど、今の自分はテクノなのでハードコアではないね。自分はアーティストのラインナップによってプレイする音楽の速さも変わってくるけれど。
 現在は、スパイラル・トライブの意思をもう一回再生しようとして、2005年頃からSP23というコレクティヴ/コミュティを作って活動中なんだ。時間が経ったので、世代を超えて子どもたちを育てていく状況に突入している。これからは日本でも活動していきたいね。


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