「LV」と一致するもの

Chart by UNION 2010.12.22 - ele-king

Shop Chart


1

THEO PARRISH

THEO PARRISH Sketches SOUND SIGNATURE / US »COMMENT GET MUSIC
一部のレコードショップのみで極少数(噂によれば150セットにみ)で販売されたハンドペイント・ジャケットの限定アナログ盤セットからCD化されたTheo Parrishのニューアルバムは、ジャズを独自の解釈で磨き上げたハウスが11トラック。「Summaer Time Is Here」ラインの「Hope In Tomorrow」、かつての初期衝動を思い出させてくれる「Thumpasaurus」や「Black Mist」といったトラックが並ぶ。これまでの作品にも参加しているDumminie Deporres、New Sector Movements としても活動してきたIG Culture、さらには名門Blue NoteにおいてBobbi HumphreyやDonald ByrdをプロデュースしてきたLarry Mizellもフィーチャーしている点にも注目。

2

DJ NOBU

DJ NOBU On MUSIC MINE / JPN »COMMENT GET MUSIC
Future Terror主宰、今日本のアンダーグラウンドで最も勢いのある話題のDJ、DJ NOBUの100%現場を詰め込んだ最新DJミックスが登場。脳の「ある部分」へ染み渡るような快楽性を持った音に、張り詰めた緊張感を持たせた独特な雰囲気は、もはや比較できるMIX-CDは殆ど存在しない。突き詰めて到達した「究極の音世界」、DJ Nobu自身がいま最も伝えたいであろう「世界観」を体感すべし。

3

RYOSUKE & KABUTO

RYOSUKE & KABUTO Paste Of Time Vol.2 JPN / CD »COMMENT GET MUSIC
千葉FUTURE TERRORを立ち上げ時からのレジデントを経て、現在様々なパーティで活躍する2人のDJのヴァイヴを抽出した『Paste Of Time』第2弾リリース!前作に引き続き「現場の音」をペースト(貼り付ける)した本作もフロア・ダイレクトな仕上がり。KABUTOは時間と重力を操るように、捻じ曲がるサイケデリックなハメを演出、一晩の流れを40分に詰込み再現したかのようなRYOSUKEのミックスはハウスとテクノを巧みに混在させた好内容。爆音で聴けばこれまでにない音世界の体験が待っている!

4

MORITZ VON OSWALD TRIO

MORITZ VON OSWALD TRIO Restructure 2 HONEST JONS / UK »COMMENT GET MUSIC
TIKIMANのギター、CARL CRAIG/MORITZ VON OSWALD「RECOMPOSED BY」でも客演していたMARC MUELLBAUERのダブルベース、VLADISLAV DELAYによるメタルパーカッションが緊張感溢れる音響空間を作り上げた12分間に及びフリーキーなミニマルダブ! さらにB面ではMALA (DIGITAL MYSTIKZ)がコズミック・ダブステップとでも呼びたいリコンストラクトを披露!

5

DONATO DOZZY

DONATO DOZZY K FURTHER / US »COMMENT GET MUSIC
LEROSA、AYBEE、CONRAD SCHNITZLERなど激コアでこだわりのあるリリースをする前衛レーベルFURTHERからイタリアアングラシーンの先駆者DONATO DOZZYが2枚組みで作品リリース!!この手のレーベルにありがちなドローン中心な作風ではなく、そこから派生した深みのあるミニマリズムが堪能できるDJユースな仕上がり!!

6

V.A.(BABY FORD,MARGARET DYGAS,FUMIYA TANAKA...)

V.A.(BABY FORD,MARGARET DYGAS,FUMIYA TANAKA...) Superlongevity 5 PERLON / JPN »COMMENT GET MUSIC
ZIPとMARKUS NIKOLAIによって1997年に設立され、その妥協を許さないクオリティーの高さとアンチコマーシャルな姿勢でミニマル・シーンに多大な影響を及ぼし続けるレーベル・PERLON。そのPERLONがレーベルメイトを結集させてお届けする恒例コンピレーション・シリーズ"SUPERLONGEVITY"の第5弾が遂にリリース! 毎回他を圧倒する豪華メンツがトラックを寄せる同シリーズですが、今回も若手からベテランまで燦然と輝く才能をコンパイルした驚異的内容!!

7

MOODYMANN / ムーディーマン

MOODYMANN / ムーディーマン Forevernevermore (国内仕様盤) PEACEFROG / JPN »COMMENT GET MUSIC
聴く者に迫り来る"黒いグルーヴ"を見事に創出した至高のブラック・ミュージック! 通算3枚目の本アルバムは1995~2000年に12インチでリリースされた音源を中心にコンパイル。Norma Jean Bellによる麗しいサックスとヴォーカルや、Fiddler Brothers(Amp Fiddler&Bubz Fiddler)によるベースやローズの音色、そしてKenny Dixon Jr.によるエフェクトが随所に散りばめられ、独特なサウンド・フォルムを形成している。

8

THEO PARRISH

THEO PARRISH Just1lovebug DOPE JAMS / US »COMMENT GET MUSIC
Lil Louis & The Worldの90年作"Nyce & Slo"をベースにAmerie"One Thing"のヴォーカルをミックスしたドープなマッシュアップ!ファットなベースラインとチージーなアシッドシンセが炸裂するシカゴハウスクラシックとAmerieの魅力的な歌声がTheo Parrishの手によってありえない見事なコラボレートを生んだ。瞬く間にレアな作品と化した1枚なだけに買い逃しの無いように!

9

REBOOT

REBOOT Into Oblivion EP OSLO / GER »COMMENT GET MUSIC
アルバム「SHUNYATA」でネクスト・レベルへ突き抜けたREBOOTが大人気レーベル・OSLOに初登場! 有機的に絡みつくウワモノとエフェクティブなヴォイス・サンプル、パーカッシブなビートが一体となったカラフルなディープ・ミニマル! フロアに彩りを添えるREBOOTならではの1枚!

10

HARDFLOOR

HARDFLOOR Two Guys Three Boxes HARDFLOOR / JPN »COMMENT GET MUSIC
人のルーツであるシカゴ・ハウス・シーンの重鎮DJ PIERREをリミキサーに起用し新旧アシッド対決が実現、大きな話題を集めた先行シングル"Silver Submarine"を筆頭に黄金期を彷彿とさせるファンキー&ストレートな303サウンドを全11トラック収録!!近年再度盛り上がりを見せるオールドスクール・アシッド・ハウスの時流に圧倒的な存在感と格好良さをもって王者の風格を見せつける超強力作品です!!

yone-ko (CABARET / Runch / Mussen Project Records) - ele-king

2010年の10枚


1
V.A - The Users And The Gadgets - gadgets

2
conforce - Love Hate - meanwhile

3
HIROSHI MOROHASHI - No Form - Shield Records

4
Shakedown - At Night (Martin Buttrich Dub) - 200

5
Silicon Soul - Candy Love - SOMA

6
Rhythm Plate - Lean(Atjazz remix) - Mantis Recordings

7
PALDRAME -Prebold - Communique USA

8
STATIC DRUM - Static Drum Part 2 - STATIC DRUM

9
Move D & Benjamin Brunn - Melons - Smallville

10
King Kooba - Fooling Myself(Derrick Carter Remix) - OM Records

 2010年に『ニュー・スレイヴ』を発表した、いまどき希有な、怒りのこもったハードコアなジャズとミニマルを爆発させるニューヨークのアンダーグラウンドの脅威、ジーズがやって来る! それも年末に......。
 これでもう、年末は帰省している場合ではないことがわかった。以下、詳細です。

UNIT 2010 to 2011 (2010.12.31 FRI)
LIVE
PERFORMANCE
Zs (from NY, The Social Registry)
KIRIHITO (P-Vine Records)
and more
DJ KENJI TAKIMI (LUGER E-GO / CRUE-L)
TEN (STERNE / ERR)
KENTARO IWAKI (DUB ARCHANOID TRIM / BLOWMAN)
VJ SAKOTA HARUKA
SALOON(B3F) "who is rodriguez ? Lr - NYE Special Edition -"
DJ Steve Bicknell (from London, LOST / Spacebase / Cosmic)
Miyabi (PLUS)
UNICE (B1F CAFE) "delight emotion floor"
LIVE
PERFORMANCE
FilFla (WEATHER / HEADZ / PLOP)
DJ L?K?O
タカラダミチノブ (HONCHO SOUND)
Ametsub
Hiyoshi (Global Chillage)
presented byUNIT in association with root & branch
OPEN/START 21:00
CHARGE ADV.4,000yen/W.FLYER 4,500yen/DOOR 5,000yen
※未成年者の入場不可・要顔写真付きID
TICKET

チケットぴあ 0570-02-9999 [P]126-123
ローソン [L]74292
e+

STORE
[渋谷]
● TOWER RECORDS 渋谷店
● diskunion 渋谷 CLUB MUSIC SHOP
● diskunion 渋谷ロック館
● GANBAN
● Lighthouse Records
● TECHNIQUE
[新宿]
● TOWER RECORDS 新宿店
● diskunion 新宿 CLUB MUSIC SHOP
● diskunion 新宿本館6Fインディ/オルタナティヴロックフロア
● LOS APSON?
[お茶の水]
● diskunion お茶の水駅前店
[吉祥寺]
● diskunion 吉祥寺店
[下北沢]
● diskunion 下北沢CLUB MUSIC SHOP
● diskunion 下北沢店
● JET SET
● warszawa
[高円寺]
● small music

HP https://www.unit-tokyo.com/

Zs (ジーズ)
サックス奏者/作曲家のSam Hilmer(サム・ヒルマー)によって2000年に結成されたZsは、その10年に渡る活動の中で、デュオからセクステットまで自在に形態を変化させつつ、Ben Greenberg(ベン・グリーンバーグ)、Tony Lowe(トニー・ロウ)、Ian Antonio(イアン・アントニオ)らの核メンバーと共に、ラディカルな地下活動を続けてきた。

ノー・ウェイヴ、フリージャズ、ノイズ、ポスト・ミニマリズム、電子音楽、即興演奏等の広大な領域を大胆に横断しながら、肉体的な意味でも精神的な意味でも過激に限界へと挑戦するサウンドが非常に高く評価されている。既存の楽器マニピュレートの域を拡張するユニークな演奏テクニックと、ほとんどテレパシーのようなバンドの呼吸によるコミュニケーションに裏付けられたライヴの強烈さによって叩き出されるその音は、たとえばかつてBattlesの音楽を形容する際に用いられた、「数学と暴力の融合」の発展型にして緻密にリズムを微分するフレーズと限界まで緊張感を高める暴虐性の混交であり、また例えばそれは、ライヒの執拗な反復とフリージャズの覚醒をハードコアへと織り交ぜた激烈なアップデートである。

バンドはこれまで、The Social Registry、Torubleman UnlimitedやPlanaria、Three One Gといったレーベルから作品を発表してきており、まずは2007年にPlanariaから発表されたセカンド・アルバム『Arms』によって、ここ日本でも大きく注目された(アルバムは日本ではPlanchaによって日本盤仕様で発売されている)。ジャズとマスロックの融合を完成させたこのアルバムに続き、さらに今年2010年にはGang Gang DanceやGrowingを擁する最新型NYアヴァンの牙城、The Social Registryから、フル・アルバムとしては3枚目となる『New Slaves』(日本ではPower Shovel Audioより12/15に、リミックス盤を加えたスペシャル・パッケージにて発売)をリリース。より肉体的なハードコア性とほとんど怒りにも似た感情の爆発、そして新たに独創的なエレクトロニクスの導入を果たし、"エクスペリメンタル・ミュージックの新たなディケイドの幕開け""ニューヨークでもっとも強力なアヴァン・バンドのひとつ -New York Times-"と絶賛された。スリリングで複雑で精緻で、なおかつ理屈抜きに叩きのめされるサウンドをこの初来日で是非体験してください!

Chart by JETSET 2010.11.22 - ele-king

Shop Chart


1

KUNIYUKI

KUNIYUKI DANCING IN THE NAKED CITY »COMMENT GET MUSIC
「Walking In the Naked City」から1年。早くも4thアルバムが登場!ダンス・フロアにフォーカスした、前作とは対をなす本作。既にHenrik Schwarz、Timo Maasなど世界各国のDJ達が多くの賛辞を寄せるトラックを多数収録。

2

CANYONS

CANYONS MY RESCUE »COMMENT GET MUSIC
DFAなどからリリースしてきたオージー・ユニット、CanyonsがModularから放つ、インディ・ダンス・ブギー+トライバル・サイケ+ニュー・ディスコな1枚

3

DJ SHADOW

DJ SHADOW THE 4-TRACK ERA LIMITED EDITION BEST OF THE ORIGINAL PRODUCTIONS(1990-1992) »COMMENT GET MUSIC
キャリア初期の軌跡をコンパイルした『4-Track Era』から待望のアナログ・カット!常にその動向に注目を集める存在として、DJ Krush等と共にかつてMo'Waxレーベルの人気を決定付けたDJ Shadowによるキャリア初期の貴重な音源全9曲を収録した限定ヴァイナル。

4

SNOOP DOGG FEATURING MAYER HAWTHORNE

SNOOP DOGG FEATURING MAYER HAWTHORNE GANGSTA LUV (MAYER HAWTHORNE G-MIX) »COMMENT GET MUSIC
自らがヴォーカル・パートを担当する、話題のMayer Hawthorne Remixが7"で登場!!ジャジー・ソウルな生演奏をバックに自ら歌い上げた、Snoop Dogg"Gangsta Luv"の大感動リミックス!!全世界限定300枚限定で、日本国内は100枚のみの流通です。

5

DOP

DOP L' HUPITAL, LA RUE, LA PRISON »COMMENT GET MUSIC
レジェンドHerbertリミックスを搭載した前作"3 Suitecases"もヒット中のフレンチ・ミニマル鬼才トリオdOP。エキゾでジャジーでシネマティックな大傑作を完成です!!

6

VAKULA

VAKULA NEMA »COMMENT GET MUSIC
期待の3rd StrikeからVakulaによる新作EP!!Firecracker, Best Werksからのリリースも記憶に新しいポスト・ビート・ダウン期待の才人Vakulaによるファン待望の新作5トラックス。

7

KVBEATS

KVBEATS THE RESUME »COMMENT GET MUSIC
黄金期のクラシックスに魅せられたクリエイターがデンマークにも!ゲストにSlum Village、Royce Da 5'9"、Prince Po、Oddisee、Mic Geronimo等、耳を疑うほど豪華なメンツが集結!

8

SOMMERSTAD

SOMMERSTAD NESTE STOPP MORRA DI »COMMENT GET MUSIC
オスロFull Puppキャンプからまたしても期待のニューカマー!!なんといってもB-1"Opptur Med Sopptur"における、てらいなくポジティヴで美しい、ニューエイジ的ですらある旋律が素晴らしい!!こんなにストレートに朗らかな曲を書けるなんて、どんな素晴らしい環境で育ったのでしょう...ちょっと嫉妬したくもなる青年達です!!

9

ALOE BLACC

ALOE BLACC YOU MAKE ME SMILE »COMMENT GET MUSIC
大好評『Good Things』からの2ndシングルは極上エモ-ショナルな2曲!B面にはアルバムの最後を飾った"Politician"をカップリング収録。サウンドは勿論Leon MichelsとJeff Silvermanのコンビが担当!

10

ERNESTO FERREYRA

ERNESTO FERREYRA EL PARAISO DE LAS TORTUGAS »COMMENT GET MUSIC
Rebootに続いてCadenzaが猛プッシュするのはこのErnesto Ferreyra!!Mutek_Rec、Cynosure、Themaからのリリース、そして当店ハウス・コーナー的には昨年Lomidhigh Organicから発表したキラーEP"Midnight Sun"の大ヒットでお馴染みのアルゼンチン出身の新進気鋭による待望のデヴュー・アルバム!!

SCANDAL (BEATPOP / 酔人) - ele-king

SCANDAL AVENTURE 10


1
Edward - Vivien's Therme - Giegling

2
Pantom Ghost - The Shadow - Dial

3
Stereociti - Cosmoride - Mojuba

4
Yapacc - Coral Garden - Wir

5
Glimpse - Fine A Way - Leftroom

6
Krakatoa - P&D (Prais Connwction Remix) - Krakatoa

7
Smallpeople&Rau - Life Aquatic - smallville

8
Brendon Moeller - Sweetspot - Echocord

9
Mr Bizz - Jantra - Mono

10
Dave DK - Sweet Yellow - Moodmusic

Hot Warm House and Disco!


1
Giom and Derek Dunbar - Poulet Gauffre Original Mix - Amenti

2
Lenoardus - D.I.S.K.O. - Guesthouse

3
Go Go Bizkitt! - StutterFunk - Deepfunk Records

4
Groove Junkies & Joi Cardwell - What's Freedom (GJ's Classic Vox Mix) - More House

5
Andrew Chiable - Lincoln & Pennsylvania - Salted

6
Blackjoy - Jenny's Disco With Aqueel - Blackjoy

7
Gayle Adams - Baby Don't Make Me Do It - Unidisk

8
Artie Flexs - Sweet Nightfall (Get Up) (Original Mix) - Stilnovo Music

9
Mike Disco - Lifestyles Mark Farina Remix - Full Flavor Music

10
Ed Mazur featuring Alexandra Lojek - It's All About Laron a.k.a. Swan remix - House On The Hill

Brother Raven - ele-king

 グローイングもエメラルズもほんの少し前まではヘヴィ・ドローンだったことを思うと、もはやどんな方向に流れるのもありなんだろうけれど、それにしても摩訶不思議な展開に踏み込みつつあるサイケデリック・ドローンの新作をいくつか。

 最初は比較的従来のアンビエント・ドローンに近いもので、滝川じゃないクリステル・ガルディによる初期3部作『クルセイダー』『アライアンス』『オーシャン・ウーマン』からのセレクト集。順に1曲、6曲、5曲という抜き方で、大雑把にいってAサイドが『アライアンス』のAサイド、Bサイドが『オーシャン・ウーマン』のAサイドに近い。初期3部作をそのまま2CD『リフツ』にまとめたことで知名度を得たOPNのアイディアに触発されたのではないかと思えるもので、内容的にもシャープさをすべて丸く包み込んだような仕上がりは平たくいってOPNへの女性からのアンサーという感じもなくはない(実際、B4はOPNと共作)。アナログ・リリースでは1作目となる『ライズ・イン・プレインズ』(裏アンビエントP243)でもバウンシーで抑揚な激しいドローンが展開されていて、それはここでもそのまま継承され、酔っ払ったようにクニャクニャとウネり続けるドローンはタイム・トンネルから出られなくなってしまったような不安を与えながら最後までまったく安定しない(安直にアラビア風ともいえるし、過去のジャケット・デザインなどから勝手に推測するとガルディはもしかするとイスラム系なのかもしれない。そう思うとピート・ナムルックとドクター・アトモによる『サイレンス』をドローン化したものにも聴こえてくるし、だとしたら〈アタ・タック〉からリリースされたブルカ・バンドとの共演かリミックスを希望~。音楽を禁じるタリバンに対抗してブルカを着たままで演奏するので、普通に演奏しているのにどこかサイケデリックになってしまう女性3人組のバンドです! 殺される覚悟なのか?)。

 また、OPNが主催するRオンリーのレーベル、〈アップステアーズ〉から『イン・フィータル・オーラ』をリリースしていたアントワープのイナーシティことハンス・デンスが新設の〈アギーレ〉からリリースした『フューチャー・ライフ』(カセット付き)はドローンの文脈にテリー・ライリーやギャビン・ブライヤーズを思わせる古風なミニマル・ミュージックを背景に溶け込ませることでやはり独特の酩酊感を演出する。どの曲もはっきりとしたイメージは持たず、レジデンツ『エスキモー』をドローン化したような曲があるかと思えばローレンス風のダブ・テクノに聴こえてしまう曲あり、どの曲もモコモコといっているうちにいつしかその世界観に呑まれていく......。

 上記の〈アギーレ〉からリリースしたデビュー・カセット『ダイヴィング・イントゥ・ザ・パイナップル・ポータル』が最近になってアナログ化されたばかりのポッター&アンダースンが、そして、とんでもない。こういうのは......ちょっと聴いたことがなかった。大ガラスの兄弟を名乗るシアトルのデュオは09年から4~5本のカセット・テープをリリースした後に初のアナログ・リリースとして『VSS-30』を〈ディジタリス〉からリリースし、導入部こそ典型的な思わせぶりのようでありつつ、全体的にはクラフトワークにハルモニアが憑依し、それでいてクラウトロックの亜流には聴こえず、とてもシンプルですっきりとした構成に落とし込むという離れ業をやってのけている(すべてテープにライヴ録音)。ドローンの要素はもはや皆無で、新しいと思える部分はすべてリズムに神経が集中している。ダンス・ミュージックにおけるフィジカルなリズムではなく、ノイ!のようにそれで遊んでいるタイプ。リズム自体が遠くへ行ったり近づいたり、あるいは間隔を意識させることでとても空間的な時間をつくり出したりする。これはスペース・ロックの新しいフォーマットといえるのではないだろうか。デビュー作では彼らはまだドローンの要素を残しており、むしろ、そのせいでエメラルズのようにクラウトロックと重ねて聴く要素もそれなりにあったと思うのだけれど、ここにはそのような過去との接点はかなり見えづらいものになっている。勢いや新鮮な感覚という意味では『ダイヴィング・イントゥ~』も非常にいい演奏だし(これもテープにライヴ録音)、アンビエント・ミュージックとしてのわかりやすさも侮れない。しかし、『VSS-30』で達成されたものはその先にあるものといえ、この進歩をめちゃくちゃ評価したい。
 セーラームーンの必殺技、スパークリング・ワイド・プレッシャーをユニット名にしたフランク・ボーによる『フィールズ・アンド・ストリング』や裏アンビエントの2008年で大きく取り上げたミルーの正式なサード・アルバム『ザ・ロンリネス・オブ・エンプティ・ローズ』など紹介したいものはまだまだ多い。それらはまた機会があれば。

interview with Agraph - ele-king


agraph / equal
Ki/oon

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ゴールド・パンダから〈ラスター・ノートン〉の名前を聞いて、そしてアグラフの『イコール』にはアルヴァ・ノトが参加していることを知る。同じ時期にふたりの新世代の、背景も音楽性も異なるアーティストから、同じように、しかも久しぶりにカールステン・ニコライの名を耳にして、ひっかからないほうが不自然というものだろう。エレクトロニック・ミュージックの新局面はじつに忙しなく、かつて〈ミル・プラトー〉が宣言したようにいろんなものが絡み合いながら脱中心的に動いているように感じられる。
 クラブ・ミュージックに関して言えば、多くの論者が指摘するように、ジェームス・ブレイクが新しいところに向かっている。ドイツ語で"ピアノ作品"を意味する「クラヴィアヴェルクEP」を聴いていると、彼が単なるブリアル・フォロワーではないことを知る。ピアノの心得があることを、彼は5枚目のシングルで披露しているのだが、おかしなことにアグラフもまた、『イコール』において彼のピアノ演奏を打ち出している。なんというか、気兼ねなく自由に弾いている。彼のセカンド・アルバムを特徴づけているのは、ピアノとミニマリズムである。
 
 アグラフの音楽は清潔感があり、叙情的だ。きわめて詩的な広がりを持っている音楽だが、その制作過程は論理的で秩序がある。作者の牛尾憲輔と話していると、彼ができる限り物事を順序立てて思考するタイプの人間であることがよくわかる。その多くが感覚的な行為に委ねられるエレクトロニック・ミュージックの世界においては、彼のそれはどちらかと言えば少数派に属するアティチュードである。そして思索の果てに辿り着いた『イコール』は、いまIDMスタイルの最前線に躍り出ようとしている。
 
 リスナーが、スティーヴ・ライヒ・リヴァイヴァルとカールステン・ニコライを経ながら生まれたこの音楽の前から離れられなくなるのは時間の問題だ。アグラフの、傷ひとつないピアノの旋律を聴いてしまえば、多くの耳は立ち止まるだろう。息を立てるのもはばかれるほどの、控えめでありながら、どこまでもロマンティックな響きの前に。

実家が音楽教室でピアノをやっていたので、坂本龍一さんの曲は弾いてました。それは手癖として残っていると思います。坂本龍一さんの手癖にライヒがのっかているんです(笑)。だから混ざっているように聴こえるんでしょうね。

日常生活ではよく音楽を聴くほうですか?

牛尾:最近は聴かなくなりましたね。本ばっか読んでいます。ぜんぜん聴いてないわけじゃいんですけどね。

音楽が仕事である以上、当然仕事の耳で音楽を聴かなくてはならないと思うんですけど、自分の快楽として聴く場合の音楽はどんな音楽になるんですか?

牛尾:基本的にはすべて電子音楽かクラシックです。

どんな傾向の?

牛尾:一筆書きで描かれた、勢いのあるものよりかは、家で聴いて奥深くなっていける細かく打ち込まれたもの。アパラットみたいな、エレクトロニカとテクノのあいだにあるようなもの。ファーストを作っているときからそうだったんですけど、そういう音楽家、(スティーヴ・)ライヒ的な現代音楽......ミニマルであったりとか、そういう音像の作られ方をしているものをよく聴きますね。

いまの言葉はアグラフの音楽をそっくり説明していますね。

牛尾:そうかもしれません。僕の音楽はそういう影響を僕というフィルターを通して変換しているのかなと思うときもあります。

最初は鍵盤から?

牛尾:はい。

今回のアルバムの特徴のひとつとしては、鍵盤の音、メロディ、旋律といったものが挙げられますよね。

牛尾:そうですね。

自分の音楽をジャンル名で呼ぶとしたら何になると思います?

牛尾:さっき言った、エレクトロニカとテクノのあいだかな。

アンビエントはない?

牛尾:その考え方はないです。

ない?

牛尾:アンビエントをそれほど聴いてきたわけではないんですよ。ファーストを作ったときに「良いアンビエントだね」と言われたりして、それで制作の途中でグローバル・コミュニケーションを教えてもらって初めて聴いたりとか、ブライアン・イーノを聴いてみたりとか......。

イーノでさえも聴いてなかった?

牛尾:意識的に作品を聴いたのはファーストを出したあとです。

カールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)みたい人は、エレクトロニカを聴いている過程で出会ったんだ。

牛尾:そうです。東京工科大学のメディア学部で学んだんですけど、まわりにICC周辺、というかメディア・アートをやられている先輩や先生だったりとかいたんですね。そういう人たちに教えてもらったり、いっしょにライヴに行ったりとか、スノッブな言い方になりますが、アカデミックな延長として聴いていました。

なるほど。アンビエント......という話ではないんだけど、まあ、エレクトロニカを、たとえばこういう説明もできると思たことがあったんですよね。ひとつにはまずエリック・サティのようなクラシック音楽の崩しみたいなところから来ている流れがある。もうひとつには戦後マルチトラック・レコーディングの普及によって多重録音が可能になってからの、ジョージ・マーティンやジョー・ミークやフィル・スペクターみたいな人たち以降の、レコーディングの現場が記憶の現場ではなく創造の現場になってからの流れ、このふたつの流れのなかにエレクトロニカを置くことができるんじゃないかと。アグラフの音楽はまさにそこにあるのかなと、早い話、坂本龍一と『E2-E4』があるんじゃないかと思ったんです(笑)。

牛尾:なるほど(笑)。でも『E2-E4』はそこまで聴いてないんですよ。

やはりライヒのほうが大きい?

牛尾:大きい。『テヒリーム』(1981)みたいにリリカルなものより、彼の出世作が出る前の、テー プ・ミュージックであったりとか、あるいは『ミュージック・フォー・18ミュージシャンズ』(1974)であったりとか、当時のライヒがテープを使って重ねていたようなことをシーケンサーで再現できるように打ち込んだりはよくやりますけどね。

なるほど。

牛尾:坂本龍一さんはたしかにあります。実家が音楽教室でピアノをやっていたので、坂本龍一さんの曲は弾いてました。それは手癖として残っていると思います。坂本龍一さんの手癖にライヒがのっかているんです(笑)。だから混ざっているように聴こえるんでしょうね。

しかも坂本龍一っぽさは、ファーストでは出していないでしょ。

牛尾:出ていないですね。

今回はそれを自由に出している。ファーストの『ア・デイ、フェイズ』よりも自由にやっているよね。

牛尾:ピアノを弾けるんだから弾こうと思ったんですよ。

僕は3曲目(nothing else)がいちばん好きなんですよ。

牛尾:ありがとうございます(笑)。

あの曲は今回のアルバムを象徴するような曲ですよね。

牛尾:そうですね。

ファーストはやっぱ、クラブ・ミュージックに片足を突っ込んでいる感じがあったんだけど。

牛尾:そうです、今回は好きにやっている。ファーストも実は、制作の段階では4つ打ちが入っていたり、エレクトロのビートが入っていたりして、だけど途中で「要らないかな」と思ったんです。それで音量を下げたり、カットしたりしたんですけど、基本的に作り方がダンス・ミュージックだったんですね。展開の仕方もすべて、ダンス・ミュージック・マナーにのってできているんです。今回はクラシカルな要素、アンサンブル的な要素を取り入れていたんです。

まったくそうだね。

牛尾:こないだアンダーワールドの前座をやったんですけど、前作の曲は四分が綺麗にのっかるんです。でも、今回の曲ではそれがのらないので、ライヴをやってもみんな落ち着いちゃうんですよね(笑)。

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「人がない東京郊外の感じをロマンティックに切り取っているよ」と言われて、それはすごく腑に落ちる言い方だなと。とにかく僕の牧歌的な感覚は、そっから来ていると思います。


agraph / equal
Ki/oon

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今回自分の世界を思い切り出そうと思ったきっかけは何だったんですか?

牛尾:新しいことをやりかったというのがまずあります。前作ではやらなかったこと、まだ自分が出してないものを出そうと。それと、オランダ人で、シメオン・テン・ホルト(Simeon Ten Holt)というミニマルの作家がいて、その人の『カント・オスティナート(Canto Ostinato)』という作品があって、フル・ヴァージョンだとピアノ6台、簡略化された聴きやすいヴァージョンではピアノ4台なんですけど、そのCDのピアノの響きというか、サスティンの音に含まれる空気感みたいなものにとても気づくところがあって、まあ、具体的なものではないんですけど、その空気感に触発されというのはありますね。

ちょっとのいま言った、えー、シメオネ?

牛尾:シメオン・テン・ホルトです。

スペルを教えてもらっていいですか?

牛尾:はい。(といって名前と作品名を書く)

僕もスティーヴ・ライヒは行きましたよ(笑)。90年代に来たときですね。あれは生で聴くと本当に最高ですよ。

牛尾:僕は昨年の来日のときに2回行きました。質疑応答までいました(笑)。

この10年で、スティーヴ・ライヒは見事にリヴァイヴァルしましたよね。

牛尾:僕は技法的にはすごく影響受けましたね。

ミニマル・ミュージックには反復と非連続性であったりとか、ライヒの技法にもいろいろあると思いますが、とくにどこに影響を受けたんですか?

牛尾:フェイジングという技法があって、ずらして重ねていくという技法なんですけど、それを根底においてあとは好きなように作っていく。そうすると反復性と非連続性が、重ねた方であるとか響きの聴かせ方で、再現とまではいかないまでも自分のなかに取り込めるのかなという意識がありました。テクニカルな要素ですけどね。

それはやっぱ、アグラフがピアノを弾けるというのが大きいんだろうね。

牛尾:そうかもしれないですね。とにかくピアノを弾こうというのが今回はあったので。

楽器ができる人はそういうときに強い。ダブみたいな音楽でも、感覚的にディレイをかける人と、ディレイした音とそのとき鳴っている音との調和と不調和までわかる人とでは作品が違ってくるからね。

牛尾:僕はそこまで音感が良いほうではないんですけどね。音楽の理論も多少は学んだけど、ちゃんと理解しているわけでもないし、すごく複雑な転調ができるわけでもないし、ワーグナーみたいな方向の和声展開が豊富にできるわけでもないので、その中途半端さがコンプレックスでもあるんです。ただ、その中途半端さは自分のメロディの描き方にも出ているんですよね。だから、それが欠点なのか、自分の味なのか計りかねているんですよね。

なるほど。

牛尾:このまま勉強していいものなのか、どうなのか......好きなようにやるのがいいと思うんですけど。だからいま、菊地(成孔)さんのバークリー・メソッドの本を置いて、「どうしようかな」と思っているところなんです(笑)。

ハハハハ。まあ、音楽理論が必ずしも作品をコントロールできるわけではないという芸術の面白さもあるからね。それこそ、さっき「一筆書き」と言ったけど、ハウスとかテクノなんていうのは、多くが一筆書きでパンクなわけでしょ。感覚だけでやっていることの限界もあるんだけど、そのなかから面白いものが生まれるのも事実なわけだし。

牛尾:そうですね。そこをどうスウィッチングするのかは僕も考えていかなくてはならないことですしね。

きっと牛尾くんみたいな人は曲の構造を聴いてしまわない? 「どういう風に作られているんだろう?」とか。

牛尾:聴いてしまいますね。

だからエレクトロニカを聴いていても、曲の作り方がわかってしまった時点でつまらくなってしまうという。

牛尾:それはあるかもしれませんね。あと、楽典的な技術ではなくて、音響的な技術に関しては僕はもっとオタクなので、たとえば僕、モーリッツ・フォン・オズワルドのライヴに行っても音響のことばかりが気になってしまうんですね(笑)。だから、内容よりも音像の作り方のほうに耳がいってしまうんですね。

そういう意味でも、アルヴァ・ノトはやっぱ大きかったんですかね。最近、ゴールド・パンダという人に取材したらやっぱその名前が出てきたし、今回のアグラフの作品にもその名前があって、ひょっとしていまこの人も再評価されているのかなと。

牛尾:エポックメイキングな人ですね。

〈ラスター・ノートン〉もいま脚光を浴びているみたいですよ。

牛尾:それは嬉しいですね。僕が好きになったのは大学時代だったんですけど、とにかくやっぱどうやって作っているのかわからない(笑)。すごいなーと。そういえば、こないだミカ・ヴァニオのライヴに行ったら、グリッジを......ホットタッチと言って、むき出しになったケーブルを触ることでパツパツと出していて、僕はもっと知的に作っていたかと思っていたので、すごいパンクだなと思ったんです(笑)。

フィジカルだし、まるでボアダムスですね(笑)。

牛尾:しかもコンピュータを使わずにサンプラーだけでやっている。しかもエレクトライブみたいな安いヤツでやってて。スゲーなと思った(笑)。エイブルトン・ライヴであるとか、monomeというソフトがあって、そういうアメリカ人が手製で作っているハードウェアとソフトのセット、Max/MSPのパッチのセットであるとか、スノッブなエレクトロニカ界隈でよく取り立たされるようなソフトウェアって、実は適当に扱うようにできているんですね。僕からはそういう見えていて、僕はCubaseというソフトを使っているんですけど、すごく拡大して、できるだけ厳密に、顕微鏡的に作ることが多いんです。つまり(ミカ・ヴァニオみたに)そういう風にはできていなくて、ああいう音楽がフィジカルに生まれる環境が実はヨーロッパにはすごくあって......、で、そういう指の動きによる細かさが、ループだけでは終わっていない細かさに繋がっているのかなと。

なるほど。

牛尾:僕は典型的なA型なんで(笑)。

たしかに(笑)。そこまで厳密に思考していくと、どこで曲を手放すのか、大変そうだね。

牛尾:それはもう、そろそろ出さないと忘れられちゃうなとか(笑)。そういうカセがないと、本当にワーク・イン・プログレスしちゃうんで。

それは大変だ。

牛尾:でも、「あ、できた」と思える瞬間があったりもするんです。

ちょっと話が前後しちゃうんだけど、ダンスフロアから離れようという考えはあったんですか?

牛尾:それはないですね。ただ、自由にピアノを弾こうと思っただけで。フロアから離れようとは思っていなかったです。追い込まれた何かがあるわけではないですね。

音楽的な契機は、さっき言った......えー、イタリア人だっけ?

牛尾:いや、オランダ人のシメオン・テン・ホルト。ファーストのときはハラカミ(・レイ)さんへの憧れがすごく強かったんですね。高周波数帯域が出ていない、こもっているような、ああいう作りにものすごい共感があったんです。それでファーストにはその影響が出ている。だから、次の課題としてはその高い周波数をどうするのかというのがあった。それを思ったときも、ピアノのキラキラした感じならその辺ができるなと思って。ピアノの、たとえば高い方の音でトリルと言われる動きをしたときとか、感覚的に言えばハイハットぐらいの響きになるんですね。だから高周波数の扱いを処理すれば、新しいところに行けるかなと思ったんです。

ピアノは何歳からやっていたんですか?

牛尾:6歳です。でも、適当にやってました。

じゃ、ご両親が?

牛尾:いやいや、家が団地の真んなかにあったので、「それじゃ牛尾さん家に集まろうよ」という話になって、そのあと引っ越してから一軒家になってからもそのまま続いているってだけで、親が音楽をやっていたわけではないんですよね。

出身はどこなんですか?

牛尾:東京の多摩のほうです。だから、多摩川をぷらぷら散歩するのが好きで、ファーストは散歩ミュージックとして作っていたので。

牛尾くんの作品の牧歌性みたいなのもそこから来ているのかな?

牛尾:そうだと思いますね。ディレクターから「人がない東京郊外の感じをロマンティックに切り取っているよ」と言われて、それはすごく腑に落ちる言い方だなと。僕は人は描かないんですけど、橋とか建物とか人工物は描いていると思うので。とにかく僕の牧歌的な感覚は、そっから来ていると思います。ただ、ちょっと斜陽がかっていますよね。

なるほど。ずっとピアノだったんですか?

牛尾:とはいえ、ドラクエを弾いたり(笑)。

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夜の海を散歩したこと、夜の街を山の上から見たことが大きなヒントになっています。そのとき感じたのは、「そこにあるのに見えていない」ということだったんです。夜の海は真っ暗で海の存在感はあるのに見えない、夜の街も街はあるのに人が見えない。


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Ki/oon

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音楽体験として大きかったのは?

牛尾:アクセス。

なんですかそれは?

牛尾:浅倉 大介さんとか、どJ-POPです。僕はそれをテレビで見て、「将来ミュージシャンになろう」と。それからTMN、小室哲哉さんを見て、「やらなきゃ」と(笑)。

はははは。

牛尾:痩せているから運動部はやめようと(笑)。まあ、そういう感じでしたね。

自分で意識的にCDを買いに行ったのは?

牛尾:クラフトワークですね。中学校まではJ-POPだったんですけど、卒業間際に友だちの家で『ザ・ミックス』を聴いて、もう「すごーい!」と(笑)。"コンピュータ・ラヴ"の「ココココココ......」と短いパルスみたいな音にリヴァーブがかかっているだけというブレイクがあるんですけど、それだけテープに録ってずっと聴いてたっりとか。

はははは。

牛尾:音フェチみたいなのは、もうその頃からありました。気に入った音色をずっと追い続けていたりとか......ピアノを弾いていると戦メリを弾きたくなってくるので、そこから坂本龍一さんを聴いて、YMOを聴いて、みたいなのがちょうどクラフトワークを聴きはじめたのと同じ時期で。そうこうしているうちに90年代後半で、卓球さんやイシイさんも聴いたり、雑誌を見ると「〈ルーパ〉というパーティがあってそこでは80年代のニューウェイヴもかかっているらしい」とか、で、「あー、行かなきゃ」って(笑)。それからジョルジオ・モロダーを探してみたり。そうやって遡っていってるだけなんです。

最初から電子音楽には惹かれていたんだね。

牛尾:家にはピアノとエレクトーンがあったんですけど、ずっとエレクトーンに憧れがあったんですよ。それが大きかったかもしれないですね。で、クラフトワークにいって、それから......「卓球さんが衝撃を受けた"ブルー・マンデー"とはどういう曲なのか」とかね。

そうやって一筆書きの世界に近い付いていったんだね(笑)。

牛尾:そうです(笑)。だから、エレディスコなんです。卓球さんにコンピに入れてもらった曲も、最初に出したデモはオクターヴ・ベースがずっと「デンデンデンデン」と鳴っているような(笑)。ちょうど当時はシド・ミードのサウンドトラックを作るんだと自分で勝手に作っていた時期で。

いまのアグラフの原型は?

牛尾:浪人か大学のときです。でも、ハラカミさんを聴いたのは、高校生のときでしたけどね。だから、エレディスコを作りつつ、そういう、小難しい......。

IDMスタイル(笑)。

牛尾:そう、IDMスタイルと呼ばれるようなものを作りはじめたんです(笑)。だんだん知恵もついてきて、細かい打ち込みもできるようになったし、アグラフの原型ができていった感じですかね。

小難しいことを考えているかもしれないけど、ファーストよりも今回の新作のほうが若々しさを感じたんですよ。だって今回のほうが大胆でしょ。ファーストはもちろん悪くはないんだけどわりと型にはまっているというか。

牛尾:ハラカミさんへの憧れですからね。エレディスコをやっていたのも卓球さんやディスコ・ツインズへの憧れでした。それはいまでもあるんですけど、自分のなかで結実できていないんですよね。それよりも自分に素直に自分の味を出すべきだと思ったんですよね。自分がいま夕日を見ながら聴いて泣いちゃう曲とか(笑)、そこに根ざして曲を作りたかったんです。

なるほど。

牛尾:そうなんです。ファーストは(レイ・ハラカミへの)憧れでしたね。

この新作は時間がかかったでしょ?

牛尾:かかりましたね。ファーストをマスタリングしているときにはすでに取りかかっていましたから。でも、最初はうまくいかなった。『ア・デイ、フェイズ』の"II"になってしまっていたんですね。

最初にできたのは?

牛尾:1曲目(lib)と2曲目(blurred border )です。テクニカルな細かい修正を繰り返しながら、だんだん見えてきて、それで、1曲目と2曲目ができましたね。「行けるかも」とようやく思えました。

アルバムを聴いていてね、ものすごく気持ちよい音楽だと思うんだけど、たとえば1曲目にしても、かならず展開があるというか、だんだん音数が多くなっていくじゃない? ずっとストイックに展開するわけじゃないんだよね。そこらへんに牛尾くんのなかではせめぎ合いがあるんじゃないかなと思ったんですけどね。

牛尾:僕の曲は、後半に盛りあがっていって、ストンと終わる曲が多いんですよ。

多いよね。

牛尾:小説からの影響なんでしょうね。小説をよく読むんです。小説って、それなりに盛りあがっていって、ストンと終わる。あの感じを自分が紡ぎ出す叙情性の波で作りたいんだと思います。

なるほど。

牛尾:僕は散歩しながら聴くことが多いんですけど、曲を聴き終わって、いま見ている風景を......、夕焼けでも朝焼けでも夜の街でもいいんですが、曲が終わったときに風景をそのまま鳥肌が立ちながら見ている感覚というか、それをやりたいんです。

それは面白いね。実際に曲を聴いていて、その終わり方は、きっと考え抜いた挙げ句の結論なんだなというのが伝わってきますね(笑)。

牛尾:ありがとうございます(笑)。

あと、たしかにヘッドフォンで聴くと良いよね。

牛尾:まあ、やっぱ制作の過程で散歩しながら聴いているので、どうしてもそうなってしまいますね。でも、どの音量で聴いても良いように作ったし、爆音で聴かないとでてこないフレーズもあるんですよ。それはわざと織り込んでいる。

ちなみに『イコール』というタイトルはどこから来ているんですか?

牛尾:僕の音楽はコンセプトありきなんです。ファーストは日没から夜明けまでのサウンドトラックというコンセプトで作りました。今回は、夜の海を散歩したこと、夜の街を山の上から見たことが大きなヒントになっています。そのとき感じたのは、「そこにあるのに見えていない」ということだったんです。夜の海は真っ暗で海の存在感はあるのに見えない、夜の街も街はあるのに人が見えない。それはひょっとしたら見ている対象物と自分とが均衡が取れている状態なんだなと思ったんです。そのとき、今回のタイトルにもなった"static,void "とか"equal"とか、そういう単語が出てきた。それでは、これを進めてみようと。抽象的だけど、寄りかかれる柱ができたんです。

なるほど。最後のアルヴァ・ノトのリミックスがまた素晴らしかったですね。

牛尾:そうなんです。今回は10曲作って、最後はもう彼に託そうと。ドイツ人がわけのわからないアンビエントをやって終わるという感じにしたかったんです。そうしたらカールステン(・ニコライ)から「フロア向けにする?」というメールが来て。「あの人も、リミックスのときはフロアを意識するんだ」と驚きましたけどね。

しかもあれでフロア向けというのが(笑)。

牛尾:でも突出していますよね。マスタリングをやってくれたまりんさんにしても、もう1曲リミックスをしてくれたミトさんにしても、あとブックレットに小説を書いてくれた円城(塔)さんにしても、僕の描いた青写真以上のものを挙げてくれた。だから満足度がすごく高い。

僕、小説はまだ読んでないですよね。僕も日常で聴いている音楽はインストが多いんですけど、それはやっぱ想像力が掻き立てられるから好きなんですね。同じ曲を妻といっしょに聴いていても、僕と妻とではぜんぜん思っていることが違っていたりする。そこが面白いんです。

牛尾:そこは僕もまったく同じです。たとえばtwitterで曲を発表すると、僕が持っている「この曲はこういう気持ちで作りました」という正解と、ぜんぜん違った感想をみんな返してくれるんですよね。それが面白いんです。

まさに開かれた解釈というか。だから小説を読んでしまうと、イメージが限定されてしまうようで恐いんです。

牛尾:円城さんは文字を使っているんですけど、ホントに意味わかんないんですよ。言い方は悪いんですけど(笑)。せっかく音楽があるのに、愛だの恋だのと、なんで歌詞で世界観を狭めてしまうんだろうなというのはずっとあるんです。でも、円城さんの言葉は違うんですよ。もっと開かれている言葉なんです。小説を付けたかったわけじゃないんです。円城さんの言葉が欲しかったんです。

なるほど。

牛尾:さらに勘違いしてもらえると思うんです。

わかりました。じゃあ、僕も読んでみます。

牛尾:ぜひ(笑)。

interview with Avengers In Sci-Fi - ele-king

 ゼロ年代のダンスフロアのトレンドのひとつに「ロックで踊る」がある。2メニーDJsやエロール・アルカンらインディ・ロックとダンス・ミュージックのクロスオーヴァーを得意とするDJの活躍、そしてフロア・ユースフルな欧米のバンドたち―ーラプチャー、フランツ・フェルディナンド、クラクソンズなどーーの台頭がうながしたこの現象は、いまでは当たり前の光景となった。そのいっぽうで、ライヴハウスの現場におけるそれら海外のシーンと同調する形で生まれたインディ・パーティの多くは、ダンス・ミュージックに造詣が深いDJを招くなどして、そのクロスオーヴァーを試みた。その結果、ライヴ・バンドとDJの相互関係で独自のダンスフロアを形成するパーティもずいぶんと増えた。

 東京の新宿にあるライヴハウス〈MARZ〉を拠点とするマンスリー・パーティ〈FREE THROW〉は、レジデントである3人のDJをメインとしたパーティでありながら、月毎にゲスト・アクトとして若手のライヴ・バンドを招いて開催している。あまり知られていないことかもしれないが、いまをときめくテレフォンズやボゥディーズといったアイドル・バンドたちは、ここを拠点にして全国的な支持へと繋がっていった存在である。他にもミイラズやライトといったロック・バンドたちが多く出演するこのパーティでは、『ロッキングオン・ジャパン』や『ムジカ』などで特集されている日本のコマーシャルなバンドの曲から、『スヌーザー』でピックアップされている欧米のスノビッシュなインディ・バンドの曲まで洋邦/有名無名関係なく幅広くスピンされている。集まったオーディエンスは音楽的な隔たりを作ることなく、ダンスのステップを踏み、とても自由に楽しんでいる。こうした喜びに溢れたムードが、若手バンドのフックアップに繋がることはとても健康的に思える。そしてこのムードは、海外のインディ・シーンへの憧れを伴いながら、全国的なものへとなりつつある。


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 今回の主人公は、その〈フリー・スロウ〉でも幾度となく演奏してきた3人組ロック・バンド、アヴェンジャーズ・イン・サイファイである。自らの音楽のコンセプトを「サイファイ・ミュージック」と名乗る彼らの、メジャーから初のフル・アルバムとなる『ダイナモ』がここに届けられた。
 このバンドは、コズミックなシンセサイザー、シューゲイジングなディストーション・ギターやフィードバック・ノイズを用いて、宇宙空間を遊泳するかのような、ファンタスティックなサウンドを特徴とする。そのダンサブルなビートからは、前述したロックとダンスのクロスオーヴァーからの影響が多分に感じられる。とはいえ、同じくダンサブルなロックを持ち味とする同世代のテレフォンズやサカナクションとはもちろん趣が違う......。アヴェンジャーズ・イン・サイファイの音楽には、よりドライヴ感の効いたパンキッシュなテイストもある。
 バンドのフロントマン、木幡太郎に訊いた。

クラクソンズは好きです。でも彼らは、ニュー・レイヴと括られてしまったことが損している部分ではありましたよね。だって、別に踊れないじゃないですか(笑)。それよりももっとフォーカスするべきなのは、フィジカルな部分よりも、あのホラーというかオカルトじみたゴシックSF的な世界観の部分で。メロディとかも新作は最高でしたね。

アヴェンジャーズ・イン・サイファイ印ともいえる、コズミックなサウンド・テクスチュアだったり、SFの世界を彷彿とさせる歌詞だったり、一貫した宇宙的な世界観というのはどういった経緯で生まれたのでしょうか?

木幡:物心ついた頃に『スター・ウォーズ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のようなSF映画を観て、そこから影響されたというのが大きいですね。『2001年宇宙の旅』とか、有名どころの作品を観たり。ジミー・ペイジのリフのような、いかにも「ギターです」みたいな、人間の血の匂いがするものよりも、血の通っていない雰囲気みたいなのが自分のなかでのストライク・ゾーンになっていったんですよね。昔、エレクトロニカとか、アンダーワールドやケミカル・ブラザーズのようなロック寄りのエレクトロニック・ミュージックにすごい惹かれていたときがあって。そのあたりのアーティストたちの世界観はSFと繋がりやすいというか。そういった趣味がごちゃまぜになった結果です。

2008年にリリースされた2ndアルバム『サイエンス・ロック』あたりから、宇宙をモチーフにした曲名や歌詞など、コズミックなムードがよりいっそう強まっていった印象があったのですが、自分たちならではの表現方法やカラーを獲得したという実感や自信などはありましたか?

木幡:SF志向や宇宙志向といった方向性は最初期から一貫していたものだったので、いくつかのリリースを経て、何かを自分のなかで獲得していったという意識はとくにないです。表層の部分の変化ぐらいですね。

歌詞に登場する、"サテライト・ハート"や"インターステラ・ターボ・フライト"といった、まさにSF的といえる言葉の数々は非現実観を煽ります。そういった言葉を選ぶ理由というのは?

木幡:カタカナの言葉を使うというのは、単純にSFテイストを盛り上げたいというのもあるんですけど、日本語英語というか、意味があるんだかないんだか定かじゃない言葉のほうが強いと、僕は思っているんですね。いかにも意味ありげなことをちゃんと日本語で歌ってみたところで強さがないというか、頭に入ってこないというか。

たとえば今回のアルバムでいうと、具体的にどの言葉ですか?

木幡:「ミディ・マインド/ホモサピエンス・ブラッド」とかはそうですね。メロディとの共生関係というか、メロディの抑揚を殺さずに音の響きの気持ち良さを表現したいので。意味ありげなことを延々と語り聴かせることよりも、ハードコア・バンドのヴォーカルがデカイ声で叫んだ瞬間に伝わってくるもの、そういった感覚を重視している部分があります。何より音をキャッチしてもらうことが目的なので。もちろん、自分では言葉はすべて整理されていて、語呂合わせのために使っているというわけではなく、どれも意味のある言葉なんですけども。でも、その言葉の意味を100パーセント自分と同じ捉え方をしてもらうために、こと細かく伝えようとしたところで、逆にキャッチすらしてもらえないんじゃないかという感覚を持っているんですよね。

日本語の音楽の多くは意味を大切にしていますよね。カラオケ文化というのも、思いっ切り、歌詞に自己投影する為のものですし。自分たちは、意味を伝えるよりも、音楽をやっているんだという意識の方が強いですか?

木幡:そうですね。多くのJ-POPは、歌詞だけで完結してしまっているものが多いなと思っていて。歌詞を読めばたしかにストーリーはわかるんですけど、メロディをつける必要はないなと。それなら詩の朗読をすればいいし、音楽である必然性はない。

あいだみつをで十分という(笑)。

木幡:歌詞を完結させるためにメロディを犠牲にしてしまっている音楽を腐るほど聴いてきたし、「何の為に音楽があるんだ?」という疑問や反感はすごくありましたね。

自分たちは音と言葉のイントネーションで楽しめるものを作っていきたいと。

木幡:やっぱりそれはありますね。僕らの楽曲のメロディと歌詞は、J-POPといわれるもののそれと比較したときに、それぞれの単体での完結度は低いと思うんですけど、そのふたつを組み合わせたときに、初めて言葉の意味がしっかり見えてくるというか。そうすることで、人の想像力が介入する余地を残しておきたい。バンドを始めた当初から、そういったものを目指しています。

総じてSF的な言葉が印象的ではありますが、今回のアルバムだと、たとえば"キャラバン"という曲では、「生はイージー/無常でファスト」「死はイージー/途上でロスト」というラインがあったり、人の生命や所業は諸行無常だという世界観も描いていますよね。

木幡:今回のアルバムでは、自分たちがこれまでに表現してきた非現実的な世界のなかに、現実的な世界観も盛り込んでみたかったんですね。「生と死」や「愛」といった要素も意識的に取り入れてみたんですけど。聴く人が自己を投影する余地も作ってみたかったという。「宇宙」や「未来」といった言葉からは、何となく、あまり人間が存在している感じがしないんですけど、宇宙のなかで人間が生活している感覚というか、そういった世界観を今回は意識的に描いてみました。

ダフト・パンクは好きですか? 彼らには"ロボット・ロック"という曲があって、近未来では人間の血を感じさせないロボットこそが、純粋無垢を象徴するものに成り得ている、という世界観を描いていますよね。そういったイメージとちょっと近いものを感じたのですが。

木幡:ロボットが感情を持つというシチュエーションはすごく好きですね。映画で役者が涙を流している場面があったとして、そこに入り込めない自分がいたりするんですけど。ロボットに感情が宿るというシチュエーションは、逆にリアルに感情が伝わってくることがあります。

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もちろん、ロックが若者のあいだでヒップなカルチャーではなくなっている現状や、必ずしもロックが必要とされていない現状への危惧だったり、そういったフラストレーションはありますけど。でも、そういった意味合いよりも、わけのわからないパワーを彷彿とさせる言葉として捉えてもらいたい。

ダンサブルなロックを持ち味とする同世代のバンドとして、テレフォンズやサカナクションがいますよね。テレフォンズは「アイ・ラヴ・ディスコ!」というフレーズが象徴的ですが、とにかく「アゲる」という意味で、享楽的な世界観をアッパーに描いています。それと比べてサカナクションは、より繊細な表現を持ってして心象風景を叙情的に描いています。音楽的に彼らは近い存在だろうし、意識することもあると思うのですが、そういった同世代のバンドたちが並ぶなかで、自分たちはどういった表現をしていきたいですか?

木幡:もちろん、彼らのことは意識はしていますけど、本質的なところでいうと、いっしょかどうかはわからないですね。僕らの音楽はダンス・ミュージックではないと思っているので。ダンス・ミュージック由来の素材を使っているんですけど、もうちょっと料理の仕方がパンク・ロック的というか。エレクトロニック・ミュージックのアーティストたちって、あの機材で何をしているかというのがいい意味で可視化されづらいじゃないですか。そういった感覚で、僕らはプレイを見せるために存在しているというよりも、純粋に音楽として存在していたい。そうすれば自然と音楽の面にフォーカスされるというか。ロック・バンドというと、プレイの面が見え過ぎてしまって、音楽面がぼやけるというのは感じていたりしたので。テレフォンズやサカナクションがダンス・ミュージックの要素をどういった意味合いで取り入れているかまではわからないですけど、僕らはダンス・ミュージックのフィジカルな部分よりも、もうちょっとメンタルの部分というか、宇宙的な感覚だったり近未来的な感覚だったり、そういった部分に惹かれるところがあって。

なるほど。

木幡:なぜ自分たちがダンス・ミュージック由来のビートを使っているかというと、いま、現時点で、それがもっとも未来的なイメージを喚起させるのに最適だと考えているからです。例えば、ビートルズのドラムをサンプリングするよりも、ダフト・パンクのドラムをサンプリングする方が、音の響きとして未来を彷彿させられるじゃないですか。なので、必ずしも踊らせることを目的にそれをセレクトしているわけではないです。手段として咀嚼している感じです。

とくに大きな影響を受けたミュージシャンはいますか?

木幡:強いて挙げると、エイフェックス・ツインやスクエアプッシャー、ケミカル・ブラザーズあたりですかね。エイフェックス・ツインとスクエアプッシャーはエキセントリックな部分にフォーカスされがちですけど、メロディが綺麗な部分に惹かれます。ケミカル・ブラザーズは音楽的にはフィジカル過ぎてそれほど好きじゃなかったりするんですけど、あのモロにSFな世界観がドンピシャで好きだったりします。

バンドではなくて、打ち込みに専念しようと考えたことはありますか?

木幡:自分がエレクトロニック・ミュージックに没頭した時期に、そういったノウハウがあればやっていたかもしれませんけど、当時、単純に打ち込みやPCの知識が全然なかったんですよね。自分が手を出せるのはエフェクターやシンセサイザーぐらいだったので、バンドに活かしました。

日本人で共感を持てるミュージシャンはいますか? 抽象的な言葉を並べて風景を喚起させるという点において、手法的にはナンバー・ガールに近いとも思ったのですが。

木幡:音楽性はまったく違いますけど、ナンバー・ガールはすごい好きです。世界観がカッチリしていますよね。聴いていると、酔っぱらいが転がっている新宿が頭に浮かんできたり。

海外で共感を持てるミュージシャンはいますか? これもまた自分の推測ですが、SFファンタジーを描いているという点において、感覚的にはクラクソンズやレイト・オブ・ザ・ピアに近いとも思ったのですが。

木幡:クラクソンズは好きです。でも彼らは、ニュー・レイヴと括られてしまったことが損している部分ではありましたよね。だって、別に踊れないじゃないですか(笑)。それよりももっとフォーカスするべきなのは、フィジカルな部分よりも、あのホラーというかオカルトじみたゴシックSF的な世界観の部分で。メロディとかも新作は最高でしたね。

では、共感する部分は多かったと。

木幡:ニュー・レイヴ全般にいえることですけど、このムーヴメントって、言葉が先行していて、音楽的な共通点はほとんどなかったじゃないですか。でも、70~90年代の音楽をすべて包括しながら、レトロなテイストもありつつ、プロディジーやアタリ・ティーンエイジ・ライオット、プライマル・スクリームのような、デジタル志向の先鋭的なロックの要素もあったりして。そういった歴史の積み重ねを踏まえた上での、前向きな未来志向があるところに惹かれました。その前のニューウェイヴ・リヴァイヴァルは、個人的にあまり受け付けなかったんですよね。どれもギャング・オブ・フォー過ぎるというか。あまりにも焼き直し過ぎなところがあって。ラプチャーとか。

クラクソンズと比べられることはよくありますか?

木幡:ニュー・レイヴの日本版みたいに言われたこともありますけど、最初期から僕らの音楽を聴いてくれている人は、そういうことは言わないですね。

現在と初期を比べて、音楽性はそれほど変わっていない?

木幡:基本的には宇宙的な世界観はずっと自分たちのこだわりですけど、最初期はもうちょっと音楽的にドロドロしていました。妙にプログレやサイケに惹かれていた時期もあったので。ピンク・フロイドとか。でも、最初はそのジャンル名、「プログレッシヴ」や「サイケデリック」という言葉のインパクトにとにかく惹かれていたので、ピンク・フロイドが本当にいいなあと思いはじめたのは、実はけっこう最近だったりします。

アルバム終盤の"スペース・ステーション・ステュクス"では、そういった影響も滲み出ていますよね。一大スペース・ロック的な。

木幡:まさにそうです(笑)。

ピンク・フロイドはどの時期の作品が好きですか?

木幡:『原子心母』あたりから"クレイジー・ダイアモンド"までとか。『ザ・ウォール』も好きですけど。シド・バレットに関しては、ピンク・フロイドというよりも、彼は別物って感じなので。

曲はどうやって作っているんですか?

木幡:最初は僕が弾き語りで作ります。まず歌のメロディがあって、曲の方向性やリズムは大体こんな感じだというのを伝えて、そこから3人でセッションしながらアレンジの細部を詰めていくといった感じです。

エイフェックス・ツインにしてもピンク・フロイドにしても、スタジオのエンジニアリングの技術というのが大きいですけど、そういったレコーディングには興味はありますか?

木幡:もちろん興味はありますし、やってみたいとは思うんですけど、どうしてもひとりの作業が主になってしまうじゃないですか。エンジニアとのやり取りがメインになってしまったり。それよりも、大まかな方向性がぶれない限り、セッションから生まれる偶然の方が自分にも驚きを与えてくれるし、エキサイティングだと感じています。

『サージェント・ペパーズ~』や『ペット・サウンズ』のような、世界観を追求する為にスタジオ・ワークで作ってしまう作品にはあまり興味がない?

木幡:仕上がる音が大体想像出来てしまうんですよね。自分の予想を裏切る仕上がりでないと、120パーセントの満足感は得られないのではないかと思うんですよ。

バンドならではの意外性や、セッションしたときの偶然性に賭けたいと。その辺りもクラクソンズと近いかもしれないですよね。

木幡:そうですね。スタジオ・ワークによってバンドのフィジカル性が失われるのも嫌なので。宇宙的な世界観を追求したり、精神世界を表現する余りに、ドローンが延々と20分流れるものとかになってしまうと、自分が考えるロックの理想と離れてしまうので。自分たちの世界観を追求しつつ、フィジカルの強さも同時に追求していきたいというのが命題です。

ライヴ映像も拝見させて頂いたのですが、"ホモサピエンス・エクスペリエンス"という曲で、「セイヴ・アワー・ロック」という言葉を叫んでいるのが印象的でした。そのまま訳すと「自分たちのロックを守る」ですが、これはどういったメッセージなんでしょうか?

木幡:叫んだときに強く響く言葉だと思っていて。これはメッセージというよりも、何よりも言葉の強さからパワーを感じてもらいたい。もちろん、ロックが若者のあいだでヒップなカルチャーではなくなっている現状や、必ずしもロックが必要とされていない現状への危惧だったり、そういったフラストレーションはありますけど。でも、そういった意味合いよりも、わけのわからないパワーを彷彿とさせる言葉として捉えてもらいたい。自分にとってのロックの理想は、わけのわからないパワーを感じさせるものなので。

interview with Gold Panda - ele-king


Gold Panda / Lucky Shiner
E王 Yoshimoto R&C

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 フライング・ロータスの『パターン+グリッド・ワールド』を聴いてひとつ思うのが、「ああ、この人は本当に自分が真似されているのが我慢ならないん だな」ということだ。『ロサンジェルス』以降の、自分のイミテーションたちと距離を置きたくて仕方がない、という思いがヒシヒシと伝わってくる (笑)。取材のなかでも、"グリッジ"や"ウォンキー"といった言葉に対する彼の嫌悪はハンパない。フライング・ロータスのファンの方々にはあの手の言葉を使 わないほうが身のためである......と言っておこう。
 で、"グリッジ"や"ウォンキー"っぽいサウンドからはじまるのがゴールド・パンダの『ラッキー・シャイナー』である。そして、そうした"いまっぽさ"から はじまるそのアルバムは、しかし、面白いようにそこから離れていく。『ロサンジェルス』以降のグリッジ・リズム、あるいはダブステップ以降のビートを追っ ていたヘッズ諸君は、途中で迷うだろう。「違うじゃねーか」と思うだろう。そこで停止ボタンを押す人間も少なくないかもしれない。
 が、むしろその"いまっぽさ"から離れていったときのパンダの音楽を楽しめる人は、何か新鮮な、新しい場所に辿り着けるだろう。どんどん登っていったら 突然視界が開ける。心地よい風が吹き、草原が広がっている。あたりを見回してもまだ誰もいない。『ラッキー・シャイナー』はそういう作品である。

ジェームス・ブレイクやマウント・キンビーは僕よりも若い世代で、影響もR&Bやヒップホップからで、僕とは違うんだ。彼らはデジタル世代だけど、僕はまだアナログに影響を受けている世代だし、ラップトップで音楽を作ることに何かまだ変な感じがする世代なんだよ。僕の音楽はもっとシンプルだ。

ゴールド・パンダという名前にしたことを後悔していない?

パンダ:している。最初はゴールドで後悔して、いまはパンダで後悔した。動物系の名前がすごく多いから。そういうハイプなものから離れていたいから、ちょっと後悔しているんだ。

いやね、この『ラッキー・シャイナー』、ホントに僕は好きなアルバムで、知り合いと会ったりすると「最近、何が良かった?」って訊かれるじゃない。そのときに、「ゴールド・パンダ」って言うと、知らない人だと「ゴールド・パンダ?」って、なんか複雑な表情をされることがあるんだよね。ゴールド・パンダって響きに、ユーモラスで可愛らしいイメージがあるからだと思うんだけど、ダーウィン(パンダの本名)の音楽は基本的にはシリアスな音楽じゃない。

パンダ:恥ずかしい。

だから、ゴールド・パンダという名前からこの音楽を想像するには、ちょっと距離があるんじゃないのかなと。

パンダ:そうだね。でも、いま名前を変えちゃうと、何々......(元ゴールド・パンダ)って長くなっちゃうから、もう変えられないんだよ。

なるほど。ところで『ラッキー・シャイナー』は前回の『コンパニオン』発表後に作ったんですか?

パンダ:いや、去年のクリスマスにはほとんどできていたんだよ。でもまだ気に入ってなくて、で、今年の4月から6月にかけて新しい曲を入れて、完成させたんだ。

"ユー"が最初にシングル・リリースされたのはダーウィンの意志なの?

パンダ:もちろん。

〈ゴーストリー・インターナショナル〉から何か言われたんではなくて。

パンダ:すべて僕の意志だよ(笑)。

そうか。

パンダ:オープニングにパワフルなトラックが欲しいと思っていたんだ。それで、まあ"ユー"だろうと。

『ラッキー・シャイナー』は"ユー"ではじまって、"ユー"で終わるんですけど(日本盤はボーナストラックが収録)、曲のタイトルもとても面白い。小説の章立てみたいに読めますよね。だからコンセプト・アルバムなのかなと思って。

パンダ:そう、歌詞はないけど、小説のようにコンセプトがあり、テーマがある。アルバムとはそういうものだと思うから、

で、僕なりにストーリーを推理したんですけど。

パンダ:ふーん。

今回のコンセプトは、恋人の話じゃないかと。

パンダ:トラックのいくつかはそうです。女性に対する歌もあるし、他の人への思いもあるし、実はパーソナルな話で統一されている。

9曲目の"アフター・ウィー・トークト"がすごく淋しい曲でしょ。これを聴いたときに「ああ、ダーウィンはきっと失恋したに違いない」と......

パンダ:何(笑)?

そう思いました(笑)。

パンダ:違うよ。それにはふたつ意味があって、ひとつは、実はフィル(サブヘッド、前回のインタヴューを参照)についてなんだよ。

あー、そうなんだ。

パンダ:6曲目の"ビフォア・ウィー・トークト"とともに対になっている。

うん、なってるよね。

パンダ:以前、eBayでヤマハのキーボードを安く買ったんだ。フィルはバンを運転してくれて、僕と一緒にそのキーボードを取りに行ってくれた。旅する感じでドライヴしてね。車のなかでフィルとずっと喋りながらドライヴしたんだ。そのキーボードのみで作ったのが"ビフォア・ウィー・トークト"と"アフター・ウィー・トークト"なんだよ。で、キーボードはどんどん壊れていってしまうんだけど、壊れていったときに出てきたカスカスの音がドラム・サウンドみたいに聴こえて、だから、それをドラムに見立ててみた。いずれにしても、そのキーボード一台で作った曲なんだよ。

なるほど、面白いアイデアだね。とにかく、曲の背景にはいろんなストーリーが隠されているんだね。

パンダ:その2曲も、フィルへの思いだけではなく、僕たちの日常生活のなかの"話す前(ビフォア・ウィ・トークト)"のハッピーな感覚と、"話した後(アフター・ウィ・トークト)"の寂寥感のようなものを意識しているんだ。だから"アフター・ウィー・トークト"は淋しいんだ。

失恋じゃなかったんだね。

パンダ:違う。

では、アルバムのはじまると終わりが"ユー"なのは何で?

パンダ:より人間の関係性を意識したって言えると思う。実は"ユー"という言葉は出てこないんだけど、音が"ユー"と聴こえるから、そう付けたというのもある。あと、イントロとアウトロじゃないけど、アルバムのブックエンドのようにしたかったんだ。だから、最初と最後をそうした。最初の"ユー"はとても力強い"ユー"で、最後は......まあ、エンディングらしく。

何か隠していることはないですか?

パンダ:はははは。たぶん、いっぱいあると思う。

はははは。あのね、すごく良いアルバムだと思うんだけど、音が、ダブステップ全盛の現在のUKからするとかなり異端というか、流行の音ではないよね。シーンの音に対する目配せはどの程度あるの?

パンダ:マウント・キンビーは知ってる?

まだ知らないんだよね。

パンダ:ダブステップから来ているんだけど、ものすごくUKっぽい音。R&Bやヒップホップに影響されているようなね。

ジェームス・ブレイクみたいな?

パンダ:そう。ジェームス・ブレイクやマウント・キンビーは僕よりも若い世代で、影響もR&Bやヒップホップからで、僕とは違うんだ。彼らはデジタル世代だけど、僕はまだアナログに影響を受けている世代だし、ラップトップで音楽を作ることに何かまだ変な感じがする世代なんだよ。僕の音楽はもっとシンプルだ。

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僕も一時期はフライング・ロータスがとてもクールに思えて、『ロサジェンルス』みたいなビートを作ろうと腐心したこともあったけど、あまりにもその亜流が多いし、僕自身も飽きてしまった。だって、ダブステップの連中だって、多くがフライング・ロータスの物真似じゃないか。

プラグインを使って、わけのわからないものにしているような。

パンダ:彼らはインターネットからコンピュータ・ゲームから、いろんなものから影響を受けている。電話しながら音楽を作れる世代なんだよ。だから彼らの音楽はより複雑になってきているんだろうね。

じゃあ、ちゃんといまのシーンをわかっていて、今回の音にしたんだね。

パンダ:新しい音楽にはつねに興味を持っている。僕も一時期はフライング・ロータスがとてもクールに思えて、『ロサジェンルス』みたいなビートを作ろうと腐心したこともあったけど、あまりにもその亜流が多いし、僕自身も飽きてしまった。だって、ダブステップの連中だって、多くがフライング・ロータスの物真似じゃないか。だったら僕は違うところに行こうと思って、もっとエレクトロニックでミニマルなところを目指したんだよ。古いモノをまた聴き直しているんだよね。

そこは意識してそうなったんだね。

パンダ:今回も、そして次作も、『ロサジェンルス』ビートからはどんどん離れるよ。

ハハハハ。逆に言えばフライング・ロータスはそれだけすごいからね。

パンダ:それはもちろん。"ユー"はちょっと、いかにもいまっぽいウォンキー・テクノな感じを出しているでしょ。でもよく聴けば、BPMもそうだけど、ビートはもっとストレートなんだ。他のトラックでも、似たようなことはしていない。

僕が『ラッキー・シャイナー』を聴いて思い出したのがエイフェックス・ツインの『アンビエント・ワークス』だったんだよね。90年代初頭のエレクトロニック・ミュージックを思い出した。

パンダ:エイフェックス・ツインと言われるのはとても嬉しい。彼の音楽や、あの頃のエレクトロニック・ミュージックは、より感情が反映されて、よりメロディが重視されていた。しかしいまの音って、いかにクレイジーかってところを競っているように思えるんだ。いかにクレイジーなビートを作るかってところが強調され過ぎている。僕はそうじゃなくて、エイフェックス・ツインのように感情を表現できる音楽を作りたいんだよ。

まあ、クレイジーなビートも面白いけどね。

パンダ:エイフェックス・ツインもまさにクレイジーなビートも作っているけど、それだけじゃない。メロディもちゃんとあるでしょ。

2曲目の"ヴァニラ・マイナス"以降も、かならず良いメロディがあるよね。

パンダ:うん、すごく意識したから。僕は"ビート"というよりも"ソング"を目指したんだ。歌詞がなくても"歌"、頭に残るような"歌"を意識した。

あとは......ジャケット・デザインもそうですけど、マルチ・カルチュアラルというか、エキゾティムズみたいなのも意識しているでしょ。インドの楽器を使ったりしているし、内ジャケットに写っているこのおばさんの写真も......これ?

パンダ:僕のおばあちゃんの写真。

えー、そうなんだ。

パンダ:インド人で、名前がラッキー・シャイナー。

えー、そういうことなんだ!

パンダ:スペルを変えているけどね。

エセックスに住んでいるの?

パンダ:住んでいる。

キューバの人かと思った。

パンダ:80歳の誕生日に行ったポルトガルで撮った写真だよ。

へー、それで"クイッターズ・ラガ"や"ユー"もインド音楽をチョップしてたんだね。言われてみればダーウィンもインド系の顔してるもんね。

パンダ:鼻とかとくにね。

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おばあちゃんは英語を話せなかったし、おじいちゃんはヒンドゥー語を話せなかった。それなのにふたりは恋に落ちて結婚した。それがすごく大きい。もちろんおばあちゃんとおじいちゃんはまだ一緒にいるし、そういう環境で育ってきているから、僕にとっては"結婚"ってすごく良いものに思える。


Gold Panda / Lucky Shiner
E王 Yoshimoto R&C

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今回のアルバムとおばあちゃんの関連性について話してください。

パンダ:おばあちゃんの関係している曲は3曲あるけどね。"ペアレンツ""マリッジ""インディア・レイトリー"ね。

とくに"マリッジ"は良い曲だよね。

パンダ:自分にとって"結婚"はまだ考えられないんだけどね。ただ、おばあちゃんは英語を話せなかったし、おじいちゃんはヒンドゥー語を話せなかった。それなのにふたりは恋に落ちて結婚した。それがすごく大きい。もちろんおばあちゃんとおじいちゃんはまだ一緒にいるし、僕のファミリーで結婚した人たちはいまもずっと一緒にいるんだ。そういう環境で育ってきているから、僕にとっては"結婚"ってすごく良いものに思える。僕はまだ結婚しないけど。

まあ、若いからね。

パンダ:若くない。もう30歳だよ(笑)。

じゃあ、このスリーヴ・デザインは?

パンダ:そこはおばあちゃんは関係ない。それは僕自身でデザインした。古いレコードのカヴァーをつなぎ合わせて作ったんだよ。だから、レコード盤の跡が見えるでしょ。

ああ、ホントだ。

パンダ:音楽も古い音源や古い機材で作っているし。

そういえば、イギリスでの評判もずいぶんと良いみたいだね。新聞(インディペンデント紙)の日曜版の表紙まで飾ったなんてすごいじゃないですか。

パンダ:とても変な気持ちだよね。

しかも「Next Big Thing」という見出しでしょ。

パンダ:うーん、ホント、変な気持ち。お母さんが喜んでくれたのが良かったけど。

しかもこの音楽をいま発表するのって、"賭け"っていうか、まあ、挑戦でだったわけでしょ?

パンダ:そう、なんでこんなに評判になっちゃったのか、自分でもわからないんだけどね。

とくにUKに住んでいたら、あれだけダブステップが盛りあがっているんだから、もっとウォブリーなベースがあるようなさ......。

パンダ:ね、僕の音楽にはベースがないでしょ。

だよね。それを考えると勇気のある挑戦だったと思うんですけどね。

パンダ:僕はただ他の人と同じことをしたくないだけで、勇気があるというのか、もしくはただのバカなのか......。

はははは。ホント、でもチャレンジだったんだよね?

パンダ:うん、そう。だけど、もし評判が悪かったら......ってことを考えると......。

だから"ユー"を最初にシングルにしたのも、すごく意識的にやったんじゃないんですか? 東京でもあのシングルは評判になったんですよ。ただし、"ユー"はいまの流行との接点がある曲だったからね。

パンダ:次のステップというのはすごく意識した。過去の作品で自分で誇りを持っていたのが"バック・ホーム"と"クイッターズ・ラガ"だったし、その2曲を発展させて、しかもインドの感覚をちょっと混ぜてって。

そして、2曲目以降がダーウィンがホントに聴かせたかった音楽が展開されている。とくに2曲目から4曲目の流れが良いよね。3曲目がまたおかしいよね。あれ、ギターのサンプリング?

パンダ:違うよ。あれは僕が弾いているの。自分をサンプルしたんだよ。

チューニングも狂っているし、子供がギターを触っているのかと。

パンダ:ギターのことをぜんぜん知らないからね。

アヴァンギャルドだね(笑)。

パンダ:はははは。才能がないだけ。

でも、すごく好きだよ、"ペアレンツ"っていうそのギターの曲。

パンダ:シャッグスって知ってるでしょ。

はいはい、60年代末の。

パンダ:あれに影響されたんだ。

なるほどね。

パンダ:弾けなくてもやればいいんだと、彼女たちが教えてくれたんだ。

では、最後にダーウィンがもっとも興味のある音楽を訊いて今回の取材は終わりにしましょう。

パンダ:そんなに変わってないよ。レーベルで言えば〈ラスター・ノートン(Raster-Noton)〉。アーティストで言えば坂本龍一も一緒にやっているアルヴァ・ノト(Alva Noto:カールステン・ニコライのプロジェクト)。この人はホントにすごいと思う。どうやって作っているのかまったくわからない。もうひとつはブルックリンのレーベルで〈12K〉。ここから出ているのもすごく良いね。

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